それは問題の夢を見て、何ヶ月もたったある夜の事でした。その頃はもう、ほとんどあの夢は単なる悪夢だったと思っていました。
その夜、私は、自分の父方の田舎で、楽しく、夏休みを過ごした思い出に浸って寝ていました。
『あの林の奥でセミの抜け殻を見たんだ。』何かわくわくしながら私は思い出し、その場所を細かく思い描いていました。
何とか、また、あそこに行く夢が見れないかなとか思っていました。
そして眠りに落ちて、気がつくと私はそこにいました。
『やった! 希望どおりの場所の夢だ! 』私は喜んで、飛び回り、周囲を確認しました。木や草の雰囲気、そして、そこから見える風景を・・・確かにそのままの場所でした。でも一つ問題がありました。そこは夜だったのです。『ちぇっ、これじゃあよくみえない。』わたしは少しがっかりしました。空には星空があり、楽しめそうな物ですが、自分は、そこで夏休みの間、日差しの中で楽しんでた時と同じ状況が見たかったのです。
でも、林の中だけは良く見えました。なんでか、そこだけは明るく、まるでライトで照らしてるみたいだったのです。そして、自分が動くたびにライトの位置が変わる・・・その時、私は自分が光ってるんだと気がつきました。『変なの! 』私は思いましたが
『まあいいや、ここがみえるだけでも楽しいから・・・』としゃがみこんで、前にセミの抜け殻を見つけた場所を探り出しました。
『ここだったよな・・・ 』私は落ち葉が溜まってるのを見て手で払おうとしました。でもやってもあまり動きません。
『おかしいな・・・この下なんだよ・・・これぐらいみせてくれよ。夢なんだから、それぐらい思い通りにしてくれたって・・・』わたしはなんども、思いっきり力を入れました。私の体は力を入れるにしたがって激しく輝きはじめました。『おおげさだな・・・なんでこうなるんだ?』でもそれで今度は邪魔な葉っぱは全部、はねのけられたのでした。でも、そこにはセミの抜け殻はありませんでした。
でもまあ、ともかく、思うようになったので、そこに前はあったことを思い出すことで満足することにしてその場所を探りながらひとりごちてると、突然妙な音が近くでしました。私ははっとして顔を上げました。
林のそばに立ち尽してる人がいました。こっちをみたまま、凍りついたように固まっています。あまりに林が輝いていたために不審に思って覗き込んでしまったようでした。竹取の翁みたいですが・・・見えた私の姿は彼にとっては・・・
私は見つめ返していました。彼が恐怖にしびれてる事が分かりました。わたしはとても嫌な気持ちになりました。この頃、私は、ともかく、誰からもかわいい少年だと言われていたので、そんな怖い物みたいに思われるのがとても心外だったのです。私は分かってもらおうと立ち上がりました。『僕の姿をちゃんと見てよ・・・ほら怖くないでしょ? 』絶対、分かってもらえる筈・・・そんな想いでした。
しかし、彼はその瞬間、ものすごい悲鳴を上げて、全速で逃げ出しました。
『何だよ、せっかく楽しい夢なのに・・・』私は更に気分が悪くなりました。『ちゃんとかわいい僕だと分かってもらう夢にさせてもらわなきゃ・・・ちょっと光ってるぐらいでそこまで怖がる事無いだろ』!
私は彼を追いかけてしまいました・・・それがとんでもない騒ぎを作ることになるとは思わずに・・・
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問題なのは夢だと信じ込んでいる事で、それが問題を作ってしまったのです