悪くなかったですよ。
中村吉右衛門版に無理に寄せるでもなく、さりとて変に違ったものを作るでもない。真正面からちゃんとした時代劇を作ろうという姿勢が良かった。
吉右衛門さんと幸四郎さんを比較することに大した意味はないです。幸四郎さんは幸四郎さんなりの鬼平を作ればいいし、それは割と上手く行っているように思う。
他のキャストさんたちにしてもそう。特に火野正平さん演じる相模の彦十は、猫八さんとは全く違う、でも火野さんならこうなるよな、という彦十で、明るく軽妙でありながらどこか後ろ暗いところを抱えている感じは、見事としか言いようがない。
ストーリーはファンならばよく知っているもので、あとはそれをいかに肉付けしていくかというもの。その点では若き日の鬼平、「本所の銕」時代のエピソードを大きく取り入れたのは大正解だし、盗賊側の者たち、松平健や原沙知絵演じる悪党どもが、何故そのような身に堕ちたかということも丁寧に描き、物語が深いものになっていたように思う。
「本所・桜屋敷」というのは切ない物語です。若き日の淡くも美しい思い出が無残に打ち破られていく。この世の「無常」を描いてる。
そんな中でも、例え知己の者であったとしても悪には果断に対処する「鬼」の平蔵もしっかりと描かれており、立派な『鬼平犯科帳』になってます。
そりゃあね、吉右衛門さんが一番良いというファンの気持ちはよくわかりますよ、私だってそうです。鬼平はやっぱり中村吉右衛門なんです。
でもね、思い出の中に沈ませてしまうには、『鬼平犯科帳』というのは実に惜しい題材だと思うんですよ。
時代劇を廃れさせてはいけない。それには魅力的なコンテンツが必要。そういう意味では『鬼平犯科帳』は実に魅力的なコンテンツだといっていい。
ちょうど怪獣映画でいう『ゴジラ』みたいなもんです(笑)。
伝統に法り乍らも、時代にあった新しいものを作り続けること。この度の鬼平はそうしたことに挑戦した、意欲的な作品だと、私には思えました。
作り続けることこそ大事。「時代劇新時代」というキャッチコピーのとおり、
新しい「鬼平」の、今後の展開に期待したい。
劇場版『鬼平犯科帳 血闘』予告編
この幸四郎さん、なかなか良いと思いません?怒りと悲しみ、果断さと情。立派な鬼平ですよ。
とにかく、時代劇を作り続けなければいけない。
時代劇の灯を消すな!
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