検証・電力システムに関する改革方針

「自然エネルギーですべての電力をまかなう町」の第2部です。

開拓地があった 連載小説59

2012年07月25日 | 第2部-小説
   階段を降り、再び車に乗ると将太は「占部町が木でうるおい、いっときは町民税をゼロにしようかとした時がありましたね?」と聞いた。
「ええ」と松本は答えた。
「潤ったのは、木材を売ってですか」
「それがやはり一番、主要な要因です。山の木がどんどん売れるのですから」
「昔は?」
「昔も、よかったのですよ」
「山は全部、江戸幕府のものだったのでしょ」
「でも入会地があったから、比較的自由に山のものを使えたから」
「炭を焼くとか?」
「それは大きい収入源ですが、昔は杉の葉1つ、捨てるなんてことはなかった」
「杉の葉は火を起こすとき、役に立ちますからね」
「そうです。よくご存知で」
「キャンプで火をおこすのに使ったから」

「風呂を湧かすときの燃料になったから、この村では杉の葉を束ねて、牛に引かせて下の町に売っていたようです」
「杉の皮で屋根を葺くとか」
「山仕事をする小屋などで屋根を杉皮で葺くことはしたようですが住む家はたいがい、はカヤ葺きです」
「カヤのほうが雨の水きりがいいからですか」
「杉皮はどうしても水分を吸収しますから、屋根にはむかないですね」
「なるほど。ところでカヤって、ススキなんですね」
「そうです」
「それを長い間、知らなかったですよ」
はっはっは、と松本は声をあげて、豪快に笑い、「そうでしょ。都会育ちの人は知らないでしょうね」

「こちらでもカヤ場があるのですか」
 カヤの屋根をふき替えるのに大量のカヤを必要とする。そのカヤは太く、長いものが良い。カヤは野菜が採れない痩せた土地でもすくすく育つ特性があるから山の斜面で立派に育つ。そのためごとにカヤ場を持っているのが普通だった。
「今、牧場になっています」
「ほう、牧場に」
「ええ、カヤ場が開拓地になって出来た牧場です」
「開拓地があるんですか」
「ええ、戦後、戦地から引き上げてきた人たちを受け入れるため国が原野を開放して、入植し、開墾した土地です。これは全国どこにでもあると思いますよ」