羊日記

大石次郎のさすらい雑記 #このブログはコメントできません

探偵の探偵 1

2015-08-28 23:10:50 | 日記
玲奈は近くで自分を見るリンと呼ばれた被害者の女と一度視線を合わせてから、窪塚のポケットから警察の入構証とスマホを取り出し、森の中へ逃げ、国道へと出た。国道では琴葉が車の傍で待っていた。事前に窪塚から頼まれてのことで、窪塚はその時点で玲奈を逃がすつもりだった。「早く出して」琴葉の車で現場を離れながら、窪塚の母に想定される窪塚の搬送先を伝える玲奈。「知らせてくれて、ありがとう」「いえ」電話を切った玲奈は栃木県警航空隊のヘリ発着所へ車を回させた。
入構証と偽名でヘリのガレージに入った玲奈は絶縁手袋をして、バッテリー? とテストピンのケーブルを繋げた。間を置かずヘリが到着し、「もうぐちゃぐちゃだよ」と酷い現場だったと撮影したデータの入ったケースを持ってパイロットがガレージに入って来ると、物陰の玲奈は二つのテストピンを合わせ主電力が落ちる程激しくショートさせ、一瞬発生した強力な電磁波でケースの中のデータメモリを消し去った! これで窪塚の傷害の具体的な証拠は野放図やDV加害者の犯罪の現場での蛮行の証拠と共に消え失せた。玲奈は素早くヘリの発着所から逃れ、琴葉の車に乗り込んだ。
さらに玲奈は先程、窪塚の母に知らせた病院に車を回させた。裏口から潜り込んだ玲奈が窪塚の処置された部屋を密かに伺うと、ちょうど窪塚の母が手を取り、窪塚の遺体と対面していた!「どうして親より先行っちゃうのよ!」母は泣いて、息子の、亡き妻との冥福を祈っていた。玲奈は琴葉の車に戻った。「ダメだった。あの人、最後まであたしのこと、あたしのせいでッ!」玲奈は声を上げて泣いた。それから玲奈は自宅に籠ったが、1度警察から呼び出しが来て出頭した。野放図と加害者達は否認し、被害者達は話を聞ける状態ではなかった。窪塚は今はメディアで英雄扱いだが、ナイフから指紋は出ており、
     2に続く

探偵の探偵 2

2015-08-28 23:10:38 | 日記
直に過剰防衛と揶揄されるのは目に見えていた。証拠は無く、ロクに話さない玲奈に長谷部は苛立った。「早く答えろよ。黙ってないで答えろよ!」「何をしたって、亡くなった人は帰ってこない」玲奈は力無く呟くだけだった。帰りに坂東に呼び止められた。「俺は窪塚とは違う。お前に同情などしない。必ず尻尾を掴んでやる!」玲奈は答えず去った。
その後も引き籠る玲奈に代わって、琴葉は一人で対探偵課の業務を始めていた。特定の公衆電話への電話や、悪徳探偵の個人情報の洗い出し、チンピラ程度だが悪徳探偵との直接交渉やスタンガンを使った撃退など、手堅く業務をこなす琴葉。一件目を片付け、ジムで体を鍛えていると須磨が来た。「頼もしいな。君にやって貰おう」須磨はメモを差し出した。メモは精神科の訪問看護課の連絡先だった。前回錯乱した野放図の女、秋子が定期的に訪問診療を利用していることを須磨達は突き止めていた。
琴葉は秋子の母に成り済まし、病院に予定日を断り、医師と看護師の代わりに桐嶋と共に秋子の家に向かった。桐嶋の指示でマンションのインターフォンは使わず電話でロックを開けさせ、マンションへ入った。「秋子、先生が見えたわよぉ」母に秋子の部屋のドアを開けさせ、中に入る桐嶋と琴葉。母が奥に下がり、部屋の鍵を閉めると、代理の医師と看護師という設定はすぐに捨て、秋子を無視するように家捜しし出す桐嶋と琴葉!「何してんの?! 止めてよ!」桐嶋に掴み掛かるが払い飛ばされる秋子! 暴れたが、すぐ押さえ込まれた。「野放図の中心メンバーの一人か?」「誰だよお前ら?」「サワヤナギナナの電話番号かメアド、あるなら出せよ」「あの女の仲間?」「早く出して!」琴葉も目の色が違った。「接触無しにどう依頼する?」「うぇえっ、ウァアアアッ!!!」秋子はまた錯乱し出し、桐嶋を振りほどき、
     3に続く

探偵の探偵 3

2015-08-28 23:10:27 | 日記
ハサミ取って琴葉の右腕を浅く切った! 桐嶋が改めて押さえ込み重体の淀野のことを出して脅しても叫ぶばかりの秋子。直ぐに母親がノックしてきた。「どうしたんですか?」「大丈夫です」桐嶋は簡単に対応し、琴葉と共に手早く退散した。「秋子! 秋子!」母親は絶叫する秋子に慌てて駆け寄ったが、元々精神科の訪問看護を受けている為、平時の発作と今の錯乱の区別はつかなかった。
「大丈夫か?」「ありがとうございます」「これ以上奴を深追いしても無駄だ」帰り道、桐嶋は琴葉と話しながら帰ったが、後をつける影に気付くと琴葉を先に帰し、後をつける者を一人で引き付け、人気の無いトンネルに誘い込んだ。相手は例の野放図の妙に身体能力の高いタンクトップの男だった。「何の用だ?」問うと、男は逃げ出した! 追う桐嶋! 男はホテルまで逃げ、屋上まで追い詰めるとカポエラ? の蹴り技で襲い掛かってきた! 桐嶋は足払いで転ばされるが手堅く受けに徹し、隙を見て膝蹴りと回し蹴りで男を吹っ飛ばし、ボディブローとフックで距離を取り、男が突進気味に殴り掛かって来るとカウンターで交差様に体が浮き上がる程強く殴り付け、ダウンさせた!「お前、何者だ?」桐嶋は問うた。
男は野放図のケツモチの暴力団が野放図内に放っていた密偵だった。どうも須磨も昔、密偵をしていたらしい。今回の騒動を受け、警告に寄越していた。「わかった、私の方で手を打とう」件の暴力団はシノギを稼ぐのに近年悪徳探偵を使うようにもなっていた。
琴葉が惣菜を買ってマンションに帰ってきた。「ただいま」玲奈は暗い部屋でただ座っていた。「御飯まだですよね? 食べましょ?」「手、どうしたの?」今日の秋子への調査をざっと話す琴葉。「ごめん、そんなことに付き合わせて」「そんなことって、玲奈さん?」玲奈はリビングのソファに座り直した。
     4に続く

探偵の探偵 4

2015-08-28 23:10:18 | 日記
「わからない。このまま死神を追い続けていいのか? 傷付く人達がいる。今までずっと、説得して改心させようって思ってやってきた。それなのに、気付いた時には殺されないように必死になっている。本当は誰も傷付けたくない。私のせいで、あの人の命まで」涙を溢す玲奈。「終わりにしたい」「ダメです、逃げることは許しません。今逃げたらそれこそ窪塚さんの死が無駄になるじゃないですか? 全ては死神を見付ける為に始まったことです。だったらこの終わりは、死神を見付けるまでです」玲奈の手を取る琴葉。「戦いますから。咲良の為にも、一緒に見付けましょう。それで全部終わりにしましょう」琴葉を見詰める玲奈。「さ、食べましょう?」琴葉は手を離し、夕飯の支度を始めた。
窪塚の娘の授業参観の日、窪塚の母が参観に来ていたが父まで失った娘は元気が無かった。そこへ、玲奈が教室に入ってきた。紙を纏め、明るい化粧をし、明るい地味なジャケットを着て現れた。窪塚の母に頭を下げ、隣に並ぶ玲奈。振り返った窪塚の娘に玲奈は頷き、娘は少なくともこの時は笑顔を取り戻していた。それから、玲奈は再びスマ・リサーチに出社してきた。「お疲れ様です」既に玲奈の事情を知った他の課の探偵達はやや驚いてそれを迎えていた。姉と念を押して別れてきた琴葉は出社していた玲奈に話し掛けた。「おかえりなさい」「ただいま」玲奈は答えた。
須磨から阿比留がかつてヤナギサワナナについて調べていたことを聞いた玲奈は一人で刑務所に面会に向かった。「君のせいで鼻が少し曲がった。よく入ってこれたな? 買収でもしたのか?」「サワヤナギナナって探偵、知ってる?」「いきなり本題。それが死神なのか? サワヤナギナナ、いい辛い名前。知らない」「嘘」「知らない」「そう、わかった」玲奈は去ろうとした。「サワヤナギナナという『探偵』は知らない」
     5に続く

探偵の探偵 5

2015-08-28 23:10:09 | 日記
振り返る玲奈。阿比留は2年前、ある女性から風呂場で不審な溺死をした資産を持つ兄といつの間にか結婚していた女、『サワヤナギナナ』についての調査を頼まれていた。当時サワヤナギにはアリバイがあった。サワヤナギは18歳の頃から死別を繰り返し、夫達から資産を巻き上げていた! 夫が亡くなる度に本籍地を移し、戸籍を洗浄していずれも未婚と偽り結婚していたサワヤナギ。相手は交際歴が無く、友人も無く、質素な引き籠りながら密かに蓄財を行う男が獲物にされていた。警察が対応する頃には常にサワヤナギは姿を消し、尻尾を掴めなかった。警察も阿比留もなぜサワヤナギが都合よく次々と獲物近付けるかわからなかった。「君から探偵と聞いて合点がいった。単純に自分で調べ上げて近付いていたとは、灯台もと暗し」面白がる阿比留。「時間です」刑務官に促される阿比留。「出会った人間が次々と死んでゆく、正に死神。君といい勝負だ。窪塚も死んだ、次に死ぬのは誰だ? 私にだけこっそり教えてくれないか?」「時間です!」「またおいで、ここは凄く退屈だ」阿比留は退室して行った。
「サワヤナギナナは探偵としての技術を殺しの為に使ってるってことですよね?」戻った玲奈から話を聞いていた琴葉。桐嶋と須磨もいる。「紗崎、対探偵課としてこれ以上のターゲットは他にいるか? その探偵を、探偵しろ!」須磨は命じた上で、「必要なら、殺せ」とまで言った。「はい」玲奈はそう応えた。そして同じ頃、前回の被害者で『リン』と呼ばれていた女、『市川凜』を探る者がいた!
・・・窪塚合掌。玲奈がノンケに目覚めた結果、琴葉がバディから一番弟子くらいに後退したが、マンションに惣菜買ってきてからの琴葉の理屈の捉え方は様々だとは思うが、中の人の芝居は少し安定。ただラストの所長室の芝居は平常運転に戻ってた。惣菜の件は北川とサシで決めのシーンだから気合いブースト掛かってたんだな。