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 Ashe店長のテニスショップ業務連絡

  四国の片田舎にあるテニススクール&ショップの宣伝日誌です。
  現在はX(旧Twitter)メインで更新中。

プロなら全日本を狙え!

2022年11月03日 | ひとりごと
「やっぱり全日本っていうのはチャレンジしてる側の方がパフォーマンスが出るんですよ。で、チャレンジされる側っていうのはやっぱりきついです。特にね、全日本マジックっていう言葉があるぐらい、やっぱりメンタルとかそういうところにすごく影響して、それが嫌で出ない選手もいる。
1回取ったらもう嫌とか、他を優先したいっていう気持ちはわかるけど、結局ランキングを上げるにはチャレンジが必要。そしてランキングが上がらない選手が上げるには、”チャレンジされている時にどれだけ勝てるか”なんですよ。」

「1回戦ワイルドカード、2回戦ラッキールーザー、3回戦自分よりランキングが低い相手っていう時が結構あるんですが、やっぱりそういうところを取りこぼさないで勝てるやつらが、やっぱりランキングが上がっていく。
ナダルやジョコビッチだって、いつもチャレンジされている訳じゃないですか。それでもああやって勝ちきってくる。だからそれを鍛えるには日本人にとって全日本っていうのが一番いいと僕は思ってます。」

「最近これだけ歳くって、これだけ長くやって気づいたことで、だから全日本には出られるならば出た方がいいと思う。
僕らもチャレンジされる側で優勝するのとでは全然違う。だから僕はもしスケジュール的にも、体も大丈夫だったら、3回目だってチャレンジされる側でやりたい。それくらいギリギリの所でやらないと世界は近づかないと思うんですね。」

「もちろん全日本の価値をもっと上げていかなきゃいけないというのもあるけど、選手としてもそういうところで出場するモチベーションがあってもいいんじゃないかなと思います。」

「全日本のその意味とか価値を、選手も低くしていると思う。僕が20代のときは、出ている選手は、全員日本のトップ10だったわけです。ダブルスだって添田(豪)・岩見(亮)だったり、石井(弥起)・近藤(大生)だったり、今で言えば西岡(良仁)とダニエル太郎が出てたわけです。時代は違いますけど、でもやっぱそこで切磋琢磨していくことも必要かと。
パンデミックもある中、国内で盛り上げていくことも、今やらないと駄目だと思うんです。世界世界って言ってるだけではなく、僕はこういう国内の大会で勝つのも必要だと思うし、こういうところで勝って世界でやるというスタンスが、一番いいと思う。」

「全日本に出ているから世界へいけないっていうのはない。古い考えかもしれないですけど、それ大事だと思います。」
「上杉海斗&松井俊英が2連覇達成!「僕の持論なんですけど…」松井が語った出場する価値とは?【全日本テニス選手権】」(Tennis.jp)

 
44歳で今年の全日本選手権ダブルスを制した松井俊英選手の会見でのコメントです。
私も彼の主張に同意します。
簡単に言えば、「全日本で勝てないのに、あるいは全日本から逃げているのに、世界で活躍などできるのか」ということです。

錦織や大坂のように全日本に出るまでもない世界レベルの実力がある者、ジュニア時代から海外を拠点に世界のツアーシステムの中で活動してきた者ならともかく、日本国内で活躍してきたなら、まず「日本一にならないと世界に出る資格などない」くらいのプライドはもってもらいたいし、まだ全日本を獲っていないなら世界を回っていてもその大会には帰ってきてタイトルを狙ってほしいと思います。

大会そのものに魅力がないという指摘もあるようですし、今の全日本選手権にも問題はあるでしょうが、シングルスの優勝賞金(400万円)はチャレンジャー(最高200万円程度)より高額ですから、西岡らATPを主戦場にツアー回っている選手以外にとっては待遇が悪いとも思えません。
先日引退した斉藤貴史プロも同様の発言をされています。

海外の下部ツアーを回り続けるのはもちろん厳しいでしょうし、そこで戦っている選手個々にも事情や言い分があると思います。
とはいえ、そこから抜け出せず、そのレベルで勝った負けたと一喜一憂している前にまず全日本を獲る。
少なくともそこに挑み続ける気概くらいはプロとして持ち合わせていてほしいと願います。
 
 
 

一線を超えたズベレフの振る舞い

2022年02月24日 | ひとりごと

「世界3位ズベレフが暴挙、ダブルス敗戦後、審判台をラケットで何度も叩きつける[メキシコ・オープン]」(テニスクラシック公式サイト)

「ズべレフの暴挙に非難相次ぐ、独「ビルト」紙は“完全に気が狂った”と報道」(テニスクラシック公式サイト)

「マレー、ズベレフのいら立ちに理解示すも行為は「危険で無謀」と批判」(テニスクラシック公式サイト)


動画を確認しましたが、ただのラケット破壊ではなく、明らかに暴力による加害行為であり、一つ間違えば座っている主審が負傷していてもおかしくありません。
これを許せばもうスポーツは成り立たなくなります。

ここでも何度も発言してきましたが、未熟なジュニアならまだしも、立派な成人でしかも世界3位のトッププレーヤーが感情的になり自身をコントロールできないなら見苦しい限りですし、威嚇のために意識的に審判台を叩いたとしたら、尚更悪質です。

意識的であろうと無意識であろうと、試合中に人を傷つけかねないような行為をするような人物に、プロテニスプレーヤーとして高額な賞金が出るような大会に出場する資格はありません。
「トップ選手は普通の人では考えられない重圧と戦っている」などという言い訳は聞き飽きましたし、それは他の競技でも同じはずです。
これが他のプロスポーツなら、少なくとも数試合、あるいは数ヶ月の出場停止処分は免れないでしょう。
個人的には無期限の出場停止でもいいと思います。

ジュニアの頃からこういう傲慢な態度を許し、選手を甘やかしてきた結果、彼のような未熟な人間にテニスが強いからというだけで大金と社会的ステータスを与え、それが当然だと言うなら、プロテニスそのものが異常な社会だと言わざるを得ませんし、そこでプレーする選手に対してもリスペクトできません。

東京五輪をめぐる騒動での選手の言動なども見てきましたが、今の社会はスポーツの価値が高まりすぎ、さらにそれがビジネスと結びついて「金のなる木」となった結果、トップアスリートは人としての最低限のモラルや常識を超えた特別なものであり、何をしても許されるといった状況が生まれています。

長年スポーツに携わってきた一人として、このままではこの先スポーツそのものが関係者達自身の傲慢なふるまいによって貶められ、その価値を下げることにもなりかねなくなることを危惧しています。

とりあえずズベレフには「グッドルーザー」の概念をきちんと噛み締めて、今回の責任をきちんと取った上で、トッププレーヤーとしてだけでなく、人としての振る舞いを実践する姿を見せてほしいと願います。

「ズベレフ、暴言および審判台をラケットで叩いた行動を謝罪「ファン、大会、僕が愛するスポーツに対しても謝罪したい」」(テニスクラシック公式サイト)

ズベレフも流石に反省の態度を見せているようです。
今後のATPの処分および彼の言動を注視しておきます。

※2022/3/8追記
「ATPは、ATP500アカプルコ大会ダブルス1回戦でのアレクサンダー・ズべレフ(ドイツ/世界ランク3位)の暴挙を検証し、2万5千ドル(約289万円)の追加罰金と、8週間にわたるATP公認イベントへの出場停止処分を科すと発表した。ただし、2023年2月22日(当該試合から1年)までの保護観察期間中に、同選手がさらに罰金につながる規定違反を起こさなかった場合は、罰金と出場停止処分が保留される。」
「この決定に対し、ズベレフは3月11日までに異議を申し立てることができるとしている。」
「ズべレフの暴挙にATPが保護観察期間を設けるも追加の罰金、8週間の出場停止処分を科す」
(テニスクラシック公式サイト)


選手をかばうコーチは優秀?(続・チチパスのトイレットブレーク問題)

2021年09月12日 | ひとりごと

前回の続きで、問題についてチチパスのコーチのトリック・ムラトグルーがコメントしました。
長いですが要旨を掲載します。

「選手は試合で相手のことではなく、自分のプレーに集中している。自分が何をすべきか、どううまくやれるかにフォーカスしている。選手がトイレブレークを取るのは、ほとんどが尿意のためではない。リセットするための時間なのだ。だから、セットを落としたときに取るケースが多い。ひとりになって気持ちを落ち着かせて、次のセットを取るための方法を考えるのだ。ステファノスがトイレでしているのは、それだけだ。もちろんウェアを着替えてリフレッシュもするが、ロッカールームで一人になり、自分で考えるんだ。何を変えれば勝てるのかをね。相手のリズムを崩すためだけにトイレブレークを取っているという主張は馬鹿げている」

「彼はセットを取った直後にトイレブレークを取った。自分のリズムがいいのに、それを崩そうとはしないはずだ。そんなのは彼のメンタリティではない。周囲が評価すべきは2つのポイント。一つ目はステファノスがルールを守っているのかどうか。ルールを破っているのか? 彼はどのルールも破っていない。だから、不正だと言うのは正しくない。不正はルールを破ることである。2つ目は、トイレブレークがスポーツマンシップに反するというものだ。それも違う。何故なら、すべての偉大な選手は自分のことに集中しているからだ」

「トイレブレークは長すぎたのか、そうではなかったのか。スタジアムで観戦しているファンにとっては長過ぎたと思う。私は前から主張しているが、テニスの試合自体が長過ぎると思っている。6分のトイレブレークは長過ぎる。3分で十分だ。長くても5分か。私は以前からトイレブレークが長過ぎると、何度も何度も主張してきた。トイレブレーク自体は悪いことではない。でもルールを作る必要がある。ATP、WTA、ITFがルールを作るべきだと思う。トイレブレークの時間をルールで決めれば、それでこの問題は解決する」

「ステファノスが今年のフレンチオープン決勝でノバク・ジョコビッチ(セルビア)に負けたとき、2セットをリードしていた。そこでジョコビッチがトイレブレークを取り、戻ってくると試合の流れが完全に変わった。彼はそこから学んだ。ジョコビッチが自分のリズムを崩したと学んだ訳ではない。ジョコビッチがロッカールームで自分だけの時間を取り、気持ちをリセットして違った状態で戻ってきたことを学んだのだ。気持ちをリセットして勝つための方法を見つけるいい方法だと思った。それを彼自身が試してみたら、うまくいった。だから、それを継続している」

「選手名は挙げないが、ポイント間で多くの時間を取る選手、たくさんガッツポーズをする選手がいる。相手がサービスをする準備ができているのに、物凄くゆっくりコートに出てくる選手もいる。相手のリズムを崩そうとしている訳じゃない。自分にとってゆっくり歩くことがいいことだからやっている。相手がサービスの準備ができていて、待っていることなどほとんど気にしない。ステファノスのトイレブレークを批判している選手に限って、ファーストサーブとセカンドサーブの間に長い時間を取るものだ」

「ステファノスの仕事はテニスの試合に勝つことで、それに情熱を注いでいる。グランドスラム大会で勝つためにテニスをしており、それが使命でもある。まだ達成できていないが、そのために一生懸命やっているし、そのために生きている。彼は人々を満足させるためにプレーしている訳じゃない。彼はアスリート、競争者だからグランドスラム大会で勝つためにプレーしている。彼は人が大好きで、知り合いになれば物凄く優しい青年だ。私が知っている他の多くの選手よりも人のことを考えている」

「メディアには一つのことを一面からしか見えないようにする力がある。この数週間に起きているのは、まさにそれだ。ファンがステファノスに対して悪いイメージを持っているのは理解できる。メディアがそう仕向けているからだ。ステファノスが相手のリズムを崩すため、父にメールをするためにトイレに行っているように見せかけられている。事実はまったく反対だ。彼がトイレに行ったのは、気持ちをリセットしてコートを去ったときよりもいいマインドセット、クリアな頭で戻ってくるためだ。試合に勝ちたいからね。もちろん父にメールなどしていない。そんなことは考えてもいないし、できない。彼はアスリートだし、大会の係員がトイレまで一緒についていっている」

「ステファノスはイカサマなどしていない。今とても苦しんでいる。でも、謝ることができない。自分のやるべきことをしているだけなのだから。勝つために仕事をしている。他の選手同様、自分のことにフォーカスしている。この騒動はもちろん、彼に悪い影響を与えている。もし試合中にすべての観客が自分を敵視していたら、それはフェアじゃない」
「「物事が一方方向からしか見られていない」チチパスのトイレブレーク騒動の本質を語るムラトグルー氏 」(テニスマガジンONLINE)

原文を読んでいないので本意がわかりませんが、この記事の発言だけを見ると論理的整合性がありません。

彼は「相手のリズムを崩すためだけにトイレブレークを取っているという主張は馬鹿げている」と言っていますが、そもそも誰もそんな主張はしていませんし、もしそう主張している人物やメディアがいるとすれば具体的、個別に指摘するべきです。

またチチパスは「どのルールも破っていない。だから、不正だと言うのは正しくない」と主張するなら、ルールを作る必要もないでしょう。
ファンのためにルールが必要と言うなら、彼のブレークは不正ではないがやはり長すぎることは認めないと辻褄が合いません。

「トイレブレークを批判している選手に限って、ファーストサーブとセカンドサーブの間に長い時間を取る」という皮肉も、具体的に誰がそうなのかを言わないと、今回で言えばマレーやズベレフなど、この問題を批判している全ての選手を敵に回すことになってしまいます。

チチパスが「父にメールなどしていない」と断言しているのも、あくまで彼の推測でしかありません。
ならばズベレフの証言は嘘だということになり、どちらも具体的証拠が挙がらない以上、水掛け論にしかなりません。
それとも本人はメールしていなくても、父からのメールを見た可能性はあるとでも言いたいのでしょうか?。

翻訳に問題があるのかもしれませんが、自分のコーチしている選手をかばおうという意識が強いのか、騒ぎを大きくしたメディアを悪者に仕立て上げて、全ての問題を曖昧にしようとしている発言にしか聞こえません。
それが彼の役割だということならば、やはり彼は優秀なコーチなのでしょう。

もっとも、彼は試合中のコーチングを認める立場で、実際に“前科”もある人物ですので、今回の主張もそう考えれば、さもありなんといったところでしょうか。

※9/12追記
「ステファノス・チチパスのために一言だけ言わせてほしい。彼は何も間違ったことをしていない。僕は彼を応援するよ。問題はルールがはっきりしていないことだ。いろんな意見があるだろうし、議論になるけど、この数週間この話題で盛り上がっていた。彼はこれほどまでにメディアや人々から攻撃されるようなことはしていない。」
「「チチパスはこれほど攻撃されるようなことをしていない」準決勝後のオンコートインタビューで語ったジョコビッチ」
(テニスマガジンONLINE)

ジョコビッチもムラトグルーと同意見のようですね。

※2022/6/23追記
男子にもコーチングが試験的に導入されるとのことです。
「男子ツアーでコーチングを試験的に導入。肯定派のムラトグルーは「慣習を“合法化”したことを祝福する」と皮肉」(テニスクラシック公式サイト)
レベルの低い方にルールを合わせないといけないのは残念ですが、高額な賞金がかかるプロスポーツでは性善説が通用しないのが現実なのでしょう。



勝利至上主義はスポーツの価値を貶める。ルールは何のためにあるのか?(チチパスのトイレットブレーク問題)

2021年09月07日 | ひとりごと

開催中のUS OPEN男子シングルス1回戦でフルセットの末に敗れたマレーによる、対戦相手のチチパスが第4セット終了後8分以上に及ぶ長いトイレットブレークをとったことに対する批判が話題になっています。

「彼に対する敬意をなくした」
「ナンセンスだ。彼自身そのことをわかっているはずだ」
「試合後にマレーが不快感を抱いていることを伝えられた23歳のチチパスは、「もし彼が僕に言いたいことがあるなら、2人で話して何がよくなかったのか理解する必要がある。僕は自分がルールに違反したとは思わない」と答えた。」
「マレーがチチパスの長いトイレットブレークによる遅延行為を批判「ナンセンスだ」( テニスマガジンONLINE)

「僕はルール通りにやっただけで、破っていない。ルールの中にトイレブレークでトイレで過ごす時間について何も書かれていない。あの時間は重要なんだ。何よりも汗で重たくなったウェアを着替えて軽くなる。フレッシュになり、汗が体中から滴り落ちることがなくなる。気分がよくなるんだ。僕にとっては重要な時間だけど、必要ない選手もいるだろう。どの選手にも自分の時間を取ることができる。僕はできるだけ急いで戻るようにしている。たまにちょっと時間が必要になることがある。それだけさ」
「もし僕がルールを破ったら、自分が悪い。自分の過ちを認めるしかない。でも、ルールを守っているなら何が問題なんだ?」
「僕はこれまですべてをルール通りにやってきた。もししていなかったら、罰せられるはずだ。それには完全に同意する。自分が間違いを犯したのなら、罰金なりが課せられてしかるべきだ。でも、僕がやっているのは必要なことで、試合中に必要なこと」
「「僕にはトイレブレークが必要。ルールを守っているのに何が悪い?」2回戦後、記者に反論するチチパス」( テニスマガジンONLINE)


マレーはルール違反を指摘しているのではなく、「リスペクトがなくなった」と発言しています。
自分が負けた腹いせも混ざっているとはいえ、世界3位がセコいことするなよと言いたいのでしょう。
一方チチパスはルールの範囲で勝つために最善の戦略をとって何が悪いという考えなので、議論がかみ合わないのだと思います。

グランドスラムタイトルも取っていないチチパスにしてみれば自分はまだチャレンジャーで、何が何でも勝つことが大事な立場でしかないと考えているのかもしれませんが、マレーに言わせれば、彼がフェデラーやナダル、ジョコビッチのようなレジェンドを目指しているのなら志が低すぎて話にならないということなのでしょう。

チチパスがもう少し経験を積み、タイトルを重ねてマレーも含めたBIG4クラスの選手に近づけば、自分が批判されていることの意味がわかるようになるかもしれませんし、そこまで偉大な選手になれず、その意味がわからないまま選手寿命を終えるかもしれません。
それも今後の彼の成長次第でしょう。

確かにトイレットブレークの厳密な時間は規則では定められていません
だからといってそれを逆手に取り、戦略的に使うことがあからさまな事例が増えているとすれば、対応策として時間をルールに明記するしかなくなってしまいます。
そもそも性善説に基づいて作られた規則が選手達自身の振る舞いによってないがしろにされ、結局規則そのものを変更するはめになってしまう。
自分達でルールにがんじがらめにされる状況を招いてしまうのは残念なことです。

「あまりにも曖昧よ。テニスのはっきりしないルールのひとつだわ。アンディが不平を述べているのはそのことについてなのよ」
「全米テニス協会(USTA)はプレーのリズムは「我々のスポーツでは重要な問題」であるとし、トイレ休憩や着替え休憩などゲームの公平性と完全性を確保できるルールの調整を引き続き検討すると表明した。」
「ATP(男子プロテニス協会)が運営する男子ツアーではトイレ休憩とメディカルタイムアウトを管理するルールに関する見直しがここ何ヵ月に集中して取り組んでいる分野であると述べ、それを現在進行中の仕事だと呼んだ。WTA(女子テニス協会)が運営する女子ツアーは試合中のトイレ休憩を2回から1回に変えたことに言及し、「他のルールと同じように、WTAは常にオープンな会話の機会を持って変更が必要なときには規則を改訂しています」と説明した。」
「フラッシングメドウで論争を巻き起こしたテニスのトイレ休憩問題、暗黙のルールは存在するのか? 」( テニスマガジンONLINE)

ただし別の問題として、チチパスに関してはブレーク中にメールでコーチングを受けていたのではないかという疑惑もあります。

「選手は皆、気付いている。彼は世界ナンバー3の選手だ。テニス界のトップ選手なんだ。その力があるのだから、そういうことをする必要がない。このような問題はジュニア、フューチャーズ、チャレンジャーなどの大会で起こるもの。世界トップ3の選手に起きてはいけない問題だ」
「あの試合でステファノスは10分以上コートを離れた。彼の父は彼の携帯にメッセージを送っていた。それから完全に彼の戦術は変わった。僕だけじゃなく、皆が目撃した。ゲームが完全に変わったんだ。何か魔法がかかった場所に行っているのか、そこでコミュニケーションを取っている」
「チチパスはシンシナティのトイレブレークで父からのメールを見ていた」1回戦突破のズベレフ」( テニスマガジンONLINE)

ズベレフの発言が事実なら、これについては現状でも完全なルール違反である以上明らかにされるべきですし、チチパスも濡れ衣だと主張するなら、自身の名誉のためにも潔白を証明した方がよいでしょう。
スマホを持っていくこと自体が怪しまれる行為なのですから、コートに置いていけばいいだけのことで、そこをチェックしない審判にも責任があります。
そんなことまでいちいち調べないといけないのはプロとして情けない限りではありますが…。

私自身、ルールの範囲なら何をやっても勝てばいいというような考えに辟易するようになったのは自身が現役を離れてからでした。
勝つことで報酬を得られるプロスポーツの世界では尚更そうなるのは理解しますが、勝ち負けだけに価値を求めるのはいい加減やめにしないと、競技スポーツの意義そのものがこれ以上高まることもなくなってしまうように思います。
勝利至上主義はメリットよりも弊害の方が大きくなっている現状をスポーツ関係者自身が真剣に考える時期にきているのではないでしょうか。

※9/7追記
「 女子テニスでも同じようなことがたくさん起きている。ゲームスマンシップの問題かな。間違いなくルールの改正が必要だと思う。小さな変更は結構頻繁に行っている。例えば、ウォームアップの時間が1分短くなった。でも、誰かがトイレに9分間籠っても何も言われない。細かいところで改善すべき点はたくさんある。今は大きな話題となり、さらに人々に注目されると思う。これをきっかけにゲームスマンシップが少し変わるかもしれない」 「試合中にコートから7、8分も離れるべきじゃないと思う。その行為は試合の流れを完全に変えてしまう。着替えるだけなのに、何を変えているの? 何をしているの? 数年前、女子はトイレブレークが3分以内と定められていたと思う。汗で濡れたスポーツブラを交換するのは、凄く大変なの。あなたは変えたことがないと思うけど、5分は必要だと思う。でも6~9分もかけていたら、そこで何をしているの?となる。助けが必要なの? 私が助けてあげようか? 何をしているの? そこが論点だと思う、ゲームスマンシップの問題だから」
「「8分もトイレで何をしているの?」トイレブレークに時間制限を設けるべきというスティーブンス」 ( テニスマガジンONLINE)

「彼は別に悪いことはやっていない。規則が間違っているんだ」

会見拒否は選手の権利か?

2021年05月28日 | ひとりごと

大坂なおみ選手が今年の全仏オープンでメディアの取材に一切対応しない、試合後の会見も罰金を払って欠席することを自身のTwitterで公表しました。

以下はNHKのネットニュースによる全文和訳です。

「皆さんお元気であることを願っています。 
私は全仏オープン(ローランギャロス)で一切取材に応じないつもりであることを伝えるために書いています。
私は人々がアスリートの精神状態のことを 考慮していないと、しばしば感じてきました。
これは記者会見を見たり、会見に出たりするときにいつも実感することです。私たちは会見場に座って、以前に何度も尋ねられた質問を受けたり、私たちの心に疑念をもたらすような質問をされたりしていて、私はただ私を疑う人々に自分をさらすつもりはないのです。
私は試合で負けたあと、会見場で気落ちしたアスリートの映像をたくさん見てきましたし、皆さんもご覧になっているはずです。
私は状況全体が、落ち込んでいる人を傷つけていると信じていて、そうなっている根拠はわかりません。私が記者会見に応じないのはトーナメントに対する個人的な不満があるわけではありませんし、私が若かったころから、私にインタビューしてきた数人のジャーナリストがいるので、大半と友好的な関係を築いています。
しかし運営組織が『記者会見をするか、さもなくば罰金だ』と言い続けることができると考え、協力の要であるアスリートの精神状態を無視し続けるのであれば、ただ笑ってしまいます。ともかくこれで支払う多額の罰金がメンタルヘルスの慈善団体に向かうことを願っています」

大会の賞金には試合後の会見のいわば出演料も含まれているので、応じない選手に対しては罰金という名目でそれが賞金から差し引かれます。
とはいえ彼女レベルの獲得賞金からみれば問題にならない額なので、お金のことだけなら罰金払えばOKなんでしょという取引をする方が、選手サイドからすれば合理的なのでしょう。

しかし、それで済む話かと言えばそうではなく、試合直後に何を考え、何を主張したいかをファンや関係者に伝えること自体がプロアスリートにとって重要な役割の一つでもあります。

そういう競技以外の活動がテニスの注目度を上げてファンを増やし、結果としてスポンサーを集め、多くの大会が開催され、自分達がプロとして活動できる下地になっていること、それを先人たちがここまで作り上げてきたということ、自分だけの問題ではないということにも配慮して欲しいのです。
そういう点はおそらく彼女もわかっているはずだと思いますが…。

問題はメディアとの信頼関係が気づけなくなっていることで、取材とは言え意味があるのかどうかわからない質問を繰り返したり、わざと相手の気分を損ねるような記者がいるのも確かなのでしょう。

そう考えれば、こういう状況を招いたのはメディア側にも責任がないとはいえません。

正当な理由がない限りオフィシャルの会見を拒否する権利は選手にないと私は思いますが、つまらない質問に対して答えないという権利はあると思います。
ですから、そこで答える答えないのやりとりが生まれれば、質問する記者もいかに相手に答えさせるかをという取材能力を試されることになり、そういう緊張感のある会見が結果的にはメディアの質も上げることに繋がるのではないでしょうか。

いずれにせよ会見拒否は本人も含め、メディアや大会主催者、スポンサー、ファン誰にとっても不幸なことなので、円滑な会見が開かれるよう、お互いが歩み寄って改善すべき点を見直してもらいたいものです。

※5/28追記・関係者の反応(記事引用)

「これはとんでもない間違いであり、強力な規定が必要かもしれないほどの事態だ」
「私の意見では、このようなことは許されることではない。われわれはテニスの促進を目指している」
「大会が進むにつれて、大坂がどのように振る舞うか見守っていく。彼女が今後どのような態度に出るか分からないが、それはあまり前向きなメッセージの発信とはならないだろう」
(「大坂の会見ボイコットは「とんでもない間違い」仏テニス協会会長」AFPBB News)

「記者会見が不快なものであることはわかる。特に試合に負けた後の会見は、必ずしも楽しいものではない」
「会見に応じることも僕たちのスポーツの一部であり、ツアーでの生活の一部でもある。それは僕たちがやらなければいけないことなんだ」
(「ジョコビッチが大坂なおみの“記者会見拒否“に苦言!「応じることも僕たちのスポーツの一部」」THE DIGEST)

 
「嫌なこともあるが、大会で賞金をもらって、いろんな人が大会をつくってくれる。それを考えると、しなきゃいけないことかなと思う」
「メディアがニュースや結果を書いてくれないなら、おそらく今のような(立場の)選手になれない。世界的な認知度も得られないし、あれほどの人気者にもなれない」
「会見は仕事の一部。大変なこともあるが、夜も眠れないということはない。気にしたことはない」
(「大坂なおみの会見拒否、錦織圭は理解も「やらなきゃいけないこと」私見 」 日刊スポーツ)

砂入り人工芝コートの終焉

2021年03月10日 | ひとりごと

現在、日本で主流になっている砂入り人工芝コート。
しかし世界ではあまり普及しておらず、競技の強化の面では弊害になっているという指摘が以前からありました。

もっともはっきりと主張しているのが伊達公子さん。

「伊達公子「世界基準へハードコート普及を」」(日本経済新聞)
「「“体にやさしい”は思い込み」伊達公子が批判… 日本で5割を占める“砂入り人工芝”コートと、育成の大改革案とは」( Number Web)

伊達さんの意見はごもっともなのですが、建設後の手入れが比較的容易で水はけもよく、ハードコートほど球足が早くない砂入り人工芝コートが日本国内でのテニスの普及に貢献したというのは紛れもない事実だと思います。

「オムニコートは日本だけ?!砂入り人工芝コートがもたらした日本テニス界への功罪」( VICTORY)

「砂の量が均一ではないので滑る場所が予測できず、むしろ足腰に負担がかかります」というのも、裏を返せばきちんと均一になるよう砂をこまめに補充して、毎日しっかり整備をしていれば足腰や膝の負担は軽いということです。
問題はその整備がきちんとできていないコートが多いということなのですが…。

日本の場合はこれとは別の問題もあります。
それは国内の公営コートは硬式・軟式の共用を前提に設置されているということです。

ソフトテニスはクレーまたは砂入り人工芝コートでの大会開催がメインで、ルール上はハードコートも使用できるのですが、大きな大会での使用実績は少ないのが現状です。

ただし海外ではハードコートでの大会も開催されているとのことですので、国際化を目指すなら国内でも今後ハードコートを使用する機会は増えていくのではないでしょうか。

1980年代後半から普及した砂入り人工芝コートの多くは老朽化で改修の時期を迎えています。
廃棄物処理の問題や技術革新によるハードコートや人工クレーコートの品質向上など多くの要因により、新設も含め砂入り人工芝以外のサーフェスを選ぶ施設も増えています。

まだまだ日本では主流とはいえ、今後砂入り人工芝コートは徐々に減少し、その役割を終えつつあるというのが時代の流れでしょう。


ジャッジの自動化は時代の流れ

2021年02月09日 | ひとりごと

今、プロツアーの世界で話題になっている問題の一つに、ジャッジの自動化の是非があります。

これまでもメインコートには自動判定装置が設置され、それを利用したチャレンジシステムというルールも整備され、判定に疑いがある場合は選手が確認を要求することはできました。

それが昨年流行した新型コロナウイルスの感染拡大防止策として、線審などの大会関係者をできる限り減らそうとする目的で全てのコートで自動判定装置によるジャッジが試験的に導入されています。

最初に大きな大会で採用されたのは昨年のツアーファイナルでした。
インドアで参加選手も限られていたことで、使用コート数も少なかったため、比較的スムーズに導入が進み、選手にも高評価を得ましたが、一部の選手からは全ての判定を機会に委ねることの懸念も指摘されました。

「ナダル「線審のいる伝統的なコートの方がずっといいと思う」。ライン判定に自身の考え示す」(THE TENNIS DAILY)

そして2021年の全豪オープンでも全コートのラインジャッジが自動化されています。
こちらでも選手からは好意的な反応が大多数のようです。

「全豪OPで「自動線審」導入 大坂、ジョコらは支持」(AFPBB News)

ジョコビッチや大坂ら選手や関係者の意見を総合すると、ジャッジの正確性やチャレンジシステムの煩わしさから開放されることに関しては絶賛のようです。

今まではメインコートでしかチャレンジが仕えなかったこともあり、試合の公平性の点からも、自動化を採用するなら全コート導入が望ましい。
ただしそれは全豪のように開催資金が潤沢な大会だからこそできる措置であり、通常のツアー大会では予算的に難しい以上、大会によって採用できる、できないという差が生じるのはむしろ不公平だという考えもあるでしょう。

また一般のアマチュア大会では線審が必要なので、今後もその養成や教育の場が必要だというラオニッチの意見もうなずけます。
さらにナダルやビーナスのように、テニスはプレーするのだから、判定も人間が行うべきで、誤審のリスクがあってもそれも含めてテニスという競技なのだという主張もおっしゃる通りで、判定をめぐるトラブルがいくつもの名勝負やドラマを生んできたという歴史もあります。

そのあたりの話になるともはや個人の価値観の問題ですので、全員が納得できる結論は出せません。

元審判経験者の私個人の意見としては、何億円という賞金がかかるプロツアーではジャッジの正確性が最優先されるのはやむを得ないでしょうから、自動化への流れは止まらないと思います。
コストの問題はテクノロジーの発達により、いずれはクリアできるようになるはずです。
最終的には主審までAIなどの機械に任せるか、それとも人間を残すかという問題にいきつくのではないでしょうか。

もちろんそういったシステムを導入しない大会もあっていいと思いますし、様々な理由で導入できない一般の大会も残るでしょうから、そういうところでは線審も必要でしょう。

ただし現在のアマチュアの試合ではほとんどがセルフジャッジ、もしくはソロチェアアンパイア方式(判定はセルフだが試合の進行は主審が管理する)でしょうから、そういう意味でも今後線審は徐々にその存在意義がなくなっていくように思います。


アンダーサーブは立派な戦術

2020年10月05日 | ひとりごと

今年の全仏オープンで話題になっていることの一つに、いくつかの試合で見られたアンダーサーブの是非があります。

「相手が諦めた リターン困難な“必殺アンダーサーブ”に海外称賛「これは絶対流行る」」(THE ANSWER)

何年も前から度々取り上げられるこの問題については、すでに結論が出ていると言ってもいいでしょう。

「自分にとっては議論の余地はない。ルール上問題ないのであればやればいい。選手自身が(自身がそれをやるかどうかについて)どう思うかはその選手次第だね」
「物議の“不意打ちアンダーサーブ” ナダルは完全支持「自分にとっては議論の余地はない」」(THE ANSWER)


このナダルのコメントに尽きると思います。

かつてナダルはキリオスにアンダーサーブをやられた時に苦言を呈しましたが、それは彼の試合中の振る舞い全般に対してのもので、アンダーサーブそのものを否定している訳ではありません。

「悪童キリオス、ナダルへの_下からサーブ_が波紋 「敬意なし」「物議醸す挙動」」(THE ANSWER)

その際にはフェデラーもアンダーサーブを認める発言をしています。

「アンダーサーブは良い戦略だと思うよ。特に対戦相手が後ろのフェンス際まで下がっている場合はね。その部分で言えば、(下からのサーブを)やることを恥じるべきではないんだ。失敗した時には愚かに見えてしまうけれど、挑戦してもいいじゃないか」
「波紋呼ぶキリオスの“下からサーブ”をフェデラーは擁護 「恥じるべきではない」 」(THE ANSWER)


最も有名なアンダーサーブとして往年のテニスファンに記憶されているのが、1989年の全仏4回戦の第5セットで当時17歳だったマイケル・チャンがイワン・レンドルに放ったものです。(当時の動画
チャンはレンドルをフルセットで破り、その後も勝ち上がってグランドスラム男子シングルスで最年少優勝を果たしました。

今回の騒動について聞かれたレンドルは次のようにコメントしています。

「多くの人々がずっと、私がマイケルに対して怒っていると思っていたようだがそれは違う。まったく問題はないよ。予想外のことで、彼にとってはうまくいった。彼はケイレンを起こしていたしね」
「それが悪いことだという考えが私の頭をよぎったことは一度もなかったよ。何故って、それは実際に悪いことではないんだからね」
「サーブを打ってからドロップショットを放つのと、すぐにドロップショットを打つのとの違いは何だい? 私には違いが分からないね。非常にいい作戦だと思うよ。相手を彼らの“コンフォートゾーン”から引きずり出すんだ」
「フレンチ・オープン3度優勝のレンドルはアンダーサーブを問題視せず、ナダルも同調」(テニスマガジンONLINE))

レンドルが言うように、アンダーサーブは確立されたテクニックで、ルールとして認められているプレーです。

速いサーブをリターンするために相手もベースラインから離れているのですから、その対策としてネット際にサービスを落とすのは戦術として当然選択肢の一つになりうる。
もしリターンする側の準備ができていなかったとすれば、審判がノットレディを取るでしょう。

能動的にポイントを取るための戦術を批判するのは筋違いですし、対戦相手に対する敬意があるかないかはアンダーサーブとは別の問題でしかありません。

アンダーサーブよりも試合中にラケットを投げて破壊したり、ボールを観客席や壁に打ち込んだりする方が、危険かつ見ている者を不快にさせるという意味で、プロのアスリートとしてよっぽど相手や観客、審判、運営スタッフ、用具スポンサーなど多くの関係者に対する敬意に欠ける行為ではないでしょうか。

※11/19追記
「Nitto ATPファイナルズ」グループリーグで、ズベレフに対し、メドベデフがアンダーサーブを使ったことに対するマアンディ・マレー(イギリス)のコメント

「確かにアンダーサーブを打つとは予想してなかった。けど、それが起こるといつも解説者や専門家が『アンダーサーブを打つのは失礼なんじゃないか?』と言い始める。なぜそうなるのか非常に興味深いよ。そう言うのが僕には理解できない」
「選手がサーブを返すためにベースラインの後ろ6、7メートルに立っている場合じゃないか。なぜそれが失礼にあたるのか理解できないね。僕はそれが完全に合法的なプレーだと思うし、僕らが見てきたように、実際にはかなり成功していることがあると思う」
「選手がただふざけたり、相手をからかったりするためにやっているようなものではない。選手がベースラインの後ろに立っているときには、正当な戦術として使われているんだ」
(「マレー、アンダーサーブに理解」テニス365)


※2022/1/20追記
2022年全豪オープン男子シングルス1回戦でキリオスが披露した、進化系アンダーサーブ

敗れた対戦相手のリアム・ブローディ(イギリス)のコメント
「これは彼の大きな武器だ。もしニックにショーマンシップをやめろと言ったら、彼の強みを奪うことになる。それが僕に対してでも、大賛成だよ」
(「キリオスが地元ファンの熱い声援受けて2回戦進出。股抜きアンダーサーブも披露」テニスクラシック公式サイト)


※2022/6/28追記
2022ウィンブルドン男子シングルス1回戦でアンダーサーブを使ったアンディ・マレー(イギリス)のコメント
「彼がリターンのポジションを変えたから打ったんだ。ファーストサーブのリターンで苦戦していたから、2mくらい下がったと思う。アンダーサーブを打つ選手について、僕は特に意見はない。最近は多くの選手がベースラインのかなり後ろで構えるようになってきた。“そんなに後ろで構えるなら、浅くも打つよ!”というメッセージだよ。アンダーサーブが敬意を欠くという考えは理解できない。一つのサービスの打ち方だ。相手がベースライン上にいるのに、打ったりはしないさ。簡単に拾えるから。でも、4~5m後ろにいるなら、打つよ。相手が心地よい場所から、前に出るように仕向けるのは戦術的なやり方でもある。それをやっていけない理由などない。逆にリターンのときに6m後方で構えることに対しては、誰も敬意を欠くとは言わないじゃないか。僕は相手に敬意を欠くからやったんじゃない。相手に、そんなに後ろに構えたら、こういうやり方もあるんだと見せただけだ」
「「戦術の一部で敬意を欠いていない!」1回戦突破のマレーがアンダーサーブを語る」(テニスマガジンONLINE)



使命感が人を成長させる(大坂なおみ2020 US OPEN女子シングルスV)

2020年09月20日 | ひとりごと

女子シングルス決勝、第4シードの大坂なおみが元世界ランク1位のビクトリア・アザレンカ(ベラルーシ)を1-6 6-3 6-3で下し、今大会2年ぶり2度目、昨年のオーストラリアン・オープン以来通算3度目となるグランドスラムタイトルを獲得した。
「26年ぶりの決勝逆転勝利! 大坂なおみUS2度目の優勝!!」(テニスクラシック公式サイト)

コロナ禍でバーティーら多くのトップ選手が欠場し、ライバルが少なかったこと、試合がなかった期間のトレーニングの成果でフィジカルが充実し、全てのショットの安定感が増したことなどいろいろ要因はありますが、一番大きかったのは、本人も認めるように黒人差別問題で声を上げ、オピニオンリーダーとしての自覚が生まれたことでメンタルが成長し、試合中に自滅しなくなったことだと思います。
「【優勝会見】大坂なおみが語った精神的な成長「今の方が完成されている」一問一答」 (テニスクラシック公式サイト)

前哨戦のウェスタン&サザン・オープンの期間中、黒人男性が警察官に打たれた事件に対し、彼女は抗議の意志を示し、それを受けて大会主催者は試合を1日中断しました。
「臆病な少女から意思ある大人の女性へ…声明文を発表した大坂なおみの_本当の気持ち」(THE DIGEST)

また、その問題以前から彼女は黒人差別に対し、はっきりと自身の考えを述べてきました。
「「私にだって発言する権利はある」黒人差別への抗議活動に積極発言する大坂が、自身の批判の声に反論 」( THE DIGEST)

US OPEN大会期間中は、これまでに不当な扱いを受けて亡くなった7名の黒人の名前を記したマスクを日替わりでつけて入場し、世界にメッセージを発信しました。
「大坂なおみ「どんなメッセージを受けとった?」スポンサー失うリスクも貫いた覚悟」(デイリースポーツ online)

彼女にとって黒人差別の問題はまさに当事者であり、自身や家族がいつ殺された人々と同じような目に遭ってもおかしくない。
なのでそれらの事件に対し黙っているということは、自分達が差別を受けていることを容認していることになってしまうのですから、声を上げるのはむしろ当然なのです。
「「黒人ならば日本人ではない」「スポーツに政治を持ち込むな」大坂なおみへの批判が的外れな理由」(文春オンライン)

それらの抗議行動を最後までやり遂げるという意志が優勝への強いモチベーションとなり、試合を決して諦めない彼女のプレーにつながったのは明らかでした。
「全米オープンで大坂なおみが手にした、もう一つの勝利」(THE TENNIS DAILY)

また、「スポーツを政治に持ち込むな」といった批判の声に対しても(そもそも彼女も言っている通り、差別の問題は政治ではなく、人権の問題なのですが)きちんと自分の言葉で反論し、そのプレッシャーを受け入れた上で勝ち上がり、優勝という結果を見せつけたのは、彼女の精神的な成長の現れでしょう。
「大坂なおみがつづる、人種差別根絶への決心。「行動する必要性を感じた」」(Esquire

そこにはこの間まで試合中に思い通りのプレーができないと涙を流し、立て直せないまま破れていたかつての彼女はもういません。
使命感は人を大きく成長させるのだと改めて認識せずにはいられませんでした。
「なおみエボリューションで、再び掴んだ全米オープン女王!」(松岡修造オフィシャルサイト)

今や世界でこれだけの実力、発信力、影響力をもっているアスリートは日本にはいないでしょう。
海外の多くのアスリートは彼女に賛同し、称賛の声を惜しまず、また多くのスポンサーにも高く評価されています。
「キリオス、セレナ、ラオニッチ...選手やレジェンドたちも大坂に賛同」(THE TENNIS DAILY)
「大坂なおみ、日本で批判されてもアメリカでの評価が高まる理由」(文春オンライン)
「ナイキはなぜBLM運動に寄り添うのか? アスリートをめぐる日米「スポンサー狂騒曲」の行く末」(文春オンライン)
※9/24追記
「大坂なおみ『世界で最も影響力のある100人』に選出。「黒人差別への抗議に大きな影響を与えた」(THE DIGEST)

これからも日本人だとかプロテニス選手だとかいう枠を飛び越えて、競技はもちろん、それ以外の分野でもグローバルに活躍してもらいたいですね。


プロテニスプレーヤーに、今できることは?

2020年04月30日 | ひとりごと

新型コロナウイルスの流行は世界を大きく変えようとしています。

日本でも拡大防止のための自粛でプロスポーツやエンターテイメント業界は全てストップ、学校も休校で部活動は禁止、インターハイや全中も中止、夏に予定していた東京五輪も延期したものの、来年開催できるかどうかも不透明です。

そんな中、プロテニス界でも競技団体やTOP選手らが、大会がないため賞金を得られないプレーヤーのために支援を呼びかけています。

「テニスの国際統治機関が連携し、コロナ危機に対する選手救済プログラムの作成に着手」(テニスマガジンONLINE)

「ビッグ3の全豪オープン賞金を下位選手たちと分け合う計画」(THE TENNIS DAILY)

「テニス愛の強すぎる“ビッグ3”支援策の仰天アイデアとは?」(FNNプライムオンライン)

「ムラトグルーとチチパスが下位選手救済のため「ビヨンド100サポート」を開設」(テニスマガジンONLINE)


そんな中、現在世界ランク3位のD.ティエムがこれらの動きに意を唱えています。

「たとえランキングでは下位にいようとも、飢えて倒れるほどの危機に瀕しているプレーヤーはいない」
「スポーツを人生の最重要事項であると考えておらず、プロ選手としての態度が感じられない人が多すぎる。そのような選手に金銭的援助をする理由がわからない。むしろ、本当にぎりぎりの状況にいる人たちに届くよう、適切な人や機関に寄付したい」
(「人生の最重要事項は?_世界3位のティームが、下位ランクの選手への金銭面の支援に難色」 THE DIGEST)


ティエムは毎週鬼のように試合に出まくって世界3位まで上りつめたプレーヤーで、かつ下位プレーヤーの多くが努力を怠っているために低迷している現状を実際に目にしているからこそ、おそらくそう主張しているのでしょう。

彼の言い分はもっともですし、自身が得た報酬をどう使うかは自身が決めればいいことで、フェデラーやナダル、ジョコビッチでも口出しされるのは納得いかないというのも理解できます。
寄付はあくまで個人の善意でやるものであり、強制されるものではない。
やるやらないは自分で決めればいいのですから。

それでも彼がここまで賞金を稼げるようになり、多くのスポンサーがついてくれたのは、それらの下位プレーヤーを打ち負かしてきたからであり、彼ら、つまり戦う相手がいなければそもそもプロテニス選手として活躍できないのですから、プロテニス界が衰退すれば結局自分の首を締めることになってしまう。
そこを理解していれば、プレーヤー個人の救済というより、危機に面しているプロテニス業界をサポートするという、より広い視野で物事を見てほしいと思います。

少なくともBIG3はそういう意図をもっているのでしょうし、自身も今や世界3位としてそういう責任ある発言をする立場になったということです。
何よりプロテニス界の衰退を食い止めることは、結果として自分のためになるのですから。

もっともそういうことはATPやWTA,、ITFの役割であり、そちらに対してよりアクションを促すよう行動することも大切かもしれませんね。


「勝ちビビリ」は本気の証拠!

2020年03月01日 | ひとりごと

ネットで面白い記事を見かけました。

「「勝ちビビリ」した時、どう乗り越える? 勝負は試合前から始まっている!」
(THE DIGEST)


本文中にもあるように、試合終盤で勝利が見えてきたと意識した瞬間、今までのプレーが緊張でできなくなってしまうことを「勝ちビビリ」と呼びます。

実際に経験した人、あるいはそうなった選手を見たことがある人ならわかると思いますが、まるで勝ちを拒否するもう一人の自分が現れたかのごとく、なめらかだった動きが金縛りに遭ったようにガチガチになり、それまで簡単にできていたプレーでミスを繰り返す。
焦れば焦るほど調子は悪くなり、気づけば逆転負け、などということもよくありますし、プロの試合でも見かけます。

特に初心者からレベルを上げて練習試合ではだんだん勝てるようになってきた頃にその壁にぶつかって、大会ではなかなか勝てない、あるいはある程度勝ち進めるようになったものの、決勝戦などプレッシャーがかかる試合ではどうしても勝ちきれないと悩んでいる方も多いと思います。
私もそうでした。

「勝ちビビリ」は本気で勝ちたいと思っているから、真剣にプレーしているからこそ起きる現象です。

なので私は試合で勝ちビビリの状態になったら「おっ、今日も来たな~」とはっきり自覚し、そこからは相手よりもその気持ちというか、勝つことを恐れるもう一人の自分に打ち勝つつもりでプレイしていました。

勝ちビビリを起こさないようあれこれ考えるより、むしろ勝ちが近づいてきたら毎回発生する合図のようなもので、最後にそこを乗り越えれば勝てると肯定的に捉えるようにしていました。

勝ちビビリは真剣にプレイしていれば試合のレベルや相手の強さに関係なくいつでも起きる以上、そこから逃げずきちんと向き合って勝てるようになれば、以後はどんな大会、どんな相手だろうと同じように対処できるようになるはずです。

まあ私はその心境に達するまでに現役を終えてしまったのですが…。😅

いずれにせよとにかく試合を重ね、経験を積み重ねることが一番の解決の近道です。
「勝ちビビリ」は本気で勝ちたい気持ちの現われということを忘れずに、チャレンジしてください。


選手と審判の信頼関係を支える、プロとしての技術と矜持

2019年06月21日 | ひとりごと

「きょうは、ひどくお粗末なコールがいくつかあったと思う。俺やフェリックスに入るべきでないポイントがあって、それを互いに分け合っていた」
「彼らが椅子の上でひどい判定を下しても、なぜ処分されない? これは数十万ドルを左右するような問題で、冗談では済まされない」
「試合が終われば協会には関係ないから、彼らは笑い事で済ませている。何の調査も対処もしないなんて、ばかげている」
「ひどい判定を想定して、なぜ別の審判を待機させておかない? 俺には理解できない。そのせいで罰金を支払わなければならないなんて」
「キリオスがまたも審判に暴言、「試合を不正操作している」」(AFPBB News)

毎度お騒がせ男のキリオス、この試合での態度は褒められたものではありませんし、罰金を課されたのもやむを得ませんが、試合後の発言に関しては至極まともです。

元審判経験者として言わせてもらうと、審判は人間である以上、意図的ではないミスはある、という前提でジャッジが成り立っていて、それを補うためにいろいろなシステムやルールを設けて試合の公平性が担保されています。

ただしそこで審判が最低限のジャッジ能力や、ミスジャッジをした後も迅速に問題を処理できる対応力、経験といったものを持っていることが当然ながら必要で、その技術がなければ「この審判がミスしたなら仕方ない」という選手との信頼関係が築けないので、結果こういう問題が起こってしまいます。

この件に関しては西岡良仁選手も次のようなコメントをTwitterで発言していました。

「彼の最後の意見とても分かる。ジャッジが酷くて文句を言ったら、言った選手が悪くなって、ジャッジをしてる人は何もお咎め無し。一度試合で余りに酷すぎて主審が試合後泣きながら謝ってきた事があった。ATPはトレーニングさせると言って終わりにして事の重大さを理解してない」
「人間だからミスはする。当然の事だけど常に選手が悪い立場になってしまうのはどうか。ディレクターに「何故彼らにはミスしても罰金などの制度がないのか?」と聞いたら、主審達をそんなプレッシャーの中でやらせたら可哀想だろ、と言われた。人生賭けた勝負の判決をするのだから覚悟は持って欲しい。」
「勿論彼らのおかげでプレー出来てることは重々承知の上での意見です。」


私もTV中継を見ていると、グランドスラムなどであきらかにその試合にふさわしくない審判を目にしたこともありますし、権威を盾にミスジャッジを続けても全く悪びれていないように見える審判も少なからずいるように思えます。
そういう意味では1ポイントに人生を賭けている選手にとってはやりきれないというのも理解できますし、選手にリスペクトされるだけの能力がない審判は淘汰されるようなシステムが必要でしょう。

彼らの言う通り、確かに今のプロテニスの審判は特権階級的になっているように思えます。

ちなみに身びいきかもしれませんが、日本の審判はC級でも自分のジャッジに対して責任感とプライドをもっていますし、正しい判定をしようと努力している人が多いように思います。
少なくとも「審判にも間違いはあるからミスするのは当然」という程度の意識でコートに立っている人はほとんどいないでしょう。

プロツアーの審判はその地位に見合った報酬も受け取っています。
日本の審判の多くはアマチュアで、大会を担当しても受け取る日当は彼らの何十、あるいは何百分の一かもしれません。
報酬が高いから真面目にやるとか、低いから手を抜くとかというものでもありませんが、それなりの立場を保証されているなら、それにふさわしい仕事はしてしかるべきだと思うのは、私が生真面目な日本人だからでしょうか…。


大会参加者が減っています…

2019年01月11日 | ひとりごと
今年の社会人普及県大会のドローが発表されたので、見るとビックリ。
男子は初級が2組、中級が3組の5組しかありません。
女子にいたっては何と参加ゼロ。
これはもう大会とは言えないレベルです。

かつて私が出場していた頃は東中南予で予選があり、県大会に出場するのも大変でした。
その後参加者増加に伴い、クラスが2つに別れたと記憶しています。

60回を数える伝統ある大会がこうなってしまったのは、テニス人口は増えても大会に参加する競技志向のプレーヤーは減っているというのが一番の理由でしょう。
新しい参加者が増えずにこれまで参加していた人が抜けていけば、減るのは当然です。

ここまで極端でないにしろ、県テニス協会の主催大会の参加者は減少傾向にあるのは間違いありませんし、私の地元の今治テニス協会でも、当店の主催大会でも同様です。

その原因が何なのかをきちんと分析しないと、今のテニスブームも一過性で終わってしまう、或いは競技テニスとレジャーテニスの棲み分けが定着して、競技人口は先細りになっていく可能性もあります。
業界人としては真剣に考えないと死活問題にもなりかねません。

とりあえず来年度から社会人普及大会はクラス分けなしの1カテゴリーに戻さないといけないでしょうね…。😢

中学校に「硬式テニス部」が増える!

2018年05月18日 | ひとりごと

中体連に“硬式”テニス部設置へ(NHK NEWSWEB)

以前このブログでも取り上げていた話題ですが、ようやく中体連も重い腰を上げるようです。
とはいえ「全国中学校体育大会」(全中)の正式種目になるには早くてもまだ3年かかるとのこと。
今の生徒はみんな卒業してしまうやん…。

現時点では日本テニス協会が主催している「全国中学生テニス選手権大会」があるので実害はないものの、中体連の正式競技になるのとならないのでは大きな違いがあります。

これまでも公立の中学校には硬式テニス部を作ることができない地域が多くありました。
「中体連の競技として認められてないから」ということがその大きな理由とされ、「全中の種目でないから」ということで県の中学総体にも採用されていなかった地域も少なくありませんでした。

これで少なくとも一番高かったハードルはなくなりました。
つまりこれで全国の中学、特に公立中学校に「硬式テニス部」ができる環境がようやく整ったということです。

錦織の活躍もあり、これだけ日本で硬式テニスが盛んになって、実際にプレーしている人も増えている中、団体内の既存の競技を特別扱いしてそれ以外の競技を門前払いしてきたとすれば、中体連という組織は一体誰のため、なんのためにあるのかと批判されても仕方ありません。

個人的には軟式と硬式、両方がフェアに選べる環境が大事だと思います。
どちらを選ぶかはあくまで個人の自由のはず。
その選択肢を理不尽な理由や関係者のエゴで奪ってほしくないだけなのです。

兎にも角にもようやく土俵には上がれることになりました。
これまで多くの抵抗を乗り越え、道を切り開いてきた関係者の皆さんには敬意を表するともに、硬式テニスがやりたかったけどできる場所がなくて諦めていた一般の中学生が競技を始めるチャンスが増えることを願ってやみません。

これから少子高齢化が進めば学校の部活動自体が大きく変わるような時代がやってきます。
一つの学校だけで多くの競技チームを作って大会に参加することは難しくなってくるでしょう。

将来的には近隣の中学校がまとまって、どの学校の生徒でもどの競技にも参加できる、地域型のスポーツクラブを立ち上げるのが良いと私は考えています。

普段は学校で個人トレーニングをして、週末はみんなで集まってチーム練習をやる。
指導者も外部から専門のコーチを受け入れて指導を任せ、顧問の教員は学校との窓口や大会のエントリー、部の管理運営といった事務的な活動をフォローするだけで、なるべく本来の業務の負担にならない役割を担うというような形が理想ではないでしょうか。

学校外に活動の範囲が広がることになるので安全管理の問題、外部指導者や練習場所の確保など課題は多いでしょうが、部活動という枠に囚われず、どの中学生でもやりたいスポーツができるような環境を作ることが地域の大人達の努めだと思います。
時間はかかるかもしれませんが、やればできるはず!。
私もできることがあれば協力しないといけませんね。


誰のため、何のためにテニスをするのか

2018年02月16日 | ひとりごと

たまたまネットで気になる記事を読みました。

西村佳奈美 「若きママテニスプレイヤーの挑戦」
(Tennis Tribe.JP)


彼女が若くして(当時14歳)プロになった時には結構大きなニュースになりましたから、少しテニスに詳しい人なら聞いたことがあると思います。
その際に「これはバーンアウトに気をつけないといけない」と思っていたのですが、数年後大人になる前に(19歳)引退のニュースが流れ、「やはり」と心を痛めていました。
偶然この記事を見かけて、本人の言葉でその背景がわかったのですが、やはり家庭環境の問題だったのですね…。

世界でもかつてのアガシやドキッチのように、父親との確執が話題になった選手がいました。
同様に日本にもそういう親がいてもおかしくはありません。
その父親のおかげでテニス選手として活躍し、その結果今の彼女があるのも事実でしょうが、

「選手として活動している私の意見はまったく受け入れてもらえず、家に帰れば父とケンカする毎日でした。それでも、資金援助をしてくれているのは父親ですし、最後は従っていました。」
私にとってその頃のテニスは毎日怒られないようにするためだけのものだったんです。いつも、泣きそうな顔をしてテニスをしてるねと、よく周りから言われていたのを覚えています。
「これまで辛いテニスしかして来ませんでしたし、泣き出しそうな顔ばかりの試合をしていました」

というような少女時代を過ごしてきたとすれば、いくら立派な実績を残そうが惨めで虚しいものだったでしょう。
それは自分の意志でテニスをやって勝ち取ったものではなく、親という絶対的に逆らえない相手に支配され、操られた結果の栄光だからです。

彼女の父親も不幸で哀れな人間なのでしょうが、そんな親に引きずられて自分の人生を自分で歩いていけなくなってしまえば、その子供はもっと不幸になる。
そうなる前に縁を切って自立したことは、悲しいですが彼女の人生にとっては大きな覚悟と決断であり、結果的には必要かつベストの選択だったと思います。

今後彼女がプロとして活躍できるかは努力と運次第ですが、願わくば良い家族と素晴らしい指導者にめぐりあい、テニスプレーヤーとして、あるいは母親として、自分の意志で人生を切り開いていけるようになることを願うばかりです。
その時には本当にテニスの素晴らしさを楽しむと同時に、良くても悪くても自分の意志と力でつかんだテニスの成績に手応えを感じ取る
ことができると思います。