GOGO三国志!

2014年に復活した白井恵理子先生の劉備くんシリーズや長池先生の「破龍」(完結)他三国志作品を応援しています!

藤 水名子三国志「赤壁の宴」

2005-08-19 20:28:46 | 三国志/小説(正史ベース)
赤壁の宴(えん)/藤 水名子(ふじ みなこ) 著/講談社/未確認/1500円(本体価格)
内容とコメント読んでビックリ、周瑜が孫策に想いを寄せる話。その想いが不吉を呼び、孫策の命は奪われ、取り残された周瑜は赤壁での勝利を彼に捧げ、後を追う様にして亡くなるまでを描いています。
周瑜は冷たい面の中に隠すも、非常に女性的です。(もちろん男性ですが。)その為女性に対して強い嫉妬や嫌悪感を抱いている、という人物像になっています。
その毒気を抜いてくれる妻・小喬の健気さにホッとさせられます。
くせのある人物描写に目が行きがちですが、中国文学科に学んだ著者の時代描写も正確です。
ただ、年月が過ぎるのが早いのと、情勢の語りが淡々としているのが少し物足りないです。
新鮮だったのは、孫策の妹・恵姫(けいき・孫夫人)が幼い頃から周瑜を想っていたという設定です。これも私小説で有りそうで無かった発想です。

この武将がキラリ!
黄蓋。孫堅の代から仕える忠臣なのに、赤壁の戦に登場するまで周瑜にその存在をすっかり忘れ去られているトホホなお方ですが、しっかり火計を成功させてくれます!

三好徹 「三国志外伝」

2005-08-09 20:11:34 | 三国志/小説(正史ベース)
三国志外伝/三好徹 著/光文社/未確認(刊行中?)/2100円(本体価格)
内容とコメント甄皇后、孔融、臧洪(そうこう)、許靖(きょせい)、虞翻(ぐほん)、荀、夏侯月姫(張飛の妻)、諸葛瑾、賈詡(かく)、楊脩(ようしゅう)、孟達、張温、ホウ徳、馬謖(ばしょく)、諸葛恪(しょかつかく)、曹植、それぞれを主役に、周囲との関わりや生涯を描いた作品。
主に権力者の気まぐれに翻弄される謀臣たちが登場する他、曹丕の子・曹叡(そうえい)の没年が陳寿の記載した年齢と食い違いが見られる事から彼の実の父親や、関羽に援軍を送らず、その後魏に走った孟達の真意、「泣いて馬謖を斬る」の真実を大胆に推測しています。
この作品を読むと、また違った「三国志」の姿が見えてきます。
全ての謎は陳寿が握っているような気もするのですが。

この武将がキラキラ♪
武将ではなく、謀士や名士の人々。武将のような派手な活躍は無いものの、権力をもたらすきっかけをもたらしたり、主君を支えている彼らこそが真の「三国志」の立役者なのかもしれません。

この武将がキラリ!
太史慈!正確な弓の腕前と、約束を守る律儀な武者振りがすがすがしいです。

この描写がキラリ!
孫策と虞翻。虞翻が孫策に献策する姿や、その活き活きとした様子が見られるのはこの作品だけかもしれません。
孫策に仕える理由の決定打となったその計らいが粋で、孫策の人物像も爽やかな印象になっています。

伴野朗 三国志「呉・三国志」

2005-06-15 21:47:50 | 三国志/小説(正史ベース)
呉・三国志~長江燃ゆ~(全十巻)/伴野朗 著/集英社/刊行中/ハードカバー版は各1800円(本体価格)、文庫版は680円~780円(込)
ハードカバー版は1冊に二巻収録(全5冊)、文庫版の表紙絵は正子公也氏

内容とコメント数々の歴史資料をもとに、呉に視点を置いて書かれた三国志。呉が関わった戦、内乱から滅亡までを描いています。
呉、曹軍、諸葛亮の各諜報組織が暗躍して時代を動かしたり、策謀の応酬が主ですが、武将たちの勇姿も見られます。
様々な武技を使う暗殺者たちの死闘が随所に盛り込まれ、適度な緊迫感を与えています。
また、邪馬台国など諸外国との関係や既存の人物に創作を加えるなど、歴史書の空隙を衝いた設定が大胆ながらもリアルです。
衝撃だったのは、諸葛亮がある人の死を画策した事です。その結末の皮肉さと言い、なんともやるせないです。

この武将がキラキラ♪
孫朗(そんろう)と諸葛均。孫朗は孫堅の庶子で、五男。この作品では諜報組織を任されて活躍する主役的存在。
諸葛均は、独特な剣の使い手で、兄・諸葛亮を守るかっこ良い役です。

この武将がキラリ!
曹棄(そうき)と趙雲。曹棄は早世した曹棘(そうきょく)が著者の設定で生かされ、成人した姿。父・曹操に棄てられ、再び取り立てられた諜報組織の非情な頭目、という設定が魅力。
趙雲は、思わぬところで登場します。神業的な槍術を使うという、すごく強くてかっこ良い描かれ方です。人への気遣いが出来る細やかさも好印象です。先生、これはちょっとかっこ良すぎます…

この女性がキラリ!
黄月英。ご存じ、諸葛亮の妻。この作品にも、個性的な武術、能力を持つ女性が多数登場し、技を披露する中、彼女は多芸に秀でているものの控えめに徹してます。(でも多分戦うと強い)
危機を脱した後のおっとりとしたマイペースぶりがまたこの人の凄いところです。







朝香祥 三国志・孫策幼年期、恋愛編

2005-06-06 20:39:00 | 三国志/小説(正史ベース)
コバルトシリーズ「青嵐の夢」「華の名前」「華残月(はなのこりづき)」/朝香祥 著 桑原祐子 イラスト/集英社/未確認/457円、495円、514円(いずれも本体価格)

内容とコメント「青嵐の夢」は十歳になった孫策と周瑜の出会いから、衝突や協力を経て友情を深めていく話です。
また朝香三国志「かぜ江」シリーズのキャラクター人気投票の結果発表も収録しています。
巻末のあとがきには幼名や琴(きん)についての解説があります。
「華の名前」は、孫堅配下になった部族の君長の娘・芙蓉(ふよう)と、寨(さい、砦)の少年達の恋模様を描いた作品で描写・展開が完全に少女小説になっています。
「華残月」は孫策ら少年達による野盗討伐隊の活躍と、孫策の恋を描いた作品です。
あとがきには、混乱しがちな陸遜家系図の解説があります。

この武将(?)がキラキラ♪
幼い孫権。兄・孫策に琴をねだる姿がかわいいです。

この女性がキラキラ♪
「華の名前」の芙蓉。少女小説らしく(?)、想う人に気に入ってもらうために“努力”する姿に好感を持ちます。

この女性がキラリ!
周瑜の姉・蓮(れん)。丹桂(たんけい)の花をかたどったかんざしと心に残る大切な思い出と、物語の結びの晴れやかな描写の効果が切なくさせます。

この武将が…またですか
周瑜。朝香三国志では毎回負傷してますが今回も負傷してます。「おやくそく」というものなのか、著者の意図的なものかは判りませんが、描かれる当人は大変です…

朝香祥 三国志・角川版

2005-05-28 14:28:25 | 三国志/小説(正史ベース)
角川ビーンズ文庫運命(さだめ)の輪が廻(まわ)る時/朝香祥 著 穂波ゆきね 本文イラスト/角川書店/刊行中/457円(本体価格)

内容とコメント長安に遷都した董卓に迫るべく、表向きは袁術に従い襄陽(じょうよう)を攻め、それを拠点に独立を図ろうとする孫軍に不幸が訪れ、それにより軍は瓦解(がかい)し、孫策に更なる別れをもたらすまでを描いた作品です。とは言え、決して暗い終わり方ではなく、登場人物たちの前向きな姿勢をしっかり描いています。
この作品でも、やはり敵・味方双方の心理描写と戦況記述が丁寧です。

この武将がキラキラ♪
周瑜。朝香さん三国志一作目「旋風は江を駆ける」の彼と同一人物とは思えないほど表情がよく出て、孫策のことをいたわっています。…性格は同じですが

この武将が???
蒯越(かいえつ)。峴山(けんざん)での策といい、この作品では何故か役柄が完全に兄・蒯良(かいりょう)と同じになっています。兄の方は全く出て来ません。自分でも読んでいて錯覚・混乱してました…

朝香祥 三国志「約束の時へ」

2005-05-25 20:26:53 | 三国志/小説(正史ベース)
コバルトシリーズ約束の時へ/朝香祥 著 桑原祐子 イラスト/集英社/刊行中/514円(本体価格)

内容とコメント董卓軍と対峙してから二年経ち、膠着状態を打開するために動いた孫堅軍が危機をしのぎ、董卓のいる洛陽に上りつめるまでを描いた作品です。
孫策と周瑜が驚くべき強敵と戦うシーンが見どころの一つとなっています。その強敵のファンにとっては嬉しいかも?
また、この作品では心情表現がより豊かで、詩のように美しく叙情的です。

この武将がキラキラ♪
孫策と周瑜が出逢う、意外な強敵。(とは言え予想はつくと思いますが)
戦闘描写は多少わかりにくいのですが、その強さはしっかり伝わります。異なる対象に見せる表情も様々です。

この武将がキラリ!
祖茂。「演義」と「正史」で扱いが違う人物ですが、この作品では三国志作品随一(おそらく)の魅力的な人物像になっています。個人的には周瑜の性格が丸くなったのはこの方の影響があるのではないかと思います。迷いのある年代という意図的なものにしても、朝香さんが執筆されるうち自然とそうなったとしても。
そんな意味もあり、忘れられない人物となりました。切なさと穏やかさと共に。

このセンスがキラリ!
今回の表紙は、読む前と読んだ後では印象が必ず違ってきます。
読んだ後で気付く、余韻に浸れる味わい深いイラストです。

朝香祥 三国志・孫策初陣編

2005-05-23 21:07:42 | 三国志/小説(正史ベース)
コバルトシリーズ旋風の生まれる処(ところ)上・下巻/朝香祥 著 桑原祐子 イラスト/集英社/在庫無し・増刷未定(入手不可)/457円、495円(いずれも本体価格)

内容とコメント孫堅軍が董卓討伐に向かう中に、初陣を向かえた孫策と周瑜の葛藤や成長を織り交ぜて描いた作品です。
孫堅の命を狙った事件が続発するなど、ミステリーの要素もあります。周瑜はさながら名探偵のように、犯人に迫ります。
意外にも、推理小説のように読む事が出来ました。

この武将がキラキラ♪
孫堅。豪胆で、自分の命を狙う者すらも惹きつけられてしまう魅力の持ち主です。
惹かれた暗殺者も、その信義ゆえに、キラキラ♪です。

この武将がキラリ!
董卓の“蜂”こと、孫堅に差し向けられた刺客。詳しい事は伏せますが、設定も描写も個人的に大絶賛してます。

このセンスがキラリ!
今作の表紙デザインも凝ってます。上・下で対になったイラストで、上巻は孫策が手前で周瑜が奥で青緑系の配色で若葉の季節を思わせます。下巻は周瑜が手前で孫策が奥、ピンクと紫の配色が秋を思わせるようです。個人的には色使いの美しさで下巻の方が気に入ってます。

朝香祥 三国志・赤壁編

2005-05-17 21:44:59 | 三国志/小説(正史ベース)
コバルトシリーズ
「二龍(にりょう)争戦~星宿、江を巡る~」「鳳凰飛翔~華焔(かえん)、江を薙(な)ぐ~」/朝香祥 著 桑原祐子 イラスト/集英社/いずれも在庫無し・増刷未定(入手不可)2005年5月現在/495円、476円(いずれも本体価格)

内容とコメント長江で曹操軍と開戦することになった孫軍が、味方同士の確執や間者の吹聴による疑心や士気の低下といった諸問題を経て結束を固め、不利を覆して曹軍を打ち破るまでを描いています。
周瑜の秘めている(のにバレている)天下への展望がこの作品で重要な役割になってきます。
尚、「鳳凰飛翔」の巻末にはコラム「書き逃げ三国志」が収録されています。「正史のすすめ」、「曹操」、「蜀で一番エライ人」について書かれています。
「鳳凰飛翔」は「復刊ドットコム」で復刊交渉中ですが、現在も増刷未定となっています。

この武将がキラキラ♪
呂蒙と陸遜。経験を積んで成長し、落ち着いてきたものの、大事になると見せてしまう子犬のような表情は相変わらずです。

この武将が???
黄蓋。この作品の黄蓋像にも驚かされました。忠臣であるのに何故、あの行動、動機が取れるのか、どうも腑に落ちないです。ダジャレ?と一瞬思ってしまいました

このセンスがキラリ!
「二龍争戦」のタイトルと「鳳凰飛翔」の表紙絵。タイトルは語感、表紙絵は見るたびに上手いと思ってしまう素晴らしい構図と表現力です。



朝香祥 三国志「江のざわめく刻」

2005-05-13 20:24:17 | 三国志/小説(正史ベース)
コバルトシリーズ江のざわめく刻(とき)/朝香祥 著 桑原祐子 イラスト/集英社/未確認(入手不可?)/400円(本体価格)

内容とコメント孫策の死から八年後、赤壁戦に向けて揺れる呉を描いた作品です。
曹操軍の南下に怯え、周瑜と、亡き孫策に頼ろうとする呉の脆弱さ、なかなか開戦を主張しない周瑜と、読んでいて不安を感じさせ、自然に惹きつけられる描写が上手いです。
また、この作品から少しずつ周瑜の天下統一の展望が明らかになっていきます。

この武将がキラキラ♪
呂範。前作以上に派手な格好になり、戦艦にも豪華な装飾を施すなど、何故か(?)パワーアップしています。

この武将がキラリ!
諸葛兄弟。諸葛亮は焦燥や敗北感にまみれる普通の人、という描かれ方に非常に驚きました。
劉備に仕える理由や兄への情に流されそうになる所も既存のイメージからは意外ですが、新鮮な魅力になっています。
諸葛瑾はおっとりとしていて、和み系の人です。緊迫した展開の中で、肩の力を抜かせてくれる貴重な存在です。

朝香祥 三国志 「旋風は江を駆ける」

2005-05-10 21:23:04 | 三国志/小説(正史ベース)
コバルトシリーズ旋風(かぜ)は江(こう)を駆ける 上・下巻/朝香 祥(あさか しょう) 著 桑原祐子 イラスト/集英社/再刊行中/各533円(本体価格)

内容とコメント孫策と幼なじみの周瑜が衝突やすれ違いを繰り返しながらも、盟主である袁術のもとから独立し、幾多の戦いを経て江東を平定するまでを描いています。孫策と周瑜のすれ違いに、既存のイメージを崩されますが、目的・役割を持たせた人物描写が丁寧です。戦局もおろそかにせず、最後まで書ききっています。江東を取り巻く情勢から小道具まで、時代考証も徹底してます。

この武将がキラキラ♪
呂蒙。「NHK人形劇(演義)」で定着してしまった極悪人のイメージを見事に払拭してますが、読者層を意識してか、「正史」の呂蒙ファンでも戸惑うかわいらしさで描かれています。
当人が一番驚いてしまうかも

この武将がキラリ!
程普と、敵将の樊能(はんのう)と于麋(うび)。軍事には私情を挟まない程普、孫策と周瑜を好敵手と感じていた樊能、その気質を慕う于麋の忠節など、「三国志」らしい所もちゃんと見せています。

この武将が痛恨!
太史慈。彼なりに天下泰平の方法を考え、目指す姿勢が新鮮で、孫策との一騎打ちも作品で唯一の、なんのわだかまりも無いすがすがしい場面になり、ここでは孫策も従来のイメージを損なわずいきいきと描かれていて大変良かったです…が、太史慈の心を揺らすのは孫策(だけ)にして欲しかったです。孫軍に招くため彼の理念を挫(くじ)くのは確かに上策で、周瑜の見せ場にもなり、この作品では説得力がありますが、
太史慈の心を揺らしていいのは孫策だけという固定観念があるために非常に抵抗を感じます。