迦陵頻伽──ことだまのこゑ

手猿樂師•嵐悳江が見た浮世を気ままに語る。

ニッポン徘徊─東海道9 日永追分→四日市宿

2017-11-17 06:34:43 | 旧東海道
追分を過ぎて泊(とまり)地区に入ると、道の両側には隣りの日永地区にかけて、低い土手に松並木が続いていたそうですが、現在では松並木の代わりに住宅がギリギリまで迫る、生活道路となっています。 が、日永5-12あたりにわずか一本だけ、古えの時代を偲ばせる松が残っています(上段写真)。 道幅のわりに車の交通量が多いなか、日永から赤堀地区を通り、 次の南浜田町から中浜田町にかけて古い民家が残る地 . . . 本文を読む
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ニッポン徘徊─東海道8 石薬師宿→日永追分

2017-11-16 06:19:28 | 旧東海道
宿場名にもなっている石薬師寺は、坂の左沿いにある古刹です。 今は昔、平家追討のため西下した“蒲冠者”源範頼が戦勝祈願にこの寺を訪れた際、鞭にしていた桜の枝を地面へ逆さまに刺したところ、月日が経つうちに根が生え、見事な花を咲かせるようになった── それが、寺から百メートル程離れた場所にある「蒲桜」で、またの名を「逆桜」(上段写真)。 ヤマザクラの変種だそうで、地面から細い幹がいくつも分かれて伸 . . . 本文を読む
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笑ひは日常に潜む。

2017-11-15 23:52:42 | 浮世見聞記
新宿角座へ、桂小春團治の独演会を聴きに行く。 昭和五十二年に三代目桂春團治に入門してちょうど四十年になるのを記念した今回の独演会では、新作落語五席を、文字通り独りで演じ通す。 そのうち、現代のさり気ない日常のなかに潜むおかしみを、鋭い観察眼でじわじわと炙り出しした「コールセンター問答」、「禁断の宴」、「断捨離ウォーズ」の三席を、面白く思ふ。 笑ひは作り出すものでも、捻り出すものでもな . . . 本文を読む
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ニッポン徘徊─東海道7 庄野宿

2017-11-15 09:46:06 | 旧東海道
元禄三年建立の道標から約十分、関西本線の「井田川駅」前を過ぎて右折し、その先の踏切を渡ると、わずかの間ながら鄙びた景色が広がります(上段写真)。 県道を横断して小田坂を上ると、地元の生活道路といった風情が続き、古い木造校舎のような公民館の前を過ぎて安楽川を渡り、中富田という地区を二十分ほど行くと、右手の川俣神社には一里塚跡の石標と、これより西は亀山領であったことを示す領界石とが並んで建っています . . . 本文を読む
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空の玄関口で想ふ。

2017-11-14 22:33:55 | 浮世見聞記
羽田空港国際線旅客ターミナルの「江戸舞台」で催された、倉木麻衣のミニライヴに出かける。 舞台前は当然、見物人で混雑してゐるので、別室に設けられたライヴビューイングで観覧する。 彼女の落ち着いた歌聲と、カメラが大きく映し出す彼女の容貌に、 いまはどこでどうしてゐるのか知らない、 また知るべきでもない、 懐かしいひとを想ひ出す。 ラストが、もっとも楽しみにしてゐた「渡月橋~ . . . 本文を読む
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ニッポン徘徊─東海道6 亀山宿

2017-11-14 10:29:42 | 旧東海道
国道1号線に合流した先で歩道橋を渡り、JR関西本線の踏切を越え、鈴鹿川沿いに伸びる太岡川寺畷(上段写真)を二十分ほど行くと、関西本線の線路に道が分断されているため、そばの陸橋を渡り、その先に続く坂道を丘へとのぼって行きます。 そして布気、野尻と住宅の続く地区を過ぎると、左手には「野村一里塚」が。 一里塚に植えられるのは基本的に榎ですが、ここでは椋が植えられ、樹齢も三百年を越えているそうです . . . 本文を読む
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ニッポン徘徊─東海道5 坂下宿→関宿

2017-11-13 20:59:00 | 旧東海道
このあたりを元坂下といい、かつて坂下宿はこのあたりにあったのだそうです。 ところが、慶安三年(1650年)の大洪水によって宿場がことごとく流失、東へ約1㎞の場所に移転したのが、現在のこる坂下(さかのした)宿(↑写真)。 広大な敷地面積で有名だったと云う本陣も現在では茶畑となり、また道が拡幅しているために宿場町であった雰囲気は薄いものの、道沿いの至るところに残る石垣が、 かつては鈴鹿越えを . . . 本文を読む
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ニッポン徘徊─東海道4 土山宿→鈴鹿峠

2017-11-12 21:31:54 | 旧東海道
土山宿を出ると、かつてはその先で田村川を徒渡りしていましたが、大水のたびに流される旅人が多く、宿場の悩みのタネでした。 そこで1775年、約600メートル上流に板橋を掛けて、通行の便宜をはかりました。 坂上田村麻呂ゆかりの「田村神社」の鳥居前を右折した先に、その橋は「海道橋」として復元されています(上段写真)。 橋を渡り、工場の間を抜けると、民家の間を行く坂道に差し掛かります。 ここ . . . 本文を読む
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上方芸能の戦後。

2017-11-11 23:11:55 | 浮世見聞記
横浜にぎわい座の「上方落語 戦後復活落語会」にて、楽しみにしてゐた「軽業」を聴く。 先代の桂文我がNHKの公開録音の会場におゐて酩酊状態で口演した、ある意味有名な音源、また同じく先代の桂小南が東京風へと見事にアレンジしたものと、いずれも録音でしか聴ひたことがない噺で、肝心の軽業の場面をどうやってゐるのか─なにしろ音源では下座の演奏とお客の笑ひ声しか聞こえないのだ─、ぜひそれを見たかったのである。 . . . 本文を読む
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ニッポン徘徊─東海道3 水口宿→土山宿

2017-11-11 08:45:51 | 旧東海道
水口宿まで歩いた旧東海道、さらにその先を歩いてみることにします。 三筋の道が合流した先で本陣跡を左手に見て過ぎ、緩やかな坂をのぼって県道549号線を渡り、案内標識がそれと伝える東見附の跡を過ぎると、かつての松並木、現在は新旧の家屋が混在するなかを進んで行きます(上段写真)。 水口宿を出発して約四十分、水口町今郷に入ったところで、右手に今在家一里塚が。 これは明治時代に取り壊されたのち . . . 本文を読む
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新発明の功罪。

2017-11-04 20:17:04 | 浮世見聞記
恵比寿の東京都写真美術館ホールで、映画「リュミエール!」を観る。 19世紀末、フランスのリュミエール兄弟が発明した50秒間の動く写真──“シネマトグラフ”が、近ごろ話題の“4Kデジタル処理”により、20世紀を飛び越えて蘇る。 現存する1422本のフィルムから、108本を厳選して90分にまとめた本編に、選者自らが今後の作品鑑賞の手引きともなるやうな秀逸なナレーションを付け、21世紀 . . . 本文を読む
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東遊や偲ぶらん。

2017-11-03 20:08:46 | 現代手猿樂
世界中が戦争といふ狂気にはまり込んでゐた1940年代、一人の若いフランス人女性舞踊家が、日本の能楽に興味を抱き、独学に勤しんでゐた。 彼女の名は、エレーヌ•ジュグラリス。 1916年4月、ブルターニュ地方カンベールに生まれた彼女は、1920年代に舞踊を習ひ始め、やがて若手舞踊家として活動を始める。 しかし、従来の舞踊に飽き足りなくなった彼女は、さらなる模索と探求を続けるうち、ニッポンの“能楽 . . . 本文を読む
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六文銭の情。

2017-11-02 22:51:07 | 浮世見聞記
新宿の末廣亭へ、雷門助六と日にち限定で出演の桂文我の落語を聴きに行く。 「代わる代わる色々な顔をお見せゐたしまして、さぞお力落としもございませうが……」 と先代譲りの前置きから始まった助六師の今日の噺は、「相撲風景」。 細やかな表情や身振りのとても上手ひ噺家だと、つくづく思ふ。 上方落語らしく見台と膝隠しを前に文我師が口演したのは、土葬されてから生まれた赤ん坊のために母親の霊が六日間飴 . . . 本文を読む
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