天地わたる手帖

ほがらかに、おおらかに

飯嶋和一『黄金旅風』

2019-05-06 04:57:50 | 


飯嶋和一『黄金旅風』(2004/小学館)。
内容(「BOOK」データベースより)
江戸寛永年間、栄華を誇った海外貿易都市・長崎に、二人の大馬鹿者が生まれた。「金屋町の放蕩息子」「平戸町の悪童」と並び称されたこの二人こそ、のちに史上最大の朱印船貿易家と呼ばれた末次平左衛門(二代目末次平蔵)とその親友、内町火消組頭・平尾才介である。卓越した外交政治感覚と骨太の正義感で内外の脅威から長崎を守護し、人々に希望を与え続けた傑物たちの生涯を、三年の歳月をかけて、壮大なスケールで描いた熱き奔流のような一千枚!「飯嶋和一にハズレなし」と賞される歴史小説の巨人が描いた、一級の娯楽巨編。


才介は火消しで殉職して死んでしまうので以後ヒーローは平左衛門となる。彼は長崎代官であり、敵は長崎奉行の竹中采女正重義。代官と奉行の職務が複雑に入り混じっているが、竹中が幕府の意向から逸脱した貿易で莫大な不正蓄財をする。
これが南国征服の野望と見抜いた平左衛門は長崎の民草がそれに巻き込まれて甚大な被害をこうむることを恐れた。
話はわりに簡単で、平左衛門対重義の暗闘。
幕府の権力は秀忠から家光へ以降する時期で、秀忠派の重臣と結んでいた重義に対して平左衛門は反秀忠派の重臣を使って彼の失脚を企てる。
平左衛門に自分が儲けようという意思が皆無であることがこの政治的策謀を鮮やかに感じさせる。幕閣の中の複雑な権力の構図を描き出して厚みがある。
長崎はあまた有名人を輩出したが、末次平左衛門を忘れてはいけない、と著者がつぶやいているように感じた。