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  四国の片田舎にあるテニススクール&ショップの宣伝日誌です。
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世代交代の瞬間を見た!? ジョコビッチを破ったアルカラスがWB初制覇!(2023ウィンブルドン決勝)

2023年07月17日 | 試合インプレ

男子シングルス決勝、3年連続出場の世界1位で第1シードの20歳・カルロス・アルカラス(スペイン)が同2位で第2シードのノバク・ジョコビッチ(セルビア)を1-6 7-6(6) 6-1 3-6 6-4で破り、同大会初、昨年のUSオープン以来通算2度目のグランドスラムシングルスタイトルを獲得した。

ビッグ4(フェデラー、ナダル、ジョコビッチ、マリー)以外のウインブルドン優勝者は2002年のレイトン・ヒューイット(オーストラリア)以来21年ぶり。

昨年まで同大会4連覇で今シーズンの全豪、全仏を制していた36歳のジョコビッチは、5連覇と年間グランドスラム、マーガレット・コート(オーストラリア)がもつ男女を通じたグランドスラム最多優勝記録に並ぶ24個目のタイトルを逃した。

「夢が叶った。ウインブルドンで優勝するのが夢だった。今は自分のことを誇りに思っている。この素晴らしい大会でこんなラストを迎えることができて、信じられないくらいうれしい。本当に驚いている。チームの皆のことも誇りに感じている。皆のおかげでこういう結果が残せた」
「夢が叶った」アルカラスがジョコビッチとの大激戦を制しウインブルドン初優勝!「今は自分のことを誇りに思っている」(THE DIGEST)

第3セット3-1から27分のロングゲームをブレイクし、6-1でものにした時点で、よほどのアクシデントがないかぎりアルカラスの勝利が濃厚でした。
すでにジョコビッチは足が動かなくなっていて、長いラリーでは勝ち目がなくなっていました。
あれだけ足がもつれたり、ドロップショットを追わない彼を見るのは初めてで、体力の衰えは誰の目にも明らかでした。かつてフェデラーが最後のグランドスラム優勝のチャンスをつかみ、最終セットで残された力を振り絞って攻めに攻めながら、粘るジョコビッチに屈した2019年ウィンブルドン決勝を思い出しました。

しかしそこから自ら仕掛けてネットに詰める攻撃的スタイルにスイッチし、第4セットを奪い返したのは流石のジョコビッチ。
それでもフィジカルで絶対的優位に立っていたアルカラスは落ち着いてプレーし、最終セットをきっちり獲りきりました。
先にジョコビッチがブレークすればわずかにチャンスはあったかもしれませんが、それを許さない、新チャンピオンにふさわしいテニスでした。
昨年の全米を制したものの、ジョコビッチは欠場していたので、直接対決で彼を破って優勝した今大会で、我々は世代交代の瞬間を目撃したかもしれません。

これでアルカラスは少なくともビッグ4の後継者としての階段を一歩上がったことは間違いないでしょう。
フェデラーがコートを去り、ナダルも来年で引退、ジョコビッチ、マレーもピークを過ぎた今、ケガなどがなければしばらくは彼の時代となりそうです。
願わくばビッグ4がしのぎを削ってテニス界が盛り上がったように、同世代、もしくはさらに若手から彼を脅かす好敵手が現れることを期待しています。


アルカラスがGS初優勝! ついに現れたBIG4の後継者(2022US OPEN決勝)

2022年09月12日 | 試合インプレ

男子シングルス決勝、世界4位で第3シードのカルロス・アルカラス(スペイン)が同7位で第5シードのキャスパー・ルード(ノルウェー)を6-4 2-6 7-6(1) 6-3で下しグランドスラム初タイトルを獲得すると同時に、2001年11月にレイトン・ヒューイットが記録した20歳9ヵ月を大幅に更新する史上最年少でのATPランキング1位が確定した。
19歳4ヵ月での同大会優勝は1990年に19歳と28日で成し遂げたピート・サンプラス(アメリカ)に次ぐ年少記録。
「アルカラス、ルードを破りグランドスラム初優勝! そして史上最年少19歳4ヵ月で世界1位に」(テニスクラシック公式サイト)

決勝ハイライト動画(YouTube「US Open Tennis Championships」)


「彼はこのような大会、試合を戦うために生まれてきた」
「絶対に諦めない。彼はいつでも頑張って粘ることができる」
「毎日一緒にコートで練習し、彼の可能性をよくわかっている自分以外のすべての人にとっては驚きだったかもしれない」
「まだ60%の力しか発揮していない。多くの面で改善できる」
「ベストの一人になるだけのテニスとポテンシャルがある」
「「スパゲッティのようだった」アルカラスとの初対面を振り返るフェレロコーチ」( テニスマガジンONLINE)

「僕が笑顔で楽しんでいれば、最高のレベルでベストテニスをすることができる」
「僕は自分自身の内部にある困難を克服した」
「まだ成長過程ながら世界1位に上り詰めることができて本当にうれしいということだけだ。本当に、本当に幸せだよ」「自分がこのようなことを19歳で達成するなんて考えたこともなかった。すべてはあっという間にやってきた。僕にとっては信じられないようなことだよ。それは僕がテニスを始めた幼い子供の頃から夢見ていたことだったんだ。でももちろん、僕はより多くを求めている。僕は何週間も、できるなら何年も世界の頂点にいたい。この素晴らしい2週間のあと、僕はふたたびハードワークに取り組み、もっと多くを手に入れるために戦うつもりだよ」
「マイアミで優勝してから、僕はグランドスラム大会で優勝することは可能だと思うようになった」
「アルカラスが短い不振を乗り越え頂点へ「僕は少し喜びを見失っていた」」( テニスマガジンONLINE)

これまでもその素質を高く評価され、順調に実績を積み重ねていたとはいえ、GSタイトルはもう少し先だと思っていましたが、ジョコビッチ欠場、ナダルが故障明けというチャンスを初の決勝進出で一発ツモ。
タイトルを取れる選手とそうでない選手との間には運も含め何らかの差があると私は思っていますので、その壁をあっさり超えたのは、彼が選ばれた才能の持ち主だということなのでしょう。
5セットマッチを続けてくぐり抜けてきたのも実力の証です。

まだ改善の余地があるはずのサービスもルードとの決勝ではバンバンエースを取っていたので驚きました。
フィジカルもスキルもまだ発展途上ということを考えれば末恐ろしい限りです。
ケガさえなければいわゆるBIG4の後継者になれる可能性が現時点で最も高い選手であるのは、私が言うまでもなく明らかですね。

それにしても球足の速いハードコートとはいえ、最先端の男子テニスの展開は、私が学生の頃に比べて信じられないくらいスピードUPしています。
30年前にA.アガシがライジングショットを自在に操ってラリーのテンポを一気に上げたのも十分に衝撃的でしたが、今はほとんどのトップ選手があれ以上のスピードボールでコート全体を使い、普通に打ち合っています。

ナダルやジョコビッチ、マレーのように広い守備範囲と深いストロークをベースにしつつカウンターで切り返す堅実なプレースタイルから、決勝を戦ったアルカラスとルードのように高速ストロークで相手を走らせラリーの主導権を握り、その中でスライスやショートクロス、ドロップショット等も混ぜつつ、最終的にはオープンコートにウイナーやボレーを叩き込む攻撃的なスタイルに進化しつつある。
アルカラスやルードをはじめとした若手にとってはそれが標準であり、これからはこういうスタイルが男子のスタンダードな戦術になる、そんな気にさせる好ゲームでした。


希望と不安が見えた錦織のGS復帰戦(2021全豪1回戦 VSカレーニョブスタ)

2021年02月08日 | 試合インプレ

「オーストラリアン・オープン」男子シングルス1回戦、全豪に2年ぶり10回目の出場となる31歳の錦織圭は第15シードのパブロ・カレーニョ ブスタ(スペイン)に5-7 6-7(4) 2-6で敗れた。
「錦織圭、全豪オープン初戦敗退も見えた一筋の光「復帰の道のりとしては悪くはない」」(テニスクラシック公式サイト)※ハイライト、会見動画あり
「錦織圭が記者会見で語ったこと<一問一答>」(テニスクラシック公式サイト)

体力に不安があった錦織にとって第2セットのタイブレークを落とし、セットカウント0-2となった時点で勝つチャンスはほぼなくなってしまいました。

それでも本人のコメント通り随所に良いプレーが出ましたし、特にサービスのフォームがスムーズになってコントロールや確率も上がっているように思いました。
本人もリターンで攻撃されることが減って自信をもちつつあるのではないでしょうか。

時折見せた、ストローク戦で押し込み、浅くなった返球を叩いてネットでポイントを取るという攻撃パターンが確立できれば、サービスキープが安定し、得意のリターンでブレイクするスタイルもより活かされると思います。

ただ今回の結果が示すようにシードクラスにはまだ及ばない、現時点はランキング(41位)通りの実力だというのも事実です。
体力と試合感を戻し、白星を重ねてランキングを上げていくことが当面の課題でしょう。
そのためにもまずは多くの大会に出て実戦を重ねることが重要になると思います。

そこさえクリアできれば心配はしなくていいと思うし、以前のランキングに戻るのにもそれほど苦労しないとは思うのですが、見方を変えれば、30歳を超えた今の錦織にとって、ケガなく試合に出続けるということが一番難しいのかもしれません。


プロのアスリートとしての振る舞いができないならコートに立つ資格はない(2020全米男子シングルス4回戦、ジョコビッチVSカレーニョ ブスタ)

2020年09月07日 | 試合インプレ
ジョコビッチは第1セット5-4から0-40として3つのセットポイントを迎えたものの、そこから5ポイント連取したカレーニョ ブスタにキープを許し5-5。
その次のゲームをブレークされたジョコビッチはベースライン後方にボールを打ち込み、それが線審の首元に直撃した。
試合は一時中断して大会オフィシャルがジョコビッチを交えて協議した結果、失格処分が言い渡された。

ジョコビッチが失格処分を受けた際の動画(THE TENNIS DAILY)

「線審にボールをぶつけたジョコビッチが危険行為で失格処分 [USオープン] 」
( テニスマガジンONLINE)


「「心が空っぽになった」線審にボール直撃で失格のジョコビッチ。ポイントの失効や罰金処分に」
(THE DIGEST)


かつてデ杯でまだ17歳だったシャポバロフが主審の顔面にボールをぶつけ失格になりましたが、今回は男子プロテニスの頂点に長年君臨するトッププレーヤーによる、グランドスラムという権威ある大会での愚行であり、影響は比べ物になりません。

多くのファンを裏切るだけではなく、テニス界全体がこの程度のレベルだと思われかねない。

運が悪かった、線審にも問題があったなどと彼を擁護する声も一部にはあるようですが、故意に狙って審判が大怪我をしようと、わざとではなく軽く打ったボールがぶつかろうと、ルールの解釈が変わるわけではありません。

被害を受けた線審を批判するのはジョコビッチの行為をかえって貶めることになるばかりではなく、彼女を疑い、侮辱するという二重の罪を犯していることになります。

これまでもプロテニスの試合ではプレー中のラケット破壊や審判に対する暴言、ボールパーソンに対する粗暴なふるまいなどは度々見受けられてきましたが、関係者はこの問題を放置してきたように思います。

このブログでも何度か指摘したように、道具を粗末にする、大会スタッフに敬意を払えないといった、プロのアスリートとして最低限の振る舞いができないような未熟なプレーヤーはそもそもコートに立つ資格も、大会主催者やスポンサーから報酬をもらう資格もありません。
他の競技なら一発退場、罰金、その後の一定期間の出場停止は当たり前でしょう。

ルール上からも失格は当然で、トップの選手がこういう現状なら、ペナルティを厳しくするなどして、テニス界全体が本気でスポーツマンシップに反する行為は許さないという姿勢を見せなければ、プロスポーツとして生き残れなくなるとさえ私は思います。

あきらめない錦織の姿勢が大逆転を生んだが…(2019全豪4回戦 VSカレーニョブスタ)

2019年01月22日 | 試合インプレ
「オーストラリアン・オープン」男子シングルス4回戦、第8シードの錦織圭が第23シードのパブロ・カレーニョ ブスタ(スペイン)との今大会ここまでの最長となる5時間5分の激戦を6-7(8) 4-6 7-6(4) 6-4 7-6(10-8)の大逆転で制し、3年ぶり4度目のベスト8進出を決めた。

「錦織圭が執念8強「もう言葉ない」最長5時間5分…
」(日刊スポーツ)
「錦織圭5時間5分の 大逆転劇 8強だ」(TENNIS.jp )
「錦織圭対カレノブスタ、極上の陶酔。年に数試合しかない最高のテニス。」(Number Web) 

確かに錦織の試合ぶりには驚嘆するしかないのですが、1stセットで再三ブレークしながらミスでキープができずにセットを奪われたのが苦戦のきっかけでした。
ジョコビッチやナダル、フェデラーなら1セット目を確実に取ってあっさり試合を終わらせていたのではないかと思います。

キープができなかった最大の原因はフォアハンドの精度。
チャンスを作りながらフィニッシュでミスを重ねて、取れたはずのサービスゲームを何度もブレークをされてしまったためです。
もちろんカレーニョブスタのストロークが深くてパワフルだったせいもありますが、しっかりキープをして1stセットを取ってしまっていればあそこまでもつれなかったでしょう。

2ndセットは何故か錦織の動きがガクッと落ちてしまいました。
セットを取られて動揺したのか、フォアハンドを修正できずにパニックになったのか、見るからに動きが悪くなった。
連戦の疲労なのか、メンタルの影響か、それともカレーニョブスタのプレーについていけなかっただけなのかはわかりませんが、ボールを最後まで追えなくなり、ここもセットを落としてしまいます。
足の故障も疑ったのですが、トレーナーを呼ばなかったのでケガではなかったのが救いでした。

ここまでは2年前、つまり手首の怪我をする前の不安定な錦織に戻ったようでした。

それでもそこから少しずつ自分のプレーを取り戻します。
まず自分のできることをひとつづずやろうと開き直ったことで思い切りが出て、フォアが振り切れるようになりました。
またフットワークが落ちたためにラリーのペースを落とし、高い軌道のトップスピンやスライスを使ってストロークを丁寧に繋ぎ、甘い球を思い切ってオープンコートに叩き込むというプレースタイルの変更が徐々にハマってきます。
体も少しずつ動きが戻り、大事なポイントではしっかりサービスでポイントを取ってキープを重ね、流れを取り戻しました。

加えて前半から飛ばしてきたカレーニョブスタに疲れが見え始め、錦織のミスは減り、カレーニョブスタのミスが増えてきたことでブレークも容易になり、フルセットに持ち込みます。

最終セットも錦織が先にブレークして、そのまま押し切るかに見えましたが、カレーニョブスタも最後の力を振り絞り、動きが戻ってきます。
サービングフォーザマッチでついにブレーク、錦織もそこから踏ん張り10ポイントタイブレークへ。
一進一退の攻防から先に抜け出したカレーニョブスタが8-5とリードし、勝負あったかに見えましたが、ここで問題のポイント。

カレーニョブスタのネットに当たって高く弾んだボールを錦織がバックハンドのウィナー、打ったのとほぼ同じタイミングで線審がアウトのコール、ウィナーは決まったがカレーニョブスタがチャレンジすると判定はイン。
「アウトのコールが間違いなのだからポイントのやり直し」をカレーニョブスタが主張するも主審は「錦織のウィナーが決まっているのだから錦織のポイント」と判定、それに対してカレーニョブスタが猛抗議するも受け入れられず、結局そこから錦織が5連続ポイントを奪って勝ちました。

一番の問題はミスジャッジの上にレイトコールをした線審(コールしなければボールはインで錦織が決めていたのだから何の問題もなかった)で、ウィナーが決まってリプレイしないという判定を下しながらチャレンジを受け入れた主審にも判断ミスがありました。

「あれは審判のミスだったと思う。コート近くにいた審判(線審)のミスだった。もし(主審が)錦織にポイントがいくと思っているならば、なぜホークアイ(映像を使った審判補助システム)を要求できたのだろうか。もしホークアイを要求して、自分のボールがアウトであれば、ホークアイ(のチャレンジ)が失敗だったということ。ホークアイを要求して、ボールがインだったのに、自分はポイントを失ってしまった。理解できない」
「錦織に逆転負けのカレノブスタが激怒抗議した審判判断の是非を巡って論争
」(THE PAGE)

ただ、プレーを見ていた限りではカレーニョブスタはもしアウトのコールがなくてもボールに追いつくのは無理だったでしょう。

何よりその時点でもまだ8-6と自分が2ポイントリードしていたのですから、判定を受け入れ、切り替えて次のプレーに集中するべきでした。
あの極限状態の中で冷静になれないのはやむをえないところもありますが、感情を引きずったままのプレーが結果的に錦織の5連続ポイントを許してしまいました。
あそこで冷静な判断ができるかどうかがグランドスラムやツアーファイナルで何度も修羅場をくぐってきた錦織との経験値とメンタルの差でしょうか。

カレーニョブスタは普段は寡黙で穏やかな性格らしいので、本人も結果としてあの態度は自分のプラスにはならなかったと後悔していたようです。

「劇的試合に水差す激高、錦織の相手が謝罪「あれは自分ではない」」(AFPBB News)

過ちを素直に認めて反省できる人間なら必ずこの経験を次に活かせるはずです。

それにしても負けてもおかしくなかった試合を3試合も乗り越えた錦織は強運の持ち主といってしまえばそれまでですが、その運を引き寄せるだけの心技体を備えているともいえます。

準々決勝は天敵のジョコビッチ、しかも中1日での試合でフィジカルがどれだけ回復できるかが懸念されますが、ここまでくればあとは思い切って当たっていくだけ。
ジョコビッチも決して本調子とは言えないものの、グランドスラムの期間中に徐々に調子を上げてくることが予想されますから厳しい戦いになるのは必至です。
その中でどこまでやれるか、期待しつつ応援します。

全日本大学王座テニス決定戦が松山で開催!

2018年10月18日 | 試合インプレ

団体戦の大学日本一を決める「平成30年度全日本大学対抗テニス王座決定試合(男子72回、女子54回)」が1010日~15日、松山市の愛媛県総合運動公園テニスコートで開催されました。

昨年まで会場として使用してきた東京・有明テニスの森公園が五輪に備えた改修工事に入ったため、愛媛県と松山市、愛媛県テニス協会が大会を誘致、実に62年ぶりに松山での開催となりました。

私は今回も例の「E-dge」の取材を編集部から依頼されたので観戦してきました。


開会式では地元から中四国代表として出場した松山大学の平田・武田男女両主将が選手宣誓。


競技1日目は雨天で順延、2日目からの試合では地元・松山大が男女とも1回戦を突破する大健闘!。
2回戦では共に王者・早稲田大に完敗したものの、同一大会で男女揃ってのベスト8進出は松山大テニス部史上初の快挙だそうです。


大会は松山大を破った早稲田大が男子が決勝で慶應義塾大を破り14連覇、女子も決勝で亜細亜大を下し13連覇を達成しました。
※大会の模様は全日本学生テニス連盟がYouTubeに動画をUPしていますので御覧ください。

大会を通じて印象に残ったのは、「強い大学の選手ほどアンフォーストエラーが少ない」ということです。
特に男子はネットミスがほとんどない。
チャンスボールでエースを狙う時はフラット気味にボールを叩くのでネットの白帯にボールが当たることがありましたが、それ以外のストロークではネットを確実に越す軌道からしっかりスピンをかけてボールをコントロールしており、フォアハンド、バックハンド問わずストロークの安定感が際立っていました。

さらに関東同士の大学が対戦した決勝戦と、関西同士の3位決定戦を比較すると、関東の学生の方が若干ボールスピードがあり、ボールの軌道もネットに近いため、ラリーのテンポも速く感じられました。
一方関西の学生は関東より若干ストロークの軌道が高いため、その分ラリーのテンポが遅くなり、そこが準決勝での勝敗に現れたのではないか、というのが私の印象です。

もちろんストロークの軌道が低ければいいという訳ではなく、高い軌道でベースライン近くに弾むボールを打つという戦略もあるので一概には言えませんが、ボールの威力、深さは同じくらいだった分、リスクを犯してでも攻めのラリーをしていた関東の学生が結果として決勝まで勝ち上がれたように思います。

また楽天オープンなどの国際試合と比較すれば、やはりフィジカル・パワーといった面ではまだ改善の余地を感じました。
みんな洗練されたスマートなテニスをする反面、プロや外国人選手に比べれば力強さが足りないのは明らかで、今回の参加選手の中から将来プロの道に進む選手もいるとは思いますが、海外選手と渡り合うためにはそのあたりが課題でしょうか。

錦織・西岡・杉田といった現在世界で活躍している日本人選手も体格のハンデを克服してランキングを上げていきましたので、そこはやり方次第で対応できるはずです。
将来彼らと同じ舞台で戦える選手がここから一人でも多く現れることを願っています。

また見方を変えればみんなまとまった堅実なプレーをしていて、団体戦という性格上どうしても確実性を重視する「負けないテニス」が求められるのはやむをえないのでしょうが、ビッグサーバーやパワフルなトップスピンで相手をベースライン後方に釘付けにしたり、サーブアンドボレーに徹するテクニシャンといった個性的な選手が見られなかったのが少し残念でした。

それだけ大学生のレベルが高くなって、効率良い勝ち方を目指した結果、多くの選手が現在の主流である「堅く守ってカウンター」というような、似かよったプレースタイルになっているということなのかもしれません。

来年度も有明は使用できないため、再び松山開催の可能性も十分あるとのこと。
そのあたりの事情や地元選手たちの活躍の模様が今月末発売の「E-dge」に掲載されますので、興味のある方はぜひ県内の書店・コンビニでお買い求めください!。


大坂なおみがUSオープン初優勝! 決勝戦でのセレナの暴言は…(今回は長文です)

2018年09月10日 | 試合インプレ

「USオープン」(アメリカ・ニューヨーク/本戦8月27日~9月9日/ハードコート)女子シングルス決勝、第20シードの大坂なおみ(20)が第17シードのセレナ・ウイリアムズ(36=アメリカ)を6-2 6-4で倒し、日本人選手初のグランドスラムシングルス制覇を達成。
大会後の世界ランキングで95年に伊達公子がマークした4位に次ぐ7位に浮上し、自身初のトップ10入りを果たすことが確実となった。

「大坂なおみ全米制し日本初4大大会V 世界7位浮上」
(日刊スポーツ)


「大坂なおみV「抹茶アイスを食べたい。我慢してた」
(日刊スポーツ)


「大坂なおみ選手 日本人グランドスラム初制覇!!」
(修造コラム)

 

大坂なおみ vs S.ウイリアムズ/全米オープンテニス2018 決勝
(WOWOW動画)


女子シングルス表彰式/全米オープンテニス2018
(WOWOW動画)


まさか錦織より先にグランドスラムのシングルスを獲る日本人選手が出てくるとは、しかもそれが女子だとは思いもしませんでした。
いずれはタイトルを取る大器だとは思っていましたが、これだけあっさり達成するとは、驚きです。
新コーチとの相性がよほど良かったのでしょうか。
体もここに来てぐっとシェイプされてきて、あきらかにフットワークがよくなり、ビッグサーブとフォアハンドの強打一発勝負から、粘り強くストロークをつなぎ(それでもパワーがあるので相手を押し込める)、チャンスボールを確実に仕留める、あるいはカウンターで逆転を狙うという、より確実性の高いスタイルを確立しつつあります。
20歳という年齢からも、セレナの後継者争いの一番手に躍り出たと言ってもいいでしょう。
今後が楽しみです。

ところでこの試合は別の意味でも話題になりました。
それは女王・セレナのご乱心というか、審判とのバトルです。
これについてはセレナ批判と擁護、双方の意見がメディアやネット上でも散見されます。

「2018年決勝は、セレナが主審のカルロス・ラモスといかにして衝突したかで、永遠に記憶されることになるだろう。第2セットの第2ゲーム、グランドスラム大会では許されていないコーチングを受けたとして、主審のラモスが最初のコードバイオレーション(警告)を与えたあと、セレナは彼に謝罪を要求した。」
「私は人生を通し、一度もずるをしたことはないわ」
「あなたは私に謝るべきよ」
「あなたは私からポイントを奪った。あなたは泥棒でもある」
(テニスマガジンONLINE)


「セリーナのコーチが助言認めるも… 各陣営の常態化を主張「みんなやっているさ」
(THE ANSWER)


「セレーナが全米OP決勝での不正行為を否定、ペナルティーは「性差別的」と批判」
(AFPBB News)


「「ウィリアムズの自己崩壊」米メディアが批判記事」
(日刊スポーツ)


「大坂なおみの全米オープン優勝に水を差した女王セリーナの激高と「反則コーチング」問題 悪いのは誰なのか」
(木村正人- Yahoo!ニュース)


「セリーナ・ウィリアムズ、大坂なおみ選手との全米オープン決勝戦は「性差別があった」」
(ELLE ONLINE)


「USオープン ウィリアムズ=大坂 ドラマにみるマイノリティ女性選手の葛藤と連帯」
(Dot Com Lovers 吉原真里氏ブログ)
※コメント欄も参照


私が起きた時には既に試合は終わっていて、実際の状況を見ていないので、何が起こったのかは報道でしか知ることができません。

一つ言えるのはそんな異様な雰囲気の中でも大坂が自分のプレーを見失わなかったからこそ勝利を引き寄せられたということで、彼女が実力で勝ち取った優勝なのは間違いないということです。

これまでもセレナはUSオープンで審判に暴言を吐いて処罰を受けています。
最も有名なのは2009年の準決勝、クリスターズ戦でフットフォルトの判定をめぐり線審(日本人)への暴言で警告をとられた件
その際はそれがマッチポイントでしかも2度目だったためにポイントペナルティーとなり、それで試合が終わってしまいました。
大会終了後にセレナには当時の上限となる1万ドルの罰金が課されました

「S・ウィリアムズの暴言で浮かび上がる判定の余地。~日本人審判員の矜持かKYか?~」
(Number Web)


2011年の決勝でも判定を巡って主審と口論になり、ポイントペナルティーを受けています
その際の罰金は2,000ドルでした。

これまでの情報を基に問題を整理してみます。

1.ルールー上コーチングとみなされる行為があったのは事実。セレナのコーチも認めている。

2.セレナ自身はコーチングを受けていない、よって最初の警告は取られるべきでないと主張。

3.抗議の際の暴言及びラケット破壊についてはバイオレーション(いわゆる反則)をとられてしかるべきで許されるものではない。

4.よって最初のコーチングの警告が正しければ2回のラケット破壊で1ポイント、3回目の暴言で1ゲームをペナルティーとして失うのはルール通り、したがって主審の対処は適切。

最初のコーチングの反則を巡って主審、コーチとセレナの主張が違うところに問題の根本があるように思います。

ルールを厳密に適用すれば主審の言う通り、コーチはセレナに対して意図をもって何かしらのジェスチャーをしているので、セレナが見ているいないにかかわらず、その時点でコーチングの反則です。

「耳に聞こえるものであろうと目に見えるものであろうと、また、どのような形であろうと、プレーヤーに対する情報伝達、助言、指図等はすべてコーチングとみなす。」

しかしセレナはそれを見ていないからコーチングにはならないと主張し、コーチのムラトグルーはその程度はどこのコーチもやっているのに特定の選手以外は反則を取られない、つまりそれは暗黙の了解として今のプロテニスではコーチングとみなされていないと自分達の行為を正当化しています。

三者の言い分にはそれぞれもっともな部分とそうでない部分があります。

まずセレナの主張は明らかにルールを間違って解釈していますが、これまでそういった類の警告を受けてこなかったために、それが正しいと思いこんでいたのではないでしょうか。
だとすればあの緊迫した場面でいきなり反則を指摘されて困惑し、それが感情の乱れにつながったのではないかと考えられます(もちろん不利な状況を変えるためにわざといさかいを起こしたという可能性もゼロではないでしょうが…)。

またコーチの意見も同様で、確かに反則であっても特定の選手や特定の状況のみそれを適用するのはフェアではない。
だからといってそれをやるかやらないかはコーチの考え方ひとつでしょうが、あの状況でなんとしてもセレナを勝たせたかったということで、普段は見逃されているコーチングをあそこでも当たり前のようにやったということなのでしょう。

となると、ルール通りコーチングを取った主審が実際にあの時に限ってあえて反則を取ったのか、だとすればそれは妥当だったのかに焦点は絞られます。

それまで同じような行為が度々見逃されてきたとしたら、あるいは選手や審判によってその適用の基準がまちまちだとしたら、あの場面に限ってコーチングを取るのは適切だと言えるでしょうか。

もちろんどんな場合でも反則は反則だ、普段は取られていなくてもたまたまそれが見つかれば、どんな状況であろうと反則を受け入れなければならないという意見も間違いではないと思います(みんなスピード違反をしているのにたまたま自分だけが捕まったとしても罪を免れることはできない、という理屈と同じですね)。

選手と審判の両方をやっていた経験からいうと、試合を公平かつ円滑に進めることが審判の一番の務めだと私は思っているので、それまで同様の行為を黙認しておきながらあの場面でのみコーチングを取ったとすれば、そこまで必死に戦ってきた選手に対して同情の念を抱かずにはいられません。
全ての審判が普段からコーチングの反則を何時誰であろうと厳密に適用しているなら、あの場面でセレナに出された警告は当然だと受け止められたでしょうし、セレナも納得できないまでも、あそこまで激怒することはなかったのではないでしょうか。
そこが曖昧になっていたためにセレナもコーチングの解釈を誤って思い込んでいたのでしょうし、「何であそこに限って」という怒りが抑えられなかったのも理解できなくはないのです。

あのコーチングの判定がなければああいう最悪の自体は避けられただろうし、セレナの暴言もなかったでしょう。
結果に影響があったかどうかはわからないものの、少なくとも何の落ち度もない大坂が気の毒になるような表彰式にはならなかったはずです。

その意味では審判はあの試合のマネジメントに失敗したと言えます。
コーチングを厳しく取りたいのであれば、それまでの大会中やこの試合の序盤に同様の行為があった時に(ムラトグルーの証言によれば度々あるとのことなので、おそらくそれまでは同様の行為の多くが見逃されてきたことは想像がつきます)きちんと反則を取る、あるいはあの試合で反則を取る前にソフトワーニング(反則ととられかねない行為に対してその旨を口頭で指摘し注意喚起する)をするなりして、「コーチングは許さない」という姿勢をはっきり選手に示しておくことが必要でした。

もちろん前述したとおりセレナが試合の流れを変えるため、あそこで確信犯的に騒ぎを起こしたのかもしれず、これまでにも同様の騒動を起こしてきた「前科」があるのも事実です。
ただクリスターズ戦のフットフォルトも、ストーサー戦のヒンダランスも、今回同様「何故あの時に限って」という状況があったことも否めません。

試合の主役は選手であり、審判は黒子に徹するのが務めだと私は思っているので、今回のようにどちらにも落ち度がある場合には、どちらかといえば選手側に肩入れしたくなるし、試合を上手く裁けなかった審判に対してどうしても厳しい目で見てしまいます。
どんな形にせよ審判が選手より目立つことはあってはならない、というかできる限り避けなければならないのです(※これはあくまで私の個人的意見ですのでご了承ください)。

確かにセレナはもう少し女王らしい余裕を見せてほしかったとも思いますし、一方であれだけの実績を上げながら未だに勝負に執着し、みっともないと言われようが必死の姿を晒すその貪欲さにも脱帽せざるをえません。
表彰式でそれまでの自分のしでかしたことを棚に上げ、あれだけ自分が煽ってエキサイトさせた観客に涙を流して呼びかけ、まとめて悦に入っているあたりも「セレナ劇場」でした。
自分のホームであるUSオープンだからこそそういう態度も許されるという、したたかさというか、計算もあったかもしれません。

加えて多くのメディアや識者が指摘しているように、ここでセレナがそれを持ち出すのが適切かどうかは別の問題としても、性差別・人種差別の問題も背後になくはないのでしょう。
それは白人のスポーツだったテニスでアフリカ系アメリカ人ながら姉ビーナスと共に誰もが認める揺るぎない実績を上げてきた彼女にしかわからないことなのかもしれません。

また初優勝であの場に立たされた大坂には酷だったとはいえ、そんな中での気丈な振る舞いと節度のあるスピーチは20歳の若者とは思えない堂々としたもので、彼女もセレナに負けないような偉大なプレーヤーになる素質が十分あると思います。

最後に気になったのは観客の態度です。
アメリカン・ヒロインで生きるレジェンドであるセレナびいきなのは仕方ないとはいえ、試合が終わってしまえば勝者を称えてほしかった。
怒りを主審や運営側にぶつけるのはまだわからなくもないですが、何も悪くない大坂へのブーイングは節度のなさを批判されても仕方ないでしょう。
かつてのアメリカ人はそんなことはなかったと評している方もいたように、寛容や相手に対する敬意を失っている今のアメリカの余裕のなさの一つの現れのような気がします。

(9/14追記)
この問題についてその後も多くのテニス関係者や記者がコメントを出しています。
以下はこのブログを最初にUPした後に出されたもので、私が参考になると思ったものを上げておきます。
これらの論評をどう解釈するかは人それぞれで良いと思いますし、私もこれまでの意見を今のところ変えるつもりはありません。

「セリーナ、ラケット破壊に_伝説の女王_が苦言「私は子供が見ていると考えていた」」
(THE ANSWER)


「テニスに性差別はある。しかしウィリアムズのしたことの言い訳にはならない」
(BBCニュース)

「彼女は私に、あなたのことを誇りに思う、と言ってくれました。そして、ブーイングはあなたに向けられたものじゃないから、とも言ってくれた。すごく嬉しかったです」

 

 

元プロ選手のマルチナ・ナブラチロワ(チェコ)は、New York Times紙(NYT)に寄せたオピニオン記事のなかで、通常ならば審判は警告の前にソフトな注意を与えると指摘。今回もこの形で進めていれば、本格的な警告に至る前にセレナがコーチを制止でき、一連の問題には至らなかったのではないかと見ている。」
(「改めて振り返るセレナのルール違反 「誰もがやっている」コーチング、「男子なら許される」暴言」THE TENNIS DAILY)

「僕個人の考えでは主審はセリーナを限界まで追い詰めるべきではなかったと思う。特にグランドスラムの決勝では。多分、いや多分ではなく彼は試合の流れを変えた。僕の意見では、これは必要なかった。僕たちはみんな感情的になる。特にグランドスラムでトロフィーを賭けて闘っているときには」
(「ノバク・ジョコビッチ、セリーナ・ウィリアムズの「性差別」抗議について語る」
ELLE ONLINE

「大坂なおみvsセリーナ・ウィリアムス戦のカルロス・ラモス主審、最大の罪」
(ELLE ONLINE)
最後の記事が私の言いたいことに一番近いですね。

※10/19追記
セレナのコーチがさらに現状について発言をしていたので追記します。

「なぜテニスが試合中のコーチングを禁じる唯一のスポーツなのか、決して理解できないでいる」
「テニスコーチの大部分が、規則にも関わらず、実際にはコート上でコーチングを行っている。このことは、非常に基本的な事実だ」
「試合中に選手たちがどれほど頻繁にボックス席のコーチの方を向いているか、見てみる
といい。ある者たちは、1ポイントごとにそうしている」
(「セレナのコーチが、試合中のコーチングはテニス熱を高めるとコメント」テニスマガジンONLINE)


今のプロテニスでのコーチングの実態は彼の発言の通りで、その全てを審判がチェックしていない(あるいは見つけたとしても故意に見逃している)のが現状なのでしょう。

現実問題として審判が全てジャッジできない以上、厳密にコーチングを反則として適用するならば、コーチを試合会場から隔離するか、選手の目の届かない場所で観戦させるかしかないのですが、コーチ以外の観客が何かを指示してもコーチングになってしまうのですから、結局はイタチごっこです。
ならばいっそルールを改めて、正式にコーチングができるシステムにした方が合理的だという彼の主張は、今後議論の余地があると思います。

※2019/7/10追記
その後セレナが当時の状況と大阪に送ったメールをエッセーで公開しています。

「大坂なおみと「対立」報じられたセリーナ・ウィリアムズ。謝罪のメール内容を明かす。」
(ハフポスト日本版


※2020/1/30追記
「2020年よりWTAはグランドスラム以外の大会でコーチが試合中にスタンドからコーチングをすることを許可すると発表した。」
「これにより、コーチはスタンドから手を使った合図や、口頭で簡単な指示を送ることが可能になる。これらの行為は禁止にも関わらず、実際には行われており、滅多にペナルティを取られないでいた。」
「この試行を行う根拠は、ボックス席からのコーチングは、すでに行われていると感じられるからです。これを規制することは難しいので、許可することで全ての試合で公平さを保てるでしょう」
(「女子の試合でスタンドからのコーチングを認めることに」THE TENNIS DAILY)

ほとんどのコーチがやっているのが実情なら、それにルールを合わせたということで、現実的な対応だと言えます。
さてグランドスラムや男子は今後どうするのでしょうか?。🤔


穂積/二宮が準V、日本女子ダブルス復活!(2018全仏決勝)

2018年06月11日 | 試合インプレ

「フレンチ・オープン」(フランス・パリ/本戦5月27日~6月10日/クレーコート)
グランドスラムで日本人ペアとして史上初の女子ダブルス決勝に挑んだ穂積絵莉/二宮真琴は第6シードのバーボラ・クレイチコバ/カテリーナ・シニアコバ(ともにチェコ)に3-6 3-6で破れ、準優勝に終わった。

「クレイチコバ/シニアコバがともにグランドスラム初制覇、穂積絵莉/二宮真琴は準優勝」
(テニスマガジンONLINE)

「エリマコ組 全仏 準優勝「悔しい、次にいかす」」
(TENNIS.jp)

「日本人女子ペア初のGS準優勝の穂積/二宮「大きな自信になりました」。決勝と今後について語る」
(THE TENNIS DAILY)

 女子ダブルス決勝ハイライト動画
(THE TENNIS DAILY)


日本人女子同士が組んだペアでのグランドスラム準優勝は、2002年全仏ベスト4に進出した杉山愛/藤原里華を超える快挙です。

かつてはグランドスラム3勝、世界ランク1位にもなった杉山をはじめ藤原や浅越しのぶ、宮城ナナ、平木理化などダブルスで活躍する日本人の女子は少なくありませんでした。
先日引退した伊達公子も杉山や藤原らと組みツアー6勝、最初の引退から復帰後の2014年全米では43歳でチェコのストリコバと組みベスト4に進出するなどダブルスの名手でした。

近年は若手が伸び悩み、体格が変わらない中国や台湾の選手がグランドスラムの女子ダブルスで活躍しているのに、ジュニア時代の実績では遜色ない、あるいは国内のツアー大会では彼女達としのぎを削っていたはずの日本の女子が何故勝てないのか歯がゆく思っていましたが、ようやく追いつく兆しが見えてきました。

また日本テニス協会も五輪の金メダル獲得を目標にダブルスを重点的に強化する方針を打ち出し、2人も指定対象選手として合宿に参加するなどレベルアップに取り組んでいた成果がようやく出てきたようです。
「全仏テニス ダブルス強化実り五輪に弾み 日本ペア準V」(毎日新聞)

ですから、私としてはこの結果は不思議でも何でもないと思っています。

これまでに足りなかったのは海外の大会やグランドスラムでの経験だけで、穂積は加藤未唯とのペアでWTAツアー優勝、昨年の全豪オープンベスト4、二宮も青山修子と組み2016年のジャパン女子オープン優勝、チェコのボラコバと組んだ昨年のウィンブルドンでベスト4に進出するなど、2人とも実績を着実に積み重ねてきた結果がここにきて実を結んだということなのでしょう。

彼女達ができるなら私もと思っている日本女子の若手はまだまだいるはずですし、藤原や青山、奈良くるみや土居美咲らベテラン、中堅にも刺激になったはずです。
五輪では同国同士のペアで参加しなければなりませんので、2020年の東京でもメダルの可能性ががぜん現実味を帯びてきました。
またダブルスだけでなく、シングルスでも活躍を期待したいですね!。

 


最大の弱点、セカンドサービスの弱さが浮き彫りに(2018フレンチOPEN 4R 錦織VSティーム)

2018年06月04日 | 試合インプレ

「フレンチ・オープン」男子シングルス4回戦、第19シードの錦織圭は第7シードのドミニク・ティーム(オーストリア)に2-6 0-6 7-5 4-6で敗れた。

「足が動いていなかった。それで彼の高く跳ねて重いボールに雑な入り方をしてしまい、自分のミスが多かった」と語った。足が動かなかったことについては「緊張はしていないつもりだった。気持ちもポジティブで自身があったが、なかなか足が動かない状況だった」

「何度かチャンスはあって、それをものにしていたら第5セットまで行けたと思う。こういう形で負けるのは悔しい」

「第1、2セットはちょっとナーバスになっていた。コートで何をするべきか分からなくなっていた。第5セットにいけそうだったのに残念」

「錦織「こういう形で負けるのは悔しい」ティームに敗れて2年連続のベスト8入りを逃す」(THE TENNIS DAILY)

怪我からの復活途上とはいえ、見ていて正直完全な力負けでした。
エンジンがかからなかった第1~2setはともかく、競り合った第3~4setでも前々から課題とされているサービス力の差が大きすぎました。見方を変えればあれだけセカンドサービスを叩かれながらこれだけの接戦を演じる事自体が驚異だとも言えるのですが…。

球足の遅いクレーだと余計にその欠点が命取りになるとはいえ、彼がグランドスラム制覇や世界1位という目標を達成するには、エースを連発するようなとまでは言わなくても、せめてセカンドを強打されないよう、サービスを改善することが必須だと思います。

スピードではなく、むしろ正確なコントロールやダブルフォルトを減らす安定感、相手の裏をかいて十分な体制で打たせない駆け引きなど、フィジカルに頼らなくても改良できる余地はあるはず。

今のM.チャンコーチもサービスは得意ではなかったですから、戦略的なサービスを学ぶための専任コーチをつけるというのも一つの方法ではないでしょうか。

年齢的にもフィジカルの飛躍的な向上は望めなくなってきている以上、彼がこれまで以上の目標をまだ本気で目指すつもりがあるなら、セカンドサービスの問題は避けて通れない課題でしょう。

ただここまで日本人がだれもたどり着けなかった道を切り開いてきた彼にこれ以上を期待するのは、ファンとしても酷なような気もするのが正直なところです。
私としてはあと数年しかない現役の時間を楽しみながら怪我なくプレーして、最後まで自分のやりたいように悔いなくやりきってほしいという気持ちの方が大きいですね…。

※6/5追記
スポニチに松岡修造さんの錦織のサービスについてのコメントが出ていたので引用させていただきます。
さすがに詳しく説明されていますね。

「目についた課題はサーブ。フォームをコンパクトに変え、軸足の左足に右足を寄せる動作もなくなった。ああいう形にするとコート左側からのサーブは安定する。ただし元々得意だった右側からのサーブ、外に切れていくスライスサーブがうまく打てていない。」

「足が前にいかないので、トスが少し後ろ側に上がる。体重が乗せづらく、角度もつけにくい。パワーもないから、サービスだけで決まるポイントがほとんどない。圭もそれを相当意識しているはず。だから体を凄く開いて打っている。スタンスをもっと広げればパワーが使える。今は狭いから威力が出ない。そのあたりの改善もこれからは必要になる。」



杉田やった! ATPツアー初優勝

2017年07月02日 | 試合インプレ

「アンタルヤ・オープン」(ATP250/トルコ・アンタルヤ/6月25日~7月1日/賞金総額43万9005ドル/グラスコート)のシングルス決勝で、杉田祐一(三菱電機)がアドリアン・マナリノ(フランス)を6-1 7-6(4)で破り、ATPツアー初優勝を果たした。
日本人選手がシングルスでツアー優勝を果たしたのは、1992年のソウルの大会を制した松岡修造と、通算11勝を挙げている錦織圭に続き、杉田が史上3人目となる。この結果で杉田は、週明けに更新される世界ランクで45位以内に浮上することが確実となり、松岡氏の46位を抜いて日本人歴代2位のランクとなる見込みとなった。
(THE TENNIS DAILY)

現行のツアー制覇は日本選手で松岡修造、錦織圭に続く3人目、芝コートでは初の快挙。
「第1回の大会で優勝して誇りに思う。人生の中で、最も感動した瞬間だ。こんな大舞台で、こんないいプレーをしたことはない」
(日刊スポーツ)

最後は暑さと疲労と初優勝へのプレッシャーで両者ともガチガチのプレーでしたが、本来持っているテニスの質の高さとフィジカル、何より勝利への執念で杉田が上回っていました。
素晴らしい勝利でした!。


彼が確かまだ高校生でプロになったばかりの頃、地元のテニス協会のイベントに招かれ、そのプレーを間近で見たことがあります。
当時から既に素質は高い評価を得ていましたが、体も華奢で、プレーも錦織のように目を見張るようなものではなかったので、将来どこまでいけるのかと思ったのを覚えています。

予想通りそれから何年もTOP100の壁を敗れず、錦織ら後輩にも抜かれながらも地道な努力を続けていった結果がここ数年のジャンプアップに繋がったのだと思います。

あとはグランドスラムで実績を上げて、TOP30・20への階段を駆け上がっていってほしいですね。
ランキングで上位になるとはいえウィンブルドン8強の実績があり、デ杯でもエースとして活躍した松岡修造と並んだとは本人もまだ思っていないはず。

最後に、錦織のコメントを掲載しておきます。

「サーブだったり、前に入ったりというプレーが出来れば、(世界ランキングで)30位とか20位に来ると思う」
「いいところはストロークで弱点がない。他の選手と打ち合えるくらいの力はある」
「独特の世界がある。本当にストイックで、時には仙人みたいな、修行に出るみたいな発言だったり行動がある。学ぶところは沢山あります」
(tennis365.net)

ウィンブルドンの活躍に期待しています!。

クレーの魔神が還ってきた!(2017フレンチOPEN 決勝 ワウリンカVSナダル)

2017年06月12日 | 試合インプレ

全仏オープン最終日、男子シングルス決勝は第4シードのラファエル・ナダル(スペイン)が第3シードのスタン・ワウリンカ(スイス)を6-2 6-3 6-1で下し、オープン化以降の男女を通じグランドスラムの同一大会での最多優勝記録となる10回目の優勝を果たした。
決勝戦動画ハイライト(大会公式サイトより)

地上波のTV解説をされていた元デ杯監督の竹内映二さんが「今日のワウリンカは何も悪くなかった」とおっしゃられていた通り、ナダルが強すぎました。

ワウリンカの武器は強烈な片手バックハンドから繰り出すクロスとダウンザラインですが、左利きのナダルに対してはクロスの打ち合いはフォアで押し込まれ、角度をつけるとさらに厳しいカウンターが返ってくるので、ナダルのバックになるストレートしか選択肢がなく、それも甘くなるとフォアに回り込まれ攻撃される。
ナダルもそれをよくわかっているのでワウリンカのバックにボールを集めてラ
リーの主導権を握っていました。

それでもまだサービスゲームの時はフォアのクロス、逆クロスでオープンコートを作ってダウンザラインを叩き込むパターンがあったものの、肝心のフォアの精度も上がらず(というか異常に回転のかかったナダルのショットに押されて)ミスが増え、攻め手を完全に封じられてしまっていました。

2ndセット、ワウリンカはストロークのペースを落とし、積極的にネットプレーを仕掛けて局面を打開しようと試みます。
しかし序盤に落としたワンブレークが挽回できず失ってしまい、ここでさすがのワウリンカも心が折れてしまったようでした(ラケットも折ってしまっていました)。

何せナダルのサービスゲームがブレークポイントさえ握らせないような状態で手がつけられませんでした。
これまでは回転がかかりすぎてストロークが浅くなっていたところを逆襲されていたのですが、それが解消され、コースが深くて厳しい上に、左右に振られてもありえない角度にカウンターを叩き込んでくる。
数少ない弱点と言われていたサービスも強烈なスピンをかけてセンター、ワイド、ボディにしっかり打ち分け、リターンで攻撃させていませんでしたし、ひょっとしたら故障以前の全盛期と言われた当時の本人と勝負しても今日のナダルなら勝てるのではないか、と思わせるほどの強さでした。

「僕にとって完璧なロラン・ギャロスだった」
「すべての戦いで僕は自分のベストを尽くしているが、ここでのフィーリングは表現が不可能だ。ほかのどの場所とも比較することはできない」
「緊張感、アドレナリン。僕がコート上で感じるものは、ほかのフィーリングと比較することなど不可能だ。これは僕のキャリアでもっとも重要な大会なんだ」
「ナダルは今大会でプレーしたすべてのセットを取っただけでなく、合計で35ゲームしか落としていない。これはグランドスラム大会のすべての試合がべスト・オブ・5セットマッチとなった1968年のオープン化以降の時代で、優勝までの道のりで落としたゲーム数としては2番目に少ないものだ。」
「「パーフェクト10!」ナダルがワウリンカに完勝し、10度目の全仏タイトルを獲得」(THE TENNIS DAILY)

「回転の量、ボールの重さ、しぶとさ......ほかの選手とは何もかも違う。僕はどういうショットを選択したらいいかわからなかった。それは、彼に勝ちたいなら絶対に抱いてはいけない迷いなんだけど」
「メジャー決勝負けなしのワウリンカを苦しめた〈ナダル〉という重圧 [全仏オープン]」(THE TENNIS DAILY)

「ラファエルが、話があると言ってきた。手首が治るまでテニスを休むと言ったので、それが良いと答えた。そして『では来年以降は、どうしたいんだ?』と聞いたんだ」
「人生が変わっていくように、お前も変わらなくてはいけない。世界のテニスは年々スピードアップしている。そこで勝ちたいなら、顔つきを変えろ。全ての大会で、もっと闘争心を燃やさなくてはいけない。それができないなら、また同じ結果になるだけだぞ」
「ナダルを復活させた叔父から言葉「勝ちたいなら、顔つきを変えろ」」( 内田暁・スポーツナビ)

これで全豪はフェデラー、全仏はナダルとかつての二強が完全復活、ウィンブルドンには全仏を含めたクレーシーズンを全てスキップして万全を期したフェデラーが帰ってきます。マレー、ジョコビッチの調子が上がらず、錦織や若手も伸び悩んでいる現状では、今年後半も二人が主役のシーズンとなりそうですね。


今の錦織に一番足りないのは「心のスタミナ」(2017フレンチOPEN QF 錦織VSマレー)

2017年06月08日 | 試合インプレ

「錦織圭の全仏オープンは、世界1位のアンディ・マレー(イギリス)に対する準々決勝での、ふさわしくも不安定なパフォーマンスで終わりを遂げた。
 6-2 1-6 6-7(0) 1-6というスコアとその負け方は、錦織が、いかに一貫性のない不安定なプレーをしてきたかを映していた。今季の全仏における彼のこれに先立つ4試合には、6-0で獲得したセットが2つ、0-6で落としたセットが2つあった。」

「屈辱的なタイブレークが終わったとき、落胆した錦織は、攻撃性をラケットに向け、ラケットを地面に叩きつけた。
 こうして彼のボディ・ランゲージは、ますますトラブルに向かってつき進んでいく選手特有のものになっていったのである。」

シンプルに、この日の錦織には決して挽回をやってのける力があるようには見えなかったのだ。元気がなく、ぼんやりし、マレーに対して11度目の対戦で9度目の敗北を食らうことを、ほとんど甘んじて受け入れているようにさえ見えていた。

「「錦織のマレーに対する不安定な敗戦は、彼の〈今〉の反映 [全仏オープン]」(THE TENNIS DAILY)

私もこの記事のタイトルの通りの試合だったと思います。
1stセットを取っていけるかと思ったのですが、良いプレーが続かないのが今の錦織です。

ケガで十分な練習と実戦経験が積めないために連戦が続くと、また試合後半になるとイメージ通りのブレーができなくなり、フラストレーションがたまって辛抱できずに自滅してしまう。
フィジカルが万全でないことで「心のスタミナ」も切れてしまうのでしょう。
相手のサービングフォーセットをブレークして追いつきながら、タイブレークの1ポイント目を簡単なストロークミスでミニブレークされると、そのまま切れて1ポイントも奪えず挽回できなかった第3セットが象徴的でした。

一方マレーはさすが世
界1位、体調もプレーも万全でなくても、途中から自らを鼓舞し、苦しい時も辛抱してプレーのレベルを徐々に上げ、最後は錦織を圧倒しました。
あのメンタルのたくましさは今の錦織には一番足りないのかもしれません。
それも頑丈なフィジカルがあってのことなのですが…。

「マリー、怒りを力に変え錦織の流れ断ち切る「レッツゴー!カモン!!」」(Sponichi Annex)

「トップ選手にあり、錦織に足りないモノ頂点へ「今は我慢すべきタイミング」」( 内田暁・スポーツナビ)

シードは何とか守ったのでノルマはクリアですが、もし彼がグランドスラムタイトル、あるいは世界1位を本当に望んでいるのであれば、その差を痛感したのではないでしょうか、いや痛感していないとすると、夢の実現には程遠いと思います。

松岡修造さんも同じような指摘をされていました。

「正直、悔しくて仕方ない」

「僕は圭のことが好きだし、信じているから言いますけど、このままのメンタルだとグランドスラム制覇はありえないです」


「諦めている訳ではないし、本当に頑張っている。でも、トップ選手に一番必要な集中力がパッと途切れる。これだけが、残念で残念で仕方ない」

「修造氏、錦織敗因はメンタル面「このままだとGS制覇ありえない」」(Sponichi Annex)

「マレーはむちゃくちゃ吠えた。バイオレーションを取られて、より燃えていった。どっちかっていうと圭の方が心のバイオレーション取られて一気に自分らしさをなくしてしまった。」

「圭の最終セットの勝率は歴代1位。本来持っていたはずの、ここぞの集中力が発揮できていない。圭が悪いんじゃない。でもそこが発揮できないってことは何かが足りないということだ。

 それはテニスや体力とかではない。圭が自分で探すしかない。」

「圭が言っていたように、今日の敵はマリーじゃなかった。一番怖い敵は自分だった。僕もそう思った。」


「【松岡修造の目】今大会で一番悪いミス出た、集中力なかった」(Sponichi Annex)

錦織の試合後のコメントは以下の通りです。

「相手がよくなったのもあるが、どちらかというと今日は自分に原因があった。チャンスがありながら負けた悔しさがある。」

「第1セットは凄く落ち着いて、戦術的にやらなきゃいけないことを的確にできていた。相手がそんなにいいわけではなかったし、これ以上ないプレーの内容と結果がついてきた。」


「サービスゲームを落としてリズムが変わり始めた。やらなきゃいけないことができなくなかった。彼のレベルが確実に上がったので、自分が耐えきれなくなったり、無理をしてしまったかもしれない。」

「一番悔いが残るのはタイブレーク。ミスが相次いだのとダブルフォールト。もったいないミスばかりだった。第3セットをどうにか取っていれば、第4セットも自信を持ってプレーできた。」

「3、4回戦は痛いところがあったが、戦いながら回復することもできている。体は強くなってきている証拠だと思う。ウィンブルドンに向けていい準備をしたい。」

「錦織 逆転負けに「自分に敗因」「悔いが残るタイブレーク」」(Sponichi Annex)

これを読む限りは彼が一番そのことを身にしみて実感しているのだと思います。
今は辛抱の時ですが、まずは体調を戻して普通に連戦をこなせるようになって欲しいですね。

あとはこれも何度も言われているようにサービスでしょう。
エースがバンバン取れるような威力があるわけでもないのに、あの確率はさすがに低すぎます。
現状のスピードでも7~8割くらいの確率で狙ったコースに正確に入れれるようになれば、サービスキープがもう少し楽になるはずです。
サービスに関しては専門のコーチをチームに入れてもいいかもしれません。

グランドスラムベスト8でも、もうファンや関係者が納得できなくなっているのはスゴイことですが、彼自身の目標と周囲の期待が大きくなっていることの裏返しでもあります。
一時の低迷からは脱出しつつあるのは間違いないですので、もう少し期待しつつ見守っていきたいですね。


伊予銀行challengeマッチ 伊達公子VS日比野奈緒

2017年04月12日 | 試合インプレ

5月3日に公式戦復帰する伊達公子がトレーニングで縁のある愛媛・松山で腕試しのエキジビションマッチ。
会場は車で1時間、入場無料、しかも相手は売り出し中の日比野菜緒となれば行くしかないでしょ!。

という訳で行ってきました。
会場の県総合運動公園コートは今年秋のえひめ国体を控え昨年改修されたばかり。
サーフェスは全豪オープンの会場と同じだそうです。




最初に見た伊達選手の印象は「左足がまだ細い…」
とはいえ左右のラリーにもしっかりついていっていましたし、現役バリバリの相手と互角に打ち合えていましたし、何より怪我せず1試合通して動けたという手応えを得られたのは大きかったのではないかと思います。

私が目を見張ったのはむしろ日比野選手の方。
プレーといい、下半身の筋肉といい、さすが世界の2桁ランカー。
まだギアが一段、あるいはさらにもう一段くらいあるような感じに見えました。

試合の詳細、両選手のコメントは以下の記事をご参照ください。
「伊達公子、復帰戦への第一歩----日比野とのエキシビションマッチを終えて「まだまだだな」」(THE TENNIS DAILY)
「伊達公子、左膝手術から復帰戦「もう1度コートに」」(日刊スポーツ)
「伊予銀行チャレンジマッチ」(いいね!テニス)

動画もあります。
「伊予銀行 CHALLENGE MATCH  伊達公子vs日比野菜緒」」」(THE TENNIS DAILY)
私は試合カメラの右後ろ辺りのスタンドで見ていました(時たまぼんやり映ってます)。

5月3日が楽しみです!。


2016 ATPツアーファイナル 準決勝 錦織VSジョコビッチ

2016年11月20日 | 試合インプレ

「何もできずに終わった」と錦織、決勝は最終ランク1位をかけてマレーとジョコビッチが対戦 [ATPファイナルズ]
(THE TENNIS DAILY)


チリッチ戦の第1セットのようなプレーを期待していたのですが、逆に第2、3セットのようなプレーになってしまいました。
ジョコビッチも確かに良かったですが、今年の最後に一番内容が悪い試合になってしまったのは残念です。
一年間の疲労が出てしまったのかもしれません。

1.試合の中で波があり、一度プレーレベルを落とすと戻すのが難しい。
特に先にブレークを許すと、そのまま逃げ切れられてしまう。

2.1とも関連するが、サービスキープ力がまだまだ弱い。
サービスは強化されてきたが大事な場面でフリーポイントを取るパターンが確立されていない、もしくは引き出しが少ない。
相手の返球が浅くなった時に逃さず攻撃してネットを取るパターンを増やすのがいいのでは?

3.トップクラスの相手に攻略法を見つけられつつある。
具体的には緩くてもいいので深いストロークで錦織をできるだけコートの中に入れないよう釘付けにしておけば、ストロークでミスしてリズムを崩すというパターンが多い。

4.連戦になると疲労で動きが鈍くなる、または故障のリスクが高まる。

どれもほとんどの選手に当てはまりますが、フィジカル面が劣っていて、しかも攻撃型のプレースタイルである錦織には特に影響が大きい。
これまでの相手なら通用しても、マレー、ジョコビッチと守備型を基本としたスタイルのTOP2人を越えるには、ここをレベルアップしないと難しいと思いました。

どれもトレーニングやスケジュール調整などで克服できるとは思いますが、私的にはもう少し、守備型のプレー、つまりミスの少ない安定したストロークで試合を組み立てる戦術を取り入れ、守備と攻撃のメリハリをつければいいのではと思います。
そのための秘策が前から言っている「ラケットの改良」なのですが、ダメですかねえ(笑)。


とにもかくにもこれで今季は終了、最終世界ランキングは5位でしょうから、来年の全豪オープンで上位4シードに入るのは厳しくなりました。
フェデラーもナダルも復活してくるでしょうし、課題を克服して、来年は自己最高の3位はもちろん、1位を目指してもらいたいですね。


「ベストを尽くす」という意味(2016US OPEN SF ジョコビッチVSモンフィス)

2016年09月11日 | 試合インプレ

「無気力」を指摘されたモンフィス「テニスのやり方は一つではない」(AFPBB News)

「ノバクの頭の中をのぞいてみようとしたんだ」

「あっという間にリードを許してしまい、少し変化が必要だった。うまくいったよ。テニスのやり方は一つではない。相手の打球がさえていて、自分のサーブが良くなければ対抗策を示すだけだ。それでコートの中央に立った」

「彼はダブルフォールトを犯し始めた。さらに、こっちが遅い打球を返すと彼がネットに出てきた。そこを抜いてやったのは、素晴らしい戦略だった。本来のテニスをしようとすれば、彼にしとめられるだけだ」

以前に高校野球で山なりのスローボールを投げた投手が「相手に失礼」と批判されたことを思い出しました。
いろいろな考え方がありますから意見するのは構わないでしょうが、ベストの尽くし方は人それぞれであっていいのではないかと私は思います。

「最後の2セットでは挽回したモンフィスだったが、それでも「無気力」との批判にさらされ、米国の名選手ジョン・マッケンロー氏からは「プロにふさわしくない」と糾弾された。テレビ中継で解説者を務めていたマッケンロー氏が批判していたことについて問われると、モンフィスは怒りをあらわにし、自分は戦略通りにプレーしただけで、勝負に徹する選手であることを示したと強調した。」

「試合後の会見で「くそったれ。俺は勝負に徹している」と激怒したモンフィスは、「みんながこのプレーは不自然じゃないかという質問をしてくる。最初の質問は、自分が戦っていないように見えるということだ。絶好調な相手の勢いを変えられるのは、常識に反したプレーをみせることだ」と語った。」

モンフィスの態度を非難するのはご立派ですが、ならば審判に悪態をついて試合の雰囲気を自分有利に持ち込もうとしたり、観客の前でラケットを叩き折ってストレスを発散したりすることこそ「プロにふさわしくない」のではないですかね、マッケンロー先生?(毒)。

「さらには、モンフィスが体力を回復させるためにコーラの配達を要求したり、第3セットを落としたジョコビッチが、映画『インクレディブル・ハルク』さながらにユニホームを引き裂いたりする場面もあった」
(連覇を目指すジョコビッチ、モンフィス破り自身7度目の全米OP決勝へ:AFPBB News)

私もLIVEで見ていましたが、確かにモンフィスの試合態度は褒められたものではありませんでした。
最初は体調が悪いのかと思っていたのですが…。
1stセット0-5でリードされ、手も足も出なかった彼が何とか突破口を見出そうとしてああいう戦術に出たとしても、それを責めることは、私にはできません。

もちろんそういう態度を良しとせず、最後まで相手や観客に失礼のないプレーに徹して、そのまま0-6で負ける選択を取る選手もいるでしょう。
それはその選手個人の価値観やテニスに対する美学の問題ですから、良い悪いを決めつける必要はな
いのではないでしょうか。
第3セット以降はモンフィスもいつものプレースタイルに戻して1セットを取り返しました。
「それなら最初からそうすればよかったのに」という人もいるでしょうが、あれもその前の2セットの積み重ねがあったからこそ取れたということです。


私の高校時代の恩師は「弱い者はルールの範囲内でどんな手を使ってでも勝ちにいきなさい。そして一度勝ったら今度は堂々と勝つことを目指しなさい」と仰っていました。
それも賛否両論あると思いますが、私も無抵抗で負けるよりは、みっともなくてもその時出来ることを全てやりきる方を選択したいというタイプですし、そっちの方がかえって相手に対してリスペクトすることになるとも思います。
だからモンフィスのプレーもマッケンローのパフォーマンスも手放しで賞賛できるとまではいいませんが、プロとして「そういうやり方もある」と認めていいという考えです。

ただしクリーンな試合を期待している観客は高いチケットを買っているのにそういう試合を見せられたら気の毒かもしれませんね。
そういう試合も楽しめるようになれればいいのでしょうが(笑)。