問わず語りの...

流れに任せて

映画『柳生一族の陰謀』

2022-03-27 14:57:26 | 時代劇

そういえばこの作品のことを、ちゃんと語ったことがなかったかもしれない。最近久しぶりにこの作品を観て、思うところを語ってみようかと思いました。

 

正直、ストーリーはそんなに良く出来ているとは思わない。結構無茶な展開が多いし、将軍継嗣問題に公家勢力まで絡んでくるのは、ちょっとやり過ぎだなと思う。

成田三樹夫さん演じる烏丸少将は面白いんだけどね、でも当時のお公家さんで、あんな剣の達人が本当にいたのか?どうもあれはやり過ぎで、私がこの作品にいまいち乗り切れなかった原因の一つがこれでしたね。

それと、柳生但馬守を演じる萬屋錦之介さんの殺陣があっさりし過ぎていてこれも不満。まあ、千葉真一や当時はまだ無名だった真田広之など、ジャパン・アクション・クラブ勢に派手な殺陣を任せて、萬屋さんは一歩引いたかたちをとったのかもしれないけど、私としては「子連れ狼」の殺陣再び!を期待していただけに、とてもとても、とってーも、不満!

でした。

今観れば、JACの殺陣の凄さもそれなりにわかるし、特に真田広之の動きの軽さ、滑らかさは驚異的だなと素直に思う。でも初めて観た当時は、あのアクロバティックな動きはただの曲芸のように見えて、「こんなのは殺陣じゃない!」と、長いことJACを否定していました。

時の流れは、観方も変える。

 

なんだか不満ばかり語ってしまいましたが、もちろん好きな部分もあって、登場人物が結構多いのだけれど、それぞれのキャラクターにちゃんとドラマがあって、それぞれのドラマがコンパクトに纏められていて、ドラマの展開を緩慢にすることなく、上手く深みを与えてる。これは脚本の上手さかな。対立する双方に言い分があり、愛情もあり、単なる悪人は出てこない。勧善懲悪ではない。この点が好きですね。

謀略を巡らす権力者たちにも、それに巻き込まれる者たちにも、それぞれの想いがあり、それぞれの「愛」がある。その「愛」ゆえに対立し、「愛」ゆえに滅んでいく。

 

 

謀略戦に勝ち、我が世の春を謳歌する、かに見えた柳生但馬守宗矩。しかしその瞬間、我が子十兵衛によってすべてが覆されて終わる。カタルシスとは違う、なにか虚しさが残るラストシーン。狂った但馬守の「これは夢だ!夢だ夢だ夢だ、夢でござーる!」の叫びが胸に響く。

 

 

上に挙げたような不満点はあるにせよ、観終えてみればそれなりに面白い作品であったと思う。セットはメチャメチャ豪華だし、ロケ・シーンの迫力も凄い。所作や儀式等の描き方も、これでもかというくらいにしっかりと描かれているし、群衆シーンの人の数の多さと言い、東映が社運をかけて作ったというのがよくわかる。

ホントに、ちゃんとした時代劇を作ろうという意図がよく見える。

 

 

それと出演俳優の豪華さね。萬屋錦之介や千葉真一はもちろん

松方弘樹、西郷輝彦、高橋悦史、芦田伸介。

成田三樹夫、梅津栄、夏八木勲。

志穂美悦子、中原早苗、大原麗子

原田芳雄、金子信雄、室田日出男。

丹波哲郎。

山田五十鈴。

三船敏郎。

その他、お馴染みの役者さんたち。曽根晴美、岩尾正隆、小林稔侍、片桐竜次、汐路章、田中浩、成瀬正、唐沢民賢、阿波地大輔、小峰一男、峰蘭太郎、そしてそして、

我らが福本清三!

俳優さんたちの顔を見ているだけで、楽しくなってくる。

 

広いロケ地に引きのカメラアングルで撮った、大迫力のアクション・シーン。早馬のスピードもとんでもなく速い。狭い山道、それも人の行列が延々と連なっているその横を、物凄いスピードで駆け抜けていく早馬には、人を撥ねはせぬかとハラハラしてしまう。

ワン・カットごとの構図も良く計算されており、情報量も多い。これぞ時代劇!といった画で、いまこれだけの画を撮れといわれてもおそらく無理だろうと思われるほどの、映像の素晴らしさがある。

豪華俳優陣にもそれぞれの見せ場があり、特に三船敏郎と山田五十鈴は、まさしく、これぞまさしく時代劇!といった貫禄の演技で、もうため息がでるほどに素晴らしい!!こういう俳優さん、

もういないんだよねえ......。

 

 

この作品が作られたのは1978年。この前後くらいまでだよね。時代劇らしい時代劇が作られた最後の時代は。

 

 

時代は変わる。もうこのころのような時代劇は臨めない。しかしそれでも、時代劇の灯だけは消さないで欲しいと切に思う今日この頃。

時代劇と怪獣映画は、日本の伝統芸。民族の宝。これを無くしては民族が滅びる......かどうかは分かりませんが(笑)。

 

どんなかたちであれ、伝統芸の灯は消してはならない。

 

エンタテインメントは時代とともにある。現代に合った時代劇というものは必ずある。

 

時代劇をもっともっと作ろう。作らなければならない。

 

そんなことを、強く思わせた作品でした。

 

 

 

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2 コメント

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Unknown (チャメ子)
2022-04-04 05:56:39
『柳生一族の陰謀』の予告編拝見しました。
豪華キャストで迫力満点の映画ですね。
そうですね、時代劇と怪獣映画は日本の伝統ですね。
伝統の灯火を絶やしてはなりませんね。
最近三谷幸喜監督の大河ドラマを観ておもうのですが、伝統が絶えてしまうのならば、三谷幸喜監督のように多少おちゃらけても若い人たちが喜んで観られる、そういう時代劇もありだなぁと。大河ドラマ苦手な旦那も、私と一緒に毎週楽しんでおります。(笑)
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Unknown (薫兄者)
2022-04-04 08:22:03
チャメさん、「鎌倉殿の13人」はスゴイです!喜劇であって悲劇でもあって、笑えるところあり、思わず戦慄するほどの残酷さもあり、毎回目が離せない。あんな出来のよいドラマはそうはありません。
今週も面白かったですね。菅田将暉の源義経の無邪気であるが故の危険性。あの義経は可愛くて怖い。あんな義経の描き方、今まで誰もしませんでしたよ。スゴイよね。あの無邪気さがトラブルを呼び、決定的な悲劇につながるんです。歴史を知っているだけに、今からもう辛いです。
木曽義仲があんなに思慮深く男気のある人物として描かれているのも初めてじゃないかな。この義仲に対して義経がどんな行動を起こすのか。来週以降観るのが怖いです。だって哀しく辛いに決まっているから。でも
やっぱり観たい!
梶原善さん演じる殺しのプロの行く末も気になるし、何なんだこのドラマは!?ホント、近年まれにみる秀逸なドラマです。
まだ観たことない人、観るべし!
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