「たくさん食べなさい」
テーブルに並んだ料理を前に、ミエのテンションは上がった。
そんな愛娘を、父はニコニコ見ている。
「わ〜!」「ミエ、いっぱい食べなさい〜」
ふと前を見ると、チョルもまた黙々と料理を口に運んでいた。
「チョルはよく食べるんですよ。牛一頭食べるんじゃないかってくらい」
そんな子供達を見ながら、大人達は感慨深そうに会話を続ける。
「子供達がもう受験生なんて・・月日が経つのは早いですねぇ」
フシギ
そのチョルの食べっぷりを見たミエが、口をあんぐりと開けていると・・。
何見てんだよ
ギロリと睨みながら、チョルが口だけ動かしてそう言った。
うっ・・・
チョルが妹の方を見て「口元を拭け」と声を掛ける。
そんなチョルのことを、ミエはイライラしながらじっとりと見ていた。
「今年は正念場ですね」
「今年頑張れば、二人とも良いところに行けますよ」
両親が話している横で、チョルが餃子に手を伸ばした。
すると向かいから箸が伸び、狙っていたそれを横取りする。
パッ
「あ〜〜うめぇ〜〜これうまいわ〜〜」
あんぐり・・
「そうですね。この子達の未来を考えたら・・」
親達が子供のためを思っての会話を続けている間、当の本人達は・・。
シャッ シャッ シャシャッ
ムシャムシャムシャ!
そんな二人に、この人が声を掛けて来た。
「アンタら何やってんの?」
「うわあっ舌噛んだ〜〜!」 「ダイジョブ?」
遅れてやって来たその人は、スンジョン姉さんだった。
ミエは噛んでしまった舌を押さえながら、しばし痛みに耐えるのだった・・。
<昔の話>
両親達は料理を口に運びながら、昔話に花が咲く。
「ミエがご飯をよく食べるから、おばあちゃんがいくらでも出して来ましたよね」
「あぁ、ミエが焼酎を水だと思ってグラスを飲み干して!」
「そしたらミエが気を失って、目をパチクリさせた後何事もなかったかのように・・」
完全に話のツマミ にされているチョルが、「頼むからやめてくれ・・」と小さく呟いた。
けれど大人達はそれさえも微笑ましいらしく、笑顔で話を続けている。
「それでも二人、仲良かったものね?」「そりゃもう!」
そして親達の昔話大会に、今度はスンジョンが参戦する。
「いやもーこの子達どんだけ面白かったか!」
そう言ってスンジョン姉さんは、昔のエピソードを一つ話し出した。
「その子と私は両手をそっと握って、音楽に合わせて足を運び・・・」
「アンタは女の子をもっと知らなきゃダメだよ!一緒に読も!」
チョルがたまらなくなって逃げ出して、二人一緒にゴロゴロ転んでたよね〜」
涙を流して笑う姉に、チョルが声を荒げて止めにかかる。
「おいちょっと止め・・」
「あ、あの本どうしたんだっけ?引越しの時全部処分したかな?
大人達が席を外している時に、スンジョンは引越し荷物の話題に触れた。
「あの時何捨てたのか覚えてる?」
「!」
チョルがピクッと反応する。
ミエは気になる場面を思い出していた。
「え?箱ラーメン・・?」
あの時、ラーメンの箱に入れられた処分物を前に、チョルが確かしゃがんでいて・・。
ドンッ!
ハッと気がつくと、目の前にすごいオーラを纏った大魔王がいた。
「食え。い〜〜っぱい食え」
”そして口を噤め”そんな暗黙のメッセージが、ひしひしと伝わってくる・・。
ハッ
「ゴミ捨て場で俺を見たこと、誰にも言わないでくれ」
そうだった。チョルには固く口止めされていたのだった。
「なんか言いかけてなかった?」
スンジョン姉さんがそう聞くも、ミエはその後押し黙り、
ただ料理を口に運ぶだけだった・・・。
+)
「あたしちっちゃかったから覚えてない」
当時ファニは3歳だったので、まるで覚えていませんでした
第二十五話②でした。
お父さんがたくさん食べる娘を見てニコニコしているのがいいですね
餃子を奪い合う二人も面白かったです
あの遠い目をしてる二人とかww
第二十五話③に続きます