
おはようございます。旅人宿 会津野 宿主の長谷川洋一です。
昨日、12月22日に財務省が決定した来年度国家予算をネットサーフィンで見つけ、観光予算を見ておりました。
観光先進国の実現として、2つの予算案が計上されています。
1.2020年4000万人目標に向けた観光施策の推進 200億円→210億円(10億円の増)
2.景観まちづくり刷新支援事業 25億円(新規)
とあります。
1は、いままでどおり、観光庁による国内のDMOの推進と海外プロモーションに使われると思われます。
2は、インバウンド(海外からのお客さん誘致)のために、趣ある街並みの形成、散歩道の整備などに使われるものです。
今回、観光のための「まちづくり」向けに、その素材となる街並みの整備に予算配分がされることになります。
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読み進めている会津出身の社会科学学者小室直樹先生の「痛快!憲法学」という本を読んでいたら、憲法を語るにあたり、民主主義、資本主義を正しく理解し、なぜ経済政策が必要なのかということが語られていました。
明治時代に日本が目指した民主主義、資本主義への転換は、古典派経済学の祖であるアダムスミスの「自由放任」により「神の見えざる手」が市場を最適化し、最大の人々が最大幸福を得るという思想が用いられ、小さな政府が公共投資などせずに、自由放任にすることがよいとされました。
しかし、1929年のニューヨーク大暴落では、労働市場が安くなり資本家が安くなった労働を用いて経済が回復することを期待する自由放任は機能せず、労働単価の下方硬直性が起きた。つまり、経済が悪くなっても人々は食べてゆかなくてはならないので、給与を安くすることに労働組合が反対し、実際には労働市場が安くならなかったという現象です。これにより、最悪の解雇へと進み、失業者が街にあふれた。
そこで、ケインズ経済学が「公共投資」を提唱。無理やり需要を創出することで、その需要をこなす労働者に給与が行き渡り、その給与が次なる消費を呼ぶ。さらに、その消費を享受する人々が、次なる消費を行う。最初の公共投資を仮に1兆円とした場合、公共投資の仕事をした労働者がその給与の8割を消費に回したら(これを消費性向0.8という)、次々と等比級数的に消費が増え、最終的には5兆円の経済効果を生む。それが、ケインズ経済学のキモです。
戦後日本は、これを土木建築の分野で実際に行い、大きな成果を出しました。ただ、その結果、土木建築市場は、ほとんどが役所発注の仕事ばかりとなり、役所が計画的に土木建築経済をコントロールすることで、この分野は社会主義化してしまいました。社会主義が行き詰るとどうなるか、これは産業の衰退となるということを、平成を生きる私たちは身をもって経験しました。
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さあ、観光にこれをあてはめてみましょう。
ここでは話が分かりやすいようにインバウンドで考えます。
観光は、最初に公共投資を行えば、その享受を受けるのは観光の事業者です。
観光事業者に消費額を支払う人は外人さんです。
現在2000万人のインバウンドを4000万人に増やす計画なので、純増は2000万人。
一人のインバウンドが日本国内で消費するオカネは10万円を軽く超えています。
かなり小さく見積もり、ここでは10万円としましょう。
10万円×2000万人=2兆円となります。
それに対し、政府の公共投資は2つの分野を足して235億円です。
これは2兆円の約1.2%にすぎないものです。
計画経済の性質を持つものが1.2%で、それ以外の大多数は純粋な消費需要です。
消費性向を0.8と仮定すると、全体の経済効果は年間10兆円を超えるものになります。
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国内観光消費で物事を考えると、残念ながら計画経済の弊害を土木建築業界と同じように起こしてしまいます。
でも、インバウンドは違う。
「インバウンド!インバウンド!」という本質は、ここにあるのではないでしょうか。
昭和から平成初期までの観光業界は、団体旅行などの旅行会社による送客に支配され、ある意味で社会主義化していました。
しかし、社会は変わり、FIT(foreign independent travel)と呼ばれる個人の外国人旅行者へと変わってきた。
日本に来るFITは、社会主義化した旅行会社による支配を嫌い、資本主義的なものを選ぶ。
そのためのツールとなる、個人個人が情報にリアルタイムに接し消費行動を行う「スマートホン」をほとんどの人が持つようになった。
やっと、観光業界が資本主義化するチャンスが来た。
この流れは、歴史的変化だと思います。
私が就職した頃は、ツアーコンダクターが大人気の職業でした。なんだか隔世の感がありますね。
今日も素晴らしい一日を過ごしましょう。
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