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トランプがイラン核協定を離脱する意味

トランプがイラン核協定を離脱する意味

2018年5月8日   田中 宇


 米トランプ大統領が5月12日、イランと「国際社会」(米英仏露中独、安保理P5+1)が結んできた核開発をめぐる協定(JCPOA)から米国を離脱させるかどうかについて決めて発表する。この決定は、欧州から中東、中央アジアにかけての広域の今後の状況を左右する。これはトランプの大統領就任以来の最重要な決定になると、米国の権威ある外交専門家(Graham Allison)が言っている。最近、マクロンやメルケルら、仏独英の首脳や外相が次々に訪米し、トランプに、イラン協定から離脱しないよう説得・懇願した。だがトランプは、おそらく協定からの離脱を表明する。マクロンは訪米の最後に、トランプの説得に失敗したとの認識を表明した。 (On Iran: Don’t Let Bibi Sell Us Another War) (Macron Says His ‘Bet’ Is That Trump Will Withdraw From Iran Nuclear Pact

 イラン核協定(JCPOA)が重要である理由は、核協定がイランの核兵器保有を防いでいるからでない。イランの核が問題になった03年以降、イランは核兵器の開発を進めていない。IAEAが認めている。「イランが核兵器開発している」「米欧が監視しなければ、イランは核保有する」というのは、イランを敵視する軍産イスラエル傘下の米欧マスコミが歪曲している濡れ衣だ。米国が核協定を離脱しても、イランは離脱しないと言っている(イランは以前、米国が抜けたらイランも抜けると言っていたが、これは米国の離脱を防ぐための脅し文句だった)。核協定にとどまる限り、イランはIAEAから監視され、核兵器開発を進められない。イランは、核兵器を開発するつもりがない。 (歪曲続くイラン核問題) (Nuclear deal exit will prove US isolation: Iran's FM

 イランが核兵器を開発する気がないので、イランの核開発を防止するための協定も無意味だ。核協定の重要性は、違うところにある。15年にオバマ政権がJCPOAを締結する前、米国の世界戦略の決定に強い影響力を持つ軍産イスラエルは、イランの核兵器開発を止めるためにイランを軍事攻撃して政権転覆すべきだと主張していた。01年の911テロ事件によって米国の世界戦略の決定権を握った軍産イスラエルは、中東でイスラエルの脅威になる大国を次々と政権転覆・破壊するのが隠れた目的の一つである「テロ戦争」を開始し、03年にイラクに侵攻して潰した後、イランに核兵器開発の濡れ衣をかけて潰そうとした。 (イランとオバマとプーチンの勝利) (Russia sees closer Iran ties if U.S. exits nuclear deal - official

 米国の上層部には、軍産イスラエルに支配される体制を崩したいと考えた勢力もいたはずだ。911後、米上層部は全員が軍産イスラエルの支持者になった観があったが、その中には、軍産イスラエルの支持者(好戦派)のふりをしつつ、軍産イスラエル支配を崩す策略を展開した人々がいた。その一つは、イラク戦争の開戦の大義(イラクの大量破壊兵器の保有)を、意図的に、濡れ衣であることがすぐバレるような稚拙なもの(ニジェールウラン文書など)にして、軍産イスラエル支配下の米国の威信を引き下げる策をやった人々(ネオコン)だ。オバマは、ネオコンのような裏技でなく、正攻法で、軍産イスラエルのイラン敵視策を終わらせようとした。それがJCPOAの核協定だった。 (UN Nuclear Agency: No Credible Indications of Iran Nuclear Activity After 2009

 核協定は、イランが核兵器開発していないことを証明するIAEA査察を受け続ける見返りとして、イランが米国から軍事攻撃されず、経済制裁を解かれて世界との貿易を許される内容だった。協定の最重要点は「イランの核兵器開発を防ぐこと」でなく「軍産イスラエル支配下の米国がイランを攻撃・制裁して政権転覆するのを防ぐこと」だった。JCPOAは、核協定と銘打った、安保協定だった。

 オバマは大統領権限を駆使してJCPOAを締結したが、軍産イスラエルに牛耳られた米議会は協定に反対で、90日ごとに協定の妥当性を見直す条項をつけた(これが今回のトランプの離脱検討の根拠)。核協定の枠外で、米国はイラン制裁を続けた。米政界を牛耳る軍産イスラエルは、オバマの次の大統領はJCPOAを潰してくれる人物でなければならないという運動を展開し、トランプはこれに乗って、立候補当初から「大統領になったらJCPOAを離脱する」と言い続けて当選した(オバマの後継者の色彩が強いクリントンは「協定を見直す」としか言えなかった)。トランプは選挙公約に沿って、JCPOAからの離脱を目指している。 (Trump Will Announce Iran Deal Decision At 2 PM Tuesday

▼米国のイラン協定離脱はイスラエルの国益にもマイナスなのに・・・

 軍産イスラエルは、米国を核協定から離脱させ、イランの国家安全を保障している核協定の体制を壊し、米国がイランに核兵器開発の濡れ衣を再びかけて、軍事攻撃(もしくは市民蜂起の扇動)によってイランを政権転覆して潰したい。このシナリオに沿って考えると、トランプが核協定からの離脱を決めると、米イスラエルがイランを潰す戦争を起こすことにつながる。トランプが核協定を離脱するかどうかは、中東の戦争が拡大するかどうかであり、世界の今後を大きく左右する・・・・、という解説記事が流布しているが、私が見るところ、これもお門違いだ。 (US Is Playing With Fire if It Walks Away From the Iran Nuclear Deal on May 12) (Trump Is Setting America on an Unpredictable Course in the Middle East

 イラク戦争のころは、米国がイラクを敵視したら、つられて世界がイラクを敵視したが、今は状況が大きく違う。米国がイラン核協定を離脱しても、他の諸国は離脱せず、協定を堅持する。米国が抜けた後も協定は維持され、米国抜きの国際社会が、イランが核兵器を開発していないことを確認し、イランの安全を保障し続ける。米国が協定を抜けたら英独仏も抜けるのでないかと以前に言われていたが、ここ数日で、英独仏とも、米国の決定にかかわらず協定を抜けないと表明した。トランプ政権になって、米国は覇権喪失を加速している。稚拙な濡れ衣戦争の構図が次々と露呈し、米国の国際信用が大きく下落し、米国についていく国が急減している。米国が離脱しても核協定は壊れず、国際社会がイランを潰す構図が戻ることも起こらない。 (Iran: We will stay in nuclear deal, even if US withdraws

 国際社会がついてこなくても、米イスラエルだけでイランを軍事攻撃して潰すのでないか。以前はその道筋があった。だが今や、それも存在しない。イラク戦争のとき、ロシアや中国は米軍の侵攻を傍観・黙認し、フセイン政権を見殺しにした。当時の米国は、中露より軍事力と国際政治力がはるかに強かった。だが今は違う。米国がイランに戦争を仕掛けるなら、ロシアや中国はイランに味方する。ロシアはs300やs400といった、かなりの性能を持つ迎撃ミサイルを、イランに輸出し始めている。そもそも、イランはイラクよりも人口が3倍以上の多さで防衛力も強い。米国がイランに戦争を仕掛けると、泥沼にはまって戦勝できない。トランプは、核協定を離脱しても、イランに戦争を仕掛けない。 (Trump Is About to Provoke an Unnecessary Crisis With Iran) (Iran official rules out possibility of US-Israel war against Tehran

 話をまとめると、米国がイラン核協定を抜けた場合の問題点は、イランが核兵器開発を再開することでもなければ、米国がイランに戦争を仕掛けることでもない。米国がイラン核協定を抜けた場合の問題点は、米国の覇権喪失と世界の多極化に拍車がかかることだ。イラン核協定の体制が米国抜きで維持され、欧州や露中が、米国を外した多極型の国際社会を運営する「新世界秩序」の傾向が強まる。イラン核協定の国連P5+1の体制は、米国が抜けると上海機構+欧州という多極型になってしまう。イラン自身、米国から制裁され、米国抜きの多極型の世界体制を以前から望み、中国やロシアと親しくしてきた。多極型の新世界秩序が何とか回っていくにつれ、好戦的な米国が単独支配する以前の世界秩序に戻りたいと思う国々や人々が減る。トランプのイラン核協定からの離脱は、覇権放棄・多極化の策である点で、TPPやNAFTA、NATOからの米国の離脱と同種の流れだ。 (TPP11:トランプに押されて非米化する日本

 トランプは、エルサレムに米大使館を移したり、米国の軍事費を急増したりして、軍産イスラエルの支持者のように振舞ってきた。トランプは、濡れ衣のロシアゲートを引き起こして戦いを挑んできた軍産と激しい戦いになっているが、イスラエルとは仲が良いように見える。だが、これにも暗闘的な裏表がある。イスラエルでは最近、ネタニヤフ首相が「イランが核兵器開発している」「イランを政権転覆すべきだ」などと、さかんにイランを攻撃している。これは、イラン核協定を離脱しようとするトランプへの援護射撃だ。ネタニヤフがトランプをイラン協定離脱という間違った策に引っ張り込んでいると分析する記事も見かけた。 (Benjamin Netanyahu is bending Donald Trump’s ear on Iran) (Netanyahu Calls for War to ‘Stop’ Iran, Says ‘Better Now Than Later’

 しかし、この構図を詳細に見ていくと、違う話が見えてくる。ネタニヤフは、米国のイラン核協定離脱がイスラエルの国益になると主張しているが、イスラエルの軍事・諜報界の上層部の人の多くは、米国の協定離脱はイスラエルの国益にならないと考え、米国はイラン核協定を離脱すべきでないとする連名の公開書簡まで発表している。私が見るところ、正しいのは軍事諜報界の人々の方だ。すでに書いたとおり、米国の協定離脱は、イランの国家安全を保障する協定体制から米国が抜けて孤立する結果にしかならず、イスラエルの唯一の後ろ盾である米国の退潮と、イスラエルの仇敵であるイランの台頭を招き、イスラエルの国益にとって大きなマイナスだ。 (...it is in Israel’s best interest that the United States maintains the nuclear agreement with Iran) (Netanyahu Tries but Fails to Bury Iran Deal Before Trump Kills It

 米国のイラン核協定離脱がイスラエルの国益にプラスだと言うネタニヤフは間違っている。勘違いして間違っているのでなく、間違いと知りながら主張している。ネタニヤフはスキャンダルに追われ、捜査されている。この構図の黒幕は、おそらく米国のユダヤ人だ。彼らは、キッシンジャーからネオコンまで脈々と続く「イスラエル支持のふりをした反イスラエル」「米国覇権強化のふりをした多極化推進」の、隠れ多極主義的なユダヤ人の流れの中にいる。トランプを擁立し、入れ知恵しているのも、ネタニヤフをスキャンダルで縛り、あやつっているのも彼らだろう。 (The Latest Act in Israel's Iran Nuclear Disinformation Campaign : Gareth Porter) (Netanyahoo To Again Cry Wolf - But Something Bigger Is Up

 トランプは、イラン核協定からの離脱を目指すと同時に、駐イスラエル米国大使館をテルアビブからエルサレムに移転する動きも進めている。加えて、シリアから米軍を撤退させる動きも続けている。トランプは、米軍に代わってエジプトやサウジアラビアの軍隊(もしくは軍資金)をシリアに駐留させ、交代要員が来たと言って米軍を撤退させようとしている(トランプにおされ、シリアへの軍事進出を検討しているとエジプト外務省が正式に認めた)。シリアからの米軍撤退は、イスラエルの国益にとって、米国のイラン核協定離脱を上回る大きなマイナスだ。トランプは、米大使館のエルサレム移転というイスラエルが喜ぶ案件を目くらましに使うとともに、ネタニヤフを操って米国のイラン核協定離脱がイスラエルにとって良いのか悪いのかわからない状態にしつつ、シリアからの米軍撤退を、イスラエルからの大きな反対なしに進めようとしている。 (Egypt, Saudi Arabia Consider Sending Force to Replace US Troops in Syria) (Why Is Israel Desperate To Escalate Syrian Conflict?

 これらが全部うまくいくと、米国の中東覇権は大幅に減少する。中露はイランを取り込み、上海協力機構の正式加盟国に格上げするだろう。多極化するほどイランが台頭する。対照的イスラエルは、ロシアに頼ってイランとの間を仲裁してもらうしか、国家存続できる方法がなくなる。サウジも似たような状況だ。 (Ahead of Iran’s entry, the SCO begs the Gulf’s attention) (Netanyahu to meet Putin in Moscow ahead of Iran deal deadline

 

 

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豪州も日本と並んで対米自立へ

豪州も日本と並んで対米自立へ

2018/11/14(水)14:33 - 管理人(上領達之) - i58-95-101-245.s30.a048.ap.plala.or.jp - 138 hit(s)

 

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 アメリカの中間選挙の結果が出ました。下院では民主党が過半数を取ったけれど、過去の例と比べると大統領政党(今は共和党)の減り方が少ないようです。トランプの勝利宣言は「負け惜しみ」ではなさそうです。これも田中氏の読み通りでした。昭和十七年生まれの僕としては、わが祖国日本が、豪州と協調して対米・対中自立を果たしていってくれたらいいなぁ、と思っています。
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田中宇の国際ニュース解説 無料版 2018年11月14日 http://tanakanews.com/ 
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★日本と並んで多極化対応へ転換した豪州
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日本の安倍首相が10月末に中国を訪問し、日中関係を敵対から協調体制に転換したのと同期して、日本と共同してTPPなど日豪亜圏の形成に動く豪州(オーストラリア)が、これまでの3年間の中国との対立をやめて、豪外相が訪中した。日中と並び、豪中関係も協調体制に転換した。豪州のペイン外相は11月8日、豪外相として3年ぶりに中国を訪問した。中国側はこれまでの対立関係を棚上げし、豪州を称賛した。
http://mobile.abc.net.au/news/2018-11-05/whats-behind-the-thaw-in-chinas-relations-with-australia/10467788 China: What's really behind the 'thaw' in relations with Australia?
http://tanakanews.com/181029japan.htm 米国の中国敵視に追随せず対中和解した安倍の日本

これに先立ち、豪州議会は10月31日、米国抜きのTPPへの加盟を批准した。これでTPPの批准国は6つになった。11カ国からなるTPPは、署名国の過半数が批准したら発効するので、豪州の批准により、一か月後の12月30日にTPPが発効することになった。17年1月、トランプが米大統領になってすぐTPPの交渉から離脱して以来、日本と豪州は、米国抜きのTPPを、米単独覇権体制から多極型覇権体制に転換しつつある世界における、中国圏と米国圏の間に位置する海洋アジア・太平洋圏の経済協定として位置づけ直している。
http://www.ft.com/content/274d411c-dc99-11e8-9f04-38d397e6661c Trans-Pacific Partnership to start in December

加えて豪州は、外相の訪中と同日の11月8日、南太平洋の島嶼諸国に対して30億豪ドルの経済支援を新たに行うと発表し、南太平洋地域を自国の影響圏とし続けることを宣言した。これは、多極型世界において、豪州が(日本と並ぶ)海洋アジア圏の主導役になることを宣言したに等しい。南太平洋はもともと(日本の敗戦後)豪州の影響圏だったが、近年、中国が、台湾を押しのけて南太平洋への経済援助攻勢を展開しており、豪州は苦しい守りに回っていた。豪州が、外相の訪中と同時に南太平洋への影響圏設定を再宣言したのは、豪州が中国に「仲良くするが、相互の影響圏は尊重してくれ」という、多極型世界における「極」どうしの共存関係の締結を提案したことを意味する。中国は、豪州の提案を了承した。豪州(や日本)は従属先を米国から中国に替えたのではなく、自国の戦略の適合先を、米国覇権体制から多極型体制に変えた。
http://www.channelnewsasia.com/news/world/australia-revamps-pacific-strategy-as-china-looms-10909152 Australia revamps Pacific strategy as China looms
http://www.news.com.au/world/pacific/china-almost-has-australia-surrounded-but-its-debttrap-diplomacy-has-been-exposed/news-story/3f8d390e8c8e3b5158214836ee412aee China almost has Australia surrounded. But its debt-trap diplomacy has been exposed

日本と豪州はこれまで対米従属が国是であり、トランプが覇権放棄策としての「同盟国いじめ」をしなければ、今後も永久に対米従属を続けたかった。だがトランプは、自由貿易体制を破壊し、TPPを離脱し、NAFTAを米国中心の偏った体制に再編したほか、同盟諸国との安保体制の維持もないがしろにしている。米国では、共和党全体が孤立主義的な米国第一主義の党になっているし、民主党も覇権を嫌う左翼が強くなっている。米国で覇権運営を牛耳ってきた軍産複合体(諜報界)は、トランプに負けて居場所がどんどん縮小している。ヒラリー・クリントンは、軍産系の中道派でなく、国民皆保険を掲げる左翼リベラルとして次期大統領選に出馬することを検討している(出ても負ける)。米国は「トランプ以後」も覇権放棄の傾向が長期化しそうだ。
http://www.wsj.com/articles/hillary-will-run-again-1541963599 Hillary Will Run Again

そんな中日豪は、いやいやながら対米自立せざるを得なくなっている。対米自立するなら、日豪がバラバラにやるより、日豪が協力し、周辺の東南アジアや米国以外の米州側の国々とも一緒にやった方が得策だ(カナダ、メキシコ、中南米諸国も、トランプにひどい目にあわされている)。米国抜きのTPPは、偶然にも、この新体制にうまく合致している。(米国には戦後ずっと隠れ多極主義の流れがあるので、偶然でないかもしれない)
http://www.cnbc.com/2018/11/12/australia-prime-minster-scott-morrison-on-his-areas-of-priority.html Australia prime minister: We are stepping up our involvement in Pacific nations
http://tanakanews.com/180201tpp11.htm TPP11:トランプに押されて非米化する日本

日豪はこれまでの対米従属時代に、米国がアジア戦略として掲げてきた「中国包囲網」の中国敵視を、自国の対中国戦略として掲げてきた。日豪が今後、対米自立してからも中国敵視を続けるとなると、米国の後ろ盾なしにやらねばならない。米国と中国では、米国の方が強くて大きいので、日豪が対米従属の一環として中国を敵視する分には「虎の威を借る狐」であり、気楽にやれた。中国も、米国との対立を避けたがった。だが今後、米国の後ろ盾を失った状態で日豪が中国敵視をやって勝てるか、日豪の国益になるのかといえば、そうではない。中国人はメンツ重視なので、自分より強い相手(米国)にはヘコヘコするが、強くない相手(日豪)には偉そうに強気に出る。日豪は、対米従属の一環として中国敵視していただけであり、対米自立しても中国敵視を続けたいと思っていない。
http://tanakanews.com/170424tpp11.htm 日豪亜同盟としてのTPP11:対米従属より対中競争の安倍政権

きたるべき多極型世界において、極(大国)どうしは戦争しないのがきまりだ。極となる諸大国の影響圏は重なる部分があり、それが対立の火種になりうるが、大国間の対立は、戦争でなく外交で解決される。多極型世界は2度の大戦後、米国によって考案され、国連安保理の常任理事国の5大国体制(P5)としていったん実現したが、その体制を破壊するために英国が米国の世界戦略立案プロセスを乗っ取って冷戦を起こし、それ以来P5は機能不全に陥っている。機能不全ではあるが、P5諸国の間での戦争はありえない(そのために戦争抑止力となる核武装をP5だけに許すNPT体制が作られた)。
http://tanakanews.com/170307trump.php トランプ政権の本質
http://tanakanews.com/171013hegemon.htm 田中宇史観:世界帝国から多極化へ

国連安保理のP5は、従来の機能不全な多極型体制だ。今後の多極型体制の「極」には、インド、ブラジル、南アフリカといったBRICS諸国や、ミニ多極型ともいうべき中東のトルコ・サウジアラビア・イラン・イスラエルなどが含まれる一方、欧州はEUとして国家を超越した組織になって1極になる。さらに、米中の間に海洋アジアとして日豪など(TPP諸国、日豪亜)が極としてうまく成立するかどうか、というところだ。日豪が一つの極を形成するなら、日豪は中国と戦争しないし、不必要な中国敵視もやらなくなる。同時に日豪は対米従属もやめる。日豪が中国敵視をやめる中で、トランプの米国は、中国との貿易関係を断絶させる懲罰関税(貿易戦争)の戦略を突っ走っており、今後、米国と日豪の乖離が経済面から顕在化していく。
http://tanakanews.com/090721multipolar.htm 多極的協調の時代へ

安保面における既存のかたち(日豪の対米従属)は、まだしばらく変わらないが、来年にかけて朝鮮半島の南北が和解を進め、在韓米軍の撤退が俎上に上りだすと、それも崩れ始める。在日米軍の沖縄の海兵隊を2024年から縮小(グアム撤退)る計画を、米軍が昨年発表しているが、それが前倒しされる可能性がある。
http://www.japantimes.co.jp/news/2017/04/27/national/politics-diplomacy/u-s-start-moving-okinawa-based-marines-guam-2024 U.S. to start moving Okinawa-based marines to Guam in 2024

カナダやメキシコは、米国の主導性が強まったUSMCA(旧NAFTA)を通じて米国の経済属国の傾向を強めさせられているが、同時にTPPの加盟国でもあるので、今後、両者のバランスをとる行動をとるかもしれない。米国の今後の中南米政策に関しては、11月1日のボルトン補佐官の、キューバ、ニカラグア、ベネズエラの左翼系3か国の「トロイカ」を「悪の枢軸」扱いした演説が重要だ。米国は冷戦時代から中南米の左翼政権を敵視する傾向が強いが、米国がその傾向を強めるほど、中南米の側は、左翼でない人々を含め、米国に対する嫌悪や敵視を強める。
http://www.vox.com/world/2018/11/1/18052338/bolton-cuba-venezuela-nicaragua-speech-troika-tyranny John Bolton just gave an “Axis of Evil” speech about Latin America
http://www.weeklystandard.com/the-editors/editorial-trump-tosses-the-obama-doctrine-in-latin-america-good-riddance Bolton’s ‘Troika’

中南米に対するボルトンの冷戦的な宣言は、その前の中国に対するペンス副大統領の「米中新冷戦」の開始宣言、イランやロシアに対する敵視策と合わせ、今後のトランプ政権の「世界を敵視して米国の方が孤立してしまう」という覇権放棄・多極化戦略の基本理念となる。中南米(や中国イランロシア)は、米国から敵視されて困窮するのでなく、米国抜きの(多極型の)新たな世界秩序を構築していく道に進む。だからトランプの世界敵視策が覇権放棄につながるのだが、米国から敵視され切り離された中南米を、漁夫の利的に自分の傘下に入れていくのは中国だ。中国は、以前から中南米に経済支援し、見返りに資源などの利権を獲得している。
http://tanakanews.com/181016china.htm 中国でなく同盟諸国を痛める米中新冷戦
http://tanakanews.com/f0306LaAm.htm 南米のアメリカ離れ

しかし、ここで、中南米がTPPの範囲内(ペルー、チリ、メキシコ、その他もいずれ加盟か?)でもあることを考えると、米国から切り離された中南米を傘下に入れるのが中国だけとは限らなくなる。わが日豪のTPPも、中国の向こうを張って、中南米で影響力の拡大をやることができる。ただしそれには、日豪が、できるだけ早く従来の対米従属根性から脱却せねばならない。対米従属根性が残っていると「中南米は米国のシマだ」という意識が強く、せっかくトランプが関係を切ってくれた中南米を、中国にとられてしまう。今後の日本にとって、中国は敵でなくライバルだ。

ブラジルの新大統領は中国嫌いを掲げて当選した。中国の影響力拡大を嫌う人が多い。カンボジアなど東南アジアでも、中国の覇権拡大、中国人の強欲な利権あさりに対する怒りが拡大している。米国の覇権も嫌だが中国の覇権も嫌だ、と思うアジア太平洋の人々に、米中より強欲・傲慢でない日豪はどうでしょう、と売り込んでいくことが可能だ。
http://www.scmp.com/week-asia/geopolitics/article/2171466/brazil-nut-will-tropical-trump-bolsonaros-anti-china-front Brazil nut: will ‘Tropical Trump’ Bolsonaro’s anti-China front crack?
http://thediplomat.com/2018/11/anti-chinese-sentiment-on-the-rise-in-cambodia/ Anti-Chinese Sentiment on the Rise in Cambodia

日本では、左翼が、覇権拡大(植民地支配の進化版)と安倍晋三の両方が嫌いなあまり、ほのかに見えてきた多極型世界の姿を(陰謀論扱いして)見ようとせず、時代遅れになっている。その一方で右翼も、ネトウヨから街頭宣伝車まで、対米従属の一環でしかない中国敵視に拘泥する馬鹿な姿をさらしており、これまた時代遅れだ。対米従属が、戦後の日本人をどれだけ腐らせてきたことか。トランプがせっかく日本を対米自立・民族自決に追いやってくれているのに、日本人は全くそれが見えていない。早く気がつけ、目を覚ませ、と切に思う。米国の覇権が低下し世界が多極化する中で、日本が対米従属にのみ固執していると、日本は影響圏もないまま国力が低下し、カンボジアやフィリピン並みの、中国の属国になってしまう。
http://thediplomat.com/2018/11/japans-belt-and-road-balancing-act/ Japan’s Belt and Road Balancing Act

今後、日本が置かれている新たな事態に先に気づくと期待できるのは、左翼より右翼だ。多極化する世界において、中国圏と米国圏の間に、海洋アジア圏をTPPとして作り、中国圏とも協力し、かつて成し遂げられなかった大東亜共栄圏を作りなおす構想だ。これはまさに、右翼が大好きな構図のはずだ。

この記事はウェブサイトにも載せました。 http://tanakanews.com/181114australia.htm 

 ●最近の田中宇プラス(購読料は半年3000円)
◆サウジを対米自立させるカショギ殺害事件 http://tanakanews.com/181111saudi.php 
【2018年11月9日】トランプ就任後、米国のサウジ戦略は、カタール制裁、ハリリ監禁、サウジとイスラエルを接近させることなど、MbSに稚拙なイラン敵視策をやらせて失敗させることを繰り返している。ムスリム同胞団系のカショギをサウジに殺害させた今回の事件(米諜報界が了承・黙認しないとサウジは殺害しなかった)も、同胞団系とイランが連帯していることを考えると、同じ方向の事件だ。トランプとMbSは、まだ表向き仲が良いが、トランプの言うとおりにやっていると失敗の連続なので、MbSはしだいに米国の言うことを聞かなくなっている。

◆続くトランプ革命 http://tanakanews.com/181109trump 
【2018年11月9日】トランプはもともと、テレビで自分を演出する技能を持っており、その技能が大統領になってどんどん磨かれ、政敵たちも驚いている。トランプは攻撃を仕掛けられるほど、それを逆手にとって反撃する。中間選挙で起きた米議会のねじれ現象は、政治の喧嘩が大好きなトランプが喜ぶ乱闘の場だ。これまでの2年間で、トランプはすでに軍産との戦い方を身につけ、最も危ない時期はすでに乗り切った。トランプは今後の2年間、余裕を持って政争を展開できる。

◆米中間選挙の意味 http://tanakanews.com/181106midterm.php 
【2018年11月6日】トランプが中間選挙によって激しく不利になることはない。民主党は、トランプ当選以来の2年間、トランプを阻止し無力化することを主な戦略としており、民主党としての能動的な新たな戦略を打ち出せていない。トランプ主義と、民主党の独自の主義主張との戦いでなく、トランプ主義と、アンチトランプ主義との戦いになっている。中間選挙は、トランプがアンチに勝つのか、それともトランプとアンチとの戦いがまだ続くのか、という2つの方向性の間の分岐点になる。

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日本と並んで多極化対応へ転換した豪州


日本と並んで多極化対応へ転換した豪州
2018年11月14日   田中 宇
日本の安倍首相が10月末に中国を訪問し、日中関係を敵対から協調体制に転換したのと同期して、日本と共同してTPPなど日豪亜圏の形成に動く豪州(オーストラリア)が、これまでの3年間の中国との対立をやめて、豪外相が訪中した。日中と並び、豪中関係も協調体制に転換した。豪州のペイン外相は11月8日、豪外相として3年ぶりに中国を訪問した。中国側はこれまでの対立関係を棚上げし、豪州を称賛した。 (China: What's really behind the 'thaw' in relations with Australia?) (米国の中国敵視に追随せず対中和解した安倍の日本)

これに先立ち、豪州議会は10月31日、米国抜きのTPPへの加盟を批准した。これでTPPの批准国は6つになった。11カ国からなるTPPは、署名国の過半数が批准したら発効するので、豪州の批准により、一か月後の12月30日にTPPが発効することになった。17年1月、トランプが米大統領になってすぐTPPの交渉から離脱して以来、日本と豪州は、米国抜きのTPPを、米単独覇権体制から多極型覇権体制に転換しつつある世界における、中国圏と米国圏の間に位置する海洋アジア・太平洋圏の経済協定として位置づけ直している。 (Trans-Pacific Partnership to start in December)

加えて豪州は、外相の訪中と同日の11月8日、南太平洋の島嶼諸国に対して30億豪ドルの経済支援を新たに行うと発表し、南太平洋地域を自国の影響圏とし続けることを宣言した。これは、多極型世界において、豪州が(日本と並ぶ)海洋アジア圏の主導役になることを宣言したに等しい。南太平洋はもともと(日本の敗戦後)豪州の影響圏だったが、近年、中国が、台湾を押しのけて南太平洋への経済援助攻勢を展開しており、豪州は苦しい守りに回っていた。豪州が、外相の訪中と同時に南太平洋への影響圏設定を再宣言したのは、豪州が中国に「仲良くするが、相互の影響圏は尊重してくれ」という、多極型世界における「極」どうしの共存関係の締結を提案したことを意味する。中国は、豪州の提案を了承した。豪州(や日本)は従属先を米国から中国に替えたのではなく、自国の戦略の適合先を、米国覇権体制から多極型体制に変えた。 (Australia revamps Pacific strategy as China looms) (China almost has Australia surrounded. But its debt-trap diplomacy has been exposed)

日本と豪州はこれまで対米従属が国是であり、トランプが覇権放棄策としての「同盟国いじめ」をしなければ、今後も永久に対米従属を続けたかった。だがトランプは、自由貿易体制を破壊し、TPPを離脱し、NAFTAを米国中心の偏った体制に再編したほか、同盟諸国との安保体制の維持もないがしろにしている。米国では、共和党全体が孤立主義的な米国第一主義の党になっているし、民主党も覇権を嫌う左翼が強くなっている。米国で覇権運営を牛耳ってきた軍産複合体(諜報界)は、トランプに負けて居場所がどんどん縮小している。ヒラリー・クリントンは、軍産系の中道派でなく、国民皆保険を掲げる左翼リベラルとして次期大統領選に出馬することを検討している(出ても負ける)。米国は「トランプ以後」も覇権放棄の傾向が長期化しそうだ。 (Hillary Will Run Again)

そんな中日豪は、いやいやながら対米自立せざるを得なくなっている。対米自立するなら、日豪がバラバラにやるより、日豪が協力し、周辺の東南アジアや米国以外の米州側の国々とも一緒にやった方が得策だ(カナダ、メキシコ、中南米諸国も、トランプにひどい目にあわされている)。米国抜きのTPPは、偶然にも、この新体制にうまく合致している。(米国には戦後ずっと隠れ多極主義の流れがあるので、偶然でないかもしれない) (Australia prime minister: We are stepping up our involvement in Pacific nations) (TPP11:トランプに押されて非米化する日本)

日豪はこれまでの対米従属時代に、米国がアジア戦略として掲げてきた「中国包囲網」の中国敵視を、自国の対中国戦略として掲げてきた。日豪が今後、対米自立してからも中国敵視を続けるとなると、米国の後ろ盾なしにやらねばならない。米国と中国では、米国の方が強くて大きいので、日豪が対米従属の一環として中国を敵視する分には「虎の威を借る狐」であり、気楽にやれた。中国も、米国との対立を避けたがった。だが今後、米国の後ろ盾を失った状態で日豪が中国敵視をやって勝てるか、日豪の国益になるのかといえば、そうではない。中国人はメンツ重視なので、自分より強い相手(米国)にはヘコヘコするが、強くない相手(日豪)には偉そうに強気に出る。日豪は、対米従属の一環として中国敵視していただけであり、対米自立しても中国敵視を続けたいと思っていない。 (日豪亜同盟としてのTPP11:対米従属より対中競争の安倍政権)

きたるべき多極型世界において、極(大国)どうしは戦争しないのがきまりだ。極となる諸大国の影響圏は重なる部分があり、それが対立の火種になりうるが、大国間の対立は、戦争でなく外交で解決される。多極型世界は2度の大戦後、米国によって考案され、国連安保理の常任理事国の5大国体制(P5)としていったん実現したが、その体制を破壊するために英国が米国の世界戦略立案プロセスを乗っ取って冷戦を起こし、それ以来P5は機能不全に陥っている。機能不全ではあるが、P5諸国の間での戦争はありえない(そのために戦争抑止力となる核武装をP5だけに許すNPT体制が作られた)。 (トランプ政権の本質) (田中宇史観:世界帝国から多極化へ)

国連安保理のP5は、従来の機能不全な多極型体制だ。今後の多極型体制の「極」には、インド、ブラジル、南アフリカといったBRICS諸国や、ミニ多極型ともいうべき中東のトルコ・サウジアラビア・イラン・イスラエルなどが含まれる一方、欧州はEUとして国家を超越した組織になって1極になる。さらに、米中の間に海洋アジアとして日豪など(TPP諸国、日豪亜)が極としてうまく成立するかどうか、というところだ。日豪が一つの極を形成するなら、日豪は中国と戦争しないし、不必要な中国敵視もやらなくなる。同時に日豪は対米従属もやめる。日豪が中国敵視をやめる中で、トランプの米国は、中国との貿易関係を断絶させる懲罰関税(貿易戦争)の戦略を突っ走っており、今後、米国と日豪の乖離が経済面から顕在化していく。 (多極的協調の時代へ)

安保面における既存のかたち(日豪の対米従属)は、まだしばらく変わらないが、来年にかけて朝鮮半島の南北が和解を進め、在韓米軍の撤退が俎上に上りだすと、それも崩れ始める。在日米軍の沖縄の海兵隊を2024年から縮小(グアム撤退)する計画を、米軍が昨年発表しているが、それが前倒しされる可能性がある。 (U.S. to start moving Okinawa-based marines to Guam in 2024)

カナダやメキシコは、米国の主導性が強まったUSMCA(旧NAFTA)を通じて米国の経済属国の傾向を強めさせられているが、同時にTPPの加盟国でもあるので、今後、両者のバランスをとる行動をとるかもしれない。米国の今後の中南米政策に関しては、11月1日のボルトン補佐官の、キューバ、ニカラグア、ベネズエラの左翼系3か国の「トロイカ」を「悪の枢軸」扱いした演説が重要だ。米国は冷戦時代から中南米の左翼政権を敵視する傾向が強いが、米国がその傾向を強めるほど、中南米の側は、左翼でない人々を含め、米国に対する嫌悪や敵視を強める。 (John Bolton just gave an “Axis of Evil” speech about Latin America) (Bolton’s ‘Troika’)

中南米に対するボルトンの冷戦的な宣言は、その前の中国に対するペンス副大統領の「米中新冷戦」の開始宣言、イランやロシアに対する敵視策と合わせ、今後のトランプ政権の「世界を敵視して米国の方が孤立してしまう」という覇権放棄・多極化戦略の基本理念となる。中南米(や中国イランロシア)は、米国から敵視されて困窮するのでなく、米国抜きの(多極型の)新たな世界秩序を構築していく道に進む。だからトランプの世界敵視策が覇権放棄につながるのだが、米国から敵視され切り離された中南米を、漁夫の利的に自分の傘下に入れていくのは中国だ。中国は、以前から中南米に経済支援し、見返りに資源などの利権を獲得している。 (中国でなく同盟諸国を痛める米中新冷戦) (南米のアメリカ離れ)

しかし、ここで、中南米がTPPの範囲内(ペルー、チリ、メキシコ、その他もいずれ加盟か?)でもあることを考えると、米国から切り離された中南米を傘下に入れるのが中国だけとは限らなくなる。わが日豪のTPPも、中国の向こうを張って、中南米で影響力の拡大をやることができる。ただしそれには、日豪が、できるだけ早く従来の対米従属根性から脱却せねばならない。対米従属根性が残っていると「中南米は米国のシマだ」という意識が強く、せっかくトランプが関係を切ってくれた中南米を、中国にとられてしまう。今後の日本にとって、中国は敵でなくライバルだ。

ブラジルの新大統領は中国嫌いを掲げて当選した。中国の影響力拡大を嫌う人が多い。カンボジアなど東南アジアでも、中国の覇権拡大、中国人の強欲な利権あさりに対する怒りが拡大している。米国の覇権も嫌だが中国の覇権も嫌だ、と思うアジア太平洋の人々に、米中より強欲・傲慢でない日豪はどうでしょう、と売り込んでいくことが可能だ。 (Brazil nut: will ‘Tropical Trump’ Bolsonaro’s anti-China front crack?) (Anti-Chinese Sentiment on the Rise in Cambodia)

日本では、左翼が、覇権拡大(植民地支配の進化版)と安倍晋三の両方が嫌いなあまり、ほのかに見えてきた多極型世界の姿を(陰謀論扱いして)見ようとせず、時代遅れになっている。その一方で右翼も、ネトウヨから街頭宣伝車まで、対米従属の一環でしかない中国敵視に拘泥する馬鹿な姿をさらしており、これまた時代遅れだ。対米従属が、戦後の日本人をどれだけ腐らせてきたことか。トランプがせっかく日本を対米自立・民族自決に追いやってくれているのに、日本人は全くそれが見えていない。早く気がつけ、目を覚ませ、と切に思う。米国の覇権が低下し世界が多極化する中で、日本が対米従属にのみ固執していると、日本は影響圏もないまま国力が低下し、カンボジアやフィリピン並みの、中国の属国になってしまう。 (Japan’s Belt and Road Balancing Act)

今後、日本が置かれている新たな事態に先に気づくと期待できるのは、左翼より右翼だ。多極化する世界において、中国圏と米国圏の間に、海洋アジア圏をTPPとして作り、中国圏とも協力し、かつて成し遂げられなかった大東亜共栄圏を作りなおす構想だ。これはまさに、右翼が大好きな構図のはずだ。

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ベネズエラとアメリカ

 


ベネズエラとアメリカ
2002年5月9日   田中 宇
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 アメリカの2大政党制はおかしいと私が思うようになったのは、2000年11月の大統領選挙のときからだった。フロリダ州の開票結果が僅差だったので、最終的に両党間の「談合」で共和党のブッシュの勝利が決まったからだ。

 しかも選挙後しばらくたってから、共和党がフロリダ州で不正選挙をしたことが判明し、調査に入った連邦公民権委員会も不正があったと公式に発表した。だが民主党は、選挙のやり直しを党として求めていない。一部の議員や党員が真相の徹底究明ややり直し選挙を求めても、党中央は無視している。(関連記事)

 この選挙不正については、ほとんど報じられていないので、少し説明が必要だろう。フロリダ州では、重い犯罪者には投票が許されていないのだが、この規定を州政府が拡大解釈し、本来は投票権を与えるべきだった他州での有罪経験者なども、公民権剥奪・投票禁止の対象にしてしまっていた。不正に投票を禁じられたのは約6万人、大半はアフリカ系住民(黒人)で、民主党支持者が多かった。

 また、黒人が多く住む地域では、投票日に投票所の手前に臨時の警察の検問所が設けられ、投票に行こうとする人々を止めて尋問するなど、事実上の嫌がらせをやった。

 フロリダ州知事はブッシュ大統領の弟であるジェブ・ブッシュであり、これらの一連の行為は、知事の部下である共和党出身の行政長官によって行われている。共和党がフロリダでこのような選挙不正を行わなければ、わずか数百票の差だったフロリダ州の選挙結果は逆転し、民主党のゴアが大統領になっていたとも思われる。

 その後、911テロ事件が起こり、この事件とその後の「テロ戦争」をめぐり、いろいろ不合理・不透明な政策が展開されているが、民主党本部はそのあたりのことについて、ほとんど問題にしていない。さる4月上旬には、民主党の下院議員であるシンシア・マッキニー(Cynthia McKinney)が、911事件の発生をブッシュ大統領ら政権首脳たちが知っていた可能性があるとして調査の必要を訴えた。だが、これも黙殺されている。(関連記事)

 エンロンのスキャンダルも、徹底追及すればブッシュ政権を弾劾に追い込めるかもしれないというのに、今年初めに盛り上がった議会民主党のホワイトハウスに対する追及は、その後なぜか尻すぼみになっている。共和党とのつながりが深いCIAに、民主党がどんな弱みを握られているのか知らないが、すでにアメリカの2大政党制は健全に機能しなくなっているように見える。

▼中南米の2大政党制

 2大政党制という政治制度は、うまく機能しているときは政治や社会の安定と、安定が必須条件である経済の成長をもたらす。だが機能不全に陥ると、それは2大政党間の談合政治と化し、国民の要望が国家運営に反映されない状態を無用に長引かせる元凶になってしまう。

 こうした2大政党制の問題点が赤裸々に現れたのが、1990年代の中南米、特にベネズエラとコロンビアだった。これらの国々では、1957-58年に軍事政権が終わり、2大政党制が始まったが、それは1990年代に破綻し、少数派である金持ち層の内部を2つに分けて政権交代を演出し続けてきた談合政治だったということが、国民の目に明らかになった。

 ベネズエラ、コロンビア、そしてキューバという、カリブ海沿岸の主要な3カ国の冷戦期間中の歴史を見ると、興味深いことに気づく。いずれも1952-53年に軍事独裁政権が始まり、57-58年に破綻している。その後、ベネズエラとコロンビアでは2大政党制が始まり、キューバでは革命が起きて社会主義国になった。軍事政権の始まりと終わりのタイミングがほとんど同じなのである。

 中南米は19世紀の終わりからアメリカの支配下に入り、中南米をかつて植民地にしていたスペインなどのヨーロッパ勢が第二次大戦で弱体化した後は、アメリカの支配がさらに強まった。

 1953年前後は、すでに冷戦が中南米にも広がり、アメリカの支配から逃れるために社会主義国になろうとする動きが激しくなっていたころだ。このことと、中南米に対するアメリカの支配の強さを考えると、軍事政権の誕生の背景に、中南米を社会主義化させたくないアメリカの戦略があったとも思われる。

▼南米の汚い戦争

 ところが、軍事政権には国民の反発が大きく、キューバでは革命を支持する人々が増え、社会主義政権ができてしまった。一方、ベネズエラとコロンビアでは、社会主義化を回避しつつ、軍事政権ではなく一応民主的な装いを持っている2大政党制に移行する道がとられた。

 ベネズエラもコロンビアも貧富の格差が大きく、裕福層は国民の1割もいないのだが、大統領は常にそれらの階層から選出できるようになっており、それを実現するメカニズムが2大政党制だった。コロンビアで1957年から16年間実施された2大政党制は奇妙な制度で、2つの政党が4年ずつ交代で政権をとり、閣僚や議会の議席も半分ずつにすることがあらかじめ決められていたという、かたちだけの民主主義だった。

 冷戦時代を通じて、アメリカの中南米政策にはCIAが大きな役割を果たしてきた。1960年代にキューバの社会主義政権を倒そうとして失敗した作戦や、1973年にチリの社会主義政権を倒したピノチェト将軍らによる軍事クーデター、1986年の「イラン・コントラ事件」で暴露された、ニカラグアの社会主義政権に対抗して殺人や拷問、誘拐を行っていた反政府組織「コントラ」に対するアメリカの支援など、冷戦の一環としての「汚い戦争」は、いずれもCIAが深くかかわっていた。

 ところが1990年前後に冷戦が終わると、アメリカが中南米に求めることは「軍事」より「経済」となった。クリントン政権下でNAFTA(北米自由貿易協定)など南北アメリカ間の経済活性化策がとられる一方、クリントンはCIAの影響力拡大を嫌った。

 こうした変化の中、中南米では少数金持ち層による支配を批判し「貧民のための政治」を掲げる政治家が選挙で勝ち始めた。1990年にペルーの大統領となったアルベルト・フジモリがその例だ。そして、1998年にベネズエラの大統領になったウゴ・チャベスもその一人である。ベネズエラでは2大政党制が機能しなくなって経済難がひどくなり、独立系のチャベスが政権をとった。

▼石油を使ってアメリカに反抗

 チャベスとフジモリが似ている点はまだある。両人とも、選挙のときは貧困層の救済をスローガンに掲げていたが、大統領にやってまずやったことは、外国資本に対する優遇策だった。アメリカの政府と金融機関を満足させることによって、国内の旧支配層である金持ち勢力がアメリカと結託して逆襲してくるのを防いだのである。

 一方、チャベスとフジモリが異なっていた点は、フジモリは失脚するまで親米を貫き、CIA出身の側近モンテシノスに頼り続けたのに対し、チャベスは自らの政権を一応安定させた後、かねてから考えていた反米戦略を実行に移したことだった。(関連記事)

 チャベスはもともと陸軍落下傘部隊の軍人で、国内の左翼ゲリラと戦うのが仕事だった。ところが、あるとき「貧しい国民が左翼を支持するのは、左翼が、貧富の格差を放置してわが国を支配する裕福層とアメリカに敵対しているからだ。敵は共産主義でなく、帝国主義だ」と気づき、それ以来密かに軍内で同士をつのり、クーデターの機会をうかがうようになった。

 そして、1992年にクーデターを決行したが、失敗してしまう。だが意外なことに、クーデターを起こしたことにより、彼は「反裕福層・反米」の闘士であるということがベネズエラの多数派である貧困層に理解され、6年後の選挙で旧来の2大政党勢力を破ることにつながった。

 チャベスの「反米」は、自国を含む中南米諸国をアメリカの支配下から解放したいという考えに基づいていた。そのために彼が使った一つの方法は「石油」だった。ベネズエラは世界第4位の産油国で、アメリカが輸入する石油の2割近くはベネズエラからで、最近までアメリカの最大の石油輸入元だった。一方、石油はベネズエラの国家財政にとっても重要で、政府収入の約半分は石油の輸出代金である。

 チャベス政権になってから、ベネズエラはOPEC(石油輸出国機構)の中で、産油国が横並びで石油を減産して価格をつり上げることを提唱する勢力となった。またチャベスは2000年8月、湾岸戦争以来、外国の指導者として初めてイラクを訪問した。チャベスはキューバやリビアなど、アメリカが敵視する他の国々も次々と訪れるとともに、アメリカが経済制裁をしているキューバに石油を売り始めたりした。さらに911事件の後、チャベスは中東産油国との連携を深めることを意図してか、米軍のアフガニスタン攻撃を批判する発言をおこなった。(関連記事)

 「石油」と「軍事」の勢力が合体して政府を構成しているようなブッシュ政権にとって、こうしたチャベスの振る舞いは、目に余るものだったのだろう。2001年11月5-7日、国務省、国防総省、国家安全保障局が「ベネズエラ問題」について3日間の日程で会議を開いた。これ以降、チャベスを追い落とすためのアメリカの戦略が展開されることになった。(関連記事)

(続く)

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失敗するためにやるベネズエラの政権転覆の策謀


失敗するためにやるベネズエラの政権転覆の策謀
2019年3月26日   田中 宇
南米のベネズエラでは、今年1月10日にマドゥロ大統領が2期目の就任をしたが、議会の多数派を握る野党がこれを認めず、野党指導者のグアイドを暫定大統領として宣言し、マドゥロの与党とグアイドの野党が激突し、混乱が続いている。米国政府は以前からマドゥロ政権を敵視しており、昨年11月の中間選挙直前にトランプ政権の「過激政策担当」のボルトンがベネズエラの政権転覆を目標にすると宣言し、マドゥロ敵視を強めた。米政府は、年末にグアイドを訪米させた後、1月末にはグアイドをベネズエラの正式な暫定大統領と認めた(マドゥロ政権を認めなくなった)。その後、米政府はベネズエラに軍事侵攻して政権転覆する選択肢もあると言い続けている1月以来のベネズエラの混乱は、米国がグアイドを支援してマドゥロ政権の転覆を試みているため続いている。「これは米国によるクーデターの試みだ」と言っているマドゥロは正しい。 (Trump dangles investment to Caribbean leaders who back Venezuela's Guaido)

米政府がベネズエラの政権を転覆したがるのは、20年近く前の911後からのことで、マドゥロや、その前の大統領だったチャベスがキューバなどと親しい反米(対米自立)的な左翼だからという理由だ。ベネズエラが産油国なので石油利権を狙った政権転覆策だとも言われている。しかし米国は、ベネズエラの政権転覆を20年も狙っているのに、成功していない。米国は、ベネズエラの野党を支援して政権奪取させようとしてきたが、野党の質が悪く分裂気味だった。 (U.S. Push to Oust Venezuela’s Maduro Marks First Shot in Plan to Reshape Latin America) (Bolton: Venezuela regime change gaining momentum)

それでも、大統領が国民的な英雄だったチャベスから、13年のチャベス死去の後に副官から昇進しただけのマドゥロに代わり、15年に選挙で議会の多数派を野党に奪われる状態にまでは至った。経済政策の失敗に加え、米国などによる長年の経済制裁により、国民生活は何年も破綻したままだ。しかしまだ、中南米の政治伝統として、傲慢で介入的な覇権国である米国が人々に嫌われており、米国傀儡の政権への移行が今ひとつ支持されていない。マドゥロは低空飛行ながら政権を維持してきた。 (Paul Craig Roberts Pans 'Presstitutes' Turning Blind Eye To UN Report On Venezuela)

これまで米政府は、ベネズエラの野党がマドゥロ政権を転覆した場合はそれを認知するという態度だった。だが今回トランプは、そこから一歩進めて、まだマドゥロ政権が政府として機能しているのに、マドゥロの正統性を無効と宣言して自分こそが大統領だと言い始めたグアイドを正統な(暫定)大統領だと認めた。これは画期的だ。いよいよベネズエラの政権が転覆するのか・・と思ってしまいそうだが、よく見るとそうでない。 (How the Media Distort歪曲 News From Venezuela)

トランプは世界各地、各分野での米国の覇権・信用を意図的に失墜させていくなかで、ベネズエラのマドゥロでなくグアイドを正統な政権だと宣言し、世界中の同盟諸国に、同じようにグアイドを正統な政権と認めろと強要している。中南米で米国の経済援助を頼りにしている諸国や欧州などの一部、合計約60カ国がグアイドを正統な政権と認め始めた。だが、今や米国と肩を並べるようになった地域大国で構成するBRICSは、親米的なブラジル以外のロシアや中国、インド、南アフリカが、マドゥロを正統な政権として強く支持している。国連もマドゥロを正統と認め続けている。EUも政見転覆に反対している。内政的にも、ベネズエラの軍隊がマドゥロ支持継続を決めており、政権転覆の見通しはない。 (Brazil Foreign Minister Calls on Russia, China to Oppose Venezuela’s Maduro) (EU warns US against military action on Venezuela)

米政府は、ベネズエラに大量の支援物資を搬入する「人道支援」をやろうとしているが、マドゥロ政権に物資の入境を拒否されている。米国は、支援物資がマドゥロの政府でなく、野党勢力の手に渡るように画策しており、野党勢力が米国から得た物資を配給することで人々の支持を強め、政権転覆につなげようとしている。支援物資の中に武器が隠されており、それを使って野党支持の民兵団が政府軍に戦闘を仕掛けてベネズエラを内戦に陥らせるという「シリア方式」も試みられそうだ。トランプや米政府は、「人道支援物資」の入境を阻止するマドゥロ政権が人道上の罪を犯しているため「米軍を軍事侵攻させてベネズエラの政権を転覆することが人道上、必要かもしれない」と言い出している。 (Russian Troops, Aid Arrive In Venezuela After Delivering Red Line Warning To Trump) (Lavrov’s deputy to war-hawk Abrams: Venezuela ‘aid’ op unacceptable, Russia to protect its interests)

BRICSの中でも、ロシアと中国は、特にマドゥロ支持が強い。ロシアは米国に「支援物資を使った政権転覆の試みをやめろ」「米軍がベネズエラに侵攻するなら、ロシアもマドゥロの要請を受けて軍隊を差し向けて、米軍による侵攻を阻止する」と通告した。米国は、ベネズエラに関するロシアとの話し合いに応じ、3月20日にローマで次官級の米露会談が行われたが対立を解消できなかったため、ロシアは3月24日、マドゥロ政権の要請に応える形で100人の軍の特殊部隊要員をベネズエラに送り込んだ。同時にロシア軍は、米軍の空爆を迎撃できる迎撃ミサイルS300をベネズエラの空軍基地に配備した。 (U.S.-Russia Talks on Venezuela Stall Over Role of Maduro) (Pompeo Demands Moscow "Cease Unconstructive Behavior" In Venezuela)

ベネズエラから第3次世界大戦が始まりそうな勢いだが、トランプの米国はロシアと一戦交える気などない。ロシアがベネズエラに百人の軍隊とS300を送り込んだ時点で、米軍がベネズエラに侵攻する可能性はほぼゼロに下がった。それでもトランプや側近は「米軍の侵攻による解決が選択肢に入っている」と言い続けている。やる気がないのに侵攻すると言い続けると、国際社会の米国に対する信用失墜が加速する。米国が傀儡を使って政権転覆を画策するのをロシアが軍事的に阻止する流れは、すでにシリアで行われている。シリアは、ロシアの覇権下に入って米国が手出しできない国になりつつある。ベネズエラも、やがてシリアと同様になる。 (Russian Air Force Planes Land in Venezuela, Carrying Troops) (Russia Gives US Red Line On Venezuela)

中国は、マドゥロ政権に対し、石油代金の先払い分として200億ドルを融資している。ベネズエラの経済難により、債務の返済は13年から滞っている。このままマドゥロ政権が転覆されると、その後の新政権は国益を優先すると称して中国への返済を渋る可能性がある。そのため、中国はマドゥロ政権を支持し続けている。露中に支持されている限り、米国はマドゥロ政権を転覆できない。グアイドらベネズエラの野党勢力も、露中に楯突かないことを表明している。 (China Counts the Costs of Its Big Bet on Venezuela) (Self-declared leader of Venezuela Juan Guaido extends olive branch to China, wants ‘productive and mutually beneficial relationship’)

3月25日、ロシア軍がベネズエラに着いた直後、ベネズエラの国土の6割近い地域で停電が起きた。米国が政権転覆の試みを強める中で、大規模な停電が頻発している。マドゥロは、停電は米国勢(軍産)の策謀だと言っている。多分そのとおりだろう。しかし、ベネズエラをテコ入れする露中は停電を解消する対抗策を強めており、米国側がロシアに対する嫌がらせのように、露軍到着直後にベネズエラを大停電に陥らせたことは、露中の対抗策としての停電解消の作業を急がせる結果になっている。 (Venezuela Plunged Into Darkness Hours After Russian Troops Arrive) (China offers help to restore power in Venezuela)

露中のほか、インドがベネズエラから石油を買い続けているし(安値で買えることが一因)、イランやトルコといった反米非米色を強めている諸国もマドゥロ現政権を支持している。トランプがベネズエラの政権転覆にこだわるほど、ロシアや中国などが現政権への支持を強め、転覆を不可能にしていく。このような展開になるのは、トランプが「馬鹿な軍産・強硬派」だからか??。そうではないだろう。トランプは、北朝鮮やシリア、自由貿易など、いくつもの分野において、軍産や強硬派の戦略を過激にやって失敗する(その挙句に撤兵する)ことをやり続けている。ここまでくると、意図的な失策であると考えた方が自然だ。ポンペオやボルトンやエリオット・エイブラムズら、ネオコン系のトランプ側近群は、過激にやって失敗するために配置されている。 (America Needs a New Game Plan for Venezuela) (US pressuring India to end Venezuelan oil purchases)

トランプは、ベネズエラを政権転覆するそぶりを見せ続けることで、ロシアや中国などがベネズエラの現政権をテコ入れせざるを得ないように仕向け、露中などが米国を押しのけてベネズエラの問題を解決していく多極化の流れを意図的に作っている。トランプは、米国の権力を握り続けてきた軍産複合体が世界各地の政権転覆をやれないようにするため、各地で軍産の政権転覆策を過剰にやった挙句に失敗させ、覇権放棄と軍産の無力化を進めている。米国は、ベネズエラからの石油輸入を全面停止し、ベネズエラに駐在していた米国の外交官も全員引き上げさせた。これらはベネズエラに侵攻するための準備なのだと言われているが、実際は米国に縁を切られたベネズエラが露中側に全速ですり寄る結果を生んでいる。 (U.S. Didn’t Import Venezuelan Oil Last Week—For The First Time Ever) (Trump’s Full Venezuela Policy Comes Into View)

 

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イラク戦争の濡れ衣劇をイランで再演するトランプ


イラク戦争の濡れ衣劇をイランで再演するトランプ
2019年5月16日   田中 宇
この記事は「戦争するふりを続けるトランプとイラン」の続きです

2003年のイラク戦争は、当時のブッシュ政権の上層部にいた好戦的なネオコンたちが「イラクが大量破壊兵器を開発している」という誇張・捏造の情報を、ウソと知りながら開戦事由として使い、イラクに濡れ衣をかけて本格侵攻して政権転覆した戦争だ。事後に、侵攻前のイラクが大量破壊兵器を開発していなかったことが確認され、開戦事由がウソだったと判明した。イラク戦争は、米国の国際信用(覇権)を失墜させた。米国はその後、リビアやシリアなどに侵攻するかどうか判断を迫られるたびに、本格侵攻しない(空爆と特殊部隊の派遣でごまかす)方を選択し続けている。イラク戦争は、米国上層部の安保担当者たち(軍産複合体)にとってトラウマとなり、米国は「戦争できない国」になった。 (The Media’s Shameful Handling of Bolton’s Iran Threat Claims Recalls the Run-up to the Iraq War)

しかし今回、米国は16年ぶりに、今度はイランに対して、開戦事由をでっち上げて戦争を仕掛ける演技を開始している。16年前、ブッシュ政権の国務次官補としてイラク侵攻の開戦事由のでっち上げに奔走したネオコン系のジョン・ボルトンが、今回はトランプ大統領の最重要側近の一人(安保担当補佐官)になり、イランと戦争する方向に事態をどんどん動かしている。5月5日、米政府が「イランが中東の米軍施設などを攻撃してきそうなので、イラン前面のペルシャ湾に空母部隊を派遣する」と発表したが、これを発表したのは最高司令官のトランプでなく、トランプから「戦争担当」を任されたボルトンだった。 (Trump's Hired Hands Want a War in Iran) (U.S. Deployment Triggered by Intelligence Warning of Iranian Attack Plans)

ボルトンは、イランが米軍施設を攻撃しそうだと言いつつ、その根拠となる諜報界の情報を何も示さなかった。だが5月12日、ペルシャ湾の入り口の要衝であるイラン前面のホルムズ海峡に近いUAEのフジャイラ港の沖合で、サウジアラビアの大型タンカーなど4隻が、何者かによって攻撃される事件が起きた。死傷者がおらず原油流出もなく、攻撃の内容すら報じられないままで、UAEやサウジの当局は犯人を名指ししていないが、マスコミや「専門家」たちは、すぐに「タイミングから見てイランが犯人だ」と喧伝し始めた。 (Probe underway after Saudi oil tankers came under 'sabotage attack' off Fujairah) (Iran warns of ‘conspiracy’ over sabotaged vessels near Fujairah port)

フジャイラはホルムズ海峡を迂回するパイプラインからタンカーに石油を積み替える港であり、それを理由に「米軍がこれからホルムズ海峡を閉鎖するので、それに先んじてイランが迂回ルートを潰そうと攻撃事件を起こしたに違いない」という見方が出ており、イランの革命防衛隊系のメディアの中にさえ、そのような見方をしてイラン犯人説を半ば認める動きもある。しかし、今のタイミングでイランがこの手の攻撃を行ったのなら、米イスラエル側の思う壺になってしまうので、それは考えにくい。 (Iran warns of ‘conspiracy’ over sabotaged vessels near Fujairah port)

イランは近年、中国ロシアやトルコなどからの関係強化や支援を受け、米国の制裁を乗り越える力をつけている。EUも、トランプの米国の同盟国無視のやり方に怒り、核協定を守ってイランと仲良くする傾向だ。今後、時間が経つほどイランが有利、米国が不利になっていく。イランとサウジの対立でも、イランの優勢が増している。それを知りながら、イランが米サウジ側を攻撃するはずがない。むしろ米諜報界傘下のテロリスト系勢力(アルカイダIS)が、イラン系の犯行のふりをして挙行した濡れ衣攻撃(偽旗攻撃)である可能性の方が強い。空母派遣の口実を、あとからでっち上げた感じだ。 (イランの自信増大と変化) (Saudi Oil Tanker 'Sabotage' Is a Dangerous Moment in US-Iran Tensions)

フジャイラ沖のタンカーへの攻撃は、イラン系がやった証拠がなく、イラン系が犯人である可能性がないのに、トランプの米政府は、イランが犯人だと濡れ衣的に決めつけ、空母をペルシャ湾に差し向けて今にもイランを軍事攻撃しそうなそぶりを示している。16年前に濡れ衣のイラク戦争を引き起こしたボルトンが、今またイランとの濡れ衣戦争を起こそうとしている。トランプが、好戦的なボルトンに引っ張られ、泥沼のイラン戦争に突入しようとしている。ゴリゴリ軍産プロパガンダ雑誌の英エコノミストから、ゴリゴリ反軍産分析者のポール・クレイグロバーツまでが、そのように言っている。 (Paul Craig Roberts: Trump Being Set-Up For War With Iran) (Strange things are afoot in the Strait of Hormuz)

だが実際には、米国はイランと交戦しない。ペルシャ湾の現場の米軍は、イランとの戦争に反対している。米軍はペルシャ湾で革命防衛隊などイラン側と毎日対峙しているが、特に変わったことは起きていないと平静を強調している。現場の米軍は、ボルトンの好戦的な態度と一線を画している。米軍(軍産)傘下の分析者たちは、米マスコミに「フジャイラのタンカー攻撃の犯人がイランだと言い切れる証拠はまだない」と言い、米イラン開戦を止めようとしている。 (A widening gulf: US provides scant evidence to back up Iran threat claims)

03年のイラクは、国連などから10年以上の経済・軍事の制裁を受けて武装解除を強いられ続け、ろくな兵器を持っておらず、米軍がイラクに侵攻してフセイン政権を転覆するのは簡単だった。だが今のイランは、ロシアや中国などから大量の兵器を買い込んで武装しており、戦争すると米軍側にも大きな被害が出る。イラン長期に制裁して軍事力を低下させてから侵攻するのが以前からの軍産(米イスラエル)の戦略だったが、イランは制裁を乗り越えて露中などから兵器を買っており、軍産の戦略は失敗している。軍産は、こんな状態でイランと戦争したくない。軍産を敵視するトランプは、それを知った上でボルトンを戦争担当に据え、今にもイランと戦争しそうな演技を展開している。軍産は迷惑している。 (Bernie Sanders says war with Iran would be "many times worse than the Iraq War")

ボルトン側(?)は「イラン系の軍事勢力が、ペルシャ湾でよく使われる小型の木造帆船(ダウ船)にミサイルを積んで米軍艦などに接近して攻撃することを計画している」と米マスコミにリークし報道させた。これに対して米軍系の分析者(軍産)たちは「不安定なダウ船からミサイルを発射して命中させるのは至難の業だ。イラン側が過去にダウ船で攻撃を仕掛けてきたこともない。ダウ船攻撃の話は信憑性が低い」という趣旨のコメントを発している。軍産が、ボルトンたちの好戦的な濡れ衣攻撃をやめさせたがっているのが見て取れる。 (A widening gulf: US provides scant evidence to back up Iran threat claims)

米軍と一緒にいる英国軍はさらに露骨で、イラクシリア担当の司令官が5月15日に「イラン系の軍事勢力は、米英側に攻撃を仕掛けてきそうな兆候は何もない」と明言した。英国は、米国に引きずられてイランと戦争したくないと示唆している感じだ。 (‘No increased threat from Iran,’ says British general in remarks he refuses to restate)

サウジアラビアも、トランプと一緒にイランを敵視してきたが、よく見るとサウジもイランとの戦争を嫌がっている。駐サウジ米大使のアビザイドは5月14日に「フジャイラのタンカー攻撃事件は、捜査によって解決すべきだ。戦争で解決すべきでない」と表明した。この表明はおそらくサウジ王政(MbS)の意思を反映したものだ。 (U.S. Ambassador to Saudi Arabia Urges Response ‘Short of War’ to Gulf Tankers Attack)

イランの最高指導者ハメネイ自身「トランプの米国は好戦的な言動を仕掛けてくるだけだ。イランと戦争することはない」と言っている。16年前に米軍に濡れ衣で侵攻されたイラクも「今の状況が16年前と似ている部分もあるが、今回米国とイランが戦争することはない」と言っている。 (Ayatollah Khamenei rules out possibility of war with US despite tensions) (Despite Troubling Echoes of 2003, Iraqis Think U.S.-Iran War Is Unlikely)

トランプが好戦的なボルトンにイランと戦争する演技をさせていることに対し、米軍や、英サウジといった同盟国(これら全体が軍産)は、隠然と猛反対している観がある。軍産側からは「トランプは、ボルトンが本気でイランと戦争しようとするので不満をつのらせている。トランプはボルトンと対立し、間もなくボルトンを辞めさせるだろう」といった推測の指摘が軍産から出ている。これに対しトランプは「対立なんかない。側近たちの中にいろんな意見があるが、最終的に決めるのは私だ。簡単な構造だ」と言っている。 (Trump considering replacing John Bolton: Report) (‘No infighting whatsoever’ in White House over Iran, Trump claims)

トランプは大統領になる前「お前はクビだ!」と彼自身が言うのが決まり文句のテレビドラマを作っており、大統領になってからもどんどん側近のクビを切ってきた。トランプがボルトンを辞めさせたければ、いつでもクビを切れる。軍産が迷惑するような好戦的な演技をボルトンにやらせ、自分は離れたところにいるのがトランプの今のイラン(やベネズエラ)に対する戦略だ。 (Trump Slams "Fake News" NY Times 120K Troops To Iran Report) (Are we watching John Bolton's last stand?)

トランプはボルトンを使って、今にもイランと戦争しそうな演技をしているが、実際の戦争はしない。そして、その一方でトランプはこれまでに何度もイランに対し「交渉しよう。いつでも電話してこい」と言って、イラン側に自分の電話番号を教えている。イランは「交渉すると言いつつ、こちら側が飲めない条件を出してくるに違いない」と言って、トランプの交渉提案を本気にしていない。 (Why Iranians doubt the seriousness of Trump's latest offer of talks)

これらの全体と良く似たものを、以前に見たことがある。それは、トランプの北朝鮮との関係だ。トランプは以前、今にも北朝鮮と戦争しそうなそぶりを見せつつ軍産をビビらせ「戦争反対」と言わせた後、一転して米朝首脳会談を繰り返して金正恩と「ずっと友だち(ずっ友)」を宣言してしまい、挙句の果てに北朝鮮問題の解決を中国ロシア韓国に任せる流れを作ってきた。これと同様に、トランプはイランとの関係も、今回軍産をビビらせて「戦争反対」と言わせつつ、イランに「オレと交渉しろ」と言い続けている。 (◆多極化への寸止め続く北朝鮮問題) (トランプのイランと北朝鮮への戦略は同根)

とはいえ、トランプが今後イランと仲良くする可能性は低い。トランプがイランと仲良くしてしまうとイスラエルがトランプを支持できなくなり、トランプが来年の大統領選で再選できる可能性が減るからだ。そもそもトランプが金正恩と仲良くしたのは、そうやって米韓と北朝鮮の間の緊張を緩和させないと、韓国と北朝鮮が仲良くできず、北朝鮮問題を中韓露に押し付けられないからだ。トランプは、自分がイランと仲良くするのでなく、露中トルコなどの非米諸国がイラン問題の解決を主導するように仕向けたい。 (China 'firmly' opposes US sanctions on Iran: Foreign Ministry) (北朝鮮・イランと世界の多極化)

おりしも習近平の中国は、貿易戦争でトランプから攻撃され、共産党内の反米感情や、中国覇権の拡大要求が強まっている。この勢いに乗って中国が、米国覇権に対する従来の尊重を捨て、ロシアと協力して、これまで踏み込まなかった強さでイランの味方をするようになると、米国はイランに対して口で敵視するばかりで手出しできなくなる傾向が強まり、中露など非米諸国によるイラン問題解決主導の流れになる。 (China Calls For "People's War" Against The US, Vows To "Fight For A New World") (Will China play a role in lessening US pressure on Iran?)

トランプは、イラク戦争の濡れ衣劇を、イランを相手に再演している。それは、米国の従来の戦争戦略・好戦的な覇権戦略を動かしてきた、勝てる戦争しかやりたがらない軍産複合体(英イスラエル・サウジ)を無茶な戦争に追い込むことでビビらせて「戦争反対」に追いやり、米国自身はイラン問題から実質的に手を引いていき、イラン問題の解決を露中などに押し付けるためだ。 (Iranian nuclear program peaceful in nature: Russia’s Lavrov)

イラク戦争は、やるべきでない戦争をやってしまった「悲劇」だった。対照的に、今回のトランプのイランとの戦争劇は、やるべきでない戦争をやろうとしてやらないで終わり、軍産を巻き込んだ政治的なドタバタ劇にするトランプ流の隠れ多極主義の「喜劇」として演じられている。「歴史は繰り返す。最初は悲劇として、2回目は喜劇として」とマルクスが書いたそうだが、トランプはまさに「2回目の喜劇」を担当している。トランプは、ベネズエラに対しても同様のことをやっており、喜劇としての好戦的な歴史劇をあちこちで繰り返そうとしている。 (Strange things are afoot in the Strait of Hormuz)

 

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中国が、WTOにアメリカを提訴

 

 
2019年09月03日18時39分
  • 中国商務省中国商務省

中国商務省が、同国の製品に対するアメリカの関税の引き上げ措置に反応し、WTO世界貿易機関にアメリカを提訴する手続きをとっているとしました。

ロイター通信によりますと、中国商務省の声明では、中国製品に対するアメリカの新たな関税賦課は、去る6月の大阪における米中首脳の協議での合意に反するものだ、とされています。

この声明ではまた、「中国はアメリカに対し、WTOの規約の遵守を求める」としています。

WTOの規約によれば、アメリカと中国は60日以内に協議により対立を解消できない場合、WTOが対立解消のための委員会を設けるとされています。

アメリカのトランプ大統領は先週、「来月1日より、2500億ドル相当の中国製品に対する関税を、25%から30%に引き上げる」と表明しました。

中国はこれに先立ち、アメリカからの輸入品750億ドル分に関税を賦課しています。

 

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2019年09月03日20時13分
  • 米国の空母米国の空母

アメリカ海軍が、近くペルシャ湾への派遣が予定されていた同国の空母1隻に技術トラブルが生じたことを明らかにしました。

ファールス通信によりますと、アメリカ海軍は2日月曜、「この秋にペルシャ湾への配備が予定されていた空母ハリー・S・トルーマンが、配電部門における技術トラブルを起こした」と発表しています。

この空母は今年中に2回目の国外任務に向け、派遣されることになっていました。

これに先立ち、アラビア海で、アメリカ海軍の4機の戦闘機F18スーパーハーネットが、別の航空機が空母エイブラハム・リンカーンに駐機する際に起きた事故により損壊を受けました。

 

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フィンランド外相、イラン産原油輸出の可能性に言及

 

 
2019年09月04日03時42分
  • フィンランドのハービスト外相フィンランドのハービスト外相

フィンランドのハービスト外相が、「イランに対するフランスの提案には、イラン産原油の日量70万バレルの輸出が含まれる可能性がある」と語りました。

ハービスト外相は3日火曜、英紙フィナンシャルタイムズのインタビューで、「フランスのマクロン大統領が、イランのザリーフ外相をG7サミットの傍ら、会談に招待したことは非常に思い切った勇気ある措置だった」と述べました。

また、「フランスのこのイニシアチブは、ヨーロッパがイランに関して真剣に考えていることを示すものだ」と語りました。

さらに、「イランに対する提案は、150億ドルの融資ラインの供与や、日量70万バレルの原油輸出となる可能性がある」と説明しました。

これに先立ち、報道各社はフランスが米トランプ大統領を説得し、イラン産原油の一部輸入国を制裁の適用除外とするよう働きかけていると報じていました。

 

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2019年09月04日15時41分
  • アメリカでまたも銃による悲劇、少年が家族を射殺アメリカでまたも銃による悲劇、少年が家族を射殺

アメリカ・アラバマ州で、14歳の少年が家族5人を射殺しました。

ロイター通信によりますと、3日火曜、米アラバマ州ライムストーン郡の保安官事務所は、同郡エルクモントで2日月曜夜、14歳の少年が自宅で家族5人を射殺したと発表しました。

逮捕された少年は取調べに対し、家族5人を射殺したことを自供しました。

この少年がどこで銃を入手したのかは分かっていません。

全米各地では毎年数千人が銃により死傷していますが、米政府も議会も武器ロビーの影響から国内での銃規制措置を講じないままです。

 

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中国が、アメリカによる内政干渉に不快感

 

 
2019年09月04日20時51分
  • 中国外務省の報道官中国外務省の報道官

中国外務省の報道官が、アメリカに対し、中国内政への干渉を控えるよう警告しました。

イルナー通信によりますと、中国外務省の耿爽報道官は4日水曜、中国・北京での記者会見で、米ポンペオ国務長官による新疆ウイグル自治区を初め中国の内政問題への干渉を非難し、米国に対しこの種の問題への干渉に終止符を打つよう求めました。

さらに耿爽報道官は、中国北西部の新疆ウイグル自治区は完全に中国の内政にかかわる問題であり、諸外国はこの問題に干渉する権利を持たないと述べました。

 

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2019年09月05日03時52分
  • 中国とアメリカの国旗中国とアメリカの国旗

アメリカの新聞ニューヨークタイムズが、中国との貿易戦争でアメリカ政府が損害を蒙っていることを明らかにしました。

ニューヨークタイムズ紙は4日水曜、報告の中で、「アメリカのトランプ大統領の主張とは裏腹に、彼が中国との間に引き起こした貿易戦争は、アメリカの企業や工場にマイナスの影響を及ぼしている」と報じています。

また、「世界に対するアメリカの貿易戦争により、アメリカでは投資に対する生産業者の信用が失われ、生産業は事実上凋落している」としました。

さらに、「最新のデータによれば、アメリカと中国の貿易戦争は、アメリカにも少なからず影響を及ぼしており、トランプ大統領が保護しようとしているアメリカの工場が弊害を受けている」と報じています。

トランプ大統領は最近、「中国が、アメリカの提示する通商条件に同意しなければ、その生産がなくなるだろう」と語りました。

また、「アメリカ企業は、関税賦課への反応として中国から撤退しつつある」と述べています。

 

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関連項目

 

トランプ大統領

米大統領が対中貿易戦争で依然として大言壮語

 

 

 

 

 

 
2019年09月04日18時29分
  • 中国とイギリスの国旗中国とイギリスの国旗

中国にある香港連絡局の報道官が、香港問題に干渉しないようイギリスに警告しました。

イルナー通信によりますと、香港連絡局の報道官は4日水曜、中国・北京でのメディアのインタビューで、「香港問題は中国の内政問題であり、外国が干渉すべきではない」と表明しました。

同時に香港の行政機関に対し、香港での抗議デモの終結や暴力の停止に向けて、あらゆる可能性を駆使するよう求めました。

また、「抗議者による一部の暴力行為はまるでテロだ」と強く非難しました。

香港ではこの数ヶ月、中国本土への容疑者の引渡しを可能にする逃亡犯条例の改正案をめぐり、数千人規模の抗議デモが実施されています。

アメリカとイギリスは、抗議者側を支援し、香港での抗議行動を助長しています。

およそ3ヶ月前にこの抗議デモが広まって以来、香港では1117人近くが逮捕されています。

香港は1842~1997年にイギリスの植民地支配下にありましたが、1997年に中国に返還されました。

 

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置き去りにされたと感じたシリア「反政府派」「裏切り者」エルドアンの絵を燃やす

2019年9月 5日 (木)

置き去りにされたと感じたシリア「反政府派」「裏切り者」エルドアンの絵を燃やす

2019年8月30日
Moon of Alabama

 2011年以来トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領は、シリアの「反政府ゲリラ」とイスラム至上主義ジハード戦士をシリア政府に対する代理軍隊として利用してきた。これらの勢力はトルコ国境のそばで今主としてイドリブ県に閉じ込められている。シリア軍は最近ジハード戦士に対して進歩を成し遂げた。トルコは彼らの支援に来なかった。彼らの抵抗が徒労であるのを、彼らは理解し始めた。シリアは県全体を奪還するだろうし、抵抗する人々は殲滅されるだろう。「反政府派」は、彼らの罰が来る、彼らが今トルコに逃げることを望むことを恐れる。不幸にもトルコは彼らを望んでいない。


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 今日、約千人の「反政府派」がアル・バブ国境検問所を通って、トルコに入国しようとした。ビデオが逃がれる人々の自動車の長い列を示している。先端の数百人の男性がトルコ領土に入るのに成功した。彼らは放水銃トラック、催涙ガス、最終的に銃撃でトルコ軍軍隊に押し返された。少なくとも二人の「反政府派」が殺された。

 人々は「裏切り者、裏切り者、裏切り者、トルコ軍は裏切り者だ」と叫んだ。彼らは祈りの言葉アッラーフ・アクバルと叫びながら、エルドアンの絵を燃やした。


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 対シリア戦争の初めから「反政府派」は、トルコ軍が彼らの支援に来るか、少なくとも彼らを防衛することを期待していた。ロシアのプーチン大統領とエルドアンとの先週の会談が、最終的に、彼らに、決してそうならないを確信させた。ロシアがシリア側について参戦した時から、プーチンはエルドアンを、敵から、飼いならされた犬へと変えるのに成功した。エルドアンはロシアが彼に売る戦闘機を確認するためモスクワを訪問し、プーチンは彼にアイスクリームをおごった。


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 大いに抵抗した後、エルドアンは最終的にイドリブを断念した。ロシアはイドリブでの停戦に合意していたが、エルドアンは合意中の彼の約束を実現し損ねたのだ。イドリブのジハード戦士は、エルドアンに補給され、ロシア軍とシリアの民間人を攻撃し続けた。シリアとロシアの軍は、激しい良く目標を定めた空爆作戦で、益々多くの土地を奪還して反撃した。11日前、トルコは、ハーン・シャイフーンが奪還されるのを阻止するため軍隊の車列を送り、シリア軍を止める最後の取り組みをした。軍隊車列は爆撃され、ハーン・シャイフーンは奪還された。

 それがエルドアンが諦めた瞬間だった。将官五人、うち二人がイドリブのトルコ監視所の責任を負っているのだが、退役を希望したのだ。エルドアンはモスクワを訪問し、何らかの合意をした。シリアはイドリブを奪還するだろうし、エルドアンはアイスクリームを手に入れた。

 長年、シリアと戦った後、イドリブから去りたいと望む人々の圧力は終わるまい。トルコ経済は落ち込んでいる。人々は難民を警戒するようになった。より多くの人々を入れても、エルドアンが得るものは皆無だ。

シリア軍の作戦は続く。次のより大きな標的は、戦前80,000人の住民がいたマアッラト・アン=ヌウマーンだろう。彼らの大半にはシリア政府を恐れる理由はない。だが多くの人々が戦いから逃げたいと願うだろう。それぞれの攻撃が更に多くの人々を去るよう駆り立てるだろう。

 国境とトルコ国内で更に多くの出来事があるだろう。「反政府ゲリラ」とジハード戦士は、彼らをシリアの政府と戦うよう駆り立てておいて、彼らが勝利し損なうと、彼らを置き去りにした、トルコの裏切り者に復讐したいと願うだろう。イドリブのトルコ監視所の兵士たちは今ジハード戦士の人質だ。彼らは、脱出路を勝ち取るにはロシア爆撃機の支援を必要とするか、シリア軍が彼らの周囲の地域を解放するまで、じっと座っているしかあるまい。

記事原文のurl:https://www.moonofalabama.org/2019/08/syrian-rebels-feel-left-behind-burn-traitor-erdogans-picture.html

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