かわいいまる

 まるは抱っこが好きです。といってもまあ猫なので、自分が好むときだけですが、抱っこしてほしいとなると、自己主張の強いまるのこと、にゃあっと言いながら、あと足で立って、両手をまっすぐに私のほうへ伸ばしてきます。これがまずかわいい。少し前に有名になった動画の、一直線なバンザイのポーズで抱っこをおねだりする黒白猫さんに近いものがあります。
 抱っこしてあげると、あの竹久夢二の代表作「黒船屋」で女の人に抱っこされる黒猫のように、両手を私の肩に乗せ、お腹をぴったりつけて甘えるので、もう可愛くて仕方ありません。
 なぜこのように、抱っこのまるを可愛い可愛いと嬉しそうに紹介しているかと言いますと、みゆちゃんもふくちゃんも抱っこが嫌いなのです。抱き上げると、5秒も我慢できずに、あと足で憎たらしく私を蹴り飛ばし、飛び降りてしまいます。まるが家に来るまでは、みゆちゃんにもふくちゃんにも抱っこさせてもらえず、私は猫抱っこに飢えていたのでした。
 しかも、みゆちゃんふくちゃんは、頬ずりやキスでもしようものなら、露骨に迷惑そうな顔をして、失礼にも全力で私の顔を避けるのですが、まるといったら、自分のほうから、おでこを押しつけたり、ほっぺたをすりつけたりしてくれるのです。
 なかでも、冬はとくに可愛くて、寒い中、二階のベランダへ出て外の世界を観察したあと、部屋の中に戻ってくると、決まって、「寒かったよー」と抱きついてきます。親ばか丸出しで、「まるちゃん、寒かったの、よしよし」と抱きしめます。
 ところが、最近気づいたことがあります。まるを抱っこしてあげると、しばらくはゴロゴロのどを鳴らして甘えているのですが、そのうち、もういいや、と腕をすり抜けて飛び降ります。そして、降りるといつも冷蔵庫の前に行って座るのです。これは、冷蔵庫の中にある乾しカマが欲しいポーズです。
 つまり、まるは私が抱っこしたいのを知っていて、これだけサービスしたんだから、乾しカマちょうだいよ、ということなのかもしれません。
 完全にまるの思うつぼのようですが、また抱っこをねだってほしいので、乾しカマをあげ、乾しカマが目的と知りながらも、黒船屋の黒のように甘えてくれるまるにデレデレする毎日であります。
コメント ( 6 ) | Trackback ( 0 )