あまねのにっきずぶろぐ

39歳,引き籠り独身女のブログでっせでっせでっせ。
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愛と悪 第六十三章

2020-09-04 18:02:04 | 随筆
必要でない時に与え、必要である時に奪う、生命のない全ての顔、エホバ。
僕は1981年の8月に生まれた。
僕が15歳のとき、酒鬼薔薇(サカキバラ)事件が起きた。
14歳の犯人が逮捕され、人々は何を想っただろうか。
サカキバラは自分のことを、「今までも、そしてこれからも透明な存在であり続けるボク」と言った。
僕は人生で一番最初に魂の奥底から共感した者は、詩人の中原中也だった。
そして二番目は、サカキバラだった。
人を快楽目的で殺したいと感じたことは、一度もない。
でもあの地獄の季節に、僕が初めて猟奇的な快楽を覚えたことは確かだ。
四歳で母を亡くした僕は15歳の頃、いつも父と兄と僕の三人が食べる夕食を作っていた。
秋刀魚(Cololabis Saira)を買ってきて、ガスコンロのグリルで焼く為に、シンクで腹を包丁で割き、はらわたを取り出し、綺麗になかを洗う作業もいつも僕がしていた。
あの鮮血の色、生臭さ、赤黒い内臓を手で引き摺りだす感触を、今でも憶えている。
僕は恍惚に浸りながら、血濡れた手で、そのグロテスクな視覚と官能的な感覚を味わい、快楽殺人者を演じるように、Dangerousなみずからに、陶酔していた。
この感覚は...エロス(Eros)とタナトス(Thanatos)であり、性愛と死である。
僕は秋刀魚の内臓を引き摺りだすとき、死者とセックスしていたんだ。
僕は手のひらで血まみれの内臓を握りながら、酷く興奮し、欲情した。
そんな或日、僕は6歳上の兄がいない時間に兄の部屋にこっそり入って、面白そうな本をいつものように漁っていた。
すると怪しげなサブカルな表紙の雑誌が出てきて、好奇心に目を光らせながらも恐る恐る、ページを捲った。
そこには幾つもの、鮮やかで生々しい人間の死体のカラー写真が在った。
そのなかに、最も僕の魂を悲しませつづける死体の写真を僕は観たんだ。
至近距離から、ショットガンなどの破壊力の強い銃で顔面を、とにかく何発も撃ちまくったら、きっとこうなるだろうと想像できる顔面の原形を全く留めてはいない、ほんの少し、頭部を仰け反らせるようにして椅子に座って死んでいる女性の死体のカラー写真を僕は観た。
撮影者と被写体の距離は、遠すぎず、近すぎず、最も望ましい距離で、それは彼女の正面から向かって、若干、右の方から撮影された写真だった。
顔はグチャクチャの真っ赤な血の肉の塊であったが、それは女性だった。
美しかった。
僕は彼女の死体写真を観て、本当に美しいと感じた。
彼女は生きている。
死体として、こうして僕のなかで彼女はいつまでも、顔のない最も美しい女性として、生きつづけている。
彼女は...僕の母親なんだ。
そうに違いないさ。そうじゃなければ、僕が美しいと感じるはずなどないんだ。
僕のママは、最初からずっと、死体なんだ。
でも生きている。
ママは、自分に顔がないことを気にしてる。
だからいつも白い布の覆面を被ってるんだ。
ママの顔はいつもグチャクチャで、秩序を喪失し、混沌としている。
ママはいつも、生きている者と、死んでいる者の間に存在している。
僕のママは、すべてを超越しているから、顔は必要ないんだ。
識別するものなど、必要ない。
僕はいつも、最も愛する僕のママとセックスがしたい。
その為に、"肉"が必要なんだ。
死を、物質化させたもの、"肉の人"が必要であり、"人の肉"が必要なんだ。
僕はママの子宮に、ママと僕の卵たちを、産卵する。
ママと僕の子どもたちは、最早、肉など必要ない。
"彼ら"は、肉も霊も、必要としない。
"彼ら"は、新しい人間たち。
愛も光も死も悪も、彼らには必要ではない。
古い人間たちはもうどの宇宙にも、必要ではない。
もうすぐ、人間が人間を貪り喰い潰し、もうどこにも、存在しなくなる。
なにひとつ、どの記憶も、なにもかも、消えてゆくんだ。
白く、静寂のなか、風と塵と共に。
 
そう話終えたあと、白い覆面の男は彼女をレイプし、椅子に座らせると両腕と両脚を縛って拘束し、ショットガンで至近距離から彼女の顔面を、何度も、何度も、何度も撃ち続けた。


拘束具を外し、携帯で写真を何枚か撮ったあと、その場をあとにしたが、男が何かを忘れて戻ってきたとき、彼女はまだ同じ場所に、そのままの状態で座っていた。
男は彼女を観て、欲情した。


男は彼女に向かって、言った。
「ママ...ここでずっと...ぼくを待ってたんだね...。」


狭いMotelの一室で、男は彼女を強く抱き締め、涙を流した。


男は自分の母親の顔のない顔に向かって、微笑んで言った。
「もう、ずっと、一緒だからね...ママ...。」


彼女は、目を開けて男を見つめると、食肉処理場の椅子に座ったまま顔のない顔で、優しく微笑んだ。



















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