呪いの時代/ 荒ぶる神

2012-11-11 10:30:39 | Weblog

   

「身の丈に合わない自尊感情を持ち、癒されない全能感に苦しんでいる人間は創造的な仕事を嫌い、それよりは何かを破壊する生き方を選択する」

「創造すると、自分がどの程度の人間であるかが、あからさまに暴露されてしまう。だから全能感を優先的に求めるもの、自分に『力がある』ことを誇示したがるものは、何も作品を示さず、他人の創り出したものに無慈悲な批評を下してゆく生き方を選ぶようになる。
自分の正味の実力に自信がない人間ほど攻撃的になり、その批評は残忍なものになるのはそのせいです」

「呪いを解除する方法は祝福しかありません。自分の弱さや愚かさ邪悪さを含めて、自分を受け入れ、自分を抱きしめ、自分を愛すること。
 
多くの人が誤解していることですが、僕たちの時代にこれほど利己的で攻撃的なふるまいが増えたのは、人々が『自分をあまりに愛している』からではありません。逆です。自分を愛するということがどういうことかを忘れてしまったせいです。
 
僕たちはまず『自分を愛する』というのがどういうことかを思い出すところからもう一度始めるしかないと思います」

「原子力は荒ぶる神である。  ー 中略 ー
 そもそも設営の時に、伝来の古法に従って呪鎮の儀を執り行うべきだった、と私は思う。盛土をして原子炉を土中に置くのである。塚に草が茂り、桜が咲き、鳥がさえずるような場の下に原発を安置する。
 ー中略ー
日本人はこういうやり方をするとき一番真剣になるからである。それが私たちのDNAの中に根を下ろした『恐るべきもの』との折り合いの仕方だからである」

 
 ヨーロッパやアメリカの原発関係者は、福島原発の施設の老朽ぶりや、コストの安さ、安全設備の手抜きに心底驚愕したのではないか。どうして原子力のような危険なものを、こんなふうに『雑に』扱ったのだろう。
 そこまでしてコストをカットしたかったのか?
 日本人は命より金が大事なのか?」

「リスクを低く見積もれば、原発ほどクリーンなエネルギーはない。
 だが、いったんリスク・コントロールに失敗すれば、悪くすると国土の一部が半永久的に『居住不能』になる。故郷を失った人々に対する補償と、その国土が生み出すはずだった国富を計算した場合に、
『火力よりも原発の方がこれだけ安いです』とソロバンを弾いて見せた金額など、何十年分を積み上げても
『焼け石に水』である」

「どのような政治的な正しさとも、費用対効果とも無関係に、純粋に専門的な見地から、国土の安全と国民の幸福だけを配慮する人々によって管理運営されなければならない。
 私たちが今回の事故について一連の報道から学んだのは、そういう専門家が、日本の原子力行政の中枢にいなかった、ということである。
原発の専門家です、と名乗ってメディアに登場してきた人々の殆どは『原発が止まると失業する人たち』だった」

「事故が起こらなければ儲けの多いビジネスに従事している人々は必ずや事故が起こる可能性を低く見積もるようになる。最初は『事故が起こりませんように』という素朴な願望から出発するのだが、それがやがて『事故は起こらない』という信憑に変質する。人間というものはそういうものである。だから、そのような人間の心理的弱さを勘定に入れて、制度は設計されなければならない」