夕暮れのフクロウ

―――すべての理論は灰色で、生命は緑なす樹。ヘーゲル概念論の研究のために―――(赤尾秀一の研究ブログ)

ヘーゲル『哲学入門』第二章 義務と道徳 第六十節[他者への正義]

2022年08月24日 | ヘーゲル『哲学入門』
§60

Diese moralische Denk- und Handlungsweise kome (※1) geht über das Recht hinaus. Die Rechtschaffenheit(※2) aber, die Beobachtung der strengen Pflichten gegen Andere, ist die erste Pflicht, die zu Grunde liegen muss. Es kann edle und großmütige Handlun­gen geben, die ohne Rechtschaffenheit sind. (※3)Sie haben alsdann ihren Grund in der Eigenliebe und in dem Bewusstsein, etwas Besonderes getan zu haben, dahingegen das, was die Recht­schaffenheit verlangt, für Alle geltende, nicht willkürliche Pflicht ist.

第六十節[他者への正義]

この道徳的な思考と行為の様式は法を超えている。正義 は、すなわち他者に対する義務を厳格に守るということは、しかし、第一の義務であって、すべての根底になくてはならないものである。たしかに、正義のない、高貴にして寛大な行為というものはありうる。それらの行為は、その場合ナルシシズムや何か特別なことをしたという意識をその根底にもっているが、それに対して、正義が求めるのはすべての人にとって通用するものであって、勝手気ままな義務ではない。

  

※1
前節、第五十九節を受けた「Diese moralische Denk- und Handlungsweise これらの道徳的な思考と行動の仕方」とは、他者を自己自身のようにみなし、ふるまうこと。新約聖書に「自分自身を愛するように隣人を愛しなさい(マタイ書22:39)」とある。
しかし、このような道徳的な正義、誠実さは、すべての思考と行為の根底に必要であるとしても、法はしかしそこまで高い正義を求めてはいない。

※2
die Rechtschaffenheit
誠実、正義、正直、律儀さ

※3
「正義を欠いているが、高貴にして寛大な行為」とは具体的どのような行為か。「人に見てもらおうとして施しをしたり断食をしたりする(マタイ書第六章)」ことか。



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