spin out

チラシの裏

すごく気になります!猟奇の果

2012年07月21日 | ミステリ
乱歩はあまり得意じゃなく、作品もそんなに読んでないのですが、
わたしすごく気になります、「猟奇の果」!(ちたんだエル風)。

※ところで「氷菓」の映画制作事件の回は、
E・クイーンのライツヴィルもの+中井英夫「虚無への供物」をやってましたネ。
前半1クールの最後を飾る4連続回のプロットのためだけに、
それまでの7話で主人公に探偵の役を振ってたわけですか。
だからそれまでがツマラナかった(おっとっと)
いやー京アニの絵と演出がすばらしいし、ちたんだエルは可愛い。

氷菓ED2 君にまつわるミステリー




閑話休題。

「猟奇の果」は名古屋の青木愛之助という御曹司が、別人に変身できるという友人の事件に巻き込まれて、
これからどうなる、というところで前半終了。
あれ?と思ったら別題で後半が始まり、前半とは真逆の設定と展開であっという間に大団円。
いくら大乱歩でも、これはヒドいんじゃないかと。

青木愛之助という名前から、宇野浩二の短編「二人の青木愛三郎」を元ネタにしていることは明らかですが、
他人に変身できる技を使う科学雑誌の編集長品川四郎は、小酒井不木の親友、
「子供の科学」編集長の原田三夫がモデルではないでしょうか。
名前が似ていますでしょ?
ということは、青木愛之助のモデルは小酒井不木なのでしょうか? 
作中に品川四郎は青木愛之助の学生時代の友人とあります。さすがに故人とはいえ大恩人を主人公に、
しかも○○役に振るとは考えられません(「猟奇の果」は小酒井不木没後の作品)。

なぜ、こんな木に竹をつないだような作品になっているかというと、
前半の展開ではオチをつけられなくなった乱歩が、担当編集者の横溝正史に相談したところ、
「蜘蛛男」のような通俗ものにしたらどうか、というアドバイスを受けて書きつないだというんですね。
横溝正史も罪なアドバイスというか、編集者という立場からすると、
連載を中断されるよりはとにかく最後まで書いてもらいたいということなんでしょうね。
これは乱歩の自作解題に書いてあったことで、
さらに乱歩は書いた本人も今回(桃源社版江戸川乱歩全集を出すとき)読むまで筋を忘れていたそうなんです。
(桃源社版江戸川乱歩全集第七巻のあとがきより・河出文庫江戸川乱歩コレクションⅥ謎と魔法の物語 自作に関する解題所収)

なんかアヤシイ。

本当に乱歩が書いたのでしょうか(とくに後半部分)。
もしかしたら代筆、とは思ったのですが、このあとがき(桃源社版江戸川乱歩全集)では、
内情をけっこうさらしているので(戦後に書いた「十字路」は渡辺剣次の原作をリライトした、など)、
「猟奇の果」を自分で書いた、というのはおそらく本当みたいです。

「猟奇の果」の主人公、青木愛之助のモデルが小酒井不木ということが乱歩の本意ならば、
不木を主人公にすることで、生前に不木がしきりに提案していた「不木がアイデアを提供して乱歩が書くという共同執筆」を
形なりにも作品にしてみた、レクイエムのつもりだったのではないでしょうか。
作品の出来がいささかアレですが。
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« さかさまあ! | トップ | 安吾捕物帖と顎十郎捕物帳 »

コメントを投稿

ミステリ」カテゴリの最新記事