フェル博士のデビュー作「魔女の隠れ家」では、再び「怪物ハンター対怪物」という図式に戻り、
M・R・ジェイムズばりの怪談を作中に差し込みつつ、
『犯人が事件を目撃する』という「髑髏城」のプロットをブラッシュアップさせて使っています。
宝探し、秘密の儀式、暗号などの子どもっぽいパーツを組み合わせて、
まだバンコランものの延長線にあるように思えます。
ところが次作の「帽子収集狂事件」では
大人のファンタジックミステリとでも言えるような方向に急回転しています。
フェル博士のキャラクターが「魔女の隠れ家」からずいぶんと変わって、
戦闘的な不良老人になっています。あまりしゃべりませんしね。
83ページでランポールもその違いを説明しているので、
作者もあえて違えて書いていることは明白です。
そのかわり、フェル博士以外のキャラクターたちがよく喋る。
さらに登場人物たちの性格描写と、ロンドン塔や街並みの風景描写には力が入っています。
こんなに濃密な描写で書かれている作品は他にないのでは?と思わせるほどです。
そのせいか、事件が起きたあとはほとんどストーリーが動かない。
バンコランもの、あるいは「魔女の~」といった筋の起伏がある作風から一転して、
描写に力を入れた作品を書いたのは、批評家に認められることを期待したからではないか。
ストーリーテリングを犠牲にして描写に力をいれたおかげで、
セイヤーズに絶賛されたことは、カーにとって計算の上というところでしょうか。
M・R・ジェイムズばりの怪談を作中に差し込みつつ、
『犯人が事件を目撃する』という「髑髏城」のプロットをブラッシュアップさせて使っています。
宝探し、秘密の儀式、暗号などの子どもっぽいパーツを組み合わせて、
まだバンコランものの延長線にあるように思えます。
ところが次作の「帽子収集狂事件」では
大人のファンタジックミステリとでも言えるような方向に急回転しています。
フェル博士のキャラクターが「魔女の隠れ家」からずいぶんと変わって、
戦闘的な不良老人になっています。あまりしゃべりませんしね。
83ページでランポールもその違いを説明しているので、
作者もあえて違えて書いていることは明白です。
そのかわり、フェル博士以外のキャラクターたちがよく喋る。
さらに登場人物たちの性格描写と、ロンドン塔や街並みの風景描写には力が入っています。
こんなに濃密な描写で書かれている作品は他にないのでは?と思わせるほどです。
そのせいか、事件が起きたあとはほとんどストーリーが動かない。
バンコランもの、あるいは「魔女の~」といった筋の起伏がある作風から一転して、
描写に力を入れた作品を書いたのは、批評家に認められることを期待したからではないか。
ストーリーテリングを犠牲にして描写に力をいれたおかげで、
セイヤーズに絶賛されたことは、カーにとって計算の上というところでしょうか。
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