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流れに任せて

映画『レジェンド&バタフライ』

2023-02-01 04:50:33 | 時代劇

東映創立70周年ということで、どうせなら『忠臣蔵』にすればよかったのに。

 

 

なんてことを思いつつも、まあ致し方あるまい。今『忠臣蔵』で客が呼べるかといったら、正直言って甚だ疑問。

 

記念作品だからなんとしてでも当てなければならない。そのためには客を呼べるスターが必須。

 

 

今、スターと言える人は誰か?

 

 

やはり、キムタクだろう。

 

 

 

キムタクを主役に、日本人なら誰でも知ってる(はず)織田信長を主人公にした時代劇なら、客が呼べる!

 

 

目論見は見事に当たりましたね。大ヒットおめでとうございます。

 

 

それにしても、織田信長である。日本人なら誰でも知ってる(はず)信長。ということは

 

 

甚だしくネタバレしているということでもある。

 

 

日本人ならみんな知ってる(はず)、信長の生涯を、どう見せるのか。

 

 

そこで注目したのが、信長の妻・濃姫(帰蝶)だった。

 

 

帰蝶さんの事績はほとんど残されておらず、どのような生涯を送ったのか、ほとんどわかっていないんです。だからこそ

 

かなり自由に物語を作ることができる。

 

その帰蝶の物語に信長を組み入れていけば、今まで観たことのない信長像を描けるのではないか。

 

 

…と、目論んだのかどうかはともかく、帰蝶を物語の中心に据えることで、今まで観たことのないユニークな信長像を作り上げることができたのは確かです。

 

 

 

キムタク、頑張ってましたよ。キムタクはどう転んでもキムタクでしかない。それは確かにそうなのですが、それでも頑張ってた。

 

 

でもそれは、相手役が綾瀬はるかだからですよ。綾瀬はるかが素晴らしかったから、それに触発されるかたちで、キムタクの演技もよくなった。

 

 

綾瀬はるか素晴らしかった。

 

 

私の最初の読みどおり、この映画の主役は実質、綾瀬はるかでした。

 

 

実際、映画の内容もそうできてるんですよね。キムタク信長は最初、カッコだけで中身のたいしてない、文字通りの「うつけもの」なんです。

 

 

それが、政略結婚で輿入れしてきた帰蝶のプロデュースによって、結果的に天下人への道を突き進んでいく。

 

 

綾瀬はるかの帰蝶がいなければ、キムタク演じる信長は天下人になど、なれなかった。

 

 

この信長は乱暴で見栄っ張りで、それでいて繊細なところもあって案外気が弱い。

 

まるでやんちゃ坊主です。

 

 

一方の帰蝶は完全な大人。子供みたいな信長をときに厳しくときにやさしく諭し、導いていく。

 

 

桶狭間の奇襲攻撃は、帰蝶のアドバイスによって齎されたもの、なんて展開は今まで観たことがなく、とても面白かった。

 

 

 

しかし、天下人への道を進む過程で、多くのいくさを繰り返し、数多の人々の命を奪って行くうちに、その重みに耐えかねる信長の「狂気」が増してくる。

 

 

ついには帰蝶の言も聞かなくなり、そうして

 

 

比叡山の大虐殺が決行されることになる。

 

 

こうして二人は一度、離縁することになる。しかし分かれたことで、お互いがお互いを必要としていることに気が付いていく、という展開。

 

 

基本は信長と帰蝶のラブストーリーですね。それでもただの甘ったるい話にならないのは、戦国の世の過酷さをよく描いているからだろうか。

 

 

合戦シーンはあまり描かれていないのですが、比叡山焼き討ちや本能寺のシーンの描き方はかなり容赦がない。本当に人を殺す殺陣になってる。

 

あの容赦のなさは今どきだね。

 

 

面白いのは明智光秀ですね。この光秀は信長の「狂気」にほれ込み、この「狂気」こそが天下を治める力となると思っている。だから信長にはずっと狂気を保ったままでいてくれないと困る。

 

しかし帰蝶とよりを戻したことによって、信長から狂気が薄れていくんです。だんだん普通の人になっていく。

 

元々信長というのは、そんなに強い人なわけじゃなかったのだから、帰蝶との「愛」を取り戻したことで、狂気を維持できなくなっていく。

 

 

そんな「やさしい」信長など、いらない!

 

 

これが本能寺の変の真相。

 

 

まっ、あくまでこの映画の中での話ですが。

 

 

いや、面白かったです。良く知っているのにまったく観たことのない話。

 

 

よくできてました。

 

 

綾瀬はるかの優れた身体能力も堪能できるし、ホントに綾瀬はるか

 

 

素晴らしかった!

 

 

キムタクも良いですよ、良いですけど、やっぱりこの映画は綾瀬はるかで持っています。

 

 

綾瀬はるかなしに、この映画の成功はあり得なかった。

 

 

 

久々の、本当に久々の大作時代劇ということでしたが、まあ、合戦シーンとか殺陣のシーンが割と少ないので、その点に不満を覚える方もおられるかもしれませんが、その分主役の二人の物語が丁寧に綴られていて、ひとつのドラマとして非常に見ごたえがあります。

 

 

これほどスケールのでかいラブストーリは、日本映画では珍しいかもしれない。

 

 

こういう時代劇もある。時代劇の奥の深さを見せてくれた秀作。

 

 

これ、良いです。

 

 

観るべし。

 

 

そうそう、斎藤工が演じた徳川家康が、これまた「凄い」。

 

 

これも見どころです(笑)

 

 

 

 

 

 

コメント (2)
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