天地わたる手帖

ほがらかに、おおらかに

採って食らって桑の実

2019-05-23 02:20:47 | 身辺雑記


きのう新河岸川に68歳男、83歳女、37歳女が集結した。順に天地わたる、木村弘子、戸田鮎子の3人である。
鮎子さんと桑の実の話になって彼女がそれを知らないと言ったとき現地で採って食わせようと思った。俳句歴数ヵ月の彼女にぼくができることはナマの季語に触れさせること、これに勝ることはないと断じた。
彼女の住む場所からそう遠くないところに美味しい初夏の季語があるではないか。これを逃す手はない。
4月、戸田漕艇場で吟行をした際、荒川の土手から西を遠望した。荒川の向こうを流れる新河岸川は直線距離にして7キロほどと思った。
2年前の5月ここで桑の実採りをしたことがまざまざとよみがえった。そこがジャングルと言っていいほどの荒野であることも。

 おとといの雨で濁る新河岸川


しかし句会を離れて若い一女性と時空を共にすることの危険を感じた。
プライベートで男と女が会うことは世間からあらぬ疑惑をもたれかねない。そこで立会人として格好な存在として木村弘子を引き込もうと思った。
弘子さんも桑の実はよく知らないと言う。ならば彼女にも季語を食べて知ってもらおう。
ということで俳句をやっていないとあり得ないような年齢差の男女の集まりとなった。

たまたま、昨日は戸田鮎子の37回目の誕生日とのこと。
彼女は桑の実でジャムをつくりたいという。それはかなりの量が要り1.5リットルは確保したいと考えた。当日新河岸川で調達できるとはかぎらない。おととい雨の多摩川で1.1リットルをゲットしておいた。
今年の桑の実の生育は遅い。多摩川で完熟した桑の実はせいぜい5%。なんとか1.1リットルを得るのに2時間を要した。最盛時なら2リットルを採るのに1時間かからない。
それは新河岸川でも同様であり、右岸の生育はかなり悪かった。そこで河岸を変えて左岸へ。左岸でなんとか0.7リットルをゲットして鮎子さんへ1.7リットルをプレゼントできた。

草むらで本を読んで待っていた弘子さんの顔を見たら目の周りが赤くなっていて痒そうだった。
日光に負けたのか虫に刺されたのか、その両方か。さらに草いきれも加わったか。そのとき彼女の歳を思い気の毒をしたと反省した。屋内に入ると表情が回復してほっとしたのであった。この人の好奇心の凄さは半端ではない。これが彼女に若さを与えている。ぼくは見習いたい。


 おとといの多摩川産桑の実、1リットル

 きのうの新河岸川産桑の実、0.7リットル



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誕生日の桑の実

戸田鮎子

先生、今日は桑の実をたくさんありがとうございました。
桑の実を採るのは初めてで、どんな風に木になっているのかも全く知りませんでした。
枝の先から奥の方までちょこちょこたくさんついていて、指でちょっと摘まめば、ポロッと簡単に採れるのですね。

まず、先生が見つけてくださった木を一周ぐるりと回り、熟した実を一通り採ったと思いましたが、反対回りや中腰、背伸びしてみるとさっき見えなかった角度から実が見えて「あぁ、ここにも。おお、ここにも。」と、だんだん楽しくなってきました。
そのうち、実しか視界に入らなくなり「あの、ぷっくりとした濃い紫の……あの実がなんとしても欲しい」とトゲや枝が突き刺さる場所にどんどん入ってしまい、首や足が痛くて涙目になりました。






気付くと先生は見当たらず、一人ぼっちで雑草と虫に囲まれていて心細くなりました。
腕と顔もやたら痒い。
ジャージに変な白い虫がくっついている。
私は、この木一本に集中してがんばった。満足、満足……あとは先生におまかせしよう…。
雑草を掻き分けながら土手を必死にのぼり、弘子さんが待っている場所に戻ってみると、弘子さんはバイクに乗った地元男性にナンパされていました。

その男性は「そんなところにいないで、うちの畑の木陰で休まないか?」という台詞で可愛い弘子さんを連れ去ろうとしていました。 
やっぱりこんなところに一人で待たせてしまったことが間違いだったのです。
桑の実より、弘子さんが大事です。
バイクの男性が去った後は、もう弘子さんを一人にしておけないと、二人で一本の日傘に入り弘子さんを守りました。

今日の収穫はほとんど先生の頑張りでしたが、私は弘子さんを守れただけで大満足です。
いただいた桑の実は、前日に雨と風のひどい中、先生が採ってくださった実と合わせると大きなザルいっぱいになりました。
さっそく、圧力鍋で煮てジャムを作っています。
きれいな実は37個選んで取っておいて、夜、誕生日ケーキに乗せるのが楽しみです。

お別れした後、賑やかだった車内が一気に静まり返って、とっても寂しくなりました。
先生と弘子さんのおかげで、声を出して笑い転げて楽しい誕生日になりました。


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親子よりも歳が離れているが親子のように仲のいい二人