ふくちゃんと藤の種

 公園で遊んでいるときに、藤棚の下で、子供が藤の種を拾ってきた。長さ12センチくらいの鶯色の鞘で、表面に毛が生えてビロードみたいな手触りがする。絵に描こうと思って家にもって帰って、机の上に置いておいた。
 そのあと、ふくちゃんが机の上にあがって、なにやらごそごそしている。ときどき、紙の下や鉛筆と鉛筆のすきまに食べ残ったおやつのカリカリを探していることがあるけれど、そのときは違うようだった。鼻先でペンや筆を押し分けて、藤の種の匂いを嗅いでいるらしかった。外の物だから、匂いを確かめているのだろうと思った。
 今度は、朝起きたら床の上に藤の種が転がっていた。鉛筆でも耳掻きでも細長いものなら何でも動かしてやると、それなりに猫パンチで反応してじゃれるけど、わざわざ机の上から持ち出すようなことはない。やっぱりなぜか藤の種がとくに好きらしい。目の前で動かしたら、両手で掴んでじゃれて来た。ふくちゃんは、お香にまたたびのような反応をしたり、少々変わったものが好きなところがある。
 ためしにみゆちゃんの鼻先にもっていってみたら、ちょっと匂いを嗅いで、何でこんなもの嗅がせたの、というような顔をして、私を見た。
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