シビックはどこへ

 新車が来た。夫は納車の日を楽しみに待っていたので、その日の朝、起きて、夫に新車の夢でも見たかと冗談半分に尋ねてみたら、見ないと言った。
 私はといえば、新車の夢は見ないが、シビックの夢を見た。車の販売店の人が、下取りのシビックを持っていってしまう夢であった。家の前の通りを走り去っていくシビックのうしろ姿が、目覚めたあとも残っていた。
 約束の時間になって、新車が届けられた。無論、私も新しい車はうれしい。ぴかぴかの白いボディーにわくわくしているうちに納車の手続きは済んで、下取りに出されるシビックは、夢に見たのと同じように、道の向こうに小さくなっていった。別れはとてもあっけなくて、乾いていた。
 新しい車で、少し遠くまで出かけた。新車を走らせるのは楽しいけれど、時々、比較するようにシビックのことが思い出されて、今頃シビックはどうしているのだろうと考えると、シビックが可哀想な気がして、さびしいのである。
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コメント
 
 
 
お疲れ様 (のり)
2007-03-07 19:35:59
私のカレンちゃんと違って充分仕事したシビック君「お疲れ様」です。
こんだけ愛されたら「つくも神」も怒らないですよ。
モノを大事にしない人が増えている昨今
いい話なのです
 
 
 
Unknown (チナツ)
2007-03-08 13:16:52
頭が固いというか、保守的でしつこいだけなのですが…(苦笑いです)
シビックには感謝しています。おかげでいろんなところへ行けました。
新しい車もだいぶ好きになりましたが、道を走っていて、同じ型のシビックを見かけたりすると、まだちょっと未練がましいです…
 
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