
「兄貴ぃ、今日は久しぶりにあそこ行きません!」

「いいねぇ」

「その雰囲気が好きなんですよね」

「ところで、あそこって何処?」

「え、分かってなかったんですか」

「だって、教えてくれないんだもん」

「じゃぁ、最初からいい加減な相槌打たないでください」

「ここだと思ったよ!」

「ほんと調子の良い男」

「誰が良い男だって」

「少なくとも兄貴じゃありません」
ガラガラガラと引き戸を開ける
調理人と目が合う

「兄貴、見ました。今の魔法」

「何かあったか」

「だって、満席だったのに、あのお兄ちゃんが両手を拡げる仕草をしたら、私達が入るスペースが出来ましたよ!」

「なかなか観察が鋭いね。忍法、そこのけそこのけお馬が通るの術だ」

「小林一茶ですね」

「そうなの?」

「正しくは、『雀の子そこのけそこのけお馬が通る』ですね。」

「なんで、そんなに物知りなの」

「だって、そういう設定ですから」

「ハーフ&ハーフでしたっけ!」

「ファーストドリンクを覚えてもらってるんですか。抜け駆けして何度か来てますね」

「美男子は一度見れば忘れないっていうじゃない」

「ぇ、それはどの偉人の言葉ですか?」

「儂」

「はいはい」

「何をつまみましょうかね」

「儂に任せなさい」

「ぅおおお~、いきなり渋いですね!」

「板わさ」

「次があるのでここでは軽くでお願いします!」

「飲むなら酔うな、酔うなら飲むな」

「いつも、ぐてんぐてんの癖に!」

「素敵なステーキですね」

「昭和の男かね、ちみは!」

「ちみは、も昭和ですね」

「ちょっと言い間違えただけだろう」

「言い間違いって、Kは右手の中指、Tは左手の人差し指の守備範囲ですよ」

「儂が人差し指タイパーだってバカにしとるな」

「そんなぁ、でも、Kは右手、Tは左手の守備範囲だと・・・」

「儂はオールラウンドプレーヤーなの!」

「それ意味違うけど・・・」

「まだ飲むんですか」

「君が怒らせるから喉が渇いたよ」

「さぁ次行くかぁ~」
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