ACL決勝の地へと旅立った浦和に対し、その前の地獄の連戦で立ちはだかったクラブ同士の対戦。
両者ともしっかり浦和に勝利し、この日リーグ優勝を争うための激突となりました。
川崎の方は、その浦和戦でブレーキになっていた助っ人2人(レアンドロ・ダミアン、マギーニョ)を外し、途中から機能した右サイドバック・守田という布陣を継続。
鹿島も右SBを入れ替え、大ベテラン・内田が2試合ぶりのスタメン。
キックオフ。
優勝に向けての大事な一戦なためボディコンタクトも激しめ。
鹿島は普段からそれがチームカラーな一面もあるのですが、川崎側も立ち上がりからガンガン行きます。
開始5分で3度反則、そのうち2度が鹿島中盤のキーマンであるレオ・シルバに対してのもので、鹿島に対し一歩も退かない姿勢を採った(であろう)川崎。
そんな球際の激しさが目立ったためか、お互い決定機を作れずに時間を消費していきます。
ルヴァンカップ準決勝での両クラブの激突は、川崎側が一方的にペースを掴む展開。
それも2戦ともその様相は変わらずでありましたが、この日はそんな絵を描く事は無く。
その一因が、あの頃(10/9・10/13)とは違い鹿島がベストメンバーに近い布陣で臨めた事でしょうか。
2017年、後半戦は終始首位をキープしながら、最後の最後で川崎に逆転され優勝を攫われてしまった鹿島。
その悪い流れを引きずるように翌2018年は絶不調の滑り出しで、シーズン途中のジーコ氏再雇用に繋がり、後半盛り返しを見せたという一年。
このジーコ氏の活用は、Jリーグ創成期~代表監督就任(2002年)間にも行われていた事であり、ある意味鹿島の原点回帰でもあります。(ジーコ氏現役時代も、欠場時には現在のような俯瞰からのやりとりが行われていたらしい)
決して監督・大岩剛氏以下首脳陣の力不足で……なんて事は思いませんが、ジーコ氏の存在が大きなものだったのは確かでしょう。
それはともかくとして、前年の不振は故障者続出で中々メンバーが揃わなかったのも一因であり、厄介な事に今季も故障者の多さは継続されてしまっているようです。
その故障の内容も、試合中でのアクシデントのものだけでは無く、試合以外での故障発生も目立っていました。
普段のトレーニングの激しさが考えられますが、それが強豪・鹿島の要因にもなっているというポジティブな解釈も出来なくもありません。
さて、レオ・シルバ(27節・札幌戦で負傷)やセルジーニョ(28節・セレッソ戦で負傷)が戻って来た鹿島に対し、応戦体制を見せた川崎。
普段通りにボール支配を高めての攻撃に掛かろうとしますが、強度が戻りつつある鹿島に対し、ルヴァンカップのようにはいかず苦戦します。
攻め込んでもシュートで終われないシーンの連続で、これが流れの悪さを呼び込んでしまったか、前半も後半になると次第に鹿島のペースに。
本職はセンターバックである町田が、現状左SBに入っている鹿島。
その町田が攻撃に絡めるようになってきたのが前半30分以降で、分厚い攻撃を敢行していきます。
35分、ドリブルで左サイドを駆け上がり奥に進入、クロスを上げた町田。
クリアされたボールはセルジーニョが拾い、今度は右に展開し内田のクロスが上がり、収めた白崎がシュートします。(川崎・谷口がブロック)
鹿島の圧力を受ける形となった川崎、その後は自陣でビルドアップを立て続けにミス。
38分、エリアすぐ手前でパスミスを拾った伊藤がそのままシュートするも、ゴール右に外してしまい命拾い。
その直後の39分にも、守田のトラップミスから白崎→伊藤→レオ・シルバと繋がれ、左サイドからのレオ・シルバのグラウンダーのクロスを伊藤がシュート。(川崎・大島がブロック)
そして44分、鹿島のフリーキックからの二次攻撃でレオ・シルバが左サイドからクロス。
これに町田がヘディングにいった所、手前で山村の頭に当たってコースが変わり、ボールはゴールポストを直撃してヒヤリとします。(その後GK新井キャッチ)
終盤は鹿島が完全に押せ押せの展開でしたが、得点は生まれず前半終了。
そして仕切り直しの後半が始まるも、流れはそのまま変わらず鹿島の攻勢が続きます。
良い時の川崎とは違いポゼッションを高めての……という攻撃ではありませんが、セカンドボールを拾っての分厚い攻撃を仕掛け、相手にターンを全く渡さず。
決定的なチャンスは後半6分、中盤から白崎がレオ・シルバとのワンツーの後、ダイレクトでスルーパス。
エリア内左で土居が受け、切り返しから中央のセルジーニョに託すパス、セルジーニョは合わせてゴールに流し込みます。
完全にゴールかと思われましたが、ライン際で車屋が跳ね返すファインプレーで先制ならず。
その後も鹿島の攻勢は揺るぎ無く。
11分、土居の右への展開からレオ・シルバがグラウンダーでクロスを上げ、ファーサイドで永木がシュート。(枠外)
13分はカウンター攻撃、味方のクリアを土居が収めた後、パスを受けたセルジーニョがドリブル突破。
一旦阻まれるも左サイドで伊藤が拾って繋ぎ、パスを受けた白崎がエリア内に進入もシュートは撃てず。
15分は中盤右サイドでのパス回しの後、中央で受けた伊藤がスルーパス。
土居が裏を取るものの、GK新井が飛び出してクリア。
数多好機を演出する鹿島でしたが、彼らを落とし穴へと誘う道筋も構成されつつありました。
それは「決める時に決められず」という敗戦への道。
16分、自陣右サイドでレオ・シルバが家長にチャージしてしまいフリーキックを与えてしまうと、これが失点に直結してしまう事態に。
キッカー家長(11分に脇坂が長谷川と交代で退いたため)のクロスがファーサイドに上がると、走り込んだ山村が綺麗にフリーとなり、叩き付けるヘディングシュートでゴールネットへ。
完全に虚を突かれた鹿島ディフェンス、痛恨の先制点を与えてしまいました。
同点に追い付くべくその後も攻撃を仕掛ける鹿島。
そんな焦りが見え始める相手(失点直後の18分にブエノが反則で警告を貰う)に対し、川崎はカウンター攻撃を展開します。
20分、自陣から家長縦パス→小林ポストプレイ→阿部→小林浮き球パス→田中サイドチェンジ→長谷川と、流れるように敵陣に進入。
長谷川のスルーパスで車屋が抜け出し、彼のグラウンダーのクロスを中央でシュートしたのは家長でしたが、ボールは大きく枠を外します。
そして26分、今度は鹿島コーナーキックからのカウンターで、拾った阿部がキープした後守田が裏へロングパス。
トラップした小林、そのままエリア手前からシュートを放つと、ボールはGKクォンスンテを抜いたものの左ゴールポストに当たります。
しかしこれを長谷川が詰めにいき、クォンスンテをかわしつつ押し込んでゴール。
川崎にとって決して良くなかった流れの中で掴んだ2点のリード。
その後鹿島は内田→相馬へと交代(28分、相馬は左サイドハーフへ)、永木が右SB・白崎がボランチにシフトと配置も弄って勝負を賭けます。
しかし鹿島が前掛かりになればなる程、目立ったのは川崎の攻撃機会。
34分、長谷川がボールを奪った後、ようやくと言ってもいい本来の持ち味であるボールポゼッション重視の攻撃を魅せます。
左サイドを長谷川がドリブルでボールを運び中央へパス、田中・家長・阿部のパス交換を行いつつ右へ展開。
受けた守田は家長にパスを出し、家長は右サイド奥でボールキープしますが、レオ・シルバのチャージを受けてボールロスト。(反則無し)
リードを保つべくの遅攻を見せたかと思えば、39分には田中のパスを受けた家長が中央をドリブルした後左へ展開し、自身も左サイドへ。
そして車屋からのバックパスを受けた家長、溜めを作りスルーパスを出す事で車屋が抜け出し、彼のダイレクトのクロスを知念(小林と交代で出場)がスライディングで合わせますがゴールはならず(枠外)。
試合のイニシアティブを握られたような鹿島でしたが、試合終盤にようやく反撃体制。
42分の遠藤(白崎と交代で出場)の右からクロスを、土居がフリックで流してセルジーニョがヘディングシュートするも僅かにゴールの上。
アディショナルタイムには、左からの相馬のクロスがGK新井に弾かれ、こぼれ球をエリア内で拾った遠藤がポストプレイ。
そのボールを後ろから永木がシュートするもGK新井が足でセーブし、こぼれ球を土居がシュートするも枠外に。
どうしてもゴールが遠かったこの日の鹿島。
そして試合終了の時を迎え、首位陥落となった鹿島に対し、優勝へ僅かな望みを繋いだ川崎。
2年前の再現を果たすにはライバルチーム(FC東京・マリノス)も多いですが、残り2試合を勝つだけという思いは変わらない事でしょう。