さかざきが綴る「アンティークな日々」

アンティークディーラーさかざきがアンティークのこと、日常のことを綴っています。

お時計狂想曲

2009-04-11 | アンティーク

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 最近入手した河村のお時計(あえて「お」を付けさせていただきます。)、本来の彼は私よりもずっとずっと時計好き。普段ブランド物にはあまり興味のない私達ですが、前々から時計だけはアール・デコの形が美しいカルティエのものを欲しがっていた身の程知らずな河村、もちろん我が家の予算では18Kで出来た時計は到底無理です。既にアンティークの腕時計をいくつか持っている私は、「そんなに欲しいなら『鉄』のを買えば?」なんて他人事に鷹揚に構えていたのですが…。(この場合の『鉄』というのは、ステンレス製の時計のことを指します。18Kのイエローゴールド、ホワイトゴールドなどの素材が有名な時計ですが、何よりもステンレス製が一番安いので。)

 そんな折、仲良しのアンティークディーラーから、以前フランスのオークションで落とし、長らく愛用していたご自身のゴールドの時計を格安で譲っていただけることになりました。アンティークを扱っている私達、中古品に対する偏見はまったくありません。しかも、よく知った方から譲っていただけるなんてとても嬉しいこと、すぐに入手を決定し、先日念願かなって河村の元にやってきました。

 この時計、現行品にはないサイズとファイスのデザイン、量感のあるゴールドがジュエリーを思わせます。が、ベルトが少し傷んでいたため、取り替えねばなりません。パリのカルティエに行こうか、それとも名古屋のお店に行こうか迷った挙げ句、結局名古屋で一番大きいカルティエの旗艦店へふたり勇んで出掛けました。

 普段、なかなか足を踏み入れることのないカルティエのお店、絨毯もふかふか、パリの本店ほどではないものの(実は私、以前一度だけパリのカルティエ本店に用事があって出向いたことがあるのです。ちなみに、店内には商品がひとつもディスプレイしてありませんでした!)、高級感が漂う静かな店内です。「Dバックルのベルトが欲しいのですが…。」と河村が口を開くと、「どうぞこちらへ。」と小さなテーブルにご案内。「やっぱり高級ブランドの店員さん、綺麗にお化粧されているわ。」と若い女性店員さんの横顔に惚れ惚れしてしまいます。「それではこちらから革をお選び下さい。」と出された見本は30種類以上、様々な色、様々な種類の革、そして縫い方にも違いがあることを初めて知り、びっくり。河村と一緒に選びながら、私までわくわくしてしまい、「私もカルティエのお時計が欲しい!」とひそかに思ってしまったほどでした。

 ところが、河村の時計を手にとって隅々まで眺めていた店員さんは、「これは現行品にはないモデルのため、ベルトはオーダーになります。」と落ち着いた態度で一言。「えっ!!オーダーっ!?カルティエでオーダーっ!!」ふたり同時に心の中で叫び、そのお値段を想像して青ざめる私達。澄ました顔で、手際よくサイズの詳細を計り、さっさとオーダーシートに書き込んでいく彼女。最後に、「それでは出来上がりまでに3ヶ月から半年お時間をいただきます。」と丁寧にオーダーシートの控えを渡された直後、耐えきれずに河村が「で、いくらかかりますか!?」とついに質問してしまいました。そこでやっと私達の動揺に気付いたらしい彼女は私達を安心させるように「オーダーも通常のベルトと同じお値段なんですよ。」とにっこり。どっと安堵する私達。あぁ、よかった。

 そんな訳で、河村が選んだボルドーのクロコのベルトは、3ヶ月後から半年後にやって来るはず。あぁ、我が家の時計狂想曲、まぁ、たまには河村にもご褒美ということで…。私も欲しいなぁ。

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