Scientific Boxing

国内、海外のボクシング界の状況や試合の観戦記などを絶対的主観で書き綴るブログ

観戦記~メイウェザー vs パッキャオ~ Round by round

2016年12月24日 | BOXING
WBA・WBC・WBOウェルター級タイトルマッチ
WBA・WBC王者:フロイド・メイウェザー vs WBO王者:マニー・パッキャオ
試合結果:メイウェザー判定勝ち

●1R
メイはワンツーから打って出る構えでジャブに力を込めている。
初っ端からペースを握る意図か。
ガードスタイルは高くもなくL字でもなくジャブを打ち易い構え。
パックは頭を左右に振る動きはなくメイに動かれ動かされる感じ。
パックのワンツー!
メイはジャブをバックステップで、左ストをバンサイで交わす。
やはりこのディフェンス。
バンザイは全身スカスカだが動きの前後にボディバランスを取り易い。
メイの右アッパー!
アッパーを多用するのか?
パックの入り際にメイの右ストのカウンター!
「 ドボッ 」 とした衝撃音をマイクが拾う。
パックはブロックしたが少し顔に食ったか。
メイの足捌き、攻防の良さが目立つ。
メイのボディジャブ、速い左フックの空振り。
vsサウスポーには不利なこの2つのパンチも使う気か。
パックは踏み込むべく、上体のムーブ、両グローブのフェイントを入れるが
フェイントを読まれているか、踏み込む足にバックステップを合わされているか、詰められない。
後者の傾向が大きい。
終了間際、パックがコーナーに追い込みフラッシュの様な連打!
メイは大きいムーブで交わすがやや慌てている様にも見える。

管理人的採点:メイ10-9パック


●2R
パックが強引に詰める。 ( 突っ掛かる感じ )
メイはバンザイのサイドステップで交わす。 ( 回避する感じ )
そのサイドステップはクイックで距離が非常に大きい。
足腰の強さが感じられる。
器械運動のようなサーキットトレも積んだのか。
メイは右カウンターを多用する意図がある。
vsサウスポーには有効なパンチ。
最近の記事で 「 セオリーは崩れている 」 と書いたが基本的なセオリーはやはり有効。
しかし右カウンターはクリーンヒットせず空振りも多い。
まだ互いに距離を掴んでない。
メイはガードスタイルを高、ぶらり、L字気味、スタンダードとその時の状況次第、気分次第で
変化させている。
ディフェンシブL字、オフェンシブL字はまだ見られない。
2:30メイの右カウンターヒット!
「 ドボッ 」 っと再び衝撃音。
パックとしてはこのカウンターを早々に食い、見せられては踏み込むタイミングが更に難しくなる。
動き表情にそれが表れて見える。

メイ10-9パック


●3R
メイのスタンスを見るに両足爪先立ちで前後4:6の割合でウェイト及び意識を置いている感じ。
その意味は前足はバックステップの為、後足は右パンチのシフトウェイトの為。
やはりメイはディフェンス優先のボクサー。
パックは前後5:5でやや前足にウェイト及び意識を置く感じ。
その意味は前足に置いた方が後足の蹴りでより速く踏み込み、体を前に運ぶ事ができるから。
やはりパックはオフェンス優先のボクサー。
メイは投げ出す ( 当てる意思のない ) 右ストから惰性で前に進み体を入れ替える。
この動きはオーソドックスがサウスポーに対しても逆も有効。
但し体のスピードに勝るメイが優位。
1:00メイの右カウンターの空振りにパックの右ショートがヒット。
偶然でなくパックは直前の動きで学習していたよう。
さすがパックも超一流。
メイは意外に効いている。
その後、2,3度ロープに下がったのはフットワークでなく効いているから。
1:30あたり迄効いていた。
メイは攻撃を強いジャブと右ストに限定するのか。
ディフェンスはバックステップのみ?
ウラジミールではないのだから。
パックは左ストを打って出る時はジェットスピード、パンチングパワーも感じられるが数は少ない。
やはりメイの距離感と右カウンターに威圧感を覚えているのか。
終了間際パックがエモーショナルな攻撃!
パックのエンジン回転数も上がってきたか。

メイ10-9パック


●4R
メイの強烈な右ボディスト。
そのフォムルは美しい。
パックはジャブの打ち終わりに肘を上げるがメイの左フックリターンを警戒しているのか。
パックが踏み込んでスピードある連打。
各パンチはスナップが利き 「 ビシッ 」 と連続音が響く。
両足が浮いた態勢でも活きた連打ができる所が優れた長所。
ロープに詰め連打、コーナーに詰め連打とクリーンヒットは無いが体に当たるので相手は嫌い、
ジャッジへの印象は良い。
パックは足踏みしたりと動きにリズムも出てきた。
メイが直立しジャブを2発打ち、3発目の引きにパックの左ストカウンターがヒット!
メイ大きく後退する。
観客は驚愕の大歓声!
スローで見るにジャブを下にパリングしつつ体幹をほんの少し右側にシフトし左ストが真直ぐ
入るところに位置した。
メイのミステイクは直前のジャブが不用意であり、
パックのサクセステイクはその軌道タイミングを2発で学習した。
メイはロープを背に貝ガード。
メイの貝ガードなど滅多に見られるものでない。
パックはガード上に連打するが急所にヒットせず。
そのシーン、誰もが期待したと思われるvsF・ヌドゥでのショルダーロールディフェンス。
しかし出さなかった。
理由は明確で、ヌドゥの連打はショートレンジで長いリーチが無駄になり連打に左右左右と
規則性があったのでメイもよく見えて予想も出来たので避けられた。
パックのそれは両グローブを大きく引かず、繋ぎにスピードがあり各パンチングパワーも
あるのでショルダーでは追いつかないのだ。
メイはそれを戦前から知り、試合中どの状況でも最適を判断し実践する能力に長けている。
まさに超一流の証明。
パックはそれを察知したから攻撃を止め、一旦距離を置いたのだ。
メイのダメージは見た目とは逆に3Rの方が大きいように感じられた。


●5R
メイはジャブで牽制する。
ロングでしっかり打つので右に繋げるものでない。
見合う時間を自分のものにする為か。
パックは大きな左ストからこれまた大きな返しの右ストを狙うが
メイは同じ歩幅でバックステップするので届かない当たらない。
更に左を打ったところにメイの右カウンター。
パックはブロックするがそれをされては苦しい。
メイはディフェンシブL字を取らない。
L字は体に当てさせるからパックの速射連打を腕に食い続けては苦しく、リズムに乗せてしまう。
それは感覚的にしているのではなく戦略。
実際うまく進んでいる。
メイは知力戦略にも長けている
パックはオフェンシブサイドステップでメイの速いサイドステップについて行く。
それをされるとメイも止まるしかなくなる。
パックのフットワークも速く軽くなってきた。
メイの右ショートカウンター!
ヒットしないが空振りでも凄いキレ。
この試合、右カウンターに固執している。
それも良い方向に行っている。

メイ10-9パック


●6R
メイは少し距離を詰めたジャブ。
これは右へ繋げるもの。
パックは嗅覚で察知しその距離を自分のものにする為、踏み込み左ストをヒット。
メイは少し効いたか。
パックは追い足が鋭い。
今度はメイの歩幅に合わせ詰める。
これをされるとメイは苦しい。
ロープコーナーから必死に回避するシーンが目につく。
それでも劣勢を感じさせないところがメイのジェネラルシップ。
メイの右カウンターをダックで交わそうとし頭を掠めたと同時にパックの左フックがメイの顎に入る。
そのシーン、メイはパックの頭にヒットした分、腕の引きが遅れた為食った。
パックも見逃さない。
攻撃的嗅覚に優れた野獣だ。
メイは4R同様に貝ガード。
やや隙はあるか。
パックは速射連打を打ち込む。
その中でパックのフックがメイの腕に引っかかるシーンが2度あった。
それはパックがフックの軌道を変えたから。
やや長く振る事でガードと肩の隙間に入れる。
連打の回転は遅くなるがヒットさせる事を優先したのだろう。
この速い展開の中で瞬時に最適を判断する能力をパックも持つ。

メイ9-10パック


●7R
メイはオーバーな動きで攻撃する。
vsモズリーでもそうだったが劣勢Rの次は強引にでも攻撃する強気と支配欲は強い。
ジャブの差し合い。
ハンドスピードは同等、タイミング距離はメイ、パワーはパック。
ジャブに対するジャブのカウンターでパックがバランス崩す。
やはりタイミングは重要。
メイのダンサブルなフットワークが多くなる。
メイはフットワークからジャブを打つが手数は少ない。
パックは攻撃的だが相手の動きに打てない状態が多い。
その場合、採点は攻撃姿勢を評価しパックに行くかもしれない。
それでもメイがジェネラルシップ、ペースを握っている様には見える。

メイ9-10パック


●8R
メイがロープを背に左側へステップするに合わせパックは強烈な右フックを打つが
ショルダーブロックされる。
狙いは悪くないがヒットする確率は低そう。
メイのジャブの引きに合わせ左ストがクリーンヒット!
4Rのシーンと同じ。
超一流は同じミステイクはしないものだが相手も超一流。
故にメイのミステイクではなくパックのサクセステイク。
メイはバランス一瞬崩すが直ぐに立て直しジャブで再開する。
今度はメイのジャブでパックのバランスが崩れる。
この試合、互いのジャブが目立つ。
パックは相対時、ロープコーナーに詰めた時、いつもより獰猛に攻撃しない。
メイの右カウンターが脅威なのか、或はvsマルケスⅣの残像なのか。
パックがメイのジャブに合わせ右フック!
空振りだが空気が焦げると思わせるようなスピード。
管理人が予想で有効と言ったパンチはコレ。
vsハットン1回目のテイクダウンの頭を下に向けながら肩越しの右フック。
しかし距離が合わず決まらなかった。
ハットンは体ごと出てきたので距離は他力で合ったがメイは体ごとのパンチを不用意に打たない。
7R同様にメイのペースでパンチ打ってはいるがヒットは少ない。
スローで出た様に左ストのカウンターが印象的なので採点はパックに行くか?

メイ9-10パック


●9R
見合う時間が多くジャブの差し合い。
メイは右を打つが意思があるものでない。
パックは大きな踏み込みとアクションで左スト、返しの右ストを狙うがやはりバックステップで
交わされる。
メイは見合う時も打つ時も前足のテンションをバックステップする状態にあり、
背筋のテンションもスウェイ、スリップできる状態にあるので
自身がどんな状態でも距離的ディフェンス、上体ムーブが出来る。
まさにディフェンシブボクサー。
パックにとっては相性の悪い相手。
リング中央で距離が詰まらない時はロープ、
ロープでサイドステップされる時はコーナー、
コーナーでムーブされる時は?
やや攻撃的にジリ貧になりつつあるか?

メイ10-9パック

●10R
メイはL字の構え。
何かvsSRレナードのSrを見るようなクラシカルを感じさせる。
L字を認識定着させたのはメイ。
元祖と言える。
元祖がやるからノスタルジック、クラシックを感じるのかもしれない。
相対フォルムを見るにパックの右フックはヒットしそう。
パックも察知し、逆手をとり右パンチを打たず右側へシフトし左ショートを狙う。
良い攻撃だがヒットしない。
それだけメイのディフェンスが優れている訳だ。
メイのジャブが頗るキレる。
この試合では重さもある。
体格を見てもメイもW級では大きくないがパックは更に小さい。
メイはパンチングパワーに劣ってもしっかりしたフォームで強く打ったならば重いパンチとなる。
リング中央で見合うシーンが多いが
メイが右カウンターのフェイントを入れパックがそれに反応する時間が殆ど。
やはりメイの右カウンターはパックにとって脅威なのか。

メイ10-9パック


●11R
メイのジャブジャブ右!
更にジャブジャブ右!
そして引く。
この圧倒的支配。
ジェネラルシップ優れ過ぎ。
ジャブから右アッパーがクリーンヒット!
パックの顎にガシッと食い込む。
まさかの裏切りのアッパーとは。
おそらくこの試合1Rからの2発目。
パックに対しての左右アッパーは最もリスキーなパンチ。
アッパーは距離が近く、テレフォンになりがちでストロークも長い。
だからハンドスピード、連打力、パンチングパワーに優れた相手に打つ事は危険。
メイはそれを知り、1Rは見せかけ、そして2~10R一発も打たなかったのは
相手の意識を上に持っていく意図だったのか。
それが戦略なのか、試合の中で決めたのか、11R感覚的に打ったのか、
どれか判らないが実際あの右アッパーをクリーンヒットするのは高い知力能力を持つ証明。
パックの左ストを右でパリング。
軽いフットワークでパックの追いもついて行かなくなる。
上体のムーブは時に頭が相手のベルトライン下に位置する事もあり、
良く思わない人もいるだろうが現代はそれがセオリーになりつつある。
反則でなく有効であるならばアクティブに使わない手はない。
パックのハンドスピードよりも上体を折るスピードが速いのだからメイの体のスピードは相当にある。
更にメイのそれはブラッドリーのような荒削りでなく芸術的な美しささえ感じる。
パックも交わされるばかりでなく、メイのスリップの態勢に合わせ下から起こす軌道のフック
アッパーを連打した。
それをしてもメイは交わしたが。

メイ10-9パック


●12R
SRレナードvsRデュランⅡの状態。
メイのモードは完全に入ってしまい、パックの攻撃は交わされ当たらず。
パックは 「 起死回生の一発を決めるのでは? 」 と思わせる選手だがこの12Rは思わなかった。
見た人全て思わなかったのではないか。
フィリピン人でさえも。
メイのフットワーク! ステップ! ジャブ! 右カウンター!
それでもパックは攻撃する。
この試合のメイはレナードの様な挑発的なパフォーマンスは一度もなかった。
最高最強の相手に対するリスペクトなのか。

メイ10-9パック




ジャッジペーパーは
118-110
116-112
116-112

1~6Rは三者三様
やはり4R,6Rパックの攻撃によりメイが瞬間的にダメージを受けた印象は大きい。
7~8Rも三者三様
管理人的にメイのジェネラルシップ、パックのアグレッシブのどちらを優先するかで割れると
思われたが三者共メイ。
この辺は基準があるとしても主観、好みが入るのだろう。
是非はあるとしても仕方なし。
9~10Rは一人メイ、二人パック。
上記同様に何を優先するかで決まる。
11~12Rは誰もが見た通りメイ

結果、9~10Rの採点割れた事により中差二人、大差一人となった。
接戦と見えた判定試合で一人大差がつく例は古くから多くある。
大試合ではM・ハグラーvsSR・レナード
しかし際どいRでは何を優先し主観を持つかで決まる。
中差と見えたが大差、また小差と見えたが大差、も間違いではないかも知れない。
従って118-110は否定すべきではない。

因みに管理人は海外のスポーツバーで観戦。
周囲は100%パックより。
管理人も何故かパック寄りになり、観戦しながらの採点は115-113
後に見直すと116-112
やはり雰囲気に流されて見た場合、印象も変わると改めて実感した。
コメント    この記事についてブログを書く
« 最終試合予想~フロイド・メ... | トップ | 観戦記~メイウェザー vs パ... »

コメントを投稿