弁護士早瀬のネットで知財・法律あれこれ 

理系で特許事務所出身という経歴を持つ名古屋の弁護士があれこれ綴る雑記帳です。

PBPクレームの審査実務

2015-11-06 19:46:07 | 法律一般

前回、ノンアルコールビールの記事を書いたのですが、

弁護士ドットコムニュースから、この件に関してコメント書いてくれと依頼がありました。

近日中に公開されるとのことなので、公開されたらまたブログで紹介します。

中身は、前回の記事の内容とあんまり変わらないけど。



さて、表題の件です。

知的財産事件に関して、少し前にめずらしく最高裁判決が出て、このブログでも取り上げました。

→ プロダクトバイプロセスクレーム事件の最高裁判決が出た!

  プロダクトバイプロセスクレーム事件の最高裁判決が出た! 前回の続き


実務にも影響のある判決だったので、特許庁も審査基準を改訂したし、色々なところで取り上げられてます。

著名どころでは、「ジュリスト」の先月号(10月号)での知財特集ですね。




判決を受けて特許庁の審査基準が改訂されて以来、

プロダクトバイプロセス(PBP)クレームについて、拒絶理由が来はじめています。

 

 

そんな拒絶理由の対応をしていく中、先日、他の弁理士さんとの間でちょっと話題になったことがありました。

上記「ジュリスト」10月号に掲載された、弁理士の南条先生が書かれた記事の中の記載についてです。



記事の中では、最高裁判決の理由を踏まえとすれば、

『発明のカテゴリーが物でない事案(例えば、「A,B及び、製法Yにより製造されうるCを用いる検査方法。」)にも適用されるべきであろう。』

と言及されています(33頁左欄)。

これってどうなんだろう?と。

 

 

最高裁判決では、そこまで言及していないし、改訂された審査基準にも、もちろん現れていません。

最高裁は、「物」の発明を特定するのに「製造方法」を用いることは、発明の明確性を欠くと判断しただけです。

 

 

でも、その判断から、

発明が、「物」「製造方法」「単純方法」にカテゴリー区分されている中で、あるカテゴリーの発明を特定するのに、

別カテゴリーの形を用いることは明確性を欠くということまで読み込むなら、南条先生の考えもありだな、

という話になりました。



PBPクレームについては、今回の最高裁判決によってすべて解決したか、というとそうではなく、

まだまだ解決すべき問題はありますね。

 

んー、今日はなんだかマニアックな話になってしまいました……(^_^;)

 

 

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特許査定に対する不服申立て 続き

2015-07-24 16:48:09 | 法律一般

名古屋,暑いです(>_<)

 

さて,前回の続き。

前回,特許査定に対する不服申立てが争われたとして、

知財高平成27年6月10日判決(知財高裁3部)を紹介しました。

争点が3つあると指摘して終わっていたので,

今回は,それぞれについて裁判所がどう判断したかを書きます。

 

この判決を読むと,特許法って,行政法の分野に深くかかわっているなと改めて思います。

特許権という権利になってしまった後は,私法上の権利に関する民事分野がメインですが,

権利になるまでは,特許庁という行政機関が関与する手続なので,当たり前といえば当たり前なんですけどね。

 

 

まず最初の争点

 (1) 特許査定に対して行政不服審査法に基づく不服申立てができるか

 

結論は否定です。

理由は,特許法195条の4における「査定」には,特許査定も含まれると解釈されるため。

 

この帰結として,特許査定に対する不服申立ては,行訴法上の取消訴訟によらなければなりません。

本件特許査定謄本の送達から6か月以内に,提訴しなければならないという期間制限があります。 

 

 

続いて,2つ目の争点

  (2) 補正について錯誤無効の主張が認められるか

原告は,誤って真意と異なる補正をしてしまったから,その補正は錯誤無効だと主張しました。

民法95条に基づく主張ですね。

なるほど,そういう主張の仕方もあるんだなあと。

 

判決では,錯誤無効となる場合もあるけど,かなり例外的な場合に限られると判断しました。

錯誤無効となる場合の要件が示されていますが,それにあてはまることは,通常は考えられません。

特許法で補正や訂正の手続ルールが定められている以上,

そのルールから外れてもいい場合は,きわめて限定的となるのは当然のことです。

 

 

次に,3つ目の争点,

 (3) 無効確認訴訟において特許査定が無効とされるか

 

一般に,特許査定のような「行政処分」は,その処分にかかる違法が「重大かつ明白」である場合に限り無効とされます。

取消訴訟の出訴期間が過ぎていても,「重大かつ明白」な違法があれば,無効主張できる。

これが特許庁審査官による査定処分の場合では,

審査官が,審査を全くしなかったか,実質的にこれと同視すべき場合,

には重大な違法があるとして,査定が無効となる,と判断しました。

 

本件では,担当審査官が,新規事項の追加に当たるかの審査を怠っていたと認定されています。

でも,それ以外の特許要件(進歩性など)については,検討をしていた。

だから,審査を全くしていなかったとか,実質的にそれと同視すべき場合には当たらず,特許査定は無効ではない,

と判断されました。

新規事項追加が看過された点は,無効理由を含むというだけとなります。

 

結局,代理人が補正をミスして特許査定を受けてしまった結果,仮に権利になっても使えないものになってしまいました。

 

日々,特許の出願や権利化業務を行っている者として,他人ごとではありません。

注意したいですね。

 

 

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京扇子

2015-06-05 15:59:08 | 法律一般

そろそろ梅雨入りの時期ですが、ここ2,3日、名古屋では涼しい日が続いてます。

朝夕は、半袖だと少し寒いくらいですが、過ごしやすいですね。

 

 

さて、前回の記事はちょっとマニアックすぎました(汗

なので、今日は軽く。

 

先日、仕事でお付き合いさせていただいている方から、扇子をいただきました。

 

 

日頃お世話になっているので、といただいたのですが、思わぬ贈り物で、うれしかったです。

 

 宮脇賣扇庵さんの京扇子

 

ひさごが描かれてて、なんだか品がありますね。

それに、お香の香りが付けてあるので、この扇子であおぐと、お香のいい香りに包まれます(^^)

 

 

いただいた際に箱を開けると、商標権という文字が…

 

そう、「京扇子」というのは、地域団体商標なんですね。

権利者は、「京都扇子団扇商工協同組合」なので、組合員以外の業者が作った扇子に「京扇子」を使ってはいけません。

たとえ、その組合員でない業者が、京都で作っていたとしてもです。

 

「京」という文字の「口」の部分を扇子の形にもじったロゴもあって、その商標権も同じ組合が持っています。

 

こうやってブランドを保護しているんですね。

いい加減な作りで、どこで作ったかもわからないような扇子を、本物の「京扇子」と同じにするなっ!ってね。

 

 

ちなみにですが、

今月から、地域団体商標とは違う、地理的表示保護制度(GI)というものの運用が開始されました。

早速、「夕張メロン」や「市田柿」とかが登録申請したと、報道されてましたね。

 

 

地域の名前が入っていて、ブランド保護のための制度であるという点では、地域団体商標も地理的表示保護制度(GI)も同じ。

 

でも、後者の地理的表示保護制度は、対象が農林水産物に限定される。

そのため、所管する省庁は、特許庁(経済産業省)ではなく、農林水産省。

 

というわけで、「京扇子」は、地理的表示保護制度が使えません。

(「市田柿」はすでに地域団体商標ですが、今回、さらに地理的表示保護制度の登録も申請してる。)

 

 

このように、ブランドをはじめ、知的財産を保護するための制度は、いろんな形が用意されています。

その中から、モノやサービスの内容に合った制度を選択して、うまいこと保護を図っていくことが求められますね。

 

というわけで、京扇子からの、知的財産の話でした。

 

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面会交流の難しさ

2015-04-14 22:38:23 | 法律一般

前回,研修の打合せのために,東京の梶村太一先生を訪ねたことを書きました。

 

その打ち合わせの中で,先生から開口一番,最近,こんな判決が出たんだと,

面会交流の履行に関し,興味深い最新の裁判例を教えていただきました。

 

報道もされていたようですが,恥ずかしながら知らず…

 

どういう裁判例か?

 

調停で合意した息子との面会交流を,別居中の妻が実施しなかったとして,

夫が,妻とその代理人弁護士を不法行為(面会交流権の侵害)で訴えたという事件です。

 

判決では,意図的に面会交流を妨げたとして,妻だけでなく,弁護士にも責任を認めています(ただし,認めた慰謝料額は20万)。

控訴されているので,まだ確定はしていません。

 

弁護士の責任まで認められている点で,この判決はちょっと驚きでした。

 

梶村先生からいただいた判決文を読んでみると,その事実関係から,

面会交流を合意したものの,いざその実施となった場合の難しさというものがうかがわれます。

 

 

ちなみにこの件,面会交流を合意した調停のとき,奥さんの側には代理人弁護士がついていませんでした。

奥さんは,不本意ながら,調停委員に押し切られて面会交流を認めてしまったのでしょうか。

あくまで推測ですが。

 

もしそうだとしたら,家庭裁判所での調停のあり方,面会交流に関する運用など,

いろいろな問題を示唆する裁判例ではないかな思います。

 

 

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研修の打合せなど

2015-04-10 22:47:14 | 法律一般

昨日は,朝イチで,金城学院大学で授業をし,授業後に東京出張と,慌ただしい一日でした。

 

授業は昨日が第1回目。

選択科目でもあるので,履修者は20人くらい。

 

「弁理士」という資格を知ってる人,と質問したら,一人の学生さんが手を挙げてくれました。

たぶん誰も知らない資格だろうな,と思っていたので,一人でも手が挙がったのを見て,ちょっとビックリ。

かく言う私も,大学2年生の頃には「弁理士」なんて資格,知りませんでした…(^_^;)

 

 

 

さて,東京への出張は,研修の打ち合わせのため。

中弁連という名古屋高裁管内(東海3県と北陸3県)の弁護士組織の中で,研修委員会に属しています。

今年度,その中弁連は,福井で弁護士向けの夏期研修を実施するのですが,

研修委員として,講師を担当していただく先生と打ち合わせをしてきました。

 

 

自分の仕事とは直接関係ないですが,こうやって,遠出ができるのはいい気分転換にもなりますね。

 

 

講師をお願いする先生は,梶村太一先生。

元家庭裁判所の裁判官で,現在は,弁護士として,早稲田大学リーガル・クリニックに所属しておられます。

静岡にある常葉大学法学部にて教鞭もとられています。

 

 

その梶村先生を訪ねて,早稲田大学に行ってきました。

新年度が始まったばかりで,大学構内はとてもにぎやかでしたね。

 

 

梶村先生には初めてお目にかかりましたが,とってもエネルギッシュなお方。

先生曰く,しゃべりだしたら止まらないと…。

途中休憩なしの講演(2時間)となりそうですが,面白くて,ためになるお話が聴けそうです(^^)

 

 

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