< 1. 職場の改善活動 >
これから数回に分けて、所得低下と不安定な就業が何を引き起こしているかを見ます。
今、皆さんは日本で起きていることを肌で感じているはずです。
はじめに
戦後、日本とドイツは高度経済成長を遂げ、有数の経済大国になりました。
その要因は色々あるでしょうが、日本には特徴的な一つ重要な要因がありました。
それは労働者の改善活動で、貢献したのは明確ですが経済指標には現れていません。
生産性と呼ばれる指標がありますが、実は改善活動などの寄与率は不明な残余分(全要素生産性)に含まれています。
しかもこの部分は、年々低下傾向にあります。
< 2. 日本の成長要因の変化 >
全要素生産性寄与度Aが技術・生産技術(改善)の効果を示す。
資本寄与度Bの低下は国内投資の漸減と海外投資の増大が主だと考えられる。
労働寄与度Cの低下は労働人口低下(少子高齢化)による。
改善活動(小集団活動)がもたらしたもの
今から50~30年前、日本の多くの生産現場では、作業終了後、職場が一体になって日々改善を続けていました。
これにより、品質向上とコストダウンが進み、何よりも職場が協力し合い、意欲は高揚していました。
日本が優位に立つ輸出品の顔ぶれを見ると、どれも画期的な発明品と言うより、細かなニーズに応え、安く、品質の高いものでした。
これを支えていたのが改善活動であり、社員が一丸となれる企業風土にあったのです。
この風土が無い組織では、トップダウンによる効率アップは労働強化として抵抗を受けることになり、これが世界の常識でした。
不思議なことに、この改善活動は無給で行われていました(高額報酬ではないのです)。
これには行き過ぎもあったのですが、とにかく労働者は協力を惜しまなかったのです。
この労働者の意欲向上システム(ZD,QC)は米国で生まれたのですが、世界で日本だけが工夫を加えて発展させたのです。
< 3. 正規雇用者と非正規雇用者の推移 >
現在はどうでしょうか
およそ25年前から、職場には非正規雇用者が増えて来ました。
現在、非正規雇用者率は38%になり、さらに上昇が続いています。
さらに25才以下の非正規雇用者率は72%になっています。
工場やサービス部門の若い労働者の多くは、パート、アルバイト、派遣、契約で占められています。
企業や一部公共体は、この人件費の削減で利益増大や赤字削減を成し遂げました。
< 4. 日本の雇用形態別賃金カーブ >
解説:2013年度、日本の正規平均年収414万円、非正規平均168万円で2.5倍、 生涯賃金2億3864万円の差となっています。
さらに今後、若年労働者の加齢に伴って、上記グラフから所得差が拡大していくことは明らかで、今後の非正規比率の増加が更に拍車をかけます。
これを人々はどう見るでしょうか?
人によっては、この雇用形態による所得比2.5倍(60%減)に問題は無く、むしろ競争力アップに貢献すると信じているかもしれません。
次回、この所得低下がもたらす一番目の問題を見ます。
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