※前回の大分の記事はこちら(9節・徳島戦、1-0)
※前回の熊本の記事はこちら(9節・ヴェルディ戦、3-2)
<前節からの変更>
大分=右サイドバックが伊東幸敏→上夷(今季初スタメン)・ボランチの片割れが弓場→小林裕紀・右サイドハーフが梅崎→中川と3人変更。初スタメンの上夷をはじめ、控えには野村が3試合ぶり、羽田が10試合ぶりのベンチ入りと微調整。
熊本=2人変更し、一つはセンターフォワードを土信田→高橋へとそのまま入れ替え。もう一つは右ウイングバックで阿部がベンチスタートとなり、左から三島が回り、空いた左WBに田辺が入る。
5連戦を戦い抜いたうえで、特に大きな破綻も無く、メンバーもさほど変わらなかった熊本。
それに対して大分はルヴァン杯との絡みもあった影響か、連戦の最中に大きく序列が変わったようであり。
13節(千葉戦・3-0)以降、エドゥアルド・ネットをはじめ伊佐・高畑・弓場・中川といったメンバーがレギュラーの大部分を占めるようになり。
サブメンバーもベテラン・梅崎が復帰(前節スタメン)するなど、以前から全体的に大きく変わった印象を受けたこの日。
外見的に最も目を惹くのは中川のサイズ(158センチ)でしょうが、この日は相手が特異なシステムを有する熊本という事もあり、戦術的にもこの中川を中心に一際目立つ体制を採っていた大分。
惜しむらくは、それが機能しなかった事でしょうか。
熊本のキックオフで始まると、杉山の裏へのロングパスでいきなり好機を作り、大分・ペレイラとの競り合いに勝った高橋が右サイド奥からクロス。
慌てて守備体系を敷きにいく大分を尻目に、ファーサイドに上がったボールを田辺がフリーで左足で合わせ、シュートをネットに突き刺し。
開始16秒という電光石火の先制点が生まれました。
いきなりビハインドとなってしまった大分ですが、その直後に熊本サイドもGK佐藤のキックミスでコーナーキックを与えてしまい。
双方浮足立ったように見えたのも、急にスコアが動いた影響でしょうか。
この大分の左CK、クロスの跳ね返りを高畑がダイレクトでエリア手前からシュートしますが枠を捉えられず。
大分が以前とはどこか違うような感じを受けたのが前半9分で、GK高木のフィードに中川が落下点に入ったものの、その地点は左サイド寄り。
右SHの選手が最初から随分と逆に張り出したものだ、と思わされた場面でしたが、その後も中川は中央~左サイドでのプレーが目立ち。
どうやら左SHが本来ボランチの下田という事で、3ボランチのようなシステムで、余った(?)中川がトップ下っぽく振る舞っているようでした。(つまりは4-3-1-2の形か)
これにより左SBの高畑が高い位置を取り、かつボランチ3人の可変で熊本のプレッシングをかわそうという意図が伺え。
13分にはネットのドリブルから左へ展開、受けた高畑の手前からのクロスを呉屋が合わせボレーシュート、ブロックされたボールをさらに呉屋が追撃するも伊佐に当たってしまい右へと逸れ。
しかし左サイドに偏った攻撃に終始し、特に右SBの上夷は前半全く目立たず、その可変するシステムに戸惑ってるようにも映りました。
大分が同点に追い付かんと攻撃権を支配していたところ、24分辺りから熊本は、ウイングの左右を入れ替えるというお馴染みの変更を敢行。
その後の27分に左サイドで杉山が、右サイドで坂本がパスワークに絡み、最後は中央から杉山がシュート(枠外)という好機を作った熊本。
しかしこの直後に再度入れ替えが行われ、杉山が右・坂本が左と元の位置に落ち着く事となりました。
それでも可変がイレギュラーに映る大分との違いでしょうか。
特に失速する事無く、逆にプレッシングで大分のビルドアップを阻むシーンが増えていく熊本。
そして29分、右サイドでの三島のボール奪取から長くパスを繋ぎ、左サイドで田辺のスルーパスに走り込んだ坂本からグラウンダーのクロス。
これをニアサイドに走り込んだ杉山が合わせてゴールゲットし、前半のうちに追加点を奪いました。
流れはすっかり熊本のものとなり、全く反撃ムードを作れない大分。
その後も熊本が敵陣でパスワークを展開するシーンが続く、目も当てられない状態を強いられます。
何とか点差を縮めたい大分は38分、GK高木からの繋ぎでサイドを振りながら前進、左サイドで高畑のスルーパスを受けた呉屋がエリア内左奥からマイナスのクロス。
ニアサイドで中川がシュートにいくも、ディフェンスに遭いミート出来ず終わり。
ようやく細かいビルドアップでの攻撃を形に出来たものの好循環は得れず、結局0-2のまま前半を終えます。
特殊な布陣も、それが逆に足枷となっていた感のあった前半の大分。
それを改めるべくハーフタイムに2枚替え、ネット・中川→野村・藤本へと交代します。
藤本が左SH・野村が右SHに入り、下田・小林裕のドイスボランチ、というのが通常考えられるシステム。
しかしオーソドックスな変化では足りないと感じていたでしょうか。
採ったのは3トップシステムで、右WGに伊佐・左WGに藤本が入るという、明らかに攻撃的な布陣で後半に臨んだ大分。
それでもこの4-1-2-3の布陣は大分にとって開幕直後に経験したものであり、それが前半との大きな違い。
その効果は劇的で、前半とは打って変わって熊本に攻撃させずに一方的な展開を得る事に成功します。
後半2分、GK佐藤のフィードを敵陣でカットし、野村がエリア内右へと切り込んで中央へ横パス。
藤本のタッチを経て呉屋がシュートを放つも、熊本・イヨハ理ヘンリーのブロックに阻まれ惜しくもゴールならず。
その後も押し込み続ける大分、相変わらずその内容は左サイドに偏ってはいたものの、高畑に加えて藤本の突破力も強力な武器となって襲い掛かり。
熊本は必死のディフェンスを見せるも、脱出困難な状況を強いられます。
そんな状況故にCKの数も膨れ上がり、そこでもゴールを脅かす大分。
9分の右CK、前半と同様にクリアボールを高畑がシュートというパターンで、エリア内の呉屋に当たった所をさらに下田がシュートするもGK佐藤がキャッチ。
17分にも右CKから、クロスが2度クリアされたのを経て野村がエリア内右へと切り込み、シュート気味に中央へ送るも呉屋には合わずゴール左へと外れ。
一方的に攻撃を浴びる熊本。(12分に竹本→伊東俊へと交代)
18分にプレスを嵌めて敵陣深めで杉山が奪ったものの、拾った坂本はシュートまでいけず。
これが後半初の攻撃機会という惨状であり、何とか一息つきリードを活かす状態に持っていきたい展開に。
しかしスローインを得ても、投げ入れたボールをダイレクトでカットされる(22分)など、依然としてマイボールの時間を作れない熊本。
大分は呉屋をターゲットにしたクロスを入れ続けるも、熊本ディフェンスの粘りもあり跳ね返され。
24分に熊本は再度ベンチが動き、田辺・杉山→阿部・粟飯原へと交代。(三島が右WB→左WBへシフト)
直後の25分、クリアボールから坂本がラフに裏を突くパスを高橋が収めようやく時間を作る事に成功すると、キープする坂本が大分・ペレイラに倒されて反則。
得た左サイドからのフリーキックで、キッカー河原のクロスの跳ね返りを伊東俊がダイレクトでシュート。
中央やや右寄りから放たれたこのボールを、高橋がコースを変えたものの惜しくもゴール右へと外れ。
止めを刺す3点目は奪えず、再び大分の反撃が始まります。
大分は27分に伊佐・呉屋→梅崎・サムエルへと2枚替え。
その後はサムエルにロングボールを当てる手法を交え、半ば強引に1点を奪いに行く攻撃も見せていきます。(31分には上夷→羽田に交代)
その執念が実ったのが35分のセットプレーで、左サイドでポストプレイの体勢に入る藤本が熊本・黒木に倒された事で得たFK。
キッカー野村のクロスはクリアされるも右から梅崎がダイレクトで繋ぎ(シュートミスっぽいが)、中央へ入ったボールをサムエルがシュート。
これがコース上に居た藤本に当たってゴール右へと転がり、混戦の状況から泥臭く1点を返した大分。
その後も守りを固める熊本に対し、アタッキングサードでの狭い局面で繋ぎ何とか崩さんとする大分。
しかしそれを完遂するのは容易では無く。
ようやく決定機が到来したのが41分で、GK高木ロングフィード→サムエル落としから熊本ゴールに近い所で攻撃開始となり、エリア内右を突いた藤本がクロス。
ファーサイドで高畑がヘディングシュートを放つも菅田が同じくヘッドでブロック、跳ね返りを尚も高畑がヘッドで繋ぎ、エリア内にこぼれた所をサムエルがシュート(GK佐藤キャッチ)と攻め立てるも打ち破れず。
42分に熊本は再び大分・ペレイラの反則で、息継ぎをするようにFKの好機。
今度は中央やや右寄りという位置で、キッカー粟飯原は直接シュートするも、壁の後ろで大分・梅崎がブロックで防ぎゴールならず。(直前に熊本は三島→酒井へと交代)
反撃に移る大分、44分には藤本が中央からミドルシュートを放ち、熊本の守備を崩さんとしますがゴール左へと外れ。
時間も押し迫り、ペレイラが前線に上がるパワープレイ体制を採り、全てを賭ける事となります。
その最中に熊本・伊東俊に反則を受けた野村が、報復のように詰め寄った事で警告を貰う等、焦りを隠せない大分。
アディショナルタイムに突入、サムエル・ペレイラの2枚へと当てるボールを送り続けるも、徐々に精度を欠いてきた大分の攻撃。
しかし終盤、熊本のクリアミスを梅崎がエリア内右へ繋ぎ、ペレイラがGK佐藤の跳び出しを受けつつもボールキープ。
そして戻しから梅崎がシュートを放つも、熊本も2人掛かり(イヨハ・酒井)でのブロックでこれを防ぎ。
最後の大分の右CKではGK高木が前線に上がるなど、まさに双方必死という絵図となり。
そしてキッカー野村のクロスからペレイラのヘディングシュートが放たれるも、枠を捉えられず終わり。
熊本にとってはまさに凌ぎ切ったという後半の展開で、その後ゴールキックを経て試合終了の時を迎え。
破った大分を抜いて順位も上げ(8位)、昇格争いも視野に入って来る勝ち点3を挙げました。