マンタマンタに告ぐ

映画・政治経済・日常生活などの観察日記。

●渋谷65

2008-06-05 20:30:43 | Weblog
交差点

 踊っている、博恵の笑顔。

 大勢の通行人たちが、変な目つきで踊っている博恵を見ている。

頭のおかしな女性が、交差点の中央で、勝手に1人で踊っていると思っているようだ。

係わり合いをもつのは、止めよう。

 1人で、平然と踊る博恵。自分の世界に浸っている。

 宏、周囲を見回すと、正常な渋谷に戻っていることに気付く。

恥ずかしさのあまり、少しずつ後ずさりをして、他人の振りをする。

 俺は、この女性とは知り合いでも何でもない。赤の他人だ。

博恵の迫力ある、切れのある踊りは、本場アメリカのブロードウェーで鍛えたみたいだ。

 基本は、クラシックバレエみたいだ。

プロのダンサーがみれば、どこかに、その奥ゆかしさが見え隠れしているのが理解できる。

 柔軟な動き、しなやかさ、身体が柔らかい。基本は適格で、忠実だ。

その反面、創造力・応用力が抜群に優れている。

 誰の真似でもない、自分のオリジナルの踊りをかもし出している。

 運動能力・運動神経も、誰にも負けない。

24時間踊り続けるだけの体力・持久力が、ありそうだ。

 日頃から、筋力トレーニングをしているみたいだ。

ダンスレッスンができなくても、イメージトレーニングは欠かせない。

 若いアベックAが、立ち止まって博恵の踊りを眺めている。

女性A「ねえ、交差点のど真ん中で、踊っていいの?」

男性A「まずいだろう。道交法違反でつかまるぞ」

 大勢の通行人たちも、2人5人と、足を止めては博恵の踊りに見入っている。次第に、見物客が増えてくる。

 交差点の中で、人が集まってくる。間もなく、信号の色が変わる。

 左右、横に歩いて踊る博恵。

 博恵の周囲を取り囲むようにして、群集が集まり出した。

 その数、100人になった。
 大道芸人かと思って、見ているようだ。

 宏、博恵を制止しようと近づく。背後から近づいた。

宏「君、君。ここは交差点のど真ん中なんだから、こんな場所で踊っちゃだめだよ」

 博恵、振り向き様に、回し蹴りで蹴飛ばした。
 後ろに倒れて気絶する、宏。

 アベックA、嬉しそうに拍手する。警察が嫌いなようだ。
 他の群集たちも、拍手して喜ぶ。これで、自由になった。

 アベックBが、軽くリズムを取っている。
 群集たちも、博恵の踊りを見て、身体が動いている。

 交差点内の群集は、200人以上で滞在している。歩道へと、移動する気配がない。

 これでは、自動車たちが安心して往来できない。往来妨害罪だ。