検証・電力システムに関する改革方針

「自然エネルギーですべての電力をまかなう町」の第2部です。

政府広報紙になったメディア  連載小説40

2012年07月02日 | 第2部-小説
  車を運転しながら松本は当時のことを知ってもらわなければ今の占部町をわかってもらえないといって話をつづけた。
 松本はいう。あの時、町民は立派だったと。それに対してメディアの報道は政府路線に立ったものだという。住民の立場に立つとどうなるのか。その切り込みがないという。
 例えば「地方税収の低迷、地方交付税の減額等により、行財政基盤や行政サービスを維持することが困難になる」とする立場に立つ。だがこれは国が展開している合併推進の理由であり、現状肯定である。掘り下げた問題の切り込みがなく、合併推進の立場から、「国家公務員より高い給与を取っている地方公務員」「議員報酬は日当にせよ」などのキャンペーンをはる。

 そこから「職員はタイムカードを押しているのか」「職員が通勤で使っている車の駐車代はどうなっている」「職員の出張規定は隣町に行くだけで対象になるのはおかしい」「委員会の委員報酬は月額になっているのはおかしい。日当にすべきだ」などを住民・国民の声として記事にする。
 一見、住民の立場に立った報道をしているように見えるが職員や議員を削減し、人件費を削減して小さな自治体にして住民はどうなるのか。

 自治体は地方自治法が規定するように「住民の福祉の増進を図る」ためにあり、職員は地方公務員法にある「全体の奉仕者として公共の利益のために勤務」するのである。
住民の立場に立てばいかに「福祉の増進を図るのか」。救済すべき人を守っているのか。住みよい町をどうつくるのか。その充実を喚起するのがメディアの本来の使命ではなかろうか。

「メディアは自治体叩きが目的化し、暮らしや福祉がどうなるのかについてはおよそ関心を持たなかった」と松本はいう。
「日本に、憲法の主権在民についての教育がありませんからね」
 将太は応えていった。

 合併問題の住民懇談会は、住民の地域に対する愛着であふれていた。そして実施した全住民アンケートは「自立」が圧倒的多数を占めた。町長はその意思を村長して、合併を選択しない表明をした。
 それからしばらく何事もなく月日がたった。これで決着はついたと思ったとき、県の市町村合併推進審議会が占部町に乗り込んできた。