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WEB上のニュースや新聞などで扱われたエホバの証人のニュースを取り上げます。シリアスな話題から笑えるニュースまで。

子供に対する輸血が必要な時・・・カナダでの取り組み

2013-01-20 07:00:45 | 医療系
エホバの証人が無輸血手術の普及に大きく貢献してきてことには疑問の余地がありません。多くの病院では無輸血手術が標準的な術式になり、患者を感染症から守ることや血液という資源を有効に活用すること、また病院側のコスト削減にも貢献して来ました。その一方で、大きな事故による出血やある種の病気などのため、輸血しなければ死に直結するケースも引き続き存在しています。

判断能力のある成人が自分の意思で輸血を拒否する時、その意思は最大限に尊重されます。では、判断能力がない、もしくは不十分とされる子供が輸血を必要とする場合はどうでしょうか。

現在、親が子供に輸血を望まなかった場合でも、病院側のガイドラインに基づき、あるいは裁判所の介入によってほぼ強制的に輸血がなされます。しかし、それには時間がかかる場合があり、また後から別の問題が生じてくる可能性もあるでしょう。

カナダではHLC(医療機関連絡委員会)の関与のもと、いくつかの病院で「了解の書面」(LETTER OF UNDERSTANDING)という書式が作られ、それが効果を挙げているというニュースが掲載されました。その書式には、「医師団はエホバの証人が輸血を望まないことを理解しており、出来る限り輸血を必要としない治療を行いますが、命に関わる緊急の場合には法に従った治療を行ない、それには輸血も含まれます」と書かれており、親は、そのことに対して同意ではなく、理解したという意味でサインをするようになっています。

以下、カナダ・ナショナルポスト紙の記事をご覧下さい。


■ファンファーレは鳴らないが、エホバの証人は静かに輸血に関する立場を緩める
ナショナル・ポスト 2012/12/20
 

何年にも渡り、輸血は神の意思に反するというエホバの証人が固く守る信条は、病院が病気の子供に輸血するかどうかを巡って親と衝突し、感情的に激しい公の議論をもたらしてきた。

しかしながら、問題に対する両者の取り組みはまさに変化しており、この法的に混乱した対決状態は消え去ろうとしているようだ、と医療関係者たちは述べている。

エホバの証人が血を取り入れることを禁じていることは変わりないが、いくつかの大きな小児病院は、多くの証人たちが、時として医者は輸血をしなければならないと感じる可能性があることを認める書面にサインをしており、親たちの協会の見解とは違った考えを公に認めはじめている。

医療機関が、親の信仰により敬意を払い、輸血を行なわないよう多くの努力をするならば、しばしば証人たちは輸血を容易にするために児童福祉当局に関わることを避け、カナダの法律が明確に医者寄りの立場であることを受け入れるようだ、と病院の関係者は述べる。

「治療上必要な時には、我々は輸血をするということを彼らは知っています。彼らは裁判の戦いで負けて来ています。彼らはそれを理解しています」とオンタリオ州ハミルトンにあるマクマスター小児病院の生物倫理学者アンドレア・フロリックは述べた。

「彼らにとって、育児放棄や児童虐待などしていないのに児童福祉機関に関わるのは一種の屈辱といえます。まあ一部には、「もう、やってしまって下さい。どうしてCAS(カナダの児童相談所)に関係する必要があるのでしょうか。まるで自分たちが悪い親のように感じてしまいます」というところもあったでしょう」

フロリックは、カナダ生物倫理協会の会議で 彼女の病院の2才児への方針について、今年初めに講演をした。いくつかの別の小児病院も同様の取り組みに従っているという。

それらの病院には、トロントのシック・キッズ(世界最先端の小児医療を行なっている病院の一つ)とモントリオール小児病院(100年以上の歴史を持つ)が含まれている。

輸血の方針に対して長い法廷闘争を行なった元エホバの証人である、カルガリーのローレンス・ヒューズにとって、この明らかな変化は、証人たちが法的な戦いに疲れているサインであり、そうした法廷闘争は成員たちに受けが悪く、彼らに負担をかけるものである。

彼は、自分の10代の娘ベサニーがガンの治療をしている時、証人たちが娘に輸血をしないようにさせたことで、証人たちと、また残りの家族との交流を絶った。

彼によると、転換点は2007年に訪れたようだ。バンクーバーの病院で児童福祉官が、エホバの証人の夫婦に生まれた6つ子のうちの何人を確保し、それゆえに医者は子供たちに輸血をすることが出来た。ものみの塔協会は裁判を起こして争ったが敗訴した。そしてこれは広く人々の知るところとなった。

「私はそれからだと思います。彼らは訴訟を起こすことがもう出来なくなりました」とヒューズは語る。「私は、以前に私の会衆にいた人から連絡をもらうことがあります。彼らもこのことのために、会衆を去っていたのです」

オンタリオ州ジョージタウンにあるものみの塔協会の広報マーク・ルージは、各家族のとる行動まで説明は出来ないが、(世界中に支部を持つ)協会としては輸血禁止を公式に変更はしていないと述べた。

多くの輸血のケースを扱ってきたエホバの証人の弁護士の一人であるデビッド・ナムは、協会の輸血に関する方針に対しての公式の変更はないとしながらも、ある病院は患者がサインする書面を持っていることを知っていると語った。

「私はエホバの証人の患者を代表してケースに関わって来ましたが、ある一定の合意に達することが、時としてすべての関係者にとって最善の益となってきました。しかしそれは、個々の患者、医師、病院との間においてのみです」

証拠が示しているように、裁判官によって審議されるケースが著しく減少している。カナダでの裁判所の決定を掲載しているウェブサイトによると、2000年から2007年までは9件の個別の裁判所による輸血の指示が出たが、2008年から20012年の5年間にはわずか3件の指示があったに過ぎない。

輸血に合意すると永遠の滅びに至るという証人たちの信条は、1945年に採用された。追随者たちに血を避けることを要求するいくつかの聖句から取られている。

論争が起きるのは、決定をすることが出来ない年齢の子供たちに代わって、両親が輸血を拒む場合である。過去のおいて病院は、児童福祉相談所に連絡するというのが典型的な対応法だった。児童福祉相談所は裁判所に一時的な親権の委託命令を願い出て、輸血が施行されることが出来た。

病院の生物倫理学者レベッカ・ブルーニは、「トロントのシック・キッズでは今、エホバの証人が反対を唱えたときにはあらゆる方法を使って、輸血に変わる可能な代替療法を探します」と述べた。
同時に彼らは、親たちに「了解の書面」(letter of understanding)というものにサインすることを求めている。協会のHLC(医療機関連絡委員会)のメンバーの一人の助けの下に、書面の原案が作成された。その書面には、病院側は彼らの宗教上の反対を理解しており、可能なすべての場合において輸血を避ける努力をすると書かれている。その手紙は同意書ではない。しかし、子供に重大な障害や死の切迫した危険がある場合、医療チームは輸血の処置をとるだろう場合もあると付け加えられている。

「この書面の素晴らしいところは、敬意と尊厳を具体的に表現しているところであり、また私たちが輸血が必要な時に、児童相談機関に連絡しなくても良いところです。それは事態を混乱させ、醜いものにしてしまいます」

マクマスター小児病院は、「潜在的に永続する結果が生じる場合」、輸血をすることはトラウマとなることを認めて、同様の了解の書面を持っているとフロリックは述べた。

モントリオールにあるマクギル小児病院でも同様の要綱を約10年に渡持っており、トラブルになるケースが劇的に減ったと病院の医学倫理学者のロリー・セラーは述べている。

すべての倫理学者たちは、「エホバの証人のある人たちは輸血の禁止に同意しているわけではない。しかし、輸血に対する彼らの考えが秘密に保たれるかをとても気にしている」と、強調している。

ある家族たちは、自分たちが輸血に同意したことを、他のエホバの証人が見つけ出したりはしないかということを何よりも気にしていると、セラー氏は語った。

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このニュースで興味深いのは、協会のHLC自らが、「了解の書面」の原案作成に関わっていた、と書かれていることです。あるサイトによりますと、その書面は以下のようなものです。この書類は少なくとも2007年から使用されているようですが、ほとんど公にはなっていません。


SICK KIDSで使用される「LETTER OF UNDERSTANDING」のサンプル

こうした書面は本当に協会により認められているのかという疑問が生じますが、「生命倫理に関するアメリカン・ジャーナル誌」2012年11月号によると、ある証人の両親が医療上必要な輸血に同意することを拒否した時、協会によって任命された地元のHLCのメンバーたちが、児童保護機関によって一時的に親権を取り上げられることを避けるため、こうした了解の書面の一つにサインするように薦めたケースがあるとのことです。

やがて日本でも、こうした書面が標準的なものとなる時が来るかも知れません

一方ニュージーランドでは、2012年の7月、エホバの証人の両親を持つ2才の女の子に対する、輸血の強制執行命令が出されました。女の子は、非常にまれな先天的な病気のために腎臓と脾臓を摘出しており、腎臓と肝臓の移植をしなければ、感染症のために数週から数ヶ月のうちに死ぬだろうと言われました。両親は輸血に反対しましたが、彼女は裁判所の保護下に6ヶ月間置かれることになり、輸血を用いた臓器移植手術が行なわれました。

エホバの証人のニュージーランド支部委員モンティ・ガワは、ニュージーランド・ヘラルド紙のインタビューに対して「この女の子が輸血を受けたとしても、彼女は引き続き心から愛する家族の一員です。私たちの彼女に対する態度は決して変わりません」と述べて、だれも排斥されたりしないことを認めています。
The New Zealand Herald 2012/7/17


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6 コメント

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Unknown (JWN)
2013-02-17 18:07:16
>あらしさん

難しい問題ですね・・・。
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Unknown (あらし)
2013-02-16 08:54:49
崇高な志で医療に携っている方々を煩わせたくはないですが、、、様々な理由があるとはいえ、日本だけでも20万件/年の堕胎があるなかで、強制的に臓器移植を施される国もある・・という、言葉ではなんとも表しにくい違和感。
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Re:興味深いですね! (JWN)
2013-02-14 20:54:18
>konbu ouzi さん
コメントありがとうございます。実質的には日本でも同じことが出来るのかもしれません。愛する子供の命が危険な状態にある時、こうした取り決めは、本人のみならず親のプレッシャーもかなり軽減させられると思います。

興味深い記事を載せられるように頑張ります!
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興味深いですね! (konbu ouzi )
2013-02-12 20:38:10
日本でも同じような形態になる時が来るかもしれないんですね!!

いつも興味深い記事ありがとうございます!
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Re: 考えさせられますね (JWN)
2013-01-20 21:44:53
>AJさん
僕もいい方法だと思います。現実問題、拒否しようとしまいと輸血まで進まざるをえないのであれば、問題になる前に合意あるいは理解を得ておくのは実際的だと思います。関係者の負担はかなり軽減されることでしょう。

おっしゃるとおり、清い良心を保てる仕方で問題が処理され、貴重な命が救われることを願います。
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考えさせられますね (AJ)
2013-01-20 20:20:31
いやいや、今年早々、興味深い記事です。

「了解の書面」たるものの存在は、今後、広がると思います。これは「上位の権威に服する」という原則も絡むかもしれませんね。

裁判所命令が出たのであれば、これをかたくなに拒否すれば、逮捕沙汰になりニュースをにぎわすことは考えられます。

病院側が裁判所命令で強制的に輸血であれば、親は同意しないものの、致し方ないという状況でしょう。

社会の変容に、JWも”ついて”ゆく姿なのかと思いました。

ネットの拡大もそれと同じですよね。あれだけ警戒していた奴隷級が、一気に動き出した。

どの案件に関しても祈りのもとに判断されたはずなので、エホバのみ前に清く映るのであれば、良いのではないかと思いました。

いつも有難うございます。
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