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帽子収集狂事件 その2

2017年07月05日 | JDカー
傍証でしかありませんが、次作「剣の八」の中でベストセラー探偵小説家が
「あの小説は批評家のために書いた」と言う場面があります。
ご丁寧にもそんな小説の特徴を箇条書きにして5つも挙げています。
さらに「批評家どもは独創的と呼んでくれる」とまで言わせています。
生意気ですね~

閑話休題

そんなふうに思いながら読むと、「帽子収集狂事件」のつまらなさがウソみたい。
カーはどうやって人物たちへ命を吹き込んでいるのか。
ちょい役のタクシー運転手や執事にも手を抜いていません。

横にそれますが、執事をイジめる段になると、
とたんにカーの筆が冴えるように思えるのはなぜでしょうか。

しかし人物描写に力を入れたとはいっても、どの人物もステレオタイプでしかなく、
そのあたりがカーの限界なのでしょう。


アメリカ人の収集家は、
法的にグレーなやり方でポオの原稿を横取りすることを考えているような俗物に描かれていて、
作品のラストにおける法律破りと好一対になっているように読めます。

カー本人は保守派であったはずなんですが、
この作品では保守政治家をあげつらうイタズラが事件の始まりとなっていて、
左の人が多い文化人たちに(評論家も含めて)おもねった感じもしなくもない。
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