asayanのブログ

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『舞姫』の書き出し

2014-08-26 21:43:22 | 日記
石炭をば早や積み果てつ。


森鷗外著『舞姫』の有名な書き出しの一文、

 石炭をば早や積み果てつ

赤文字で記した をば と 果てつ の意味合いを、

24日の講演会で丁寧に解説してくださいました。


『舞姫』を読み返してみました。

文章のリズムと言葉の音感を気にしながら声にだして、

書き出しの一文だけでなく、読み進むうちをばを使用した箇所がいくつかあることに気づきました。


 余は模糊たる功名の念と、  から始まる段落に、

  あだなる美観に心をば動かさじ

と書いてあり、


 さて官事のいとまあるごとに、 の段落には、

  かねて公の許しをば得たりければ、


 ひと月ふた月と過ぐすほどに、 の段落にも、

  急ぐことをば報告書に作りて送り、さらぬをば写し留めて、

と、たて続けに出てきます。


少し飛ばして、

 彼は優れて美なり。 の段落も、

  君はよき人なるべし。我をばよも憎みたまはじ。

と使用されています。



アンデルセン著・鷗外訳『即興詩人』の 『わが最初の境界』の章を読んでも、

頻繁にをばが目に付きました。


冒頭から三行目、

  廣こうぢのさまをば銅板畫にて見つることあらむ

と書いてありますし読み進むと、


  祈のこゝろをばわれ知らざりしかど、
  祈の詞をばわれ善く諳そらんじて洩らすことなかりき。


とあります。


  そのほかの飾をば肩胛(かひがらぼね)、脊椎(せのつちぼね)などにて細工したり。

  かの僧の尊さをば我母のいたく敬ひ給ふことなどを

  その國の名をばデンマルクといへり

  かの男の如く惡しき事をば一たびもせざるもの多し。

  多人數の作る如き罪をば作らざるやうにおもはる


など、上記以外にもまだまだ数箇所をばを散見することができます。


をばが、こんなにたくさんあるとは思いませんでした。

文体のリズムや語感も大事ですが、

鷗外先生はをばがお気に入りの言葉だったのではないだろうか、

と勝手ながら推察しています。

面白い発見をした気持ちになりました。

『舞姫』に全部でいくつをばがあるか、

関心を持った人は読んで数えてみてはいかがでしょうか。
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