検証・電力システムに関する改革方針

「自然エネルギーですべての電力をまかなう町」の第2部です。

対決を制した町長-連載小説42

2012年07月04日 | 第2部-小説
  訪問調査は県側の主導ではじまった。事務局役の対策室長が挨拶に立ち、目的を簡単にのべ終わると委員の1人が「審議会は知事から諮問を受け、合併推進が円滑にすすめるために設置されたこと。しがって合併をせず自立を選択する場合、その事情や福祉、教育、まちづくりなど財政の裏づけを確認することが今回、訪問調査の目的です」と説明して「私として、占部町は果たしてできるのか、そのあたりちょっと心配なのですが、その辺りいかがでしょうか」と切り出した。
 対策室の室長として同席していた松本博は急所をついてくると身が固くなった。答弁はすべて町長がすることになっている。職員は同席し、記録することは認められているが答弁は許されていなかった。

 裁判で被告や証人に裁判官が尋問するような雰囲気である。
しかし案じることはなかった。町長は悠然とよどみなくこたえた。
「職員の教育といいますか、質の高い職員を育てることで金がかからないようにして住民の福祉・サービスの向上を図るので大丈夫です」
すると別の委員が
「財政的にかなり厳しい状況がどの自治体にもあるわけですがいろいろな見直しをやっているわけですがこちらでは具体的にどのような見直しをして財政をまかなっているのかお聞かせください」と質問した。

「町財政の問題は合併の話があるなしにかかわらず重要な問題であり、町財政を改善するためにこれまでに高齢者の健康増進を町民参加で取り組んできた。その結果、占部町の国民健康保険事業は同一規模自治体と比べると一人当たり医療費は最も低い。また公営事業の民間委託に取り組み特別事業会計を改善してきた。さらに職員の定年退職による新規採用を繰り延べ職員の減少にすすめた結果、この4年間に職員数は114人から97人に減少。人件費を約6000万円削減した」
「これまでいろんなことをやってこられたことはわかりました。それでは次に、今日は、合併のために来たわけですのでそのことについてお聞きしますが、基本的には今現在、合併は必要と考えていないと解釈してよろしいでしょうか」
「はい。その通りです」
 松本はやりとりを聞いていて、町長に拍手を送りたい気持ちだったという。