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乱視読者のSF講義

2013年02月08日 | SF
スタージョンの「海を失った男」の解釈に愕然。
宇宙飛行士のモノローグでインナースペースものかのように読めるんですが、
じつはスタージョン流ハードSFとは恐れいりました。




バリー・N・マルツバーグに「アポロの彼方」という
狂った宇宙飛行士ものがありまして、
これが意外におもしろかった記憶があります。
それかと思ったんですが、意表をつかれました。


それとディレーニイの「コロナ」論。
たしかに単なる「イイ話」で済ますのがわたしのような凡人で、
じつはコミュニケーション論へ展開させるところが目ウロコでした。
ディレーニイについては、誰かがどの作品も自分語りでしかないと喝破していたことに照らし合わせると、
9歳で数学の天才でありながらテレパスという力があるために絶えず自殺願望にさらされる少女と、
空港作業員で白痴に近い青年との心暖まるハートウォーミングな話であり、
小さい頃から天才と言われていた姿、
かたや大学をドロップアウトして漁船で働いていた姿、
その両方を2人のキャラクターに仮託しているのではないでしょうか。
「コロナ」は宇宙空港でファウストという名のロックミュージシャンがライブをする話がサイドストーリーにあって、
いかにも60年代ヒッピーなディレーニイの思いが炸裂しています。
たぶん小さい頃のディレーニイはライブに行きたかったんだろうな。
好きだなあ、ディレーニイ。



あと、ジャック・ウォマックの
「ヒーザーン」「テラプレーン」「アンビエント」
(「ヒーザーン」「テラプレーン」は翻訳あり「アンビエント」は未訳)
をがっつり論じてくれています。
こんな話だったのか! 
実際に読んでみないと分からない不思議な作品だけど、
黒丸尚の遺志を継いで、だれか続きを訳してくれないでしょうか。

■乱視読者のSF講義 若島正 国書刊行会
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