天地わたる手帖

ほがらかに、おおらかに

亀の甲羅のひびの行方

2019-05-14 05:36:41 | 社会

アオウミガメとその甲羅の一部(1センチ四方ほどのへこみを焼く)

きのう老人ホームで句会をしたとき、大嘗祭のことに話が行った。亀の甲羅を焼くことを想像して一人が「臭い」「気持ちが悪い」という

サンケイニューズはきのうそのことを以下のように伝えた。
「亀卜は非公開。宮内庁によると、東京都小笠原村で捕獲され、長さ約24センチ、幅約15センチ、厚さ約1ミリに加工したアオウミガメの甲羅を桜の木をくべた火にかざす占いを実施した。ひびの割れ方から都道府県を決めたとされるが、宮内庁はどのような亀裂によって判断したか、詳しい方法を明らかにしていない。」

う~ん、何も伝えていないのと一緒。
いったい誰が甲羅のひびの意味を読み取るのか。それを読む能力は天賦のものなのか。歴史上有名なのが安倍晴明、平安時代の陰陽師で小説、映画にたびたび登場する。晴明などの陰陽師を管轄していたのは、太政官の中の八省の一つである中務省(なかつかさしょう)とのこと。
現代では宮内庁の役人がひびの意味を読むのだろうか。
ひびのあり方から吉凶を占うのならともかく、米を採る場所を決めるとなるとえらく複雑、どうするのか。雲をつかむような話で、天皇は担当者の報告を受けて首肯するだけのようである。

株や先物取引の価格を読むアナリストは情報の渦の中で結論を出す。これは一見理路整然としているような印象を与える。
これに比べて亀卜は原始的でいいかげんのさいたるものという印象である。
けれど優秀な株価のアナリストにしても黙って座ればぴたりと当たるというわけにはいかない。
プロ野球の順位予想、競馬の順位予想もそうとう狂う。
諸行無常の世の中で亀卜はサイコロを振るのに似て人の心理に添うのかもしれない。
亀の甲羅全部を焼くのでないからそう臭くはないことはわかった。わからいのは、どういう道筋で栃木県と京都府になったのかということ。
栃木県、京都府といってもそれぞれ広い。どこの田んぼにするのか、それは都道府県の首長が決めていいのか、あいまいでおもしろい。
緻密な論理を組み立てて途方もなく遠い宇宙空間のリュウグウへ船を飛ばす国民が一方で亀の甲羅を焼いて伺いを立てる……この落差は楽しむべきだろう。