テアトル十瑠

1920年代のサイレント映画から21世紀の最新映像まで、僕の映画備忘録。そして日々の雑感も。

黄昏 (1951)

2018-09-26 | ドラマ
(1951/ウィリアム・ワイラー監督・製作/ジェニファー・ジョーンズ、ローレンス・オリヴィエ、ミリアム・ホプキンス、エディ・アルバート、ベイジル・ルイスデール、レイ・ティール/122分)


 マーク・ライデルの「黄昏 (1981年) (1981)」が出るまでは「黄昏」といえばこの映画を思ったものだけど、TV放映もあったのかなかったのかも記憶になくて、ずっと未見だった。数年前にDVDを買ってやっと観た。とは言っても実はもうひと月前のことで、気分がのらなくて備忘録は放置していた。

*

 「陽のあたる場所【原題:アメリカの悲劇】」などで知られる作家セオドア・ドライサーの小説「シスター・キャリー」が原作。
 脚本はルース・ゲイツ、オーガスタ・ゲイツの共作。この二人は「女相続人」も書いているけれど、その名前からしてご夫婦でしょうな。

 まずは備忘録にぴったしのちゃんとしたストーリー紹介がウィキにあったので転載しましょう。

<田舎娘キャリー・ミーバーは姉夫婦をたよってシカゴにやって来るが、働いていた工場で怪我をしたためにクビになってしまう。路頭に迷ったキャリーはシカゴに来る際の汽車で知り合った調子のいい男チャーリー・ドルーエを頼って会いに行く。再会を喜ぶチャーリーはキャリーに金を渡し、一流レストラン「フィッツジェラルド」での食事を強引に約束させる。その夜、キャリーは渡された金をチャーリーに返すつもりでフィッツジェラルドに行くが、支配人ハーストウッドの計らいもあり、結局、チャーリーと食事を共にすることになる。そしてチャーリーは言葉巧みにキャリーを自分の部屋に連れ込み、結局そのまま同棲に持ち込んでしまう。
 チャーリーとの同棲生活を仕方なく続けていたキャリーは近所の目が気になり、チャーリーにいつになったら結婚してくれるのかと問いつめるが、のらりくらりとかわすだけのチャーリーにキャリーは苛立ちを募らせる。そんなある日、チャーリーはハーストウッドを友人として家に招く。そして仕事で家を留守にする間、キャリーの相手をしてやって欲しいとハーストウッドに頼む。
 金持ちの妻との冷えきった夫婦関係に息が詰まっていたハーストウッドは素朴なキャリーに次第に惹かれて行く。キャリーもまたハーストウッドに強く惹かれて行く。そして、2人の関係がハーストウッドの妻に知られると、ハーストウッドは発作的に店の金を盗んで、キャリーと駆け落ちし、ニューヨークに向かう。
 ニューヨークで2人だけの新生活を始めたものの、盗んだ金を返さざるを得なくなったことから一文無しになる。 また金を持ち逃げしたことが知られたハーストウッドはまともな仕事に就けなくなり、2人の生活は困窮を極める・・・>

 原作のタイトルが「Sister Carrie」だし映画の原題も「キャリー」だから、本来はキャリーの成功物語がメインなんだろうけど、中盤以降は邦題の「黄昏」がなるほどと納得できるようなジョージが主人公のストーリーになっておりました。
 マーク・ライデルの「黄昏」はまさに年齢的なものが人生の黄昏時期になっている老人が主人公なんだけど、ワイラーの「黄昏」は経済的な困窮と共に人生が落ち目になっていく男を描いているんですな。
 結婚した時には自分より育ちのいいお嬢さんだったろう奥さんは、実は金に細かく、体裁を気にして何かと上から目線でモノを言う女性だった。そんな奥さんとの関係が冷え切っていたジョージは、たまたま出逢った田舎娘キャリーの美しさと無垢な心に惹かれていく。
 しかし、ま、自分が既婚者である事を黙っていたりと何かと中途半端な対応が見えるのがジョージの甘さでしょうか、段々とこの冷酷な奥さんに追い込まれていく過程が怖いです。お金の件も全然盗む気はなかったのに、「フィッツジェラルド」のオーナー社長から今後は君の給料は奥さんの口座に振り込むからと不倫のお仕置きを言い渡されて、絶望的な気持ちになり、偶々預かることになってしまっていた会社の大金入りの封筒をそのまま退職金代わりと持ち去っただけなんですね。
 結局、このお金は返さざるを得なくなり、しかも社会的な裏ブラックリストにも載ることになり、生活の歯車が狂ってしまうわけです。
 強欲女も怖いけど、不倫も怖いなぁ。

 初登場の時には、品があって頼もしさが溢れんばかりの中年男にぴったしのオリヴィエが、終盤ではみすぼらしいホームレスになっていく。流石の名演技でした。
 そのジョージの血も凍るような冷酷妻を演じたのがミリアム・ホプキンス。「女相続人 (1949)」、「噂の二人 (1961)」などワイラー作品への出演も多い女優さんです。
 狡賢さもみせるチャラ男チャーリーに扮したのが「ローマの休日」でひげ面のお人好しカメラマンを演じたエディ・アルバート。どちらかというとこういう悪役系の方が多い方の様です。

 51年は「陽のあたる場所」、「欲望という名の電車」、「セールスマンの死」、「探偵物語」など暗い映画が多いんですが、これもそんな一つ。
 翌年のアカデミー賞では、美術監督・装置賞(白黒)と衣装デザイン賞(白黒)にノミネートされたそうです。衣装は彼のエディス・ヘッド(Edith Head)ですね。


▼(ネタバレ注意)
 ウィキの後半のストーリーも載っけておきましょう。

<そんな中、キャリーは舞台女優になる。そしてハーストウッドを元の家族に返してやろうと、ハーストウッドに結婚した息子に会いに行くように言い、彼の留守中に姿を消す。ハーストウッドは息子に会いに行くが、遠くから息子の姿を見ただけでニューヨークに戻る。しかし、そこにキャリーの姿はなかった。
 数年後、キャリーは女優として大成功を収めていた。スターとなった彼女を訪ねてやって来たチャーリーの言葉で、ハーストウッドが店の金を持ち逃げしたために二度と家族の下に帰ることができないことを初めて知ったキャリーはハーストウッドの行方を探すが、浮浪者にまで落ちぶれたとの目撃情報しか得ることは出来なかった。
 ある夜、公演後の楽屋口でキャリーに物乞いをする浮浪者が現れる。それはまぎれもなくハーストウッドであった。その姿にショックを受けたキャリーは彼を楽屋に連れて行き、再びハーストウッドとやり直そうと当座の金を渡すが、小銭の方がいいと言うハーストウッドのために事務所に借りに行く。しかし、その間にハーストウッドはキャリーから渡された金の中から小銭を1つだけ取って出て行く>

 小説の方は、キャリーは無気力になっていったジョージを見捨ててしまい、ホームレスになった彼は木賃宿でガス自殺、有名女優になったキャリーに残ったものは虚しさと孤独感だった、というようなペシミズム感満載の終わり方らしいけど、ワイラー版はそこまでには描かなかったみたい。
 ジェニファー・ジョーンズ演じる映画版キャリーは最後まで善い人でした。

 ただねぇ。終盤のジョージの気持ちはよく分かりませんな。キャリーに会いに行ったという事はまだ生き抜いていこうという気持ちがあったはずなのに、小銭だけ取って姿を消す意味が分からない。
▲(解除)


 お勧め度は終盤のジョージの気持ちが測りかねるので★三つ半。
 若い人には薦めませんが、人生の修正がききにくい中年以降の男性陣には★半分おまけです。





お薦め度【★★★★=友達にも薦めて】 テアトル十瑠

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