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アルメニアのエホバの証人が良心的兵役拒否の裁判で歴史的な勝利を得る

2011-07-08 20:32:16 | 法的勝利
JWオフィシャル・メディアサイトのトップニュースです。2011年7月7日、欧州人権裁判所は、アルメニア政府が兵役を拒否した一人のエホバの証人を有罪とし刑務所に入れたことは、彼の良心の自由の権利を侵害する行為だとする判決を出しました。

記事に入る前に、アルメニアにおける近年のエホバの証人の状況を確認しておきましょう。

--1975年 アルメニアでエホバの証人の活動が始まる
--1991年 旧ソビエト連邦から独立する。宗教組織の登録のために国家宗務評議会が設立されるが、エホバの証人の登録は拒否され続ける。その後、2003年までに100人以上の若いエホバの証人が兵役に関する聖書に基づく立場ゆえに有罪判決を受け,大半が投獄された。
--2004年10月 15回目の提出でようやく宗教組織としてエホバの証人が登録される。
--2005年6月 アルメニアに正式に送られてきた最初の輸入文書が税関を通り証人たちの手元に文書が届く。
--2006年 19人の兄弟たちが代替奉仕を拒んだことで刑事訴訟を起こされた。しかし、2006年9月に,刑事訴訟が取り下げられたことを知らせる手紙を検事総長から受け取るも、引き続き可能な代替奉仕が取り決められていないため、投獄状態が続く。2007年の半ばまでに71人の若い兄弟たちが最高3年の刑に服していた。

その中の「バハン・バヤティアンは,アルメニアで起訴され投獄された多くの若い兄弟たちの一人です。1年半の刑の宣告後に検事は,兄弟の良心的兵役拒否は「根拠がなく,危険」であるとして,さらに厳しい刑を求めました。上訴裁判所はこれを受け入れ,刑期を1年延ばし,それは最高裁判所によって確定されました。そのためバヤティアン兄弟は,ヨーロッパ人権裁判所に提訴しました。同裁判所はその訴えを受理し,事情を詳細に調査する姿勢を示しました。この件において有利な判決が下され,バヤティアン兄弟や同様の問題に直面している他の人たちの助けとなることを,わたしたちは期待しています」(年鑑2008年19P)

--2007年4月-2008年4月 聖書や聖書文書7トンが差し止められ、法外な関税を要求される。結局法外な関税を支払い文書を受け取った。
--2009年8月 74人の兄弟が刑務所に入っている。また、引き続き外国から受け取る宗教文書に対して法外な付加価値税が課されている。
--2011年7月 69人の兄弟たちが服役。欧州人権裁判所によりアルメニア政府による投獄は違法とされる。

今回の判決につながるのは、バヤティアンによって提訴されていた訴訟です。ではニュースの記事をみて見ましょう。

欧州裁判所大法廷による良心的兵役拒否の権利を保護する画期的な判決

7月7日、欧州人権裁判所は、16票という圧倒的大多数の賛成によって、アルメニアがバハン・バヤティアン氏の良心の自由の権利を侵害していると結論した。バヤティアン氏はアルメニアのエホバの証人であり、良心的に兵役を拒否したため有罪とされ刑務所に入れられていた。この判決は良心的兵役拒否者の権利を保護する点で、過去44年間のこの問題に関する判決を覆す分岐点となるだろう。

2002年に、バヤティアン氏は武器を取ることを拒んだため、2年半の懲役を言い渡された。彼の聖書によって訓練された良心が個人的決定の動機となった。2001年1月に欧州評議会に対して、兵役に代わる代替市民奉仕制度を設立し、やがて有罪とされたすべての兵役拒否者たちを赦免すると公約したにも関わらず、アルメニア当局はバヤティアン氏を懲役処分に科した。バヤティアン氏はこの件を欧州人権裁判所に提訴した。有罪判決は欧州人権条約の第9条に違反している、というのが彼の訴えだった。2009年の小法廷での判決はバヤティアン氏に不利なものだったが、大法廷はその判決を逆転して、「申立人の有罪は、ヨーロッパ人権条約の第9条の意味するところに含まれる民主社会に必要なものではない干渉によって構成されている。したがって、そこには侵害が存在している」とした。大法廷は、「第9条は軍務に関係することに、例え武器を取らない兵役だったとしても、反対する信念を持っている宗教グループを守るものである」と説明した。

欧州人権裁判所にとって、良心的兵役拒否者の権利が欧州人権条約第9条のもとで完全に保護されているとの認識を示した、歴史上初めての判決となった。またその結果として、良心的兵役拒否者を投獄することが民主社会において基本的人権の侵害と見なされることになった。

里程標とも言うべきこの判決は、ヨーロッパ評議会のメンバーであるアルメニア、アゼルバイジャン、トルコにも、兵役に従事すること許さない深い宗教的信条を持つ者たち個人への迫害や投獄を止めるという義務を課すことになる。良心的に兵役を拒否して刑務所に入れられた69人のエホバの証人たちは、刑務所からの速やかな釈放を待っている。証人たちは、この画期的な判決を人権の保護のための大きな一歩と考えており、欧州人権裁判所によって支持されたこの現在の国際的な人権に対する基準に従って、例えば韓国(800人以上が服役している)のような国が、良心的兵役拒否者を開放することを望んでいる。

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さらに、以前このブログでも取り上げた Forum 18 も早速この判決を記事にしています。背景説明や調査も詳しく読み応えあるのですが、かなり長い記事なので、興味深いと思える部分だけをまとめて見ます。

欧州裁判所は良心的兵役拒否者が不当に有罪とされ投獄されたと認める-しかし政府はどうするのか

■票決

・17人の裁判官中16人が判決に賛成。アルメニア人の裁判官1人だけが反対票を投じた。

■アルメニア政府関係者の判決への反応

・Forum18の質問に対して司法省の報道官は「もしそれがヨーロッパ裁判所の判決ならば、補償を支払わなければならないだろう。政府はこれまでいつもこのような判決が出た時には補償を支払ってきた」と述べている。しかし、現在の服役者たちへの判決の影響を聞かれると、副大臣に聞くようにといった。また、匿名を希望した政府の上級職員は「判決を実行するときには、政府は良心的兵役拒否者の状況を見直すだろう」と言った。

■賠償

・政府はバヤティアンに賠償金として3ヶ月以内に10,000ユーロを支払うこと。これに加え、これまでの裁判費用として、さらに10,000ユーロを支払うこと。欧州人権裁判所に指摘された侵害となる理由を除き去ること。これには法律の変更も含まれる。

■代替奉仕制度は存在しているのだが・・・。

・代替奉仕法は2003年に制定されている。2004年と2006年に修正されているが、それでもヨーロッパ評議会に対してアルメニアが公約した「代替市民奉仕」の選択が可能にはなっていない。エホバの証人とモロカン派は最初、代替奉仕法の受け入れを表明したが、すぐにそれを撤回した。なぜなら、その奉仕とは、軍の管理・監督下に置かれたものだったからである。そして、現在、良心的兵役拒否のため刑務所に入っているのは69人で全員エホバの証人である。彼らは兵役と、軍の管理下での代替奉仕を拒んでいる。69人中、4人が3年の刑、35人が30ヶ月の刑、1人は27ヶ月、28人は2年の刑で、1人は18ヶ月である。7人が今年に入ってから投獄され、最も最近では4月の二人である。彼らは4つの刑務所に入れられている。2011年4月には、3人のエホバの証人たちが、残りの刑期を代替奉仕に切り替える申し込みの機会が与えられた。申し込みに際して刑務所からは、彼らの良い態度やリスクが少ないことを記した推薦状が書かれたそうだが、是非を判断する独立した委員会との面談後、3人全員不合格となった。現在、引き続き修正案が作られているが、不明な点も多く、証人たちにとって有益なものかまだ分からない。42ヶ月という兵役より長い期間も大いに問題だ。

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ドイツでは7月1日から徴兵制が廃止になり、台湾でも3年後には廃止になります。様々な理由がありますが、ドイツでは、兵役を良心的に拒否する何万人も人たちが奉仕活動を選択し、わずかな報酬で社会福祉を支えてきた大きな働き手でした。兵役の廃止と共にそのような有益な働き手もいなくなるので問題となっているようです。徴兵制度は世界的に時代遅れの感がありますが、アルメニアでそれを残すなら、せめて良心的に兵役に就きたくない者たちを使って社会的に有用な仕事をさせれば、刑務所に閉じ込めて税金で食べさせるよりはるかに生産的だと思いますけどね。いずれにせよ、一日も早くアルメニアの兄弟たちが刑務所から出てくることを祈りましょう。

ちなみに欧州人権裁判所はどのくらいの影響力を持っているのかウィキペディアを見てみました。

◎欧州社会に対する影響

欧州人権裁判所は人権問題に関する限り、フランスの破毀院やドイツの連邦憲法裁判所といった、日本で言えば最高裁判所の判決さえ覆すことのできる国際裁判所であり、その判決が欧州加盟各国に与えた影響は甚大なものがある。詳しくは直接リンクでどうぞ。欧州人権裁判所

いや、これはすごい。むちゃくちゃ強力な影響力じゃないですか。イギリスやフランスでさえここの判決が出ればそれに従うという・・・。これは確かに心強い判決です。