あまねのにっきずぶろぐ

1981年生42歳引き篭り独身女物書き
愛と悪 第九十九章からWes(Westley Allan Dodd)の物語へ

アンチ・キリスト

2017-11-01 18:25:57 | 随筆(小説)
人(他者)の”闇”を見て、落ち込むことは多い。
何故ならその”闇”とは、俺のなかに存在している闇に他ならないことを俺が知るからだ。
つまり見ているのは他者のなかにある闇ではなく、俺のなかにある闇ということになる。
そしてその闇とは、いったいなんなんだろうな、と想うのである。
”闇”といっても、それはそれは広いものであり、一概に”こういったもの”だと言えないものなのである。
しかしそれは”闇”には違いないと俺が何故だか知っているのである。
ときに吐き気を催す闇もあれば、俺を何より安らかにする闇もある。
そう、闇とは、俺のなかで究極のところを行ったりきたりできるものなのである。
安楽を選ぶなら、光を選ぶのが無難に想われるだろう。
しかし”光”とは、すなわち”闇”である。
ややこしいことだが、”闇”は”光”で、”光”は”闇”なのである。
だから人はこれを、”闇光(あんこう)”と呼んだ。
二つで一つのもの、その二つは、同一のものであると言ったのである。
聖書で言うなれば、イエスとサタンの融合的な存在である。
もし、イエス(光の子)だけを愛し、サタン(闇の子)を愛さないと言うのならば、
彼こそが、”アンチ・キリスト”である。
魔女、おまえこそが、魔女だ、火に焼(く)べ給え。
魔女たちを焼き払え。
彼らは、この世界に、適さない。
巨大なるウィッカーマンを建て、すべての魔女たちをその中に閉じ込めて火をつけろ。
あなたたちは、生きるに値しない。
拷問にかけて、殺してやろう。おまえたちは、必要の無いものだ。
そうだ。苦しみ抜いて、死ぬがいい。
おまえらの笑顔、俺は忘れない。
俺は、忘れない。
全員、俺の顔だから。
全員、焼かれろ。
アンチ・キリストの、俺たちよ。
巨大なる俺の顔をしたウィッカーマンに、俺は火をつけた。
アンチ・キリストの俺は、全員灰と化した。
その敷き詰まった灰の上で、俺は一晩寝たが。
その灰が、冷たかったこと。
さらさらだったが、同時に湿っていた。
気持ちが良かった。
快楽だった。
明日は、想う存分セックスしよう。
闇と光が想う存分セックスする夜に、
アンチ・キリストの俺は、全員灰と化した。

















Christian Löffler - Silent Night




















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