シャープ & ふらっと

半音上がって半音下がる。 それが楽しい、美しい。
思ったこと、感じたことはナチュラルに。  writer カノン

42年前の私がいた

2008-11-10 17:34:47 | 懐しい話

昨日、用事があってある町を訪れた。

今の、私の住んでいる市からそれほど離れていない。

しかし、あまり訪れる機会がない町だ。

 

私はこの町に、 1歳から3歳までの二年間を過ごした。

当然、記憶などほとんど無い。

しかし、断片的に当時の光景が甦る時がある。

 

古い病院があった。 私は風邪をひくと、よくそこに連れていかれた。

その先には、長い垣根があって、 垣根越しによく焚き火の煙が見えた。

「垣根の垣根の曲がりかど・・」の、 童謡そのままの光景だった。

そして・・ バラの花が咲く、「お姉さん」の家。

近所に住んでいた、当時小学生だったと思う女の子。

私はよくその子の家に遊びに行き、お菓子を食べたりした。

ピアノがあったらしく、いつも練習しているピアノの音が聞こえていた。

それは私が、生まれて初めて触れた「音楽」だったように思う。

 

私は、子供の頃の記憶力が良いほうなので、

もしかしたら、その町を歩けば 何か記憶が甦るかもしれない・・。

そんな思いで昨日、育った地域を歩いてみた。

 

私の住んでいた家は、道路の拡張で何も面影はなかった。

近所の銭湯はとっくに無くなったようだが、 跡地は、スポーツジムに変わっていた。

コロッケを買った店を覚えていたが、 当然、もうその店もなかった。

あの古くさい病院の位置は、 やはり思い出すことさえ出来なかった。

お姉さんの家は、カンでその方向に歩いてみた。

しかし、 新しい家やワンルームマンションが立ち並び、

バラの花の庭は、とっくに過去のものとなっていた。

 

しばらく歩いたが、 虚しさばかりが残った。

42年も経った場所を歩くなんて、 私は、何をやってるんだろう・・。

昔の思い出を辿っても仕方ない。 今日、そして明日のことで精一杯の毎日だ。

駅への道を戻ろうとした時だ。

2~3歳くらいの男の子が、 お母さんに手をつながれて歩いている。

その子は、私を見ると、 まんまるな目を残してすれ違った。

私も、子供の頃は大きなまんまるな目だった。

今のあの子のように、 この町を、母に連れられて歩いていたのだ。

見ず知らずのその子に、 幸せな人生を送ってほしいと願う。

 

自分を、瞬時に重ねていた。 そこに、42年前の私がいたからだ。

そして、 私を可愛がってくれた、お姉さんの人生をも想う。 

 

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