お利口まる

 正確に言うと、「お利口になったまる」です。
 まるは子猫の頃ちっとも言うことを聞かなくて(猫なので当たり前といえば当たり前ですが)、とくに困ったのは、出かけるときなどに、二重扉の役割になる部屋のドアを閉めようとすると、「だめ」と言っても無理やりすきまに頭を突っ込んで来て、廊下へ飛び出してしまうことでした。
 みゆちゃんやふくちゃんだと、だめ、と言うとちゃんとわかってくれて、聞き分けよくその場に座っているのですが、子猫のまるはわかっていないのか、わかっていて聞く気がないのか、こちらの言うことに一向お構いなしなのでした。
 それが一年経って、この頃はちゃんと言うことを聞いてくれるようになりました。「来たらだめよ」と言ったらドアの手前で行儀よく座って、前みたいに無理にすり抜けようとはしません。
 その分苦労は減りましたが、無理やり突っ込んでくるのを「こら!」と叱って捕まえて、部屋の中に押し返すよりも、ちょこんと座って、ついていきたいのにな、という目をしてこちらを見上げるまるの鼻先でドアを閉めるほうがずっと不憫で、後ろ髪を引かれるようで、私はいつも「まるちゃんごめんね、すぐ帰ってくるからね」と謝りながら出かけることになるのでした。
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