迦陵頻伽──ことだまのこゑ

手猿樂師•嵐悳江が見た浮世を気ままに語る。

これは武蔵山関の御縁にて。

2019-04-27 19:47:36 | 浮世見聞記


大相撲の春巡業「横浜アリーナ場所」を観戦する。


会場に入ると、ロビーでは物販が軒をつらね、また力士との記念撮影には長蛇の列が。



みんなに愛される人は、相手を待つ人より、相手にみずから歩み寄る人であることを、その和やかな交流から知る。


客席に入ると、土俵では公開稽古の最中。



激しくぶつかり合う音、鋭く発せられる気合ひの聲──

そこはすでに、命を懸けた男たちの神聖なる最前線。

いつであったか、この土俵上で挨拶させろとゴネた某女市長は、やはり阿呆だとつくづく思ふ。






十一時から序二段、三段目、幕下と取組が進行し、



これから力士としての風格を備へていく若手たちが、その下積みをここで重ねていく。


つぎの十両土俵入の前には、巡業ならではの“お好み”があり、それを観るのも今日のお目当て。

若い力士たちが抜群の美聲を存分に聞かせる「相撲甚句」に、



相撲の禁じ手などを面白おかしく実演して笑ひを誘ふ「初切(しょっきり)」は、ぜひ観たかったもの。



その渾身のコントぶりもさることながら、巨体が身軽に動くさまに目を瞠る。
 

十両の取組が済むと幕内土俵入、つづひて横綱土俵入となり、今日は休みの“三本締め”のヒトも、これだけは姿を現す。



鶴竜ともども、まるで“オーラ”を感じず。

さういふ人が天下を獲ってゐるのは、なにも歌舞伎芝居だけではないらしい。


そんなことより今日一番のお目当ては、新大関の貴景勝の一番。



敬愛する師匠が角界を去り、しかしその師匠がつけた四股名を移籍した部屋でも大切に貫ひて頑張る姿は、私にはとても他人事とは思へず。



鶯色のまわしを締めた貴景勝が土俵にあがると歓声が一際あがり、今日の主役はやはりこの力士なりける。

対するは玉鷲、みごと“寄り切り”で貴景勝に軍配があがり、今日来た甲斐があったと私も拍手喝采。


まうそれに大満足して、結びの一番“高安 対 鶴竜”は、「記憶にございません」。


締めくくりの「弓取り式」をつとめたのは、おとなり都筑区出身の春日龍。



やはり地元出身だと、お客さんは沸きに沸く。




初めて相撲観戦、まったく知識はなくても、目に映るまま素直に楽しめるものであることを知る。



その初めての機会を与へてくれたのが、戦前の力士で第三十三代横綱の「武蔵山」。

「横浜アリーナ場所」からも近ひ、横浜市港北区日吉本町出身の親孝行な横綱を紹介した企画展を、区内の図書館で見たことがきっかけで、今日に至ったのである。

その武蔵山のコーナーが二階ロビーに特設され、



図書館で展示されてゐた資料をまう一度確認出来たのも嬉しい。


そんな第三十三代横綱との出逢ひが、今日の楽しい御縁を結んだのである。



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