シーズン前「ACLとリーグの二冠」という目標を掲げながら、ここ最近は統制を失いリーグ戦では残留争いに巻き込まれんとしている浦和。
「良くて引き分け、そうでなければ負け」という試合を繰り返し、気付けば6戦勝ち無し。
そんな状況にもかかわらず鹿島とのルヴァンカップでの戦いでは、ワントップとして唯一無二の存在である興梠を無理使いした挙句負傷退場させてしまう等、本当に危機感を抱いているのかという振る舞いが目立っています。
その興梠ですが、なんとこの日もスタメン出場。
本人は気丈にその役目に耐えつつ結果を残していますが、彼が不在になってしまった際はどうするのか。
それをテストする場も殆ど残っておらず(強いて挙げれば天皇杯4回戦か)、ズルズルと終盤戦まで来てしまった挙句チーム成績も見ての通り。
まさに踏んだり蹴ったりな浦和の現状ですが、この試合前半は悪くなく。
といっても攻撃面では相変わらずビルドアップに四苦八苦し、ウイングバックの関根・汰木の突破力を軸にしたくても、右の関根は浦和復帰後興梠同様に頼りにされっぱなしで疲労困憊気味。
左の汰木はむしろバランサーとしての働きに追われ、長所を発揮する場面は殆どありませんでした。
それでもリアクションサッカーに移行しているセレッソ相手なので、目に見えてペースを握られるという事無く、スコアレスのまま時間を浪費していきます。
前半の前半は、浦和の攻撃を遮断し続けるセレッソが優位に立つものの、肝心のシュートは撃てず。
両チーム通じての初シュートは前半23分まで進んでようやく(浦和・長澤のミドル)、という我慢比べの展開に。
このシュートを境に、セレッソの守備に慣れたのか浦和も攻撃に出れるようになります。
といっても相手ゴールを脅かす場面は限りなく少なく(32分マテイ・ヨニッチのあわやオウンゴールというバックパスミスぐらいか)、前からのプレスでの守備による、相手にロングキックを蹴らせるといった守備面が光った前半。
それ故時間が経ち対応されつつあったのか、前半終わり際はセレッソの攻勢に。
しかし浦和陣内でサイドチェンジで振り回すも、シュートまでは持っていけずに結局0-0のまま後半へ。
シーズン前は浦和と対照的な状況だったのがセレッソ。
監督交代・主力選手の離脱(かくいう杉本を獲得したのが浦和)という目に見える問題を抱え込み、前評判はお世辞にも高くありませんでした。
2017年にチームに初タイトル(ルヴァン杯・天皇杯)を齎した監督が尹晶煥(ユンジョンファン)氏でしたが、その強化方針はトレーニングからの徹底した走り込み。
そのため良く他者と衝突しがちだったのでしょう、鳥栖の監督時代は、チームがリーグ戦首位に立ったにも拘らずシーズン途中で退任という憂き目に。
セレッソでも功労者と言ってもいい(選手時代も所属してましたし)実績を残したにも拘らず、僅か2年でチームを去るというのは寂しい以外に言葉が見つからず。その後タイのクラブチーム監督では早期解任される事態になりましたし
そんな状況でのセレッソの新監督が、ミゲル・アンヘル・ロティーナ氏。
J2・ヴェルディからの「個人昇格」という形となり、2年連続でヴェルディを昇格プレーオフに進出させた実績が評価されての招聘なのは確実でしょう。
序盤こそもたついたセレッソですが徐々に浮上、目下3連勝中で上位を争う位置でリーグ終盤を迎えているという具合に、ロティーナ氏のサッカーが浸透しつつあるのが成績からも伺えます。
リアクションサッカー・相手の長所を消すサッカーに務め、ロースコアの試合をモノにしていくスタイルを貫く今季。
ヴェルディでは、クラブの伝統である「パスサッカー」「技で魅せるサッカー」とのギャップに苦労していた節が見受けられたので、恐らく現在が彼の本来のサッカーなのでしょう。
そんなセレッソ、現在の浦和に消すだけの長所があるのかという疑問符が付きますが、守備から入るサッカーは健在。
前半は何度も浦和のサイドチェンジのパスをインターセプトする場面が見られ、浦和の攻撃に「手詰まり感」を与えるのには十分でした。
そして迎えた後半、攻撃重視の浦和のWBという穴を突いて早々に先制ゴールを挙げます。
後半2分、左サイドバックの丸橋がドリブルで突破、長澤・関根と浦和選手を次々にかわして一気にアタッキングサードまで進入。
そしてグラウンダーでクロスを入れると、エリア内に居た水沼が戻って受けるふりをしてスルー、後方から右SBの松田陸(福岡・松田力の兄)が走り込んできてダイレクトでシュート。
後半最初のチャンス、それもSBからSBへのパスという意外な形をしっかりとモノにし先制に成功します。
ここからは引いて様子を見るいつものスタイルへと移行、必然的に浦和がボールを握る時間となります。
しかしセレッソにとって誤算だったのは、ここで浦和に良い攻撃の形を作られた事でしょうか。
左サイド中心の攻撃を仕掛ける浦和、何度も武藤・汰木がカットインからエリアに迫る場面を見せると、後半10分。
今度は右サイドから関根・長澤・青木がパス交換ののち、長澤がクロスを上げファーサイドで興梠がヘッドで落とし、汰木に渡る絶好のチャンスを作りましたがシュートは撃てず。
この直後に汰木→荻原への交代を行った浦和、これが効きました。
15分中盤で長澤がトラップでレアンドロ・デサバトをかわした後左にパス、受けた荻原はドリブルでエリア内左へ進入した後、果敢にシュート。
GKキムジンヒョンを抜いたものの右ポストを直撃、しかし興梠が詰めて事無きを得てゴール。
荻原に0.5点ぐらいあげたい得点が生まれ、同点に追い付いた浦和。
その直後からも荻原・関根の両WBを軸に怒涛のサイド攻撃。
後半16~18分の間に、実に5度もセレッソ陣内で攻め込む機会があり、クロス・カットインを仕掛けましたが肝心のシュートは撃てず。
逆に荻原中心の攻撃を繰り返す事で、ボランチへの守備負担が相当なものに。(それ以前から、という感じもしますが)
後半25分、右CB・岩波のロングパスに荻原が受けにいくも跳ね返され、そのセカンドボールを拾った武藤から受けた荻原がシュート。
これは武藤に当たってゴールならず、その直後のセレッソの攻撃、中盤での柿谷のドリブルを阿部が引っ張って止めた事で反則・警告を受ける事に。
このプレーの直後、セレッソは柿谷→田中へと交代。
以降浦和のサイド攻撃は次第に尻すぼみとなり、29分にはCB鈴木大輔ロングパス→興梠落とし→青木ドリブルという半ば強引な攻撃。
武藤がゴール前でキープするもクリアされ、その後関根のクロスも跳ね返された後、拾った阿部のパスを受けた青木がシュート。
これがGKキムジンヒョンにキャッチされると以降は手詰まり状態に。
それを受けたのか32分、長澤→杉本へと交代。
何としても2点目を、という采配を見せましたが結果的には裏目に出てしまいます。
34分にも関根が田中にチャージして反則・警告を貰った浦和。
その直接フリーキックこそ、丸橋の直接シュートは外れ事無きを得ましたが、最悪の事態が37分に起こります。
奥埜のポストプレイを受けた鈴木孝司(ブルーノ・メンデスと交代で出場)が受け、仕掛けにいった所を対面の阿部が引っ掛けてしまい反則・警告となり、2枚目で阿部が退場に。
これで勝ち越し点どころでは無くなった浦和ですが、混乱・立て直しを図らんとする時間はあまりにも短かった。
直後のフリーキックの合間に守備を固めるべく興梠→柴戸への交代が認められましたが、残念な事にこの方策でも収拾できず。
39分、デサバト→松田→水沼というパスの流れで柴戸が剥がされ、そのまま水沼→鈴木孝→松田と渡りがら空きの中央へと持っていかれ、田中へとパス。
田中は豪快にミドルシュートを放ち、ゴール左上隅へとぶち込み勝ち越しゴール。
その後は守りを固めに入るセレッソに対し、一人少なくなった状態ではどうしようも無く。
可能性の感じられない、杉本への放り込みを仕掛け続けるだけの時間となったアディショナルタイム。
そのまま1-2で試合終了の笛を聞く事となりました。
以前は「優勝争いに加わったシーズンの翌年はJ2降格する」などという有り難くないジンクスもあったセレッソですが、ここ2年は一桁順位を継続しており、そして今季も上位をキープ。
ようやく地盤が出来上がった3年間という印象で、今後Jリーグにどんな勢力図を描いていくのか楽しみです。