石神井川と王子神社の間に1960年代に建てられた北区役所「第一庁舎」があります。4階建ての小学校の様な目立たない庁舎です。
23区中人口では11位の北区の行政機関がとても全部入りきることはできず、周辺10か所ほどのビルに分散して存在しています。(写真は第2庁舎)
これだけ分散していると住民サービスとしてはなかなか不便な場面もあることと想像します。
この数年の間に東京23区の内、19の区役所を見ていますが、現時点で庁舎が一番残念なのは北区です。
そんな北区もいよいよ新庁舎の建設に向けて動き始めています。
場所は現在の第一庁舎から徒歩10分ほど北西。国立印刷局王子工場の敷地の一部分を北区が購入することになっています。(上の図の青い星の所)
庁舎設計に関しては、2023年12月に基本設計業務委託プロポーザル審査が実施されました。
3社が行ったプレゼンテーションの様子は2時間40分の動画としてyoutubeにもアップされていますが、なかなか面白いです。
選ばれなかった2案も含めて3つを見て行きます。
提案した組織名は伏せられています。それがどこだか想像しながら見るのも面白い。
ちなみに動画の中の「A者」という表記は「A社」の誤記ではないかと思いましたが、「A者」で正しいようです。
A者案
直方体で最下部にはスカートのように広がったガラス屋根に囲まれたアトリウム。
上部は水平に4ブロックに見えますが一つ一つが3層あります。全体としてはアトリウム含めて18階くらいになるんでしょうか。
何かを象徴するガラスウォールのアーチデザインが特徴的です。
3層のブロックの窓側が吹き抜けになっています。日当たりは良さそうですが良すぎるのが心配になります。
プレゼンでは「縁側空間」と呼んでいました。これが4つ積み重なってビルを構成します。
最下部のアトリウム。これだけの広さがある広場を作るのは区役所が災害時の避難所として機能することを考えています。
建設予定地は武蔵野台地の下で、隅田川、荒川の氾濫水域になります。どの提案も防災機能に関しては力が入っていました。
ちなみにビル下部の巨大空間だと新宿住友ビルの三角広場を連想します。
B者案
B案のプレゼンではスクリーンに移される資料の視認性の悪さが気になりました。
この完成予想外環図もコントラストも彩度も低すぎて見ていて気持ちが暗くなる感じ。どんな立派な提案でもこの資料では好印象は与えにくいです。
建物は二つの縦長の直方体が重なってくの字に接合されたデザイン。テラスや屋上の曲線でやわらかさを出そうとしています。
こちらも吹き抜けを用いた大きな広場が用意されています。
この図も残念ながら暗い。またデザインも区役所というより最近よくある病院に見えます。
C者案
コーナーを丸めた楕円形の様な平面。高さは12階と最も低いのですがその分設置面積が3案の中で最大になっています。
下層階外側に大量の植栽。ブリッジは将来的に飛鳥山から連続して歩いて来られるような計画です。
下層部の広場は3提案に共通。Ground Level3.5mは想定浸水の3mより高い位置になります。
建物センターに全フロアを貫く巨大な吹き抜け、コミュニケーション・ヴォイドが設けられています。
センターが全吹き抜けになってるのは山口県の長門市庁舎を思い出しますがそれより遥かに巨大な空間になりそうです。
断面図。光と空気を通すヴォイドの役割。斜めの吹き抜けは隈研吾のTOYAMAキラリを思い出しました。
プレゼンした会社を想像しながら見ていましたが、全くひとつも当りませんでした。
実際の提案者はこちら。
A者=佐藤総合計画
B者=遠藤克彦建築研究所・東畑建築事務所 設計共同企業体
C者=松田平田設計・小堀哲夫建築設計事務所 設計共同企業体
そして第1位に選ばれたのはC者=松田平田設計・小堀哲夫建築設計事務所 設計共同企業体でした。
完成予定は令和15年ということですからまだ10年も先の話です。
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