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ピケティの資本論 29: 著書「21世紀の資本」から学んだこと

2015年06月23日 | 連載完 ピケティの資本論


< グラフ1.ピケティの「21世紀の資本」より >


著書「21世紀の資本」から学んだことをまとめます。
今回で、この連載を終了します。


はじめに

私は最初、ピケティの著書「21世紀の資本」を解説する前に、少し入門編を書くつもりでした。
しかしピケティの論点に多く触れることになりましたので、この連載は終わります。


私が著書から学んだこと

A. 現在の格差拡大のメカニズム。
資本の収益率(4~5%)が労働所得の成長率(=経済成長率1~2%)を凌ぎ、国富に占める資本(遺産も)の割合は増え続ける。

今後も続く人口減が低成長を確実にする。
また資本の収益率は、大量の貨幣供給(金融緩和)により上がりこそすれ低下することはない。
この2点は現実に起こっているが、立証されていないかもしれない。
さらに集中する資産は、消費されずに益々増大に加速度がつく。

B. 国民資産の多くは一部の富裕層に集中し増加傾向にある。
A項で説明した要因と、恣意的な高額所得の増大により、グラフ1のごとく欧米において上位10%が国富の63~72%を所有しており、上昇し続けている。

そして世界の富もごく少数の富裕層に集中する傾向にある。 
これが格差の現実であり、そのメカニズムは世界に浸透している。


C. 格差が縮小した時期がある。
グラフ1のごとく、1910から1970年の間。
これは戦争、高度経済成長の影響もあるが、累進所得税の施行が効いた。
つまり、英米が率先して革新的な政策を実施し、かつ世界各国がそれに準じたのです。
まさに、今の逆パターンでした。


< グラフ2.ピケティの「21世紀の資本」より >

D. 先進国の国民資産がGDPの4~6倍になり、拡大傾向にある。 
ここ半世紀、英米仏の住宅資産が国民資本の40~60%を占めるようになり、国民は豊かになった。
ただ、最上位所得層ほど住宅資産の割合は少ないだろう。

これだけの富があるなら、財政赤字解消を先送りにする必要はない。
つまり、低所得層を直撃する間接税ではなく、富裕層から資産税を徴収すれば、赤字も格差拡大も防げる。

E. 私は格差について論ずる自信が持てた。
以前は、格差を指摘する側にも偏向があるのではないかと半信半疑であった。
しかし格差、資本、賃金の歴史的な推移と政治的な背景を知って理解が深まった。


次回、雑感を書き、最後とします。


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