佐佐木幸綱選
織物業を半世紀夫とつづけたり夢にときどき織機現る 一宮市 園部洋子
ひとつおきに空いた座席も充たしゆくチェロの奏でる「鳥の歌」聴く 枚方市 唐崎安子
一首目、一宮市とは、愛知県の一宮市ですね。亡父の実家がそこでした。子どものころ、春休みや夏休みに一宮市に行くと、小さな織物工場があちこちにcって、織機の音が響いていたのを思い出します。自動車のトヨタも、はじまりは織機でしたよね。ご主人と経営していた工場の音、機械を思い出すのでしょう。きっと人生で一番楽しい時期だったのかもしれません。二首目、蔓延防止法が解除の予定なので、もっとコンサートも自由に聴きに行かれるようになるでしょう。カザルスの鳥の歌、素敵な曲です。
高野公彦選
言葉無くただ寄り添ひて泣く菜那の背をさすりやる美帆のてのひら 箕面市 大野美恵子
真愛ちゃんも結愛ちゃんもまた心愛ちゃんも名付けの時は愛がもらえた 大府市 高橋みどり
一首目、北京オリンピックのスピードスケート、パシュートでの決勝でゴール前で転倒した姉の菜那さんを無言でいたわる美帆さんの姿がとても印象的でした。二首目、どの子も親の虐待で亡くなった子たちです。どうして、生まれた時の愛情をなくしてしまったのでしょうか。悲しいことです。
永田和宏選
洋服を着て抱っこされ散歩する犬の哀しさ人の幸せ 熊谷市 飯島悟
犬の洋服、私もずっと違和感があったんですよ。猫にはとてもできませんよね。第一、嫌がる。犬は忠実だからこそ、黙って我慢している。おもちゃでも子供でもないんだから、動物は野生があるし、もっと動物のプライドを大事にしてあげてほしいですね。
馬場あき子選
ご主人のバスの座席の横に伏し盲導犬は気配を消しぬ 千葉市 愛川弘文
心なしか人出少なき公園の鹿の目濡れて春の足音 多摩市 谷澤紀男
一首目、盲導犬は本当にえらいですよね。見かけると、尊敬の目で見ています。とても大変な仕事なので、絶対に邪魔をしてはいけないのです。二首目は、ちょっと意味が解らなくて、それでも選んでみました。多摩市だからどこの講演かな、鹿というのは子どもの遊具か?(多摩市に本物の鹿が出るとは思えなくて。13年住んでいたので)それとも、奈良の鹿のことか?えら見ながら、悩んでいます。悩ましい歌ですね。
特に、児童虐待には連鎖があります。自分もきっと親から虐待を受けていたのでしょう。それを断ち切るためにも、虐待は止めなくてはいけない。
私は大学生の頃に、子どもの頃に受けた親の愛情に気がついて大泣きしたことがありました。その恩を返すには結婚して子供を産んで、子どもに愛情を注ぐことなんだと思った・・・のに、子どもを産んでいません。
昔はスマホなんかなかったから、母親はしっかりと子どもに向き合っていました。今は、あらゆる障害物が子どもへの愛情を減らしていますよね。子どもにとっては不幸な時代かもしれません。それに格差問題もある。
子どもの虐待死は、本当に胸がしめつけられます。何のために生まれてきたのか・・・。暴力は犯罪です。どんなことがあっても、許されることではないのです。