8月中旬のアメリカ・テキサス州、気温は38度まで上がってきた。
ゆらゆらと陽炎が漂う真っ昼間のゴルフ場で、横峯さくらはコーチのコーリー・ランドバーグと時おり言葉を交わしつつ、丁寧にボールを打ちこんだ。
2時間の練習を終えると、クーラーの効いた施設内に引き揚げた。一息ついて、ソファにそっと腰を下ろした横峯に、現在の心境を筆者がたずねた。
「悔しい気持ちをとっくに通り越しましたね」
穏やかな口調だが、はっきりと答える。
「今は(復活の)プロセスを踏んでるところなので、これからかなと……」
今季は日米の両ツアーでの優勝を目標に掲げていたが、8月30日現在、出場した15試合のうち10試合で予選落ちを喫して、年間賞金ランクは140位。優勝争いに加われていないどころか、プロになってから最悪の成績である。
1月のオフシーズンでは、みっちり練習した。だが、いざツアーが開幕すると、プレーが安定せず結果が出なかった。
「昔のスイング」を追いかけていては勝てない!
ベストを尽くして調整したはずだったが、誤算は“体の変化”を軽視したことだった。
'09年の賞金女王になった20代前半と比べて、31歳の体の動きは違う。昔のスイングを求めすぎてしまっていたことに気がついた。
米ツアーで優勝を目指すには、自己流の技術と知識では限界だと感じ、横峯はついに決断する。
「コーチを探そう!」
プロ13年目にして、初めて自分から本格的にコーチをつける決心をしたのである。
アメリカでも大人気の有名コーチを紹介され……。
今まで自分から積極的にコーチを探さなかった理由は「(自らの代名詞である)オーバースイングを全て変えられてしまうのでは」という恐怖心が大きかったからだという。
コーチを探していることを選手仲間のべアトリス・レカリ(スペイン)にたまたま話してみたところ、キャメロン・マコーミックを薦められて、しかも紹介までしてもらえることになった。
世界ランク1位のユ・ソヨン(韓国)、男子のジョーダン・スピース(米国)らを指導する、いま世界で最も人気のあるコーチのひとりである。
「私のオーバースイングを気にしない」米国人コーチを。
6月上旬の『ショップライトLPGAクラシック』終了後、さっそくマコーミックに会いに行き、スイングを見てもらった。
その場では「魔法をかけられたようにうまくいった」という。
だが、長年築き上げたスイングは1日で変わるものではないし、すでに年間契約選手を多数かかえるマコーミックは、横峯にじっくり時間をかけることができない。それならばと、マコーミックは信頼するコーリー・ランドバーグを紹介したのである。
ランドバーグは、マコーミックと共にテキサス州を拠点とし、度々『米国版ゴルフダイジェスト誌』に取り上げられる若手米国人コーチである。
横峯はランドバーグに最初から心地よさを感じた。
「やり方を押し付けないし、分かりやすく伝えてくれます。私のオーバースイングを気にしないですし」
ランドバーグは、たとえるなら、選手と並走しながらアドバイスするタイプである。
取材当日に見たアプローチの練習でも、横峯が体の使い方にちょっと迷っていると、ランドバーグはすぐに気にとめて、声をかけていた。
録画を見て自分で考えるような感覚的な調整は止めた。
今、取り組んでいることは、ショットの精度を上げるために、スイングのテークバック時に右足のかかとにもっと体重を乗せること。
ランドバーグらが運営する施設内で、スイング時の重心移動を測った結果、体重移動がずれていることが分かったからだ。
以前のように、録画したスイング動画を自分でチェックし、フィーリングだけで調整することはもうしなくなった、という。
日本での23勝というキャリアも「過去の栄光です」。
ゴルファーがスイングを変える場合、技術的なこと、コーチの選択、クラブやボールという道具など選択肢は多々ある。安定して結果を出した時に、初めてそのプロセスが正解だったといえる。
横峯は、米ツアー3年間で色々試行錯誤し続け、ようやく自分の位置とやるべきことが明確に分かってきた、という段階だ。
「正直、今は、全然楽しくないです。成績出てないので」
キツいなら、辞めてもいいのではと筆者は思った。なぜなら日本ツアーで通算23回優勝という輝かしいキャリアがもうすでにあるのだから。
「過去の栄光です」
横峯は即答して、ふふふと笑った。
「でも、勝ちたいという気持ちが薄かった時の方が今より苦しかったですね」
迷いや悔しさを通り越して、31歳のベテランは覚悟を決めたのだ。
「結果を残せれば、本当にそれに越したことはないと思いますが。今やってることを100%やっていたら、結果が出ると信じているので。もしかしたらすぐに結果が出るかもしれないですし」
「勝ちたいという思いは、年々増してきています」
横峯が確実に出場できるのは、残り2試合……今週の『キャンビア・ポートランド・クラシック』と来週の『インディ・ウィメン・イン・テック』である。
現実的に、来季のシード権を得るためには、優勝かほぼ優勝に近い結果を残さないと望みは薄い。
もしシード権を取れなかったら、12月のQT最終戦(来季のシード権獲得を懸けた大会)にも出場する予定だ。
「(米ツアーで)勝ちたいという思いは、年々増してきています」
横峯は、前だけを見据えている。
『キャンビア・ポートランド・クラシック』の初日――横峯は日本時間9月1日の深夜0時過ぎ(現地時間8月31日朝)にティーオフする。
以上、ナンバーウェブ
横峯も宮里同様、ゴルフ人生の分岐路にきているようですね。
スイング改造はしないよりいいと思いますが、長年やってきたスイングフォームであり、時間をかけないと変えたスイングをものにできないのでは?と思います。
アマチュアの私でもスイング改造を長年やっていますが、変えていることに気づいてくれる方はいません。
自分の中では大きく変えていても他人には分からないものです。
私も腱鞘炎の持病があり、過去は腕力で振り回すスイングだったのですが、そういうスイングではゴルフを続けられない状況だったので、最近はスイングフォームでスイングパワーの維持を考えて、腕力から脚力を使ったスイングづくりを自分なりにやっています。比嘉真美子が手本です。
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