Ashe店長のテニスショップ業務連絡

  四国の片田舎にあるテニススクール&ショップの宣伝日誌です。
  現在はX(旧Twitter)メインで更新中。

毎年言ってることですが今年も言います。試合前にはストリングを必ずチェック!

2021年09月25日 | お店の出来事
開店1時間ほど前に電話(店の電話に出られない時は私の携帯に転送されます)。
 
男性「新人戦やっているんですけど、部員のガット(ストリング)が切れたので、すぐ張ってもらえませんか?」
 
私「すみません、10時開店なのですが…」
 
相手「急いでいるので開店前に張ってもらうことはできませんか?」
 
その時は10時前でないと店に行けない状況であることを伝えると、相手もあきらめたように電話を切られました。
 
ストリングの切れたラケットでは当然試合ができません。運良く張り替えられたとしても、いつもと違うところで張り替えたラケットではいつも通りのプレーができるとも思えません。
 
何より大事な試合前に試合以外のことでバタバタしてしまえば、集中してゲームに臨むこともできない。
そんな状況で負ければ当然悔いも残るでしょう。
 
しかし、これらは試合の前日までにきちんと準備していれば、全て防げることなのです。
 
私が店を始めて20年近くになりますが、特に学生やジュニアの大会前日の閉店後や当日にはこのような問い合わせが度々あります。
 
いくら大会を目標に必死で練習したところで、ラケットやストリング、シューズがボロボロでは、ベストなパフォーマンスができるはずがありません。
試合に勝ちたければ自身のコンディションだけでなく、道具のケアも同じくらい重要だということを、当人はもちろん、指導者やジュニアの保護者はしっかり認識し、教えていただきたいものです。
 
結局10時に開店しても、張り替えには誰も来られませんでした。
今回の失敗を教訓として、次の大会では同じミスを繰り返さないよう願っています。

選手をかばうコーチは優秀?(続・チチパスのトイレットブレーク問題)

2021年09月12日 | ひとりごと

前回の続きで、問題についてチチパスのコーチのトリック・ムラトグルーがコメントしました。
長いですが要旨を掲載します。

「選手は試合で相手のことではなく、自分のプレーに集中している。自分が何をすべきか、どううまくやれるかにフォーカスしている。選手がトイレブレークを取るのは、ほとんどが尿意のためではない。リセットするための時間なのだ。だから、セットを落としたときに取るケースが多い。ひとりになって気持ちを落ち着かせて、次のセットを取るための方法を考えるのだ。ステファノスがトイレでしているのは、それだけだ。もちろんウェアを着替えてリフレッシュもするが、ロッカールームで一人になり、自分で考えるんだ。何を変えれば勝てるのかをね。相手のリズムを崩すためだけにトイレブレークを取っているという主張は馬鹿げている」

「彼はセットを取った直後にトイレブレークを取った。自分のリズムがいいのに、それを崩そうとはしないはずだ。そんなのは彼のメンタリティではない。周囲が評価すべきは2つのポイント。一つ目はステファノスがルールを守っているのかどうか。ルールを破っているのか? 彼はどのルールも破っていない。だから、不正だと言うのは正しくない。不正はルールを破ることである。2つ目は、トイレブレークがスポーツマンシップに反するというものだ。それも違う。何故なら、すべての偉大な選手は自分のことに集中しているからだ」

「トイレブレークは長すぎたのか、そうではなかったのか。スタジアムで観戦しているファンにとっては長過ぎたと思う。私は前から主張しているが、テニスの試合自体が長過ぎると思っている。6分のトイレブレークは長過ぎる。3分で十分だ。長くても5分か。私は以前からトイレブレークが長過ぎると、何度も何度も主張してきた。トイレブレーク自体は悪いことではない。でもルールを作る必要がある。ATP、WTA、ITFがルールを作るべきだと思う。トイレブレークの時間をルールで決めれば、それでこの問題は解決する」

「ステファノスが今年のフレンチオープン決勝でノバク・ジョコビッチ(セルビア)に負けたとき、2セットをリードしていた。そこでジョコビッチがトイレブレークを取り、戻ってくると試合の流れが完全に変わった。彼はそこから学んだ。ジョコビッチが自分のリズムを崩したと学んだ訳ではない。ジョコビッチがロッカールームで自分だけの時間を取り、気持ちをリセットして違った状態で戻ってきたことを学んだのだ。気持ちをリセットして勝つための方法を見つけるいい方法だと思った。それを彼自身が試してみたら、うまくいった。だから、それを継続している」

「選手名は挙げないが、ポイント間で多くの時間を取る選手、たくさんガッツポーズをする選手がいる。相手がサービスをする準備ができているのに、物凄くゆっくりコートに出てくる選手もいる。相手のリズムを崩そうとしている訳じゃない。自分にとってゆっくり歩くことがいいことだからやっている。相手がサービスの準備ができていて、待っていることなどほとんど気にしない。ステファノスのトイレブレークを批判している選手に限って、ファーストサーブとセカンドサーブの間に長い時間を取るものだ」

「ステファノスの仕事はテニスの試合に勝つことで、それに情熱を注いでいる。グランドスラム大会で勝つためにテニスをしており、それが使命でもある。まだ達成できていないが、そのために一生懸命やっているし、そのために生きている。彼は人々を満足させるためにプレーしている訳じゃない。彼はアスリート、競争者だからグランドスラム大会で勝つためにプレーしている。彼は人が大好きで、知り合いになれば物凄く優しい青年だ。私が知っている他の多くの選手よりも人のことを考えている」

「メディアには一つのことを一面からしか見えないようにする力がある。この数週間に起きているのは、まさにそれだ。ファンがステファノスに対して悪いイメージを持っているのは理解できる。メディアがそう仕向けているからだ。ステファノスが相手のリズムを崩すため、父にメールをするためにトイレに行っているように見せかけられている。事実はまったく反対だ。彼がトイレに行ったのは、気持ちをリセットしてコートを去ったときよりもいいマインドセット、クリアな頭で戻ってくるためだ。試合に勝ちたいからね。もちろん父にメールなどしていない。そんなことは考えてもいないし、できない。彼はアスリートだし、大会の係員がトイレまで一緒についていっている」

「ステファノスはイカサマなどしていない。今とても苦しんでいる。でも、謝ることができない。自分のやるべきことをしているだけなのだから。勝つために仕事をしている。他の選手同様、自分のことにフォーカスしている。この騒動はもちろん、彼に悪い影響を与えている。もし試合中にすべての観客が自分を敵視していたら、それはフェアじゃない」
「「物事が一方方向からしか見られていない」チチパスのトイレブレーク騒動の本質を語るムラトグルー氏 」(テニスマガジンONLINE)

原文を読んでいないので本意がわかりませんが、この記事の発言だけを見ると論理的整合性がありません。

彼は「相手のリズムを崩すためだけにトイレブレークを取っているという主張は馬鹿げている」と言っていますが、そもそも誰もそんな主張はしていませんし、もしそう主張している人物やメディアがいるとすれば具体的、個別に指摘するべきです。

またチチパスは「どのルールも破っていない。だから、不正だと言うのは正しくない」と主張するなら、ルールを作る必要もないでしょう。
ファンのためにルールが必要と言うなら、彼のブレークは不正ではないがやはり長すぎることは認めないと辻褄が合いません。

「トイレブレークを批判している選手に限って、ファーストサーブとセカンドサーブの間に長い時間を取る」という皮肉も、具体的に誰がそうなのかを言わないと、今回で言えばマレーやズベレフなど、この問題を批判している全ての選手を敵に回すことになってしまいます。

チチパスが「父にメールなどしていない」と断言しているのも、あくまで彼の推測でしかありません。
ならばズベレフの証言は嘘だということになり、どちらも具体的証拠が挙がらない以上、水掛け論にしかなりません。
それとも本人はメールしていなくても、父からのメールを見た可能性はあるとでも言いたいのでしょうか?。

翻訳に問題があるのかもしれませんが、自分のコーチしている選手をかばおうという意識が強いのか、騒ぎを大きくしたメディアを悪者に仕立て上げて、全ての問題を曖昧にしようとしている発言にしか聞こえません。
それが彼の役割だということならば、やはり彼は優秀なコーチなのでしょう。

もっとも、彼は試合中のコーチングを認める立場で、実際に“前科”もある人物ですので、今回の主張もそう考えれば、さもありなんといったところでしょうか。

※9/12追記
「ステファノス・チチパスのために一言だけ言わせてほしい。彼は何も間違ったことをしていない。僕は彼を応援するよ。問題はルールがはっきりしていないことだ。いろんな意見があるだろうし、議論になるけど、この数週間この話題で盛り上がっていた。彼はこれほどまでにメディアや人々から攻撃されるようなことはしていない。」
「「チチパスはこれほど攻撃されるようなことをしていない」準決勝後のオンコートインタビューで語ったジョコビッチ」
(テニスマガジンONLINE)

ジョコビッチもムラトグルーと同意見のようですね。

※2022/6/23追記
男子にもコーチングが試験的に導入されるとのことです。
「男子ツアーでコーチングを試験的に導入。肯定派のムラトグルーは「慣習を“合法化”したことを祝福する」と皮肉」(テニスクラシック公式サイト)
レベルの低い方にルールを合わせないといけないのは残念ですが、高額な賞金がかかるプロスポーツでは性善説が通用しないのが現実なのでしょう。



勝利至上主義はスポーツの価値を貶める。ルールは何のためにあるのか?(チチパスのトイレットブレーク問題)

2021年09月07日 | ひとりごと

開催中のUS OPEN男子シングルス1回戦でフルセットの末に敗れたマレーによる、対戦相手のチチパスが第4セット終了後8分以上に及ぶ長いトイレットブレークをとったことに対する批判が話題になっています。

「彼に対する敬意をなくした」
「ナンセンスだ。彼自身そのことをわかっているはずだ」
「試合後にマレーが不快感を抱いていることを伝えられた23歳のチチパスは、「もし彼が僕に言いたいことがあるなら、2人で話して何がよくなかったのか理解する必要がある。僕は自分がルールに違反したとは思わない」と答えた。」
「マレーがチチパスの長いトイレットブレークによる遅延行為を批判「ナンセンスだ」( テニスマガジンONLINE)

「僕はルール通りにやっただけで、破っていない。ルールの中にトイレブレークでトイレで過ごす時間について何も書かれていない。あの時間は重要なんだ。何よりも汗で重たくなったウェアを着替えて軽くなる。フレッシュになり、汗が体中から滴り落ちることがなくなる。気分がよくなるんだ。僕にとっては重要な時間だけど、必要ない選手もいるだろう。どの選手にも自分の時間を取ることができる。僕はできるだけ急いで戻るようにしている。たまにちょっと時間が必要になることがある。それだけさ」
「もし僕がルールを破ったら、自分が悪い。自分の過ちを認めるしかない。でも、ルールを守っているなら何が問題なんだ?」
「僕はこれまですべてをルール通りにやってきた。もししていなかったら、罰せられるはずだ。それには完全に同意する。自分が間違いを犯したのなら、罰金なりが課せられてしかるべきだ。でも、僕がやっているのは必要なことで、試合中に必要なこと」
「「僕にはトイレブレークが必要。ルールを守っているのに何が悪い?」2回戦後、記者に反論するチチパス」( テニスマガジンONLINE)


マレーはルール違反を指摘しているのではなく、「リスペクトがなくなった」と発言しています。
自分が負けた腹いせも混ざっているとはいえ、世界3位がセコいことするなよと言いたいのでしょう。
一方チチパスはルールの範囲で勝つために最善の戦略をとって何が悪いという考えなので、議論がかみ合わないのだと思います。

グランドスラムタイトルも取っていないチチパスにしてみれば自分はまだチャレンジャーで、何が何でも勝つことが大事な立場でしかないと考えているのかもしれませんが、マレーに言わせれば、彼がフェデラーやナダル、ジョコビッチのようなレジェンドを目指しているのなら志が低すぎて話にならないということなのでしょう。

チチパスがもう少し経験を積み、タイトルを重ねてマレーも含めたBIG4クラスの選手に近づけば、自分が批判されていることの意味がわかるようになるかもしれませんし、そこまで偉大な選手になれず、その意味がわからないまま選手寿命を終えるかもしれません。
それも今後の彼の成長次第でしょう。

確かにトイレットブレークの厳密な時間は規則では定められていません
だからといってそれを逆手に取り、戦略的に使うことがあからさまな事例が増えているとすれば、対応策として時間をルールに明記するしかなくなってしまいます。
そもそも性善説に基づいて作られた規則が選手達自身の振る舞いによってないがしろにされ、結局規則そのものを変更するはめになってしまう。
自分達でルールにがんじがらめにされる状況を招いてしまうのは残念なことです。

「あまりにも曖昧よ。テニスのはっきりしないルールのひとつだわ。アンディが不平を述べているのはそのことについてなのよ」
「全米テニス協会(USTA)はプレーのリズムは「我々のスポーツでは重要な問題」であるとし、トイレ休憩や着替え休憩などゲームの公平性と完全性を確保できるルールの調整を引き続き検討すると表明した。」
「ATP(男子プロテニス協会)が運営する男子ツアーではトイレ休憩とメディカルタイムアウトを管理するルールに関する見直しがここ何ヵ月に集中して取り組んでいる分野であると述べ、それを現在進行中の仕事だと呼んだ。WTA(女子テニス協会)が運営する女子ツアーは試合中のトイレ休憩を2回から1回に変えたことに言及し、「他のルールと同じように、WTAは常にオープンな会話の機会を持って変更が必要なときには規則を改訂しています」と説明した。」
「フラッシングメドウで論争を巻き起こしたテニスのトイレ休憩問題、暗黙のルールは存在するのか? 」( テニスマガジンONLINE)

ただし別の問題として、チチパスに関してはブレーク中にメールでコーチングを受けていたのではないかという疑惑もあります。

「選手は皆、気付いている。彼は世界ナンバー3の選手だ。テニス界のトップ選手なんだ。その力があるのだから、そういうことをする必要がない。このような問題はジュニア、フューチャーズ、チャレンジャーなどの大会で起こるもの。世界トップ3の選手に起きてはいけない問題だ」
「あの試合でステファノスは10分以上コートを離れた。彼の父は彼の携帯にメッセージを送っていた。それから完全に彼の戦術は変わった。僕だけじゃなく、皆が目撃した。ゲームが完全に変わったんだ。何か魔法がかかった場所に行っているのか、そこでコミュニケーションを取っている」
「チチパスはシンシナティのトイレブレークで父からのメールを見ていた」1回戦突破のズベレフ」( テニスマガジンONLINE)

ズベレフの発言が事実なら、これについては現状でも完全なルール違反である以上明らかにされるべきですし、チチパスも濡れ衣だと主張するなら、自身の名誉のためにも潔白を証明した方がよいでしょう。
スマホを持っていくこと自体が怪しまれる行為なのですから、コートに置いていけばいいだけのことで、そこをチェックしない審判にも責任があります。
そんなことまでいちいち調べないといけないのはプロとして情けない限りではありますが…。

私自身、ルールの範囲なら何をやっても勝てばいいというような考えに辟易するようになったのは自身が現役を離れてからでした。
勝つことで報酬を得られるプロスポーツの世界では尚更そうなるのは理解しますが、勝ち負けだけに価値を求めるのはいい加減やめにしないと、競技スポーツの意義そのものがこれ以上高まることもなくなってしまうように思います。
勝利至上主義はメリットよりも弊害の方が大きくなっている現状をスポーツ関係者自身が真剣に考える時期にきているのではないでしょうか。

※9/7追記
「 女子テニスでも同じようなことがたくさん起きている。ゲームスマンシップの問題かな。間違いなくルールの改正が必要だと思う。小さな変更は結構頻繁に行っている。例えば、ウォームアップの時間が1分短くなった。でも、誰かがトイレに9分間籠っても何も言われない。細かいところで改善すべき点はたくさんある。今は大きな話題となり、さらに人々に注目されると思う。これをきっかけにゲームスマンシップが少し変わるかもしれない」 「試合中にコートから7、8分も離れるべきじゃないと思う。その行為は試合の流れを完全に変えてしまう。着替えるだけなのに、何を変えているの? 何をしているの? 数年前、女子はトイレブレークが3分以内と定められていたと思う。汗で濡れたスポーツブラを交換するのは、凄く大変なの。あなたは変えたことがないと思うけど、5分は必要だと思う。でも6~9分もかけていたら、そこで何をしているの?となる。助けが必要なの? 私が助けてあげようか? 何をしているの? そこが論点だと思う、ゲームスマンシップの問題だから」
「「8分もトイレで何をしているの?」トイレブレークに時間制限を設けるべきというスティーブンス」 ( テニスマガジンONLINE)

「彼は別に悪いことはやっていない。規則が間違っているんだ」